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ARTURIA MatrixBruteイベント〜デモ by氏家克典/Yasushi.K/Sota Fujimori

ARTURIA / MatrixBrute

2016年のNAMMショウで発表され、シンセ・ファンの熱い注目を集めたARTURIA MatrixBruteが2017年春いよいよ日本市場に登場。それに合わせて2017年4月8日(土)、MatrixBruteをいち早く楽しむセミナー・イベント「MatrixBrute Complete Session」が東京都内のRed Bull Studios TOKYOで開催された。当日はMatrixBruteを自由に体験できるタッチ&トライはもちろん、Yasushi.K氏、Sota Fujimori氏、そして氏家克典氏をデモンストレーターに迎えたセミナーとパフォーマンスも実施され、まさにMarixBruteを100%堪能できるイベントとなった。今回はMatrixBruteの概要をあらためて紹介しつつ、イベントの様子を動画とともに詳細にレポートしていこう。

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ARTURIA MatrixBrute Complete Session @ Red Bull Studios TOKYO

モンスター級の完全アナログ・シンセ「MatrixBrute」とは?

ARTURIA MatrixBrute

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 考え得るすべての機能を搭載し、それらを自由自在に組み合わせた音作りが行えるモンスター級の完全アナログ・モノフォニック・シンセサイザー、それがMatrixBruteだ。注目すべきは、オシレーター部、フィルター部、そしてマトリックス部の3つ。まず、3系統あるVCOのうち、VCO1&2は、ノコギリ波/矩形波/三角波のミックスが可能なだけでなく、ノコギリ波には「Ultrasaw」、三角波には「Metalizer」という、倍音構造を複雑に変化させられるウェーブシェイプ機能を持ち、オシレーター部だけでも、変幻自在な音作りが行なえる。

 フィルター部は、“スタイナー・パーカー”タイプと、“ラダー”タイプを搭載。スタイナー・パーカー・フィルターとは、1970年代に作られた伝説的な“Synthacon Synthesizer”に搭載されていたタイプで、やや粗めな質感ながら、個性的なサウンドが生み出せる。一方のラダー・フィルターは、モーグ搭載の発振音がキツめで切れ味の良さが特徴的。クラシカルな定番フィルターで、両者を駆使することで、オンリーワンのサウンドが生み出せる。そうした音色をコントロールするのが、最も目を惹くMatrixBruteの心臓部、16×16ボタンマトリクス部だ。ここでは、プリセット音色セレクト、64ステップ・シーケンサー、そして、複雑なモジュレーション設定という3機能を切り替えて操作でき、いずれの場合も、ボタンのオン/オフだけという感覚的な操作性を実現している。

 このように“アナログ・アヴァンギャルド”というキャッチ・コピー通り、懐古主義ではなく、あくまでも未来志向のアナログ・シンセ。その実力と魅力を、Yasushi.K氏、Sota Fujimori氏、そして氏家克典氏が、じっくりとデモンストレーションを交えてレクチャーしてくれるのが本イベントのメインだが、会場となったRed Bull Studios TOKYOにはセミナーを楽しみに多くのギャラリーが訪れ、会場前のホワイエに設けられたMatrixBruteのタッチ&トライ・スペースは大いに賑わいを見せていた。

MatrixBruteの試奏体験で賑わう会場前のホワイエ

おもいおもいにフィルターの効き具合やマトリクス部の操作を楽しむ

年齢や性別問わず、幅広い層の来場者が訪れた

MicroBruteなどARTURIAの他製品も用意されていた

会場で販売されていたMatrixBruteオリジナル・Tシャツ

会場のRed Bull Studios TOKYOでは、来場者にRed Bullがふるまわれた

MatrixBrute Complete Session Pt.1 〜 基本性能
Demonstrator : Yasushi.K

Yasushi.K氏

 いよいよ場所をホールに移しセミナーが開演。最初に登場したYasushi.K氏は、基本性能を中心に紹介。アナログ・シンセの醍醐味であり、シンセ・ファンが最も気になるポイントと言えば、やはりオシレーターやフィルターの個性だ。そこでまず、VCO1のノコギリ波だけ、いわゆる“オシレーターの素の音”を会場に響かせ、太く厚みのあるサウンドを来場者に体感させてくれた。続いて、スタイナー・パーカー・フィルターとラダー・フィルターの各個性を、実際に音を鳴らしながら解説し、両者の同時使用が可能で、オシレーターごとにタイプを指定できること、並列/直列とルーティングを変えられることを説明。さらに、Master Cutoffツマミで両者を同時にコントロールできるなど、自由度の高い音色コントロールを実践したうえで、マトリクス部の感覚的な操作性をアピールした。
「すごくデカくて、ツマミとボタンがたくさん。嫌になりますよね(笑)。難しいんだろうなと。でも、実はビックリするほど簡単。すべての機能が表に出ていて、裏の階層がないので、触ったままの音が出せるんです」
 最後に、Korg volca sample(サンプル・シーケンサー)と組み合わせたデモンストレーションを行ない、最新ファームウェア1.1で、外部機器との親和性が大きく向上したことをアピールした。

太く厚みのあるオシレーターの素の音が会場に響く

2タイプのフィルターを同時に操作できるMaster Cutoffツマミの解説

MatrixBrute Complete Session Pt.2 〜 シーケンス&シンセ・リード
Demonstrator : Sota Fujimori

Sota Fujimori氏

 続いて登場したのは、サプライズ・ゲストのSota Fujimori氏。ゲーム音楽コンポーザーとして知られているSota Fujimori氏は、以前に、Prophet-VやJUPITER-8Vなど、アートリア社ソフト・シンセのプリセット音色制作も手がけるなど、同社との関わりも深い。そこでまず、MatrixBruteで作成した数種類のオリジナル音色を披露しながら、「特に好きな機能」と語るシーケンサーを駆使したデモンストレーションへ。リアルタイムにステップ入力し、シーケンス・パターンを鳴らしながら、隣り合ったステップのボタンを同時押しして、音をタイでつなげたり、アクセントやスライドを加え、フレーズに動きをつけていく。さらに、モジュレーション機能とシーケンサー機能を切り替えながら、マトリクスでステップごとにフィルターの開閉を設定したり、そのフィルターにLFOをかけるなどのテクニックを使い、パターンをリッチに彩っていった。
 ここからは、MatrixBruteの機能を活かしながら、応用的なノウハウをレクチャー。まず、リニア・モードに設定したKorg SQ-1(ステップ・シーケンサー)と組み合わせることで、平均律ではない、《ド》と《ド♯》の間の音を活かしたドリフト・シーケンスを披露。また、モノフォニック・シンセでありながらも、MatrixBruteの3つのVCOを活かし、3基のオシレーター・ピッチを、それぞれ《ド》《ファ》《ソ》に設定することで、プログレ風の和音が奏でられることを紹介。
「今のは定番ですが、《ファ》を《レ》に変えて、ちょっと変わったリード・サウンドが作るのが僕流。《ド》と《レ》を重ねると不協和音っぽくなりますが、《ソ》を足すことで、一気に、バンドでも使えるアナログ・リードが作れます」
 このような、他モデルでも十分に活用できるアイデアに、立ち見も出るほど満員の観客は、大きく頷いていた。

ゲーム音楽コンポーザーとして知られているSota Fujimori氏(写真右)がサプライズ・ゲストで登場

マトリクスを使ったステップ・シーケンスのデモンストレーションを披露

MatrixBrute Complete Session Pt.3 〜 プリセット・サウンド
Demonstrator : 氏家克典

氏家克典氏

 満を持して登場した氏家克典氏は、256個のボタンで選べるプリセット音色をじっくりと紹介。同氏を含めた世界中のプログラマーによるこだわりの音色を、ツマミやピッチ・ベンド、モジュレーション・ホイールで縦横無尽に変化させる。
「ここで私が言いたいのは、プリセットを選んで“出てくる音がすべてではない”ということ。注目して欲しいのは、4系統のマクロ・エンコーダー。これは、LFOからエフェクトのツマミまで、マトリクス・モジュレーションを使って、任意のパラメーターを自由にアサインできます。試奏時に、プリセット音色を鳴らして“こんな感じか”で終わらず、必ずマクロ・エンコーダーを動かしてみて、斬新な音色変化を聴いてください」
 氏家氏がお気に入りだというもうひとつの機能が、Brute Factorツマミ。これは、フィルター部にわざと信号を過大入力させることで、絶妙な歪みから、地を這うような轟音まで、想像を超えた音を生み出せるパラメーターだ。こうしたユニークな機能と、完全アナログ仕様のエフェクトを組み合わせて生み出されるサウンドに、氏家氏は何度も「最高!」とつぶやく。他にも、同社アプリケーション《MIDI CONTROL CENTER》を利用することで、フル・アナログ・シンセでありながらコンピューターとの連携が可能であることなど、MatrixBruteの魅力を余すところなく紹介してくれた。

こだわりのプリセット音色をツマミやピッチ・ベンド、モジュレーション・ホイールで変化させながら紹介していく

ARTURIAのアプリケーション「MIDI CONTROL CENTER」を使えばコンピューターとの連携が可能

MatrixBrute Complete Session Pt.4 〜 パフォーマンス

 そこへ再び、Yasushi.K氏とSota Fujimori氏が加わり、3人でトークを展開。マトリクス・モジュレーションは、モジュラー・シンセのパッチング以上の可能性を秘めていることや、現行モノフォニック・アナログ・シンセの最高仕様であることなどが語られる一方で、「(マトリクスのボタンで)自分の名前を書いて、それでどんな音が作れるかを試すのも楽しい」(氏家氏)とジョークを飛ばし、会場の笑いを誘っていた。そして来場者とのQ&Aの時間を挟み、いよいよ最後に、Yasushi.K氏アレンジによるYMO「テクノポリス」を3人で演奏、大きな拍手の中、イベントは盛況のうちに終了した。

最後は3人が揃って登壇、ジョークを飛ばし合い会場が笑いに包まれる

Q&Aのコーナーでは熱心な来場者からの鋭い質問が飛んだ

そしていよいよ3人揃ってのパフォーマンス・タイム!

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