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  • いっちーのデジタル・デジマート 〜第25回〜

「Get Wild」リミックス・コンテストのためのヒントと考察

DAW/波形編集ソフトウェア

エイベックスとサウンド&レコーディング・マガジン共同企画によるTM NETWORK「Get Wild」リミックス・コンテスト(締切:2017年8月16日12:00まで)。特設サイトからダウンロードしたボーカル・トラックを使って誰でも応募が可能です。こういったコンテストは自身のスキルアップにもなりますので、是非参加してみてください。今回のコラムではリミックスのアイデアや方向性を原曲から得るため考え方と、制作で必要な機材についてまとめてみたいと思います!

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「Get Wild」リミックス・コンテストとは?

 アニメ『シティーハンター』のエンディング・テーマとしても知られるTM NETWORKのシングル「Get Wild」がリリースされて今年で30年。これを記念してオリジナルからライブ・バージョン、リミックス、カバーまで36バージョンを収めた『Get Wild Song Mafia』、そしてエイベックスが独自にまとめた配信限定『GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition』がリリースされるなど、大きな話題となりました。またサウンド&レコーディング・マガジン2017年6月号では、特集で「Get Wild」について多角的に検証。このような経緯からリミックス・コンテストが企画されました。9月中旬には優秀者を発表するイベントが開催される予定です!

 → “あなたの「Get Wild」”リミックス・コンテスト特設サイトはこちら

▲ GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition


原曲からリミックスのアイデアを練る

リミックスとは

 一般的にリミックスとは、“既存の素材を使って再構築すること”ですが、アレンジやカバーという意味合いでも語られることも多く、定義はあいまいです。今回のリミックス・コンテストは、宇都宮隆さんのボーカル・トラックのみがダウンロードで提供されているので、ボーカル以外のバックトラックは演奏や打ち込みなどを駆使して制作する必要があります。どんな曲に仕上げるかは自由。あなたの感性次第です!

▲それぞれの価値を持ったモノが掛け合わさることで、全く新しい価値が生み出される。これこそリミックスの醍醐味!

 そうは言っても、ノー・コンセプトで作った曲に素材を当てはめるだけよりも、原曲からヒントを得て、理想のリミックス像に近づけていく方が、説得力のあるリミックス作品に仕上がるはずです。まずはオリジナルの「Get Wild」を因数分解するところから始めてみましょう。

曲の構成

 「Get Wild」(オリジナル)は、このような構成になっています。

▲ Get Wildの構成

 サビのメロディを使ったイントロ①から始まり、イントロ②と同じパターンでAメロにつながります。そしてBメロ、サビへと進み、イントロ②からサビまでが繰り返され、そこから半音上がって間奏②、サビ、フェード・アウトという流れです。

 ここで注目したいのがBメロです。一般的な楽曲は8小節単位で進行していくことが多いのですが、Bメロだけは10小節になっています。そのため8小節進行するセオリー通りにバックトラックを制作していくと、ボーカル・トラックがサビでズレてしまいます。もし原曲の構成に沿ったリミックスを行なう場合は曲を構成するセクションの小節数をしっかり把握しておきましょう

調(キー)と転調

 また、曲中に主音となる調(キー)が変わることを転調と言いますが、小室哲哉さんは、これをうまく取り入れて多くのヒット曲を生み出してきました。「Get Wild」もこの転調が効果的に使われているのです。

 下の図をご覧ください。先ほどの図を調(キー)別に色分けしてみました。

▲ Get Wildのキーを色分けした図

 この図からわかるように、Aメロ、Bメロは同じキーですが、サビで転調、間奏①でキーが戻って2番のAメロ、Bメロにつながり再びサビで転調します。そしてキーが半音上がっている青色部分は間奏②から終わりまで続いています。

 それぞれ色分けしたセクションで使用する鍵盤に印をつけるとこのようになります。キーが異なるため使用する鍵盤も異なるわけです。

▲ Aメロ、Bメロのキー

▲ Cメロ(サビ)のキー

▲ 後半のCメロ(サビ)のキー

 リミックス制作で新しいコードやフレーズを取り入れる場合は、これらを意識すると良いでしょう。

コード進行

 原曲のコード進行についても把握しておきましょうね。バンド・スコアなどが用意したり、耳コピができれば良いのですが、こんなアプリを使うのはいかがでしょうか?

YAMAHA Chord Tracker
http://jp.yamaha.com/products/apps/chord_tracker/

▲ YAMAHA Chord Tracker

 これは、iOSデバイス内の曲のコード進行を自動的に解析してくれるアプリ。しかも無料(すごい)。それにコード・ネームや五線譜以外にもギターのタブ譜、鍵盤表示が可能です。

 ちなみに「Get Wild」のサビのコード進行は、これ以降のJ-POPシーンに多大な影響を与えたと言っても良いでしょう。さまざまな曲で使用されていますよね。

象徴的な音色

 「Get Wild」を象徴する音色を列挙してみましょう。今回のリミックス・コンテストでオリジナル素材として提供されているのはボーカル・トラックのみ。したがってオリジナル・トラックのマルチの素材は使うことはできませんが、これらをシミュレーションした要素をどのぐらい取り入れるかによって、オリジナルとリミックスの距離感が変わってきます。

  • イントロの効果音「キーン」
  • イントロでサビのメロディを奏でるハープ系音色
  • スネアとタムのみのドラム・パート
  • ユニゾンで鳴るFM音源のベース・ライン
  • Aメロのクラビっぽい撥弦系音色のコード弾きシーケンス
  • サスティン短めのBメロの16分のシーケンス
  • サビ前に駆け上がるシーケンスとギター・カッティング
  • 転調後からアウトロにかけてのギター・ソロ
  • ライブやリミックスで聴くことができるボイス・サンプル・トリガー「ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・・・」

 挙げるとキリが無いのでこのぐらいにしておきましょうか(^^;)


 

当時の背景を知る

 曲に関する他の要素についてもリミックスのヒントになりうるはずです。「Get Wild」についてさらに深掘りしたい方はサウンド&レコーディング・マガジン2017年6月号をご覧ください。ここではメンバー3人、エンジニア、参加ミュージシャン、関係者らによる「Get Wild」誕生秘話、リミキサー・インタビューなど、85ページにも渡って特集されています。紙版は入手することが難しいかもしれませんが、iOS版Kindle/Kobo/Kinoppy/yodobashi版は購入可能です。この特集の中には、オリジナルに制作に携わった石川鉄男さんによる使用音色の解説も掲載されていますよ!

曲の要素と自分のやってみたい手法を掛け合わせる

 曲の深堀りができたら、自分が描くリミックス像について棚卸して、それらと曲の要素がどのように掛け合せられるかを考えてみましょう。

 例えば「1コードで構成するダンス・ミュージックが作りたい」のであれば、転調するAメロとBメロは潔くカットして、サビだけを繰り返し、音色の抜き差しで展開させていくスタイルがイメージできます。「ロックが好きで歌の良さを引き立たせたい」なら、全パート生バンド風に演奏をアレンジして、象徴的なシーケンス・フレーズをギター・リフに置き換えるというアイデアも良いでしょう。また80'sの洋楽っぽいリミックスにしてみたい! ということであれば、当時の機材をシミュレーションした音源を使ってアレンジをしてみるということも考えられます。

リミックスするために必要な機材

 リミックスもオリジナル制作も、本コラムで紹介してきたとおり、DAWを中心とした音楽制作環境が整っていれば十分です。

DAWソフトウェア

 DAWについては、本コラム「第7回 DAWで何ができる?」をご覧ください。DAWは今年になってTRACKTION Waveformがリリースされたり、BITWIGがBitwig Studio 2になったりと、新しい動きがみられます。

主なDAWソフト
 ABLETON Live 9[デジマートで探す]/AVID Pro Tools[デジマートで探す]/BITWIG Bitwig Studio 2[デジマートで探す]/IMAGE-LINE FL Studio 12(Windowsのみ)[デジマートで探す]/INTERNET Ability (Windowsのみ)[デジマートで探す]/MOTU DP 9(Macのみ)[デジマートで探す]/PRESONUS Studio One 3[デジマートで探す]/STEINBERG Cubase 9[デジマートで探す]/TASCAM Sonar(Windowsのみ)/TRACKTION Waveform[デジマートで探す
デジマートで探す]/PROPELLERHEAD Reason[デジマートで探す]など……

▲ TRAKTION Waveform。特にMIDIを使った作曲支援ツールが充実している。コードの展開を自動で生成し、それに応じたフレーズも生成可能。(→ デジマートで検索!

▲ BITWIG Bitwig 2。1つのトラックにオーディオとMIDIを混在させて編集することができる。Ver.2からは、モジュレーターをほかのデバイスのパラメーターをアサインできるModulation Systemなど強力な機能が追加された。(→ デジマートで検索!

ソフト音源

 こちらも本コラム(第5回)で紹介していますが、ここではシンセ系でオススメなものをいくつか挙げてみます。

 NATIVE INSTRUMENTS Komplete 11シリーズ[デジマートで探す]/STEINBERG Halionシリーズ[デジマートで探す]/KORG Gadget for Mac(Mac版のみ)[メーカー・サイトへ]/IK MULTIMEDIA Syntronik[デジマートで探す]/UVI Falcon[メーカー・サイトへ]/u-he Hive[メーカーサイトへ]/XFER RECORDS Serum[メーカーサイトへ]/SPECTRASONIC Omnisphere 2[デジマートで探す]など

▲ NATIVE INSTRUMENTS Komplete 11シリーズ

▲ STEINBERG Halionシリーズ

▲ IK MULTIMEDIA Syntronik

▲ UVI Faclon

ミックスダウン/マスタリング

 リミックスが完成したら、ミックスダウンとマスタリングを行ないましょう(第9回を参照ください)。ここで気を抜くと、特定の音だけが大きすぎたり、既存の曲に比べて音量が小さかったりと、粗が目立ってしまいがちです。

 ミックスダウンやマスタリングで使用するプラグインや波形編集ソフトの一部

 WAVES Platinum[デジマートで探す]/iZotope NEUTRON[デジマートで探す]/SOFTUBE Console 1[ デジマートで探す]/IK MULTIMEDIA Lurssen Mastering Console[デジマートで探す]/STEINBERG Wavelab Pro 9[デジマートで探す]/iZotope Ozone 7[デジマートで探す]/UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin MKII[デジマートで探す]など

▲ iZotope NEUTRON

▲ SOFTUBE Console 1

▲ IK MULTIMEDIA Lurssen Mastering Console

▲ STEINBERG Wavelab Pro 9

 ミックスダウンやマスタリングについてはいろんな教則本が販売されていますので、参考にしてみてください。

【書籍】DTMミキシングの基礎技術を解説付きで実演しちゃいました

 石田ごうき氏によるミキシングのテクニック本。ダウンロードした教材用音源を実際に使ってステップを踏みながらミックスを組み立ててミキシングの流れをマスターできます。
製品ページはこちら


【書籍】DAWではじめる自宅マスタリング

 楽曲の仕上げに欠かせない制作工程「マスタリング」を、DTMerの目線で解説していく書籍。「歌もの」「打ち込み」「生音」「インスト」の4タイプの素材を、Steinberg Cubase Pro 8.5のプロジェクト・ファイルとオーディオ・データの両方でダウンロードが可能本書の解説通りに操作を行なうことで、マスタリングを実践していくことができます。
製品ページはこちら


その他オススメなアイテム

 ここでは、リミックス制作意欲をさらに沸き立たせてくれるオススメなアイテムを紹介します。

PG Music Band-in-a-Box

▲ Band-in-a-boxはスタイルなどのコンテンツ数によって3タイトルをラインナップ。さらにWindows版とMac版がある

 好きなジャンルやテンポなどを選択するだけで自動的に楽曲を生成してくれるソフトウェアです。また、メロディからコードを抽出したり、既存の曲からコード進行を抽出できるので、曲のアレンジが簡単にできてしまいます。ただ、生成された楽曲をそのままリミックス作品としてしまうのではなく、リミックスのアイデアを練るツールとして考えれば大いに利用する価値ありです! [この商品をデジマートで探す]

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▲ Band-in-a-boxで既存の曲のコード進行を抽出してコピー曲を作る方法

KORG nanoKEY Studio

▲ KORG nanoKEY Studio。タッチ・パッドとトリガー・パッドは指定したキー/スケールで演奏が可能

 Bluetooth MIDIに対応したモバイルMIDIコントローラーです。真ん中のタッチ・パッドは、指でなぞるだけで選ばれたスケールでメロディを奏でることができます。さらにトリガー・パッドはドラムの演奏だけでなく、選ばれたスケールからオススメなコードを自動アサインするという便利な機能が搭載されています。またiOSアプリでも使用できるため、持っておくと何かと便利なコントローラーです。 [この商品をデジマートで探す]

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Pioneer DJ RMX-1000 Plug-In

▲ Pioneer RMX-1000に付属するプラグインは楽曲制作に大いに活用できる!

 DJパフォーマンスに便利なハードウェア・エフェクターです。リバーブやディレイなどの基本的なエフェクトだけでなく、再生するレコードの回転を落とした時に得られる効果音(バイナル・ブレーキ)やピッチを変えながらのロール、サンプラーなど、リミックスに最適なエフェクトを豊富に搭載しています。

 しかも驚くことにRMX-1000と同じ機能を持つプラグイン・エフェクトRMX-1000 Plugが付属されています。DAW上の各トラックにインサートしてRMX-1000が使えるのってすごくないですか? この時、ハード本体はプラグインの専用コントローラーとして動作します。コントローラーの動きはDAWにMIDIデータとして記録されますので後から修正可能です。 [この商品をデジマートで探す]

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▲ Ableton LiveのPioneer RMX-1000 Plug-in使ったデモンストレーション

まとめ

 リミックスは原曲を元にして制作するということが前提です。いろいろな考え方があると思いますが、リミックスで一番大切なのは「原曲に対する愛情やリスペクト」だと思います。このような気持ちは、完成した作品を通して必ず聴き手に伝わるでしょう。

 「Get Wild」リミックス・コンテストの応募締切まで2ヶ月を切りました。是非みんなをあっと言わせるリミックスを作ってみてください! “Get chance and luck!”

 → “あなたの「Get Wild」”リミックス・コンテスト特設サイトはこちら

 それでは今回はこの辺で(^ー^)ノ 

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プロフィール

いっちー
元楽器販売店。楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。学生のころから作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。得意ジャンルはクラブ・ミュージック

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