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- 2024/03/22
BLACK WING / BLACK HAWK 30 Combo
Bad Catアンプの創設者、ジェイムス・ハイドリッヒ氏が新たに立ち上げたBLACK WINGブランドのアンプ、BLACK HAWK 30 Comboをご紹介しよう。
2015年のNAMM SHOWでお披露目されたBLACK WINGアンプは、MatchlessやBad Catの流れを汲んだアンプと言えるだろう。外見はまさにハイエンド・ブティック系アンプらしい雰囲気を持つが、サウンドの傾向はちょっと違った印象だ。EF86と12AX7のチューブ切り替え機能や、パッシブ/アクティブ2系統のEQなど、そのコントロール関係は実にマニアック。多彩なサウンド・バリエーションはぜひ動画でチェックしてみてほしい。
基本的にはシングル・チャンネルのフルチューブ・アンプで、まるでハイエンド・オーディオ機器を組み上げるようなパーツで構築されている。BLACK WING社では絶え間なく最高品質のコンポーネントを世界中から集め、アンプの組み立てが始まる前にそれらの部品がBLACK WINGブランドのアンプにふさわしいか否かを確認するために、厳しいテストを行なうと言う。
そうしたBLACK WINGアンプの哲学は、航空機に採用されるほど堅牢なスチール・シャーシに納められ、すべてのパーツは職人の手でハンダ付けされている。しかも各々のワイヤー・リードは手作業でハンダ・ポストにひとつずつ巻き付けられ、ハンダを使わずとも回路が成り立つほど。これはハンダを「のり」の様に接着に使用せず、あくまで各部品を固定するためだけに使用することで、オーディオ信号のコンダクタンス(回路における電流の流れやすさ)を最大限に活かすデザインだ。ミリタリー・スペック(軍規格)とも言えるこの手法はハイエンド/カスタムビルド・アンプでは多く採用されており、良いトーンを得るための「実音」をどれだけ回路内でキープできるか? という面で大きな意味を持つ。
また、サーキット・レイアウトは不要な信号の回り込みとオーディオ・ハム(ノイズ)をキャンセル(または発生させない様に)することを最重要視している。これによりクリーン・トーンは本当に混じりっけのない美しさだ。クリアでありながら「冷たい印象」はなく、ギタリストが求める真空管アンプならではのウォームで深みのあるサウンドを身上としている。他にもケーブル類にはテフロン・スリーブを、真空管にはスプリング・シールドを採用し、熱を均一に散逸させながら、回路をフィールド干渉から保護する様なデザインを盛り込む等、とにかくマスプロダクツの製品にはないこだわりを随所に見ることができる。
サウンドの傾向はブリティッシュ・アンプのテイストをアメリカ人の「耳」でチューニングした印象。オールドVOXのテイストを極限まで磨き上げた様なスタイルと言えるだろう。パッシブ/アクティブ2系統の特徴的なEQコントロールも、多くのミュージシャンとのディスカッションから生まれたものだと推測できる使い勝手の良さがある。
また、専用設計の英国セレッション製スピーカーを装備したキャビネットも独自のデザイン。とにかく、音の広がり方が特徴的で、アンプ後方からの鳴りがすごい。壁の手前に置いても良いかもしれないし、ステージでアンプの後ろにスペースがある場合は全く違った表情を見せるかもしれない。動画でも触れているが、このサウンドは個性的で非常に興味深いものだった。今回はテストできなかったのだが、アンプの後ろにマイクを立てて、フロント・マイクとミックスすると、さらに良いトーンが得られることだろう。スピーカーの存在感もさすがで、セレッションならではのスピード感とミドルの質感が心地良い。
ハンドメイド製品ならではのカスタム感を存分に味わってほしいアンプ。誰にでもお勧めできるアンプ、というよりは作り手のマニアックな意向も含めて、その面白さを理解できる人たちにぜひ弾いてほしいアンプだと感じた。このデジタル全盛のご時世に、「どアナログ」を突き詰めたマニア・ライクなモノ作りは賞賛に値するだろう。
価格:¥500,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:Crews Maniac Sound / Bottom’s Up 2017