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BIG MUFF Triangle V1〜爆音ファズの始祖

Electro-Harmonix / BIG MUFF〜Triangle V1 1st & 2nd

ゲルマニウム・ファズの源流を聴いていただいた第3回「FUZZ FACE」。ロック黎明期のギター・サウンドに欠かせないイクイップメントであるファズですが、現在でも多くのギタリストに愛用されるファズと言えばBIG MUFFをおいて他にないでしょう。50年近く前に産声を上げ、数え切れないモデル・チェンジ、仕様変更を経て生き続けているファズ/ディストーションの名機です。今回は「V1/トライアングル・マフ」と呼ばれる最初期モデルを2バージョン取り上げてみます。

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現在も愛用者が絶えないファズ・ペタルの代名詞
BIG MUFF〜ビッグマフ

 ファズを愛するディーパーズにとっては無視できないペダル。そのひとつがBIG MUFF(ビッグマフ)であることは間違いないでしょう。BIG MUFFと言えば、エフェクター業界の異端児、Electro-Harmonix(エレクトロ・ハーモニックス)を代表するペダルであり、ファズの代名詞でもあります。その歪み具合とサウンドは唯一無二で、60年代後半に生まれたファズ・ペダルの中でも特異な存在として長きに渡り愛用者は絶えません。また、他のペダルとは比較にならないほどのマイナー・チェンジを繰り返し、多くのバリエーションを生み出してきた生い立ちも見逃せません。そんなBIG MUFFのヒストリーに関しては多くの文献やサイトがあるのでそちらを参照していただくとして(なぜならとても深い愛情と見識で歴史を紐解いている皆さんがいらっしゃるからです)、この連載では主にサウンドに注目していきたいと思います。

蛇の目基板のBIG MUFF最初期モデル
トライアングル・マフ V1 FIRST

Electro-Harmonix / BIG MUFF〜Triangle V1 First(1969年)

 今回ご紹介するのは「V1」と呼ばれるBIG MUFF、通称「トライアングル・マフ」と呼ばれる個体です。名前の由来はこのツマミの配列にあります。VOLUME/TONE(FUZZ)/GAIN(SUSTAIN)が三角形に配されていることからトライアングルと呼ばれ、V1はそのままVersion 1を意味します。このV1マフは90年頃はあまり市場で見かけませんでしたが、現在では多くの個体を確認することができるでしょう。一般的なBIG MUFFに比べると一回り小さなオール・シルバーの筐体がえも言われぬ雰囲気を醸し出しています。多くの個体が確認できると言いながらも、実はこのBIG MUFF V1には2つの異なるモデルが存在する事を知る方はそれほど多くないでしょう。

 V1マフには正面左のスライド・スイッチがない「V1 FIRST」と呼ばれるモデルが存在します。通称パーフボード(蛇の目基板)モデルと呼ばれるこのV1マフこそが「一番最初」のBIG MUFFなのです。このモデルはエレクトロ・ハーモニックスがメールオーダーで製品を販売していた時代に登場。当時の宣伝文句は「あなたのギター・サウンドにさらなるサステインを与え、ハミングバードのように歌うことができるプロフェショナル・リード・ギタリストのためのペダル」とあります。このペダルはメールオーダー注文時に完成品を購入するか、もしくはパーツが揃った「組み立てキット」を購入するかが選べました。もちろん、ほとんどの購入者は完成品を購入したでしょうが、中には少しでも安くこの強力なディストーションを手に入れたいと考えた人もいた事でしょう。もしかしたら現存するV1 FIRSTの中には、どこかのギタリストが組み立てたモデルが含まれているのかもしれませんね。V1 SECONDは目にする機会が多い基板実装タイプで、これはもちろんニューヨークの工房で配線されて出荷されていたものです。

V1 FIRSTの内部。金属プレートを折り曲げた簡素なシャーシと蛇の目基板が確認できる。

蛇の目基板のアップ。ラフな組み込み/配線がいかにも最初期モデルらしい。

「JAPAN」の刻印が入ったパーツも見える。

 V1 FIRSTはかなりラフな組み込み/配線で仕上げられており、そのサウンドもかなりワイルドです。最も「ファズ」らしいBIG MUFFと言えるのではないでしょうか。V1 SECONDはFIRSTに比べると随分と音質/動作が安定し、いわゆるディストーション・ライクな歪みが確認できます。サステインの伸びも圧倒的にSECONDの方があると言えるでしょう。

 1970年代当時のファズ・ペダルの多くはトーンを回路を持ちませんでしたが、BIG MUFFはかなり極端に音色を可変できるトーン回路を備えています。BIG MUFFの前身であるFOXY LADYファズ(GUILD社へのOEM)はトーン回路がなく、BIG MUFFとなってから搭載されたと考えると、1968年に登場したTONE BENDER MKIII(ROTOSOUNDやPARK FUZZSOUND、CARLSBRO FUZZも同じく)を意識した仕様だったと言えるかもしれません。TREBLE側に回すとローカット、BASS側に回すとハイカットされ、出力やゲイン感も可変してしまう厄介なパッシブ・トーンですが、このトーンもBIG MUFFサウンドにおいてはとても重要な役割を持っています。

基板実装モデルとなった
トライアングル・マフ V1 SECOND

Electro-Harmonix / BIG MUFF〜Triangle V1 Second(1970年)

 BIG MUFFはその歴史において様々な仕様変更を繰り返します……いや、モデルが同一であっても異なる仕様が存在すると言った方が良いでしょうか。同じV1 SECONDでも、全く同じスペックの個体を探すのは難しいかもしれないほどです。そういった意味ではV1 FIRSTは個体が変わってもほぼ同じスペックだと言えるでしょう。実際に確認したわけではありませんが、私の知る限り3台は同じトランジスタ、コンデンサーや抵抗類のスペックを持っていました。基本となるのは4個の2N5133トランジスタと3種類のコンデンサーです。

 V1 SECONDは異なる個体でも抵抗パーツはほぼ同じですが、トランジスタとコンデンサーが異なるモデルが存在します。V2 SECONDの初期型には、V1 FIRSTと同じく2N5133が搭載されていました。後期モデルではFS36999というトランジスタが多くマウントされています。このトランジスタが生むサウンドの違いは微妙なのですが、明らかに違います。2Nがささくれたファズ・サウンドだとすれば、FSは滑らかなディストーション・サウンドを生み出します。また、稀にFS37000というトランジスタを搭載した個体も存在します。私も入手したことがありますが、FS36999のサウンドと大きな違いは感じられませんでした。コンデンサーに関しては多くのモデルがセラミック・タイプを搭載していますが、稀にアルミ・タイプやマイラ・タイプが搭載されている個体もあります。もしかすると修理等で交換されている場合もありますが、ファクトリー組み込みの場合もあります。もちろん、音色に違いがありますが、弾き比べずにその音色の違いを語るのは止めておきましょう。

シンプルなシャーシは変わらないが、基板が大きく変更されている。

サイドから基板を見る。ON/OFFスイッチ、ポットなども確認できる。

基板の上面。各種抵抗は整然と配置され、ポットは樹脂性のD型シャフトだ。

 動画ではV1 FIRST、SECONDのサウンドをチェックしています。テキストと合わせてその違いをチェックしてみてください。V1の段階でこの違いが生じるとなると、次のV2との音の違いも気になるところです。次にBIG MUFFをご紹介する際にはV2モデル、すなわち「RAMS HEAD」のサウンドと、BIG MUFFのさらなる使いこなし術をご紹介したいと思います。お楽しみに。

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Electro-Harmonix / BIG MUFF(Triangle)

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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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