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斎藤誠が弾く! 2017年マーティン・アメリカーナ16シリーズ&CSスタイル17

Martin / D-16E、DC-16E、OMC-16E、CS-CFMartinOutlaw-17

  • 制作:デジマート・マガジン 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:大屋努

好評連載MARTIN TIMES。今回は連載第10回に続き、ウィンターNAMMで発表された2017年モデルを4本ご紹介しましょう。薄めのボディで斎藤氏が「弾きやすい!」と絶賛したドレッドノート、D-16EとDC-16E、チェリー材をサイド&バックに用いたOMC-16E、マーティンの最上位シリーズである“オーセンティック”の仕様とモダンなスペックをミックスしたCS-CFMartinOutlaw-17。エレアコとしても使える汎用性の高い16、カスタムショップならではのハイ・グレードな17、いずれもマーティンらしさがたっぷりと詰まったモデルの魅力を、斎藤氏の試奏とトークでご確認ください!

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斎藤誠が弾く! 2017年マーティン・アメリカーナ16シリーズ&CSスタイル17
D-16E、DC-16E、OMC-16E、CS-CFMartinOutlaw-17

Special Talk Session
斎藤誠が語る! 2017年アメリカーナ16シリーズ&CSスタイル17の魅力

2017年マーティン・アメリカーナ16シリーズ&CSスタイル17

 今回ご紹介するのは、マーティンの定番であるドレッドノートとOMに、多少の“ひねり”を加えたユニークなモデルである。まず、“アメリカーナ16シリーズ”と呼ばれるD-16E、DC-16EおよびOMC-16Eの3本は、今年1月にアメリカのアナハイムで開催されたNAMM SHOWで発表されたエレクトリック・アコースティックである。これらのモデルの最大の特徴は、ボディにマホガニーやローズウッドといった定番の木材ではなく、ドレッドノートの2本にはシカモア、OMにはチェリーという、マーティンとしては珍しい材を使っている点にある。さらには、ライブでの使用を意識したエレクトリック・アコースティックということもあり、ステージ映えするような、ちょっと意外な工夫が施されている点も見逃せない。

 一方カスタム・ショップ製のCS-OUTLAW-17は、全世界で100本の限定生産となる。スタイル17というと、昨年10月公開のMartin Timesでご紹介した、1920~30年代のアメリカで流行した音楽に使われていたギターを彷彿とさせるモデルが記憶に新しいが、このカスタム・ショップ製スタイル17ドレッドノートは、それとはまったく異なるコンセプトのギターである。どうやら現行の“スタイル17”は、マホガニー・ボディという共通項を持ちながら、定番モデルとはかなり異なる仕様の個性的なモデルのためのカテゴリーのようだ。

 マーティンは“アメリカを代表するアコースティック・ギターの老舗”だということは言うまでもないが、老舗というものはただ伝統を守るだけで長い歴史を築いてきたのではない。今では定番とされるドレッドノートも、もともとは常識破りの大型ボディを持つギターとして登場し、OMもそれまでよりも長い、14フレット・ジョイントのネックを初めて採用したモデルだった。近年のマーティンはアグレッシブな新製品を続々と送り出しているが、それは“老舗”としてのプライドの現れでもあるのだ。

Americana 16 Series
D-16E

Martin / D-16E


Martin / D-16E(Back)

ペグはパタービーン・ノブのオープン・タイプだが、サテン・パールのシャーラー製を採用

Fishman社製Matrix VT Enhanceピックアップ・システムのエンハンス・コントロール

9Vバッテリーは、エンドピンと出力端子の間にすっきりと収納できる

 一見すると普通のドレッドノートだが、ボディ厚が通常の4 7/8インチ(約12.4cm)ではなく、000やOMと同じ4 1/8インチ(約10.5cm)と薄めになっている。わずか2cm程度の違いだが楽器が格段に抱えやすくなっており、特にライブで立奏する場合にその効果が実感できるだろう。また、ボディにシカモア材を採用しているのも、もうひとつの大きな特徴だ。マーティンは以前に特別モデルとしてシカモア材を使用したD-18を作ったことがあり、その際にこの材とドレッドノート・ボディとの相性の良さに気付いたという。なお、アメリカーナ16シリーズ全機種には、Fishman社製Matrix VT Enhanceが搭載されている。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:シカモア ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX ●価格:350,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 この薄型ボディは画期的ですね。OMを持つ感覚とほとんど同じで、ちょっとだけ肘が上がる程度です。薄型だけれど音はふくよかなので、それを生かすためにストロークの曲を選びました。僕はいつも実践的なことを考えてしまうんですが、普通のドレッドノートはボディが厚くて、ストラップで下げた状態からほかのギターに持ち替える時、ハーモニカのホルダーやイヤモニにぶつかりやすいんですよ。でも、ボディが薄いと体へのフィット感が良くて弾きやすいし、持ち替えの時にも気を遣わなくて済みそう。それでいて、見た目には普通のドレッドノートと比べて違和感がない。弾きやすくて見た目が同じなら、ライブには絶対にこのギターの方がいいですね。

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Americana 16 Series
DC-16E

Martin / DC-16E


Martin / DC-16E(Back)

エボニーの漆黒のヘッドプレートとシルバーのマーティン・ロゴが精悍なイメージを醸し出す

メイプルに似た色白のシカモア材をダーク・マホガニーと呼ばれる色で仕上げたボディ

アメリカーナ16シリーズの特徴であるシルバーのバインディングとヒールキャップ

 D-16Eと同様、000と同じボディ厚を採用したドレッドノートで、こちらはカッタウェイ付きとなっている。ボディ材もシカモアで、D-16Eもそうだが、メイプルに似た白木の材をマホガニーに近い“ダーク・マホガニー”と呼ばれる色に仕上げてある。また、これもアメリカーナ16シリーズ共通の特徴だが、ボディとネックに銀色のバインディングを施している。マーティンでは以前にバインディングにアルミニウムを使用したギターを作ったことがあったが、加工が非常に難しかったという。そこで今回は、アルミニウムに似た雰囲気を持つアクリル素材を採用。ステージで照明を浴びると、ギターのアウトラインが引き立つだろう。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:シカモア ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX ●価格:380,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 個人的に、ドレッドノートのカッタウェイってすごく“アメリカ人っぽい感じ”があるんですよ(笑)。日本人でこういうギターを持っている人って、あまり見たことないもんなあ。それはともかく、カッタウェイ付きのこちらのギターでは6/8拍子のアルペジオの曲を弾きました。中音域もしっかり詰まった音ですが、カッタウェイなしのモデルに比べて高音が出るような感じがして、指で弾くアルペジオがシャリッと聴こえると思ったので。ただ、“ピックで弾いてくれよ~”と言う人がいるかもしれないということで(笑)、最後のジャラーン一発だけピックを使いました。ボディが薄いとライブで大きな音を出した時にハウリングしにくいかもしれませんね。

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Americana 16 Series
OMC-16E

Martin / OMC-16E


Martin / OMC-16E(Back)



ブリッジ・ピンのシルバー・ドットは、通常より大きなサイズになっている

派手さはないが見飽きないチェリーの杢目とシルバーのバインディングの対比がおもしろい

Matrix VTのボリュームとトーンのコントロール部は低音弦側にある

 カッタウェイ付きのOMで、ボディにはマーティン本社もあるペンシルバニア州の森で採れたチェリー材を使用している。チェリー材も以前に森林保護を謳うスマートウッドとして使用したことがあり、小さなボディとの組み合わせで温かみのあるトーンが得られるという。ネックのグリップ形状にハイ・パフォーマンス・テーパーが採用されているのもシリーズ全機種の特徴で、トラディショナルなものからモダンなものまで幅広い奏法に対応しているのも、このシリーズのエレクトリック・アコースティック・モデルが新世代のパフォーマーを強く意識したものであることがわかる。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:チェリー ●ネック:セレクト・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:380,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 例によって僕はドレッドノートよりも000やOMに慣れているので、今回試奏した16シリーズの中で個人的に一番弾きやすかったのがこのOMCでした。デモはストロークを中心にした曲で、5弦開放のAをペダルにして上の構成音が変わっていくようになっていますが、慣れているせいもあって強弱も付けやすかったです。チェリー材のボディというのも、僕は十数年前にこの材のOMをエレアコにして使っていたので親近感がありました。マホガニーに近いけれども、ガリッという感じがなくて粘りのある音という印象ですね。あと、バインディングの銀色をパッと見た時のまぶしい感じが自分を奮い立たせてくれます。野外のライブで使ってみたいですね。

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Limited Editions
CS-CFMartinOutlaw-17

Martin / CS-CFMartinOutlaw-17


Martin / CS-CFMartinOutlaw-17(Back)



マホガニーのボディにスタイル28のバインディングという、異例の仕様がおもしろい

ハカランダのヘッド・プレートにWavery製オープン・タイプ・ペグという豪華な組み合わせ

トップはVTSアディロンダック・スプルース。ヘリンボーンのパーフリングにもご注目

 今回ご紹介する中で最もトラッドなルックスを持ちながら、最も異彩を放つのが本器だと言えるかもしれない。ボディ材にはマーティン社で言うところのジェニュイン・マホガニー、接着には動物性のニカワを使用するといった同社の最上位シリーズである“オーセンティック”の仕様を受け継ぎながらも、ハイ・パフォーマンス・テーパーのネックやドロップイン・サドルを採用するなど、ビンテージではなくモダンなマーティンの機能を持っている。この破格な仕様の組み合わせが“アウトロー”の由来というわけだ。なお、トップ材にはVTS(ヴィンテージ・トーン・システム)加工を施したアディロンダック・スプルースを使用している。
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【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース VTS ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX ●価格:960,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 このギターでは“一番繊細な部分”と“ガツガツ弾く部分”の両方を聴いてもらおうと思ったので、指弾きから始まって、途中でストロークになって、また指弾きに戻るという曲を選びました。このギターのキャラがよくわかってもらえたと思います。作りもとてもしっかりしているし、普通のD-18よりもグッとゴージャスな感じが味わえるんじゃないでしょうか。僕がよく言うマホガニーの“イナタい”感じは、前回のスタンダードなD-18のほうがはっきり出ていて、そういうのが好きな人にとっては物足りないかもっていうぐらい(笑)、ゴージャスでバランスの良い音でした。弾くのがややこしい曲を選んだのも、このギターがとても弾きやすいからです。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 今回試奏した中で17は別格という感じですが、個人的には16シリーズの3本がライブで使うという観点でも、ルックス的な意味でも興味を惹かれました。17はヘッドプレートがハカランダだったり、ルックスがスタイル28だったりして、マーティンの人もほかとは違う、おもしろいものを作ったという実感があったでしょうね。とても立派なギターです。16シリーズはどれもエレアコですが、生音が思ったほど小さくないのはスキャロップト・ブレイシングの効果もあるんでしょうか。1弦から6弦までの出力はどのギターもバランスがよく取れていましたね。バインディングが銀色ですが、これまでのギターから何かを変えると言った時に、このぐらい変えるのは良いと思います。限度内だと思うし。サテン・パールのシャーラーのペグもバインディングに合っていてカワイイですね。何度も言っているように僕はドレッドノート恐怖症ですが、以前にD-28を借りて品川教会でライブをやった時の写真は大好きなんですよ(笑)。ドレッドノートを弾く人は、ギターの細かいことは気にせず歌に専念している感じがしていて、そうなりたい自分があるわけ。その点、薄型ボディのドレッドノートは、僕の恐怖症を解消してくれそうな気がします。それにしても、今回はブラックスモークの000が出た時と同じぐらいおもしろかったです。マーティンも新しいことをいろいろとやろうとしているのが伝わってきました。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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