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  • リズム&ドラム・マガジン2017年9月号連動 Pearl Masterworks特集

Pearl Masterworks “Sonic Select Shell Recipes” feat. 小笠原拓海

Pearl/Masterworks “Sonic Select Shell Recipes”

シェルの材質、プライ数、パーツ、カラーなど、あらゆるオーダーが可能なパールが提唱する究極のカスタム・ドラム=Masterworks。膨大な選択肢を誇る同シリーズのメーカー側からの回答として、これまでに“Reference”、“Reference PURE”というパールを代表するモデルが誕生してきたが、今回、新たな指針となる “Sonic Select Shell Recipes”が登場。パールでは初となる素材ガムウッドに、新形状のベアリング・エッジ2種類を加え、現代の音楽スタイルに合わせた5種類の個性溢れる音像を提示している。リズム&ドラム・マガジン2017年9月号では、若手No.1の呼び声も高い小笠原拓海とライターの長野祐亮を試奏者に迎えたレビューを紹介しているが、ここでは本誌と連動し、特集の一部を抜粋。新たに登場したパール“最高峰”の魅力を掘り下げていこう。

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Pearl STUDIO

 古き良き時代のミュージック・シーンを意識したレシピで、当時のビッグ・バンドやジャズ、ロックのサウンドをイメージしています。シェルは、1plyの厚さが0.9mmという薄めの木材のみを重ね合わせた、等厚6plyという仕様。外側にメイプルの4ply、サウンドに大きな影響を与える内側にはガムウッドを2plyという組み合わせになっています。ベアリング・エッジはアウター60°。ハードウェアにはマスターキャスト・フープとクラシック・ラグを採用。アメリカン・ヴィンテージ・ドラムのスペックを、パール風に現代に蘇らせたレシピで、その名の通り、スタジオでの録音にも扱いやすい特性になっています。

14"×5.5"SD(MWA1455S/¥110,000)

 シェルの内側のガムウッドは、濃淡が入り混じったまだら模様が特徴的。レインフォースメントを装備しないシェルは見た目にも薄さを実感できる。クラシック・ラグとマスターキャスト・フープの組み合わせもヴィンテージ感を演出している

Size】●22"×18"BD(MWA2218B/¥247,000) ●12"×9"TT(MWA1209T/¥105,000) ●16"×14"FT(MWA1614F/¥158,000)
Color】● STAIN SEE-THRU DEEP RED OVER TAMO
Specifications】●Shell:6ply(5.4mm)=Outer:Maple 4ply +Inner : Gumwood 2ply ●Edge:Outer 60° ●Hardware:Mastercast Hoops、Classic Lugs

Pearl HERITAGE

 粘り気のあるグルーヴに重点を置くさまざまな音楽に対応するレシピで、ファンク、ハード・ロック、ブルースなどをイメージしています。シェルは1.6㎜と0.9㎜の木材を交互に重ね合わせたパールのレギュラー・タイプの4ply。外側にメイプル2ply、内側にアフリカン・マホガニー2plyという組み合わせに加えて、4plyのメイプル・レインフォースメントを装備しています。パールの過去のラインナップであるMHXシリーズをアレンジしたレシピで、バランスの良い低域とアタックを両立。ベアリング・エッジは基本形のスタンダード45°で、フープは引き締まったサウンドを引き出すファット・トーン・フープを採用。ラグは薄めのシェルとの相性が良い、軽量のSTL シングル・ラグをチョイスして、シェルの“そば鳴り感”を強調しています。

14”×6.5”SD(MW1465S/¥98,000)

 内側の茶色い木肌がアフリカン・マホガニー。メイプルのレインフォースメントとのコントラストも鮮明だ。美しく丁寧にシェイプされたエッジの角度は標準的な45°で、軽量のSLT スモール・ラグというシンプルなルックスも良い

Size】●22"×14"BD(MW2214B/¥214,000) ●12"×8"TT(MW1208T/¥91,000) ●16"×16"FT(MW1616F/¥150,000
Color】●VINTAGE MAHOGANY BURST OVER MAPLE
Specifications】●Shell:4ply(5mm)=Outer:Maple 2ply+Inner:African Mahogany 2ply with Reinforcement:Maple 4ply(5mm) ●Edge:Standard 45° ●Hardware:FatTone Hoops、Swivel Small Lugs

Pearl URBAN

 超低域に溢れる音楽にも埋もれないサウンドを目指したレシピで、ヒップホップやR&Bなどのサウンドをイメージしています。シェルは、1プライの厚さが0.9mmの薄めの木材のみを重ね合わせた等厚6plyシェル。外側にバーチ2ply、中心にガム・ウッド2ply、内側にバーチ2plyという組み合わせに加えて、レギュラー・タイプの木材を重ねた4plyメイプルのレインフォースメントを装備してアタック感を強調。Reference PURE シリーズを現代風にアレンジしたレシピで、ベアリング・エッジはタム、フロア・タムがラウンド45°、バス・ドラムはフル・ラウンド、スネア・ドラムはスタンダード45°をそれぞれ採用。フープはスタンダードなスーパー・フープⅡ、ラグは軽量化されたSTLラグとなっています。

14"×5"SD(MWC1450S/¥105,000)

 バーチとメイプルの白い木肌が美しいシェルの内側。ラウンド45°のエッジは、手で触ると確かに丸みを感じるが、見た目では判別ができないほど繊細なレベル。精悍さを醸し出すブラック・ニッケル仕上げのハードウエアもポイントだ

Size】●20"×16"BD(MWA2216B/¥222,000) ●12"×8"TT(MWC1208T/¥100,000) ●16"×14"FT(MWC1614F/¥150,000)
Color】●BLACK SPARKLE with SLVER AND GOLD HALOFLAKES
Specifications】●Shell :6ply(5.4mm)=Outer:Birch 2ply+Middle:Gumwood 2ply+Inner:Birch 2ply with Reinforcement:Maple 4ply(5mm) ●Edge:Rounded 45°(BD:Fully Rounded)/SD:Standard 45° ●Hardware:Super HoopsⅡ、Swivel Tube Lugs

Pearl STADIUM

 “天頂の共鳴装置”というキャッチ・フレーズから想像できるとおり、図太くパワフルなサウンドを目指したレシピで、音圧の高いラウド・ロックやヘヴィ・メタルのサウンドをイメージしています。シェルは1.6㎜と0.9㎜の木材を交互に重ね合わせたレギュラー・タイプのオール・メイプル。タムとスネア・ドラムは8ply、フロア・タムとバス・ドラムは10plyという構成になっています。分厚いメイプル・シェルとスーパー・フープⅡ(スネア・ドラムはマスターキャスト・フープ)のコンビネーションで、80年代の傑作と言われたZenithal Resonator(Z)シリーズを蘇らせることに成功。ベアリング・エッジは当時、“外エッジ”と呼ばれた外側に頂点がある形状に近いアウター60°を採用。ラグも敢えて重量のあるBRLを用いて当時の仕様に近づけています。

14"×6.5"SD(MWA1465S/¥112,000)

 8plyで構成されたタムは10mmもの分厚さになる(フロアとキックは12.5mm)。アウター60°のエッジの滑らかな角度、そして頂点が一番外側に位置する部分にも注目。重量のあるBRL ラグはタイトな音作りに貢献している

Size】●22"×18"BD(MWA2218B/¥247,000) ●12"×8"TT(MWA1208T/¥105,000) ●16"×16"FT(MWA1616F/¥158,000)
Color】●NATURAL TO LIGHT BROWN BURST OVER CURLY MAPLE
Specifications】●Shell:TT & SD 8ply(10mm)、BD&FT 10ply(12.5mm) ●Edge:Outer 60° ●Hardware:SuperHoopsⅡ、Swivel Bridge Lugs

Pearl MODERN DRY

 ジャンルを限定せずに最新のミュージック・シーンを意識したレシピで、ダンス・ミュージックやポップスのサウンドを幅広くイメージしています。シェルは1.6㎜と0.9㎜の木材を交互に重ね合わせたレギュラー・タイプの4ply。外側にメイプルの2ply、内側にガム・ウッドの2plyという組み合わせに、4plyのアフリカン・マホガニーのレインフォースメントを装備。新規開発したインナー45°のエッジを採用してヘッドの振動を意図的に抑えたサウンドは、従来のパール製ドラムとは一線を画する新たなコンセプトでもあり、生音だけではなくマイクを通したときの音色の良さも重視しています。ハードウェアはマスターキャスト・フープとSTL スモール・ラグを採用。

14"×6"SD(MWA1460S/¥112,000)

 シェルはガムウッドとアフリカン・マホガニーのレインフォースメントという組み合わせ。インナー45°のエッジは手で触れると頂点の違いがわかる。その差は繊細であるが、音色への影響は大。マスター・キャスト・フープ&SLT ラグという仕様が、豊かな胴鳴りと音の締まりを両立

Size】●22"×16"BD(MWA2216B/¥247,000) ●12"×8"TT(MWA1208T/¥105,000) ●16"×16"FT(MWA1616F/¥158,000)
Color】●NATURAL TO WALNUT BURST OVER BUBINGA
Specifications】●Shell:4ply(5mm)=Outer:Maple 2ply/Inner:Gumwood 2ply with 4ply(5mm)African Mahogany Reinforcement Rings ●Edge:Inner 45° ●Hardware:Mastercast Hoops、Swivel Small Lugs

Total Impression

どのキットにも一貫したパールらしさが感じられる

 今回5台を叩いてみて感じたのは、材によって“こんなに音が変わるんだ”ということです。本当にその差が顕著で、頭ではわかっていましたが、実際に試奏してみて驚きでした。この5種類だけでこれだけのさまざまな音色が出るということは、Masterworksの製作オプションの少しの変化だけで、あらゆる種類のドラムが作れるということです。そのくらいすごく変化がありますし、それこそヘッドのチョイスでクリアやコーテッドとかに換えていけば無限大です。今回のラインナップは多分、序章にしか過ぎないくらいのことだと思います。

 実際に試奏してみて、僕自身が持っている楽器と比べた中では、“STUDIO”が一番気になりました。自分の持っているタイコとの差が大きかったんです。逆に“URBAN”は自分の持っているものにわりと近くて、1台持っていると、これだけで十分というくらいの説得力を持っていると思います。とはいえ、それぞれに個性や良さがあって、どれが良いかは、最終的にその人の好みになるかと思います。

 僕が強く感じたのは、一貫したパールらしさがどのキットにもあって、個人的にはパールって比較的明るいサウンドという印象が強いのですが、そういうところはブレていない。パールが得意とする芯のある中低域の成分が、高いチューニングをしても、しっかりと出るので、信頼性が高く、僕はそこに一番気持ち良いところがあるんじゃないかなと思っていて、作り手さんの気持ちというか、そういうのが感じられるからこそ僕もパールを使いたいと思ったわけです。これだけの振り幅のあるドラムが作れるポテンシャルの高さもあらためて痛感させられました。どの機種も共通してすごくチューニング・レンジが広いので、もっと低くして良いものもありますし、カンカンに張って良いものもあると思います。それこそミュートするだけでも面白いですよ。特に分厚いシェルが、低いところも高いところも、どこまでもいけるような……そんな印象でした。面白いですよね。

 個人的には今回それぞれの機種ごとにシリーズ名がついて、各シリーズとしてラインナップされていても、全然おかしくないレベルまでいっていると思います。しかも、だいぶ振れ幅が大きいのに、それぞれがこの完成度、これってよく考えるとすごい“冒険”だと思うんです。この挑戦を僕は支持したいですね。

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 本記事はリットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2017年9月号』の特集記事「close up! 究極のシェルが放つ至高のサウンド Pearl Masterworks “Sonic Select Shell Recipes” feat. 小笠原拓海」の一部を抜粋しています。同記事は小笠原拓海とライターの長野祐亮による“Sonic Select Shell Recipes”各モデルの試奏コメントに加え、Masterworks愛用ドラマーである村石雅行と沼澤 尚のインタビュー&機材写真も掲載。ぜひチェックを!

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製品情報

Pearl / Masterworks “Sonic Select Shell Recipes”

【問い合わせ】
パール楽器製造 TEL:047-450-1090 http://www.pearlgakki.com
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