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- 2024/03/22
LTD / SH-7 EVERTUNE
KOЯNのギタリスト、ブライアン・“ヘッド”・ウェルチのシグネチャー・ギターがESP/LTDから登場する……このニュースは大きな驚きをもってミュージシャンの間を駆けめぐった。それまで別のギター・ブランドからリリースされていたシグネチャー・モデルのイメージがあまりにも強く、ある意味では90年代以降の“7弦ギター・サウンドの定義”を作ってきたとも言えるヘッドが新しく相棒に選んだのはどんなギターなのか? 早速チェックしてみたい。
まずはモデル名にもなっている“EVERTUNEブリッジ”に触れなければならないだろう。このブリッジは特殊な機構を持っており、簡単に言ってしまえば“特定の音域をセットすると、ベンディングをしても音程が変わらない”という特徴を持っている。一度チューニングしてしまえば、チューニングは永遠にズレない、と言っても過言ではないだろう。それだけでなく、特定のピッチを超えないチューニングやビブラートでも音程を動かすことができない。つまりビブラートをかけても音程が変化しないのだ。この特殊な機構は言葉でイメージするのが難しいかもしれない。その本領はぜひ動画で確認してもらいたい。ハードテイル(ノン・トレモロ)仕様でありながら、エア感や金属的な響きがほんの少しだけ加わっており、このギター・サウンドに個性を加えている点も見逃さないでほしい。
このブリッジのおかげでダウン・チューニングでもピッチが適切にキープできるだけでなく、ラフになりがちなライブ時の演奏でも安定したピッチやチューニングを維持できる。このメリットは計り知れないだろう。特にKOЯNのようにテンション・コードを利用したヘヴィ・ミュージックでは威力を発揮する。
ギターの基本スペックはハード・メイプル3ピースのスルー・ネック、指板にはエボニーを採用。ボディのウイングにはバスウッドを採用し、ボディ・トップとヘッド化粧板はフレイム・メイプルをラミネートしている。つまり、基本のサウンドは硬質で音抜けとバランスを重視したモデルだ。生鳴り云々というよりは、芯のある、弾き手のプレイをストレートに増幅する構造。ロー・ポジションからハイ・フレットまでバランスの取れた音の立ち上がりがポイントで、ロー・チューニング/ハイゲインでも存在感がある。
ピックアップはフィッシュマンのアクティブ・モデルを採用。これまでのヘッドのシグネチャー・モデルではDiMarzioのピックアップが定番だったが、ここにきてフィッシュマン、しかもアクティブ・タイプをセレクトしているのが興味深い。ピックアップは同一モデルでありながらフロントにはアルニコ・マグネットを、リアにはセラミック・マグネットを採用している。ピックアップの傾向はロー・インピーダンス/ワイド・レンジというアクティブ・モデルならではの特徴を持ちながら、スイッチングによりアグレッシブで力強いサウンドと、クリスピーでモダンなサウンドを切り替えることが可能。いわゆる単純なコイル・タップとは異なるサウンド・キャラクターを持っているのがおもしろい。
LTDならではの作りの良さも見逃せない。スルー・ネックならではのプレイアビリティ、ヒール部のなめらかさやハード・メイプル・ネックならではの力強いサウンドからポテンシャルの高さを感じることができる。ヘヴィなサウンドはもちろんだが、シングル・ノートやソロ・プレイでも存在を発揮する“ミュージシャン・モデル”ならではの完成度はさすがという感じだ。KOЯN/ヘッドのファンはもちろんだが、ヘヴィなダウン・チューニング・サウンドやアグレッシブなプレイで7弦ギターを楽しみたい皆さんには、ぜひオススメしたいギターだ。
価格:¥210,000 (税込)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
坂本学(さかもと・まなぶ)
1985年、兵庫県出身。13歳からギターを始める。HR/HMにのめり込み、シュラプネル系ギタリストを聴き漁り独学で演奏技術を鍛錬。16歳と17歳の時に某音楽誌上コンテストにて優秀賞受賞。高校卒業後、MI JAPAN大阪校GIT科に入学。MI JAPAN主催によるギター・コンテストGIT MASTERSにて2004年と2007年の二度、優秀賞受賞。卒業後、フリーのギタリストとして歌手伴奏やプロジェクト・サポート等のセッション活動を行なう中で、とりわけJazzの精神性に惹かれ傾倒。その時期から構想していた“構築された楽曲の中にあって、より即興性に富んだ演奏思考”というコンセプトのもと製作した自身初のフル・アルバム『Fuse your Novel』を2015年に発表。また自身の創作活動に加え、嘉陽暁子とのデュオValjetavとしても活動中。
【使用機材】
使用アンプ:Marshall / JVM210H
使用キャビネット:Marshall / 1960A
使用ペダル:T-Rex / SOULMATE