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  • デジマート地下実験室〜地下43階

ネックの太さでギターの音はどう変わるのか?

〜ギター・ネック削り実験〜

  • 制作:デジマート・マガジン 試奏・文:井戸沼尚也(室長) 動画撮影・編集・録音:川村健司 協力:水島亮二(ESPギタークラフト・アカデミー講師) 英語字幕翻訳:久保田祐子

「ネックが太いと、音も太いらしいよ」
「うんうん、よく言うよね」
「でもさぁ、単純にネックの太さが違うギターを弾き比べても、違う個体じゃ意味ないよね?」
「じゃ、1本のギターのネックを削っていかないとダメってこと? そんなの無理じゃん」
というわけで、試してみました。

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ネック削り実験・試奏編

試奏編

ネック削り実験・対談編

対談編

【実験テーマ】ネックの太さ(厚さ)でギターの音はどう変わるのか?

 今回のお題は、ネックの太さ(厚さ)です(※)。

 今まで、数々の取材や打ち合わせの中で「ギターの音はネックが重要」、「太いネックは音が太い」といった話をさんざん聞いてきました。自分自身も、確かに太いネックのギターを弾いてみたら太い音がしたという経験はありますが、それがたまたまそういう音がする個体なのか、太ネックの影響なのかは、ちょっとよくわからないなぁと思っていました。

 「太ネックを削ってみたいんですよね」
デジマート編集部I氏 「室長が、自分で、ですか?」
 「削れないかなぁ。削れないよね(これは「削れますよ」と励まして欲しいっつーサインですよー)」
I氏 「(メンドクセーな)削れないでしょうね」
 「(一刀両断かよ)ですよねー」
I氏 「そういうことは、しかるべき方々に相談するのが良いでしょう」

 というわけで、心の中でジャブを打ち合い、やってきました東京・御茶ノ水のESPギタークラフト・アカデミー東京校さん(以下、GCA)。高山昌宣先生、水島亮二先生にネック削りの相談です。おずおずと、私が所有するテスコのギターを差し出し、これのネックを削ってみたいと言うと、両先生は破顔一笑。

高山先生 「これはこれで面白いギターですし、止めておいたほうがいいですよ。削るのは、専用工具をお貸しすれば室長でもできると思いますが、それなりに大変だと思います」
水島先生 「それより、室長が地下実験室で使っているストラトキャスターに合うような極太ネックをこちらで作ります。室長が音をチェックしたら、こちらで少し削りますから、またチェックしてください。それを繰り返せば、音の違いを検証できますよね」

 ええっ!? いいんスか、そんな楽チン……もとい、ありがたいお話っ!!! 両先生の気が変わらないうちに光の速さで頷いて、打ち合わせ終了です。それでは、ギター・ネック削り実験、始めるよー!!

※実験テーマについて
 今回の実験は「ネックの太さでギターの音は変わるのか」と題していますが、実際にはネックの「厚さ」を変えて検証を進めました。理由はいくつかありまして、1つは、左手は厚みを含めて太いグリップ感を認識するため、この表記も間違いではないだろうという解釈です。俗に言う丸太ネックも、一部のビンテージを除いてナット幅は普通というものも多いです。もう1つはもしナット幅(ネック幅)も削るとすると、幅に合わせた新たなナットの作成やナットの溝の切り、フレットの打ち直し等の作業が発生し、サウンドの変化を促すファクターが増えてしまうので、それを嫌いました。ご了承いただければ幸いです。

実験環境

■使用機材
フェンダージャパン・ストラトキャスター ST62-500 ローズ指板(ギター/ネック以外)
フェンダー 68 Custom Deluxe Reverb(アンプ)
ヴェムラム・ジャンレイ(オーバードライブ/クランチトーン用)
ベルデン9778(ケーブル)
フェンダー・ティアドロップ・ミディアム(ピック)
アーニーボール レギュラースリンキー(弦)
◎GCA特製ネック

※セッティングについて
■クリーン・トーン時のアンプのセッティング、クランチのオーバードライブとアンプのセッティングなど、ネック差し替え以外、セッティングは全て同じです。
■試奏では、クリーンではストラトのセンターのみ、クランチではリア、リア+センターのハーフトーン、フロントの3種類を使っています。
■今回は手弾きでの実験となります。
■本企画では動画再生の際、ヘッドフォンでの視聴を推奨しております。

実験1 角材ネック 1F:26mm 12F:26mm(削り無し)

実験1

 私も長いこと、いろいろなギターを弾いてきましたが、こんなの初めてです。そして、もう二度と弾くことはないでしょう。太いを通り越して、まだトラスロッドが入っているだけの角材じゃないですか! 普通はこの状態からネック裏を削っていくわけですが、角を軽く面取りしただけで、一切削っていません。厚みが26mmもあります。なんだかラップスチール・ギターみたいですよ。じゃ、一応弾いてみますね。

 うおー、この音! なんじゃこりゃ!! 全部のレンジがズゴーンと出てきますよ! これは、すごい!!!

 ちなみに、弾きやすさですが、角材とはいえ水島先生が入魂のセッティングをしてくれていますので、弦高やフレット、ナットの処理もバッチリ、もちろんネックの反りもなく(笑)、思ったよりずっと弾きやすかったです。「調整された角材は、調整されていない普通のネックより弾きやすい」、これも初めてわかったことでした(笑)。このネック、欲しいなぁー。売ってくれないかなぁ。削りたくないなぁ……。

角材ネック全景。角を軽く面取りしただけの状態。

ロー・ポジション付近。1Fの厚さは26mm。

ハイ・ポジション〜ジョイント部付近。12Fの厚さはやはり26mm。

後端から見ると、真っ平らであることがよく分かると思います(笑)。

実験2 極厚Cシェイプ 1F:24mm(-2mm) 12F:25mm(-1mm)

実験2

 水島先生の手腕で、あっという間に角材がいわゆる極太(極厚)ネックになりました。ちゃんとCチェイプになったことで、「ギターのネックを握っている」という気になります。角材の状態から、1フレットのところで2mm、12フレットのところで1mm削っただけですが、「あ、普通の太い(厚い)ネックだな」という感じです。角材は、角材にしては弾きやすかったですが、一般的なギタリストが実用品として使うなら、ここからでしょうね。

 サウンドについては、角材よりハイ〜ミッドは少々落ちましたが、ローは十分出ていますね。これもいい音です。とても中古価格で5万円を切るギターの音とは思えません。むうう、やっぱりネック、大事だわ。

極厚Cシェイプ。ネックらしい形状になりました。

1Fは角材状態から2mm削り、24mm厚に。

12Fは1mm削って25mm厚。

キレイなCシェイプですが、いわゆる“極厚”の厚みです。

実験3 ノーマルCシェイプ 1F:21mm(-5mm) 12F:23mm(-3mm)

実験3

 1フレット上で21mm、12フレット上で23mmの、元々このストラトに付いていたネックと同じ状態までネックを削りました(……水島先生が)。握り心地も、「あー、このグリップ、知ってる知ってる」って感じです。

 音の方も「あー、知ってる知ってる」という感じになりましたね。最初の角材の状態からは、1フレット上で5mmも削っていますから、音が変わらないわけがありません。正直、お値段相応のギターの音という気がします。今回、動画の8:34〜のダイジェスト版が恐ろしくわかりやすいのですが、ネックが薄くなるたびに、音も薄くなっていっています。うーん。

ノーマルCシェイプ

1F部分はさらに3mm削って21mm(トータル-5mm)。

12F部分は極厚から2mm削って23mm(トータル-3mm)。

極厚よりは少しスリムになっています。

実験4 極薄Cシェイプ 1F:19mm(-7mm) 12F:21mm(-5mm)

実験4

 最後は極薄のシェイプです。1フレット上で19mmと20mmを割っています。最初の角材の状態からは、7mm分も削ってあって、このネックの場合、これ以上削るとトラスロッドが出てきてしまう限界まで削った状態です。木屑も抱えきれないほど大量に発生し、当たり前ですが、あー、ギターって木でできているんだなぁという感じです。

 ちなみに、この薄さまでネックを削ったギターはテクニカル・ギタリスト向けのモデルでよく見られますが、そういうギターはネック材をマルチ・ピースにするなど「薄いけど強度・剛性を高める工夫」をしているので、実用面での心配はありません。

 さてさて、音の方はこれまでの流れからいって最悪なんだろうなと思って弾いてみると、音は薄いは薄いんですが、なんというか“音が横に広がる感覚”があって、使えないことはない感じです。このあたりは、直接弾いた本人だけが感じる感覚でしょうか? 皆さんも、同じように感じますか?

極薄Cシェイプ  1F:19mm(-7mm) 12F:21mm(-5mm)

1Fはさらに2mm削って、なんと19mm(トータル-7mm)厚に。

12F部分は2mm削って21mm(トータル-5mm)。

まさに“極薄Cシェイプ”になったことがわかりますね。

復習 ダイジェストで確認しましょう

ダイジェスト

ネック削りはこうして行ないました

 角材ネックから極薄Cシェイプまで、すべての削り作業は水島先生に行なっていただきました。その様子の一部をご紹介いたしましょう。

角材ネック → 極厚Cシェイプへの成形プロセス

まずギターからネック、ペグを取り外す。削り作業に入る前、ノギスを使って各部の寸法を改めて計測。

ネックの中心部、サイド部分などにどこまで削るのかのガイドをマーキングしていく。

まずベルトサンダーで1F部分が24mm、12F部分が25mmになるよう、ネック全体を削っていく。


ハイ・ポジション部を削っているところ。

サンダーをかけ終わったロー・ポジション部。24mm(-2mm)厚まで削られている。

12F〜ハイポジション部。こちらは25mm(-1mm)厚。わずか1mmでもハッキリと目視でわかる。


ここから左右の角を落としてCシェイプの丸みをつけていく。まずセンター部にテープでマーキング。

ベルトサンダーを使い、中心部から指板サイド付近まで、Cシェイプとなるよう削りを入れていく。

ベルトサンダーの加工後、カンナ等による削りで最終的にシェイピングをかける。すべての工程は完全な手作業、熟練した技術が必要だ。

その後の成形プロセス

極厚CからノーマルCへの加工。すでに角材状態ではなくサイドに目印が入れられないため、矢印部分に「ここまで削る」というガイド代わりの凹みを付ける。その後は同様の作業で削っていく。

ノーマルから極薄Cへの加工過程。12F部が21mm(-5mm)となるため、ガイドとなる大きな凹みが入れられている。

丁寧な成形作業後はペグ、ネックを取り付け、弦を張ってチューニング……を繰り返す。水島先生、本当にお疲れさまでした。

実験結果

結論:ネックの太さ(厚さ)でギターの音は、あからさまに変わる!!!!

 今回は、とにかく動画後半のダイジェストを見てください。ショッキングなほど音が変わっていますね。どの音が好きか嫌いかは個人の趣味ですが、私は角材が良かったです。本当に、あれ欲しかった……。でも見ての通り削ってしまいましたからね、永遠に失われましたよ……。

 音が変わるのはよくわかったのですが、ではなぜ変わるのか? この辺りは、動画の「対談編」で水島先生が論理的に、かつとてもわかりやすく説明してくれていますので、ぜひそちらもご覧ください。

ネック削りに使用した工具類と、削られた木材の一部。

 それにしても今回の結果は驚くほどはっきり出ましたね。音はピックからスピーカーまでのトータルで作るものですから、闇雲に太いネックのギターを欲しがっても仕方がない──と自分に言い聞かせつつ、物欲と戦っています(笑)。太いネックのギター、欲しいよう。

 それでは、次回地下44階でお会いしましょう!

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【CONTENTS】
●工具を揃えよう
・メインテナンスに使用する工具
・プロが使う工具
●第1章〜弾きにくいと思ったらココをチェック!
・ネック編
・フレット編
・指板編
●第2章〜音がおかしいと思ったらココをチェック!
・ナット編
・ペグ編
・ブリッジ編
・ピックアップ調整
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プロフィール

井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。

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