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  • ダウン・チューニングに最適なEVERTUNEブリッジを搭載した7弦モデル

E-Ⅱ / HORIZON NT-7 EVERTUNE BLK

E-Ⅱ / HORIZON NT-7 EVERTUNE BLK

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EVERTUNEブリッジに適したボディ構造を持つ次世代ギター

 ギター・プレイヤーであれば、革新的なギターを数多く輩出するブランド、ESPの名を知らない人はいないだろう。ESPは1970年代からギター/ベース市場において、常に業界を牽引してきた。ある時はビンテージ/トラディショナル・スタイルで、そしてある時は新しいアイディアを落とし込んだこだわりのアーティスト・モデルで、音楽シーンに強く影響を与えるほどの名器を数多く手がけている。

 今回ご紹介するE-Ⅱ HORIZON NT-7 EVERTUNE BLKは、そんなESPオリジナル・モデルの中でもフラッグシップ・モデルと言えるHORIZONをベースに、次世代のスタンダードとも言えるスペックを備えている。剛性と独自のサウンドを両立したリバース・ヘッド・ストックを持つ3ピース・メイプルのスルー・ネック、アルダー・ボディにEVERTUNEブリッジ・ユニットの組み合わせ。特徴的なEVERTUNEブリッジには、以前のデジマート製品レビューでも紹介しているとおり、弦張力の状態によって “バック・ストップ・ゾーン”、“スウィート・スポット・ゾーン(アクティブ・ゾーン)”、“ベンド・ストップ・ゾーン”と呼ぶ三段階のスポットが存在し、適切なセットアップを施すことで、チューニングをそのゾーンの範囲内に収めれば、どんなにベンディングやラフなピッキングを行なってもチューニングは絶対に狂わないという驚異のシステムだ。

E-Ⅱ / HORIZON NT-7 EVERTUNE BLK

 そのEVERTUNEを搭載することを前提としてデザインされた本器は、ボディに大きくザグリが必要となるEVERTUNEの構造をあらかじめ意識し、ボディ厚を通常のHORIZONよりも厚く設定することで、重量とサウンドのバランスを取っている。ヘヴィなサウンドに欠かせないウェイトのチューニングだ。また、EVERTUNEを搭載する場合、構造的にどうしてもピックアップはエスカッション・マウントにならざるを得ないことが多いが、ESPでは前述のボディ厚を採用することで、この問題をクリア。ダイレクト・マウント・ピックアップならではのスピード感とタイトな音像を得ている。こういったスペックから見ても、このE-Ⅱ HORIZON NT-7 BLKのサウンド・アプローチは明らかだ。つまり“ヘヴィ・ロックの最先端モデル”ということになるだろう。

E-Ⅱ / HORIZON NT-7 EVERTUNE BLK(Back)

サウンドに奥行きを与えるエアー感をまとったサウンド

 ダウン・チューニングにおけるサウンドのメリットは、そのテンション感と独特の振幅が生み出す“ラウドでヘヴィなサウンド”であることは間違いない。それではデメリットは? ──弦の振幅が大きくなることでピッチ感が悪くなること、ピッキング直後の音程がシャープしやすいこと、そして音の濁りが生じやすいということだろう。これらを改善しようとしてスケール自体を見直したり、弦のゲージを太くして振幅を抑える方法があるが、スケールを伸ばしてしまうと音色のイメージ自体が変わってしまう。バリトン・ギターとロング・スケールのギターとのサウンドの違いを見ても、バリトンはタイトでテンションのハリ感が明らかに音色に表われてしまう。つまり、せっかくチューニングを下げたことで得られるダークなサウンドが、明るい音色にシフトしてしまう。弦のゲージを太くすることも同じで、結局振幅を抑えてしまうと独特のヘヴィなサウンドが薄れ、力強く、実音の強いサウンドになる。もちろん、それらをうまく使った音作りや楽曲もあるだろうが、本来の意味での“ダウン・チューニングならではのサウンド”とは異なってしまう。

 EVERTUNEを搭載するメリットはまさにここにある。一般的なロング・スケールのギターでライト・ゲージの弦を張り、2音下げチューニングにセットして、強めにピッキングしてみるとどうなるか? 気を遣ってピッキングしないと、アタック時のチューニングはかなりシャープしてしまうはずだ。ラウドなロック・バンドのギタリストがレコーディングではともかく、ライブでも右手のピッキングに意識を向けていなくてはならないとしたら、けっこうな苦痛になるだろう。それではライブは楽しめないし、せっかくのステージングにも力が入らないかもしれない。しかしEVERTUNEであれば、セットされたゾーンの範囲内であれば、強めにピッキングしても音高が変わらない。つまり、楽器の鳴り感やサウンドにだけ集中してサウンドメイクが可能であり、プレイ・スタイルを変えることなく、ライブでもレコーディングでも安定したピッチをキープすることができるのだ。

3ピースのメイプルを採用したスルー・ネック。ハイ・ポジションでのプレイも楽に行なえる

ブリッジにはモデル名にもなっているEVERTUNEブリッジを搭載。プレイヤーのスタイルや好みによって自由に各弦の設定が可能だ

黒々としたエボニー指板を採用することで、シャープで抜けの良いサウンドを演出

 今回、Crystal Lakeのギタリスト、Yudai Miyamoto氏をお招きして実際にライブなどで使用しているサウンドメイクを行なってもらったが、かなりラウドでありながら低音弦の音像がしっかりと感じられ、なおかつ各弦のサウンドがお互いに干渉しない点に驚いた。HORIZON NT-7 EVERTUNE BLK自体が持つビックでスピードのある音像感が、EMGのハイファイ・ピックアップによってストレートに出力されている。クリーン・サウンドでもきらめきが感じられ、さらにボディを大きくザグることで生まれたエアー感がうまく音色に奥行きを与えていた。

 ESPとEVERTUNEのタッグは、現代的なギタリストにとって注目されるべき存在だということは間違いないだろう。また、ひとつ付け加えさせていただくと、今回の撮影中にもESPのテクニシャン/スタッフが立ち会ってくれたのだが、EVERTUNEの“攻略方法”だけでなく、リアルな音楽現場に携わる人々ならではの“最新の情報”が飛び交っていたことが非常に印象的だった。こうして優秀なスタッフとミュージシャン、ギター・ブランドによって、新しい楽器は作られていくのだ。このギターは外見からは想像もつかないほど、新しいアイディアとサウンドが込められている。ぜひ手にとって、新しい音楽を生み出してほしい。

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製品情報

E-Ⅱ / HORIZON NT-7 EVERTUNE BLK

価格:¥280,000 (税別)

【スペック】
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:エボニー ●フレット:24 ●スケール:648mm ●ピックアップ:EMG 85-7H (フロント)、EMG 81-7H(ネック) ●コントロール:ボリューム、トーン、トグル・ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:EVERTUNE ET001F ●ペグ:ゴトーSG360-07 MG-T ●カラー:ブラック
【問い合わせ】
ESP TEL:049-274-3810 http://espguitars.co.jp/e-ii/horizon/HORIZON-NT-7-EVERTUNE-BLK.html
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

Yudai Miyamoto
02年に東京で結成したメタルコア・バンド、Crystal Lakeのギタリスト。静と動を巧みに操る美しい楽曲や、激しいライブ・パフォーマンスが話題を呼び、海外でも多数のライブやフェスティバルに出演するなど、日本を代表するバンドとして活躍中。また、Doggy Hood$、Super Structure、OZROSAURUSのメンバーとしても活動。最新作は、10月にリリースされたCrystal Lakeのシングル「Apollo」。

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