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  • アルミ・フレームを採用し、独自のサウンドを奏でるRelish GuitarsのJANEとA MARY

スイスの職人が作り上げた新世代ギター、Relish Guitars / JANE & A MARY

Relish Guitars / JANE、A MARY

  • 制作:デジマート・マガジン 試奏・解説・文:村田善行  動画撮影&編集:伊藤大輔 工場写真提供:三木楽器

オリジナリティ溢れるデザイン、バンブー指板やアルミ・フレームなどの材構成、タッチ・センサー付きのピックアップ・セレクター、磁石で取りはずしが可能なボディ・バック、そしてどこまでもクリアでレンジの広いサウンド……。スイスの職人がハンドメイドで作り上げるRelish Guitarsの楽器は、これまでのギターの概念を変えてしまうような魅力を放っている。今回はJANEとA MARYという2モデルを、現地工場での製造過程の写真を交えて紹介しよう。

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Relish Guitars / JANE & A MARY

独自の構造&素材で作られたRelish Guitarsの魅力

 手に馴染むネックと、木材の温かみがありストレス・フリーなボディ形状、外見からヨーロピアン・テイスト溢れるRelish(レリッシュ)Guitars。ギター業界で広く一般的に認知されている、いわゆる“アメリカン・ギター”の基本スタイルに準じた作りながら、かなり特徴的な構造を持っている。

 今回紹介するJANEとA MARYの2モデルに共通するスペックは、バンブー(竹)指板、そしてアルミ・フレームをボディに採用している点だ。バンブー指板のサウンドや質感は、イメージしていたよりも“普通”である。実は竹は非常に優れた木材として、昔から日本ではさまざまな用途に使用されてきた。調べてみると、そもそも“竹”と“バンブー”は違う素材であるとのことで、共通の特徴とされるのは“非常に丈夫でありながら伸縮性も兼ね備えている”ということ。実際に鉄が不足していた時期に鉄筋の代用として竹の骨組を配したコンクリート工法があったという話を聞けば、指板材にバンブーをセレクトすることは不思議でない。ゆっくりした動きにはしなやかに反応し、速い動きには強度を感じさせる。フィンガリング時の心地良い質感に加えて、メイプルとエボニーの両方の質感を連想させる音の立ち上がりが魅力的だ。

Relish Guitarsの工房/会社は、スイスのルサーン(ルツェルンとも呼ばれる)州にあるセンパッハ村に所在する。チューリッヒ空港から車で1時間ほどの緑豊かなところだ

JANE、A MARYともに共通のスペックとなるバンブー指板。ローズウッドのような色だが、着色は行なっていない

アルミ&ウッドの組み合わせで唯一無二なサウンドを奏でるJANE

Relish Guitars / JANE

 最も特徴的なポイントはボディ構造にある。JANEはボディのコア部分に削り出しのアルミ・フレームを採用。ボディ外周を取り囲むアルミ・フレームに対して、ボディ・トップ/バックにトーン・ウッドを配してサウンドをチューニングしている。これはセミ・アコースティック・ギターの構造に近いが、アルミ・フレームの伝導率の良さがフルに発揮され、驚くほどの生鳴りを体感できる。また、ボディ・センター部分にもアルミが配されていることで、締まりのあるアタック感とサステインを生み出しているのもポイントだろう。おもしろいのは、とにかくワイド・レンジでありながら“鳴りすぎない”ように作られている点。“さっきまで良く鳴るって言ってたじゃないか?”と思われるかもしれないが、特にエレキ・ギターは鳴りすぎると使いづらい。多くのギター・ビルダーは“鳴るギターを作るのは簡単だ“と言い、“程良く鳴って良いトーンが得られるギターを作るのは難しい”と語る。特にホロー・ボディの場合は倍音の出方によってはデッド・ポイントが生まれたり、サウンドに微妙にピークを感じたりすることが多い。

Relish Guitars / JANE(Back)

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タッチ式のピックアップ・セレクター、マグネット・ピックアップのボリューム&トーン、ピエゾのボリュームというコントロール

磁石で固定されたボディ・バックをはずすと内部が丸見え。とてもキレイな配線で組み込まれていることがわかる

JANEはボディの外周をアルミで囲み、ボディのトップ&バックは木材を採用することで、独特のサウンドにチューニングしている

 JANEに関して言えば、とにかくキラリとしたアタックの質感、ワイド・レンジ&クリアなサウンドでありながら、サウンドをドライブさせた時に嫌な倍音を感じない点がポイントだと言える。アルミ・ボディのギターでは得られない、ウッド・ボディでももちろん得られない唯一無二のトーンを持っている。この存在感はアンサンブルに入った時に本領が発揮されるだろう。インスト・バンドやアンビエント系の響きにもとても相性が良いと思う。

JANEのアルミ・フレーム部分。こちらは板状のアルミの塊から削り出して製作される。軽量で良く響き、それがレスポンスの速さにつながっているそうだ

ブリッジはスチール製で、ピエゾなしのスタンダード(左)と、GraphtechのGhostピエゾ・サドルが付いたモデル(右)の2種類。ブリッジ・プレートはブラス削り出しで、振動効率に優れている。ブリッジとボディをつなぐブロックもアルミ削り出しで、サドルはスチールとなっている

アルミ・フレームが生み出す豊かな鳴りが特徴のA MARY

Relish Guitars / A MARY

 A(アルミ)MARYはJANEと共通したスペックを持ちながら、ボディの空洞部分を減らしてソリッド構造に近いスペックを持たせている。演奏動画を見てもらえばすぐに感じてもらえると思うが、A MARYはJANEより随分と“コシが据わった”サウンドで、よりロックでクラシカルなトーンを引き出している。それでもアルミ・フレームの生む個性的なアタック感やサステインは十分に存在感を放っているのが良くわかる。特にハイゲインからクリーンでも使える音色なので、モダン・ロックからクラシックなブルース系まで幅広くカバーできる点が魅力だろう。個人的にはファンク系やメロウなR&B、さらにビッグ・バンドでこのギターは存在感を発揮する気がした。また、ゲート感いっぱいでキメキメのダウン・チューニング・ギタリストにもぜひ試していただきたい。“真逆すぎない?”と思うかもしれないが、弾いてもらえばその意味は伝わるだろう。ロー・パワーでクリアなサウンドを持つピックアップも、この楽器の特性を自然に出力している。

 また、MARYにはA MARYのほかに、W(ウッド)MARYというモデルもラインナップ。こちらは三層構造の中央部分にも木材を採用しており、一般的なソリッド・ギターに近いサウンドだ。

Relish Guitars / A MARY(Back)

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A MARYのコントロールは3ウェイ・トグル・スイッチ、マグネット・ピックアップのボリューム&トーン、ピエゾのボリューム、トグル・スイッチ(マグネット/ピエゾ/ミックスの切り替え)という構成

A MARYはJANEとは異なり、ボディの空洞部分を減らし、ソリッドに近い構造となっている。そのためドッシリとしたサウンドが特徴だ

横から見ると、このようにアルミ・フレームがJANEより薄いことがわかる

 改めて演奏動画でこの2本を聴き比べると、JANEのエアー感は特筆すべきサウンドを生み出し、A MARYのクラシックでありながら振り幅の広い出音に驚いた。もうひとつ共通している点が、その弾きやすさと、ボリュームやトーンがどの位置でも使いやすいこと。ネック・シェイプはモディファイドDのようなシェイプで、近年のコンポーネント系に近い。ネック・サイドはやや立ち目だが、幅広には感じないだろう。

こちらはA MARY。ボディの縁取りをした3mmのアルミ・プレートと、中央に組み込まれているブロック状のアルミが存在感を放っている。ちなみに、アルミやプラスチック・パーツはスイスのオルガン州にある精密金属加工工場にて製作されている

コンターや穴開け加工が施されたあとのMARYのボディ。指板やネック、MARYのボディはスイスのシュウィッツ州にある木工加工会社にて製造されている

 Relish Guitarsの楽器は70年代からの“ロック”のイメージではなく、新しい音楽を生み出すためのギターに感じるが、だからと言ってクラシックなギター・フォームを捨てているわけではない。それはピックアップやコントロールの反応と何より“生音の響き”から感じられる。先進的なルックス、アルミ・フレーム、バンブー指板……あなたならどんな音楽を生み出すだろう?

Relish Guitarsは杢目が良く出た美しい塗装も人気の理由のひとつだが、スタッフが手作業でカラーリングを行なっているのだ

工場で木工技術を身につけた少数精鋭のスタッフが手作業でギター組み上げる。丹精込めて作られたRelish Guitarsの楽器は、これからの音楽/楽器業界をリードする存在になるかもしれない

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製品情報

Relish Guitars / JANE Series

【スペック】
●ボディ:フレイム・メイプル(トップ&バック)、アルミ(フレーム)●ネック:メイプル●指板:バンブー●フレット:24●スケール:650mm●ピックアップ:レリッシュ・バッカー15×2●コントロール:ボリューム、トーン、タッチ式ピックアップ・セレクター●ブリッジ:オリジナル・ハードテイル●ペグ:ゴトー510Z●バリエーション:ボルドー、スノー、シャディ、マリン、ウォルナット、アシィ、チェリー、フレイムド・メイプル
【問い合わせ】
MIKIGAKKI Import&Trading TEL:06-6361-0098 http://www.trading.mikigakki.com/
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Relish Guitars / A MARY

【スペック】
●ボディ:HPベニヤ(トップ&バック)、アルミ(フレーム)●ネック:メイプル●指板:バンブー●フレット:24●スケール:650mm●ピックアップ:レリッシュ・バッカー×2●コントロール:ボリューム、トーン、ピックアップ・セレクター●ブリッジ:オリジナル・ハードテイル●ペグ:ゴトー510Z●カラー:ブラッディ、スノー、シャディ、マリン
【問い合わせ】
MIKIGAKKI Import&Trading TEL:06-6361-0098 http://www.trading.mikigakki.com/
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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