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  • D-28が仕様を新たに2017年モデルとしてリリース

斎藤誠が弾く! マーティンD-28(2017)とHD-28、HD-35を弾き比べ!

Martin / D-28(2017)、HD-28、HD-35

  • 制作:デジマート・マガジン 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:嵩井翔平

好評連載MARTIN TIMES。17回目となる今回は、マーティンの看板モデルであるD-28の2017年モデル、D-28(2017)を紹介します。D-28(2017)の仕様に近いHD-28とHD-35も用意して、その3本を斎藤誠氏に弾き比べてもらいました。ブレイシングやボディ・バックの構造などの違いから生まれるサウンドに要注目です!

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斎藤誠が弾く!
マーティンD-28(2017)、HD-28、HD-35

Special Talk Session
斎藤誠が語る! マーティンD-28(2017)、HD-28、HD-35の魅力

マーティンの大人気モデルD-28を
ビンテージ・ライクに仕様変更したD-28(2017)

 1931年の発売以来、姉妹モデルのD-18と並んで安定した人気を保っている“ディー・ニッパチ”ことD-28のスタンダード・モデルが、2017年から新仕様に変更された。基本的な変更方針は2012年にリニューアルされたD-18と同様、外観をビンテージの雰囲気に近づける一方で、より現代的な奏法に対応するというものである。

 具体的には、外観面ではロゴのデカールがオールド・スタイルに、ペグがクロームのエンクローズド・ギアからニッケルのオープン・ギアに、トップの色がクリアからエイジング・トナーに、ブリッジ・ピンのドットとピックガードが黒からべっ甲に、バインディング、ヒール・キャップ、エンド・ピースの色がホワイトからアンティーク・ホワイトに変更された。

 演奏性とサウンド面では、ネックのグリップがロー・プロファイル/スタンダード・テーパーからモディファイド・ロー・オーバル/ハイ・パフォーマンス・テーパーに、ナット幅が約42.9mmから約44.5mmに、それに伴ってサドル上の弦幅が約54mmから約54.8mmに、Xブレイシングがスタンダードからフォワード・シフテッド(どちらもノン・スキャロップト)に、それぞれ変更されている。

 今回は新仕様のD-28(2017)との比較のために、これに近い仕様のHD-28とHD-35を用意した。型番の“H”は、1940年代半ばまでのスタイル28の標準だったヘリンボーンのパーフリングをトップの周囲に施したモデルを意味するが、それと同時にブレイシングは(フォワード・シフテッドではなく)スタンダードのスキャロップになっている点が、サウンドに関わる部分の大きな違いである。もちろんHD-35はそれに加えて、バックが3枚である点が異なっている。ということで、今回の斎藤氏による試奏動画でご注目いただきたいサウンドの違いは、D-28とHD-28の比較ではフォワード・シフテッド/ノン・スキャロップトとスタンダード/スキャロップトのブレイシングの違い、HD-28とHD-35の比較ではバックが2枚か3枚かの違い、ということになる。

Standard Series
D-28(2017)

D-28(2017)


D-28(2017)(Back)

落ち着いた感じのオールド・スタイル・ロゴ。ペグはバタービーンズ・ボタンのオープン・ギア

ブリッジ・ピンのドットとピックガードのべっ甲は、ビンテージ・トナーのトップによく映える

ヒール・キャップやバインディングも落ち着いた雰囲気のアンティーク・ホワイトに変更

 前書きでご説明したとおり、外観/構造ともに仕様を一新したスタンダード・シリーズのD-28である。旧仕様のモデルは在庫のみで、払底後はこの新仕様のみが提供される。新しい形状のネックは従来に比べて幅がわずかに広がった分やや薄めになっており、ロー・ポジションからハイ・ポジションにかけての握り心地が一定しているのが最大の特徴だ。これにより、指板全体を駆使するフレーズや複雑なコードを多用する、より現代的な奏法にも対応する。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX ●価格:¥410,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 このギターは今回のメインに据えたかったので、だんだん盛り上がっていく3拍子の曲を選びました。複雑と言うと大げさですが、A→B→Aという形式で、Aを指弾き、Bをストローク、最後にAのストロークという曲構成です。結果として、このギターのいろんな魅力が出せたんじゃないかと思いますね。僕はアルペジオをサムピックを使わずに生指で弾くので、それがちゃんと聴こえてほしいと思っているんですが、このギターだとHD-28に比べてアタックが太く出る感じで、ひとつひとつの音がはっきりと出ます。あと、Bセクションで弦を4本しか鳴らさない部分でも音がしょぼくならないので、すごく弾きやすかったですね。

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Standard Series
HD-28

HD-28

HD-28(Back)

HDではヒール・キャップもバインディングもホワイト。バック・ストリップはジグザグ

今なお洗練された雰囲気を醸し出すヘリンボーンのパーフリングは、“HD”の象徴

通常のクリア仕上げのトップにべっ甲柄のピックガード。ブリッジ・ピンのドットは黒

 HD-28は、トップの周囲に“ヘリンボーン”と呼ばれる文字どおり“魚の骨”のような細かい斜めのパーフリングを施し、1940年代以前のビンテージ・マーティンを彷彿とさせる仕様を採用したモデルとして1976年に登場した。サウンドに関する部分ではブレイシングがスキャロップになっているのが旧仕様のD-28との唯一の違いだったが、D-28(2017)ではブレイシングがフォワード・シフテッドになったので、スキャロップの有無にブレイシングの位置の違いが加わったことになる。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥490,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 D-28(2017)に比べて“シャリーン”という倍音部分も聴こえるギターだとすぐにわかったので、「Gの静かなアルペジオ」というタイトルの(笑)、全部指弾きの静かな曲にしました。静かな音だけで最後までいく曲って、本当にギターを選ぶんですよ。音が太いだけのギターだと使いづらかったりとか。でも、HD-28のように繊細な音が出るギターの時には、指弾きだけの静かな曲でも安心感がありますね。あと、この曲にはプリング・オフやスライド音も出てきますが、無骨なギターだと、そういう神経の集中が必要なことはできないんですよ。でも、このギターだとそれもあっさりとできましたね。

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Standard Series
HD-35

HD-35


HD-35(Back)

3ピース・バックはスタイル35ならではの仕様。バック・ストリップはジグザグ

ヘリンボーンのパーフリングとスタイル35の指板周りのバインディングが、華やいだ雰囲気を醸し出す

モダンな仕様のロゴとエンクローズド・ギアのペグ

 ブラジリアン・ローズウッドの不足で幅の広い2ピース・バック用の材の確保が難しくなり、幅の狭いサイド用の材でバックを3ピースにしたD-35が登場したのは1965年のことだった。したがって、歴史的にはヘリンボーン・パーフリングを施した40年代以前のD-35の“ビンテージ”は存在しないのだが、HD-28が好評だったのか、HD-35もそれに続く形で1978年に登場した。サウンドに関わるD-35との違いも、やはりブレイシングがスキャロップになっている点で、HD-28との違いはバックの枚数である。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥510,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 バックが3ピースになるだけでHD-28とこんなにも違うのかと思いました。少し鳴りにくくなることが逆にうまくバランスを取っていて、優しくて甘い感じの音になっているんでしょうね。で、その甘いギターに一番ハードな曲を持ってきたわけですが、まず今回の3本を弾き比べた時、ガツガツ弾いてもHD-35だと抑えてくれると直感的に思ったんでしょうね。日本ではフォーク・ソング向きと言われる35ですが、だいぶロケンローな使い方をしてしまいました(笑)。Bセクションなんかはザ・フーみたいでしょ。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 そもそも僕はちょっとしたドレッドノート恐怖症なのですが、前回のように“あれ、これは自分にぴったりかも?”というギターが見つかったりするので、そうも言っていられなくなってきましたね(笑)。新仕様のD-28は2017年夏に発表されたということですが、以前に弾いた同仕様のD-18もすごく良かったんですよ。オールド・スタイルのロゴは落ち着いた雰囲気だし、オープン・バックのペグも僕の持っている0-18と同じだから馴染みもあるし、本格的というか、“良い楽器を使っているぞ”という気分になりますよね。デモ曲の最後の部分ではロー・コードを弾き放して響きの余韻を出しているんですが、そういうことをやりたくなるっていうのは、こうやって“音楽”を演奏して初めてわかることですね。あと、10フレットまで使いましたが、新しいネック・グリップのおかげで自然に弾けました。HD-28は高音域の倍音成分が巻弦でも感じられたので静かな曲を選びましたが、それでいてコード・ストロークをガツンと弾いてもイケるのがすごいなぁと思いました。ブレイシングの位置とスキャロップの有無の効果の違いなんでしょうけれど、マーティンはこういう実験をずっとやり続けているんでしょうね。HD-35は抑制が効いていて低音が出過ぎないので、種類は違うけれど000を弾く感覚と少し似ているかもしれません。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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