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  • マーシャル直系のディストーションを生み出すSuper Crunch Boxがバージョンアップ!

MI AUDIO / Super Crunch Box V2

MI AUDIO / Super Crunch Box V2

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いつの時代も求められてきたギター・サウンドが生み出せる
Super Crunch Box V2

 マーシャル系のサウンドというのは、ギタリストにとって欠かせない音色のひとつ。70年代ブリティッシュ・ロックの爆発から80年代のハードロック&ヘヴィ・メタル、さらにゲインが高くなった90年代のグランジ/オルタナ・ディストーション・サウンド、LAから火が着いた「スタジオ系サウンド」のギター・ソロにおいても、基本の歪みは「マーシャル・ライク」の延長線上にあった。

 このMI AUDIO Super Crunch Box V2には、コンパクトな筐体にその歴代のマーシャル的ドライブ・サウンドを生み出すすべてが収められている。モード・スイッチ、クリッピング・スイッチ、そして4バンドのEQがどのように作用するかを、動画と合わせてチェックしてみてほしい。

MI AUDIO / Super Crunch Box V2

歪みの質を決めるクリッピング&モード・スイッチと
細かな設定まで追い込める4バンドEQを搭載

 モードは下段のミニ・スイッチで、3段階の選択が可能。それぞれロー・ゲイン(左側)ハイ・ゲイン(センター)ミドル・ゲイン(右側)となっている。ロー・ゲインではプレキシ・スタイルの100Wヘッドを思わせるゲイン感、ミドル・ゲインはJCM800辺りまでのゲイン感、ハイ・ゲインはJCM800をベースにMODを加えたアメリカン改造マーシャル的なイメージだろうか。いずれのモードにおいてもグッとゲインを上げると、カッコ良い音が飛び出してくる。後述するクリッピング・モードの切り替えと組み合わせれば、より多彩なドライブ・サウンドが作り出せるだろう。

 クリッピングとは、「歪みを生み出すエフェクター内部の回路構成パーツ」のこと。このパーツを切り替えることで、サウンドの傾向とレスポンス感が選択できる。つまり、歪みの「質」において非常に重要なファクターだ。スイッチ左側がスタンダード・モードで、この位置がSuper Crunch Boxの音色の基本だと思っていいだろう。「エフェクターっぽい」ラフな歪みで、ジャリっとしたミッド・ハイが心地良い。センター位置がオープン・モードとなり、一番歪み(クリッピング)が少なく、レスポンスも速い。筆者が感じるオールド・マーシャルのイメージに近い印象だった。右側はコンプレッスドという名称で、アタックが抑えられたロング・トーン向きのサウンド。ES-335などの箱モノ系ギターで弾きたくなるような、伸びやかな歪みとサウンドが得られるイメージだ。

それぞれ3つのモードが選択できるクリッピング・スイッチ(上)とモード・スイッチ(下)を搭載し、プレイヤーの用途によって必要な歪み量やサウンド・キャラクターが選択可能。EQにはプレゼンス・ツマミも実装されており、より好みの音像に近づけることができる

 EQはそれぞれ絶妙なチューニングだが、特筆すべきはプレゼンス・コントロールだ。このツマミではサウンドの「抜け」を調整する。小音量でも大音量でも、存在感を出したり、曲に馴染ませたりできるだろう。トレブル・ツマミはミッド・ハイを調整するイメージで、ピッキングした際の「マーシャル・ライク」なアタック感を調整できる。ミドル・ツマミはキャラクターを調整するイメージで、右方向に回すことでグッと歪みの密度が増して、「オールド・ロックにおけるギター・サウンドの存在感」が表現できるだろう。逆に左方向に回せばドンシャリ……例えばアンスラックスのような80’sスラッシュ・メタル、スケート・ロックのリフもののイメージ……にも対応できる。センター位置を基本に、わずかに動かす程度でOKだ。ベース・ツマミは音圧や迫力を加えるロー・ミッドに作用する。やはり基本はセンター位置として、微調整程度でおいしいポイントを補正してくれる。アンプとの兼ね合いで調整してほしい。

歴代マーシャル・サウンドが再現できた
魔法のようなディストーション・ペダル

 このペダルは、すべてのツマミをセンター位置にするだけで「最高」な歪みを生み出す。しかし、音色をさらに自身の好みに近づければ、「さらに最高」なサウンドが生み出せるだろう。その際に肝となるのはミニ・スイッチのコンビネーション。例えば筆者であればプレキシ・サウンドを好むので、クリッピング・スイッチをオープン(センター)とし、モード・スイッチはミッド・ゲイン(右側)にセットした場合が「最高のサウンド」だった。

 もしパワフルなピックアップを搭載したギターを使用していて、改造マーシャルのような音色(スマッシング・パンプキンズやザック・ワイルド在籍時のオジー・オズボーン的な)を出したいのであれば、モード・スイッチはミッド・ゲインのままクリッピング・スイッチを右側か左側へ、そしてゲイン・ツマミを時計の3時程度にセットすれば良い。さらにハードなサウンドが欲しい場合は、そのセッティングのままモード・スイッチをハイ・ゲインにセットして、ミッド・ツマミを少しだけカットする。逆にモード・スイッチをロー・ゲインに切り替えて、ミッド・ツマミを時計の2〜3時方向へ回せば、クリーム在籍時のエリック・クラプトンのようなサウンドを得ることもできる。

 どうだろう? ツマミやスイッチを動かすとキャクターは変化するが、基本となる「らしさ」は変わらない。こんなに簡単で楽しく、さまざまな歴代マーシャル・サウンドが生み出せるとは……。モデリングではないアナログ・サーキットのドライブ・ペダルで、ここまで幅広いサウンドが生み出せるのは驚愕だった。ぜひ店頭などで実際に手に取って、ユーザー自身が試してみてほしい。しかもお求めやすい価格ときている。迷う要因はどこにもない。あとは自分の好きなマーシャル・サウンドを研究して、このペダルと向き合うだけだ。

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製品情報

MI AUDIO / Super Crunch Box V2

価格:¥26,000 (税別)

【スペック】
●コントロール:ボリューム、ゲイン、プレゼンス、ハイ、ミドル、ロー、モード・スイッチ(ロー・ゲイン/ハイゲイン/ミドル・ゲイン)、クリッピング・スイッチ(スタンダード/オープン/コンプレッスド) ●入出力端子:インプット、アウトプット ●電源:9V電池、9Vアダプター ●外形寸法:66.1(W)×110.5(D)×48.6(H)mm
【問い合わせ】
池部楽器店 http://www.e-imi.jp/product/super-crunch-box-v2/
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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