LUMTRIC COMPANY
鋳物の街として知られる埼玉県川口市にて1983年10月に創業、今年で35周年を迎えるラムトリックカンパニー。代表取締役の竹田豊氏は、ギター・マガジン本誌でも長きにわたって連載記事を執筆したほか、著作『エレクトリック・ギター・メカニズム』（小社刊）は、プロのクラフツマンにとってもバイブルとされるなど、まさに国内リペア業界のレジェンドとも言える存在だ。オリジナル・ブランド＝Sonicのオーダーメイド・モデルに関しても、設立当初から製作を開始。これまでに通算2,000本近くを世に送り出し、そのギターは竹田和夫やBUMP OF CHICKENの藤原基央らが愛用するなど、その人気はあらためて紹介するまでもないだろう。
「ラムトリックは造語で、ランバー（建築用の木材のこと）とエレクトリックを合わせたものです。Sonicの由来は、サウンドとかソニーとか、音を連想させる響きだったので。月産で10本も作れないようなものだけど、長くやっているとけっこう作っちゃうもんだなって（笑）。ここでやっているのは、カッコ良く言えば楽器に命を吹き込む作業ですね。要はセットアップで、ちゃんと使ってもらえる状態にする。パーツはできるだけオリジナルのものを使いたいと思っていますが、仕入れたパーツを独自に手直ししてから使用しているものも多いです。販売力がないので（笑）、お客さんや楽器店からオーダーを受けてから製作することが多いですね」
オリジナル・パーツの販売も行なっており、ステイブル・チューン・トレモロ・キットを筆頭に、ジュピター・シリーズやレジェンド・シリーズといったピックアップ、ターボ・ブレンダーに代表されるオリジナル・サーキット、オイルド・ボーン・ナット、シールド・ケーブルやメンテナンス用品など、その品揃えは豊富だ。もちろんリペアも手がけるが、そこには竹田氏ならではのこだわりがある。
「自社製品は別ですけど、他メーカーの楽器の場合は、はずせるパーツは全部はずして、基本的にはフレットも抜いて、指板を真っすぐ削り直して……ネジ穴も開け直して再組立を行なう“チューンナップ”のみ受けています。依頼された部分だけを普通に直すこともできるけど、自分としてはそれ以外の部分に全然納得がいっていない状態で返さなきゃいけないから、それが非常に心苦しい。そのギターが持って生まれた力を発揮できない状態で手放すのが常々イヤだったんです」
チューンナップを受けた楽器には、その証明となるシールがヘッド裏に貼られる。ギタマガ掲載のプロの機材写真で目にした読者もいるだろう。
「ひとつひとつの作業って、妥協しようと思えばいくらでもできる。しかも、パッと見ではわからないし、実際どっちでもいい部分もあるかもしれない。でもギター全体で見た時に、その細かい積み重ねによってずいぶん変わってくるんじゃないかなって。だから、すべての部分を一定以上の基準でやることが大事だと思ってます。そういう風に作っているし、修理も納得の行く形でやらせていただいています」
近年では、兵庫のSago New Material Guitarsとのコラボ・ブランド、Ximera（キメラ）にも力を入れている。
「Sonicはトラディショナルなタイプだから、あまり変わったことをすると敬遠するお客さんもいそうですけど、Ximeraはある意味やりたい放題。好きなことができるので、設計していても非常に楽しいです。リペアの作業でも、こうするともっといいよねっていう新しい発見が今もあるので、真剣に向き合って常に進化し続けることが大事ですね」
重鎮ならではの敷居の高さを感じてしまう人もいるかもしれないが、本人はいたってそんなつもりはないようだ。
「自分では頑固な職人タイプというつもりはないんだけど、そう見られがちで（笑）。それゆえに、来る前から恐怖感を持ってしまって来てくれない人がいると思うんです。そんなことないんだよってことは言いたいですね（笑）」
LUMTRIC COMPANY（ラムトリックカンパニー）
〒332-0012
埼玉県川口市本町4-14-5
048-224-7915
http://lumtric.com/
