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ESP【2018ギター工房放浪記。】

ESP / ギター

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分業ではなく全行程をひとりが担当、スピリッツはあくまで“工房”

 ESPと言えば、NavigatorやEDWARDS、E-II、GrassRoots、LTDといったブランド、さらに楽器店や専門学校なども擁する一大グループだが、そもそもは1975年に日本初のオーダーメイドによるギター・メーカーとして設立されたのが始まりだ(ちなみに社名はElectric Sound Productsの略)。約10年前には、埼玉県入間郡に新東京工場を設立。そして5年前には、その近隣に第二工場を構えた。ESPおよびNavigatorブランドのギター&ベースは、カタログに掲載されている製品もオーダーメイドの製品も含め、すべてこちらで製作されている。ちなみにESPブランドとしては、オーダーメイドが2~3割を占めるとのことだ。課長の小林真一郎さんに話を聞いた。

「オーダーメイドの受付は、御茶ノ水のBIGBOSSなどESPの系列楽器店が多いのですが、ESP特約店であれば、全国どこからでもオーダーは可能です。僕もBIGBOSSにいたことがあるんですけど、系列店は大半がギター製作科の出身なので、専門知識が豊富です。もちろんその他の店舗からのご依頼でも弊社スタッフが対応しますので同様のサービスが可能ですよ」

 オーダーの窓口となる各店舗のスタッフと、作り手とのやり取りにも時間は惜しまない。

「音先行、形先行、色先行、いろんな方がいらっしゃるので。お客さんにとって“ここは譲れない”という部分と、逆にこちらから提案させていただいたほうがいい部分を、しっかりと把握するように心がけています。敷居が高いように見られていることもあって、“材の名前とか全然知らないんですけど……”というお客様もいらっしゃいますが、そこは丁寧にご説明するので大丈夫です。逆に、ものすごく詳しい方もいらっしゃいますけどね(笑)」

 ご存知の通り、伝統的なスタイルのものから先端を行くモデル、さらには芸術作品のようなものまで、あらゆるギターが製作可能となっている。

「メーカーとしてはHR/HMのイメージがあると思いますが、時代によってハイエンド系やV系が増える傾向があったり、本当に多種多様ですね。ビンテージ系のものから奇抜なものまで何でも作れるというのが、我々の強みだと思っています。耐久性や寸法などの物理的な部分で無理なもの以外は、お断りしません。ですので、オーダー・フォームはありますが、書き切れない場合も多いんですよ。用紙とは別に10枚くらい付属されてくる場合もありますし(笑)、思いの丈を綴ったお手紙が付いていることもあります」

 納期は平均6ヵ月以上ということだが、ケース・バイ・ケースで1年単位になるものもあるそう。また、工場の規模は大きくても、決して流れ作業のように作られることはない。

「他の工房さんも同じだとは思うんですけど、ひとりが最初から最後まで面倒を見ますので、ボディやネックの木の状態や相性も含めて、すべてのパーツがぴったり完璧に組み合わさっているんですよね。そのトータル・バランスの完成度は、一番自信があるところです。ボディならボディ、ネックならネックだけという分業制だと、そうはいきませんから。それを今も当たり前のようにやっているので、規模が大きくても、僕らはあくまで“工場”ではなく“工房”なんですよね」

 日本で最も歴史のあるオーダーメイド・ブランドだが、当然のことながら職人それぞれに個性がある。それでも、あらゆるタイプのギターが作れるということは、それだけ個性豊かな人材が幅広く育っているということだ。

「僕自身、木工が得意分野なので、今は原点に戻っている感じですね。特にNAMMショウに出展するようなモデルでは、木の組み合わせ方や加工精度を見ていただきたいと思って力を入れています。将来的には、まだ誰もやっていないことをやりたいというのがあるので、木以外の部分にも着手していきたい。ただ、それが珍しいだけじゃなくて、意味のあることをしたいですね」

STREAM-GT CTM Exhibition 2018 EX18-25
ド迫力なルックスが目をひく豪華1点モノ

 本器の特徴は、まずボディに複雑な模様を描く鮮やかなブルーのレジン(樹脂)材を組み合わせたバックアイバールを採用している点。ルックス面での統一感を持たせるために、ペグ・ボタンとポジション・マークにもレジンを採用しているが、これらの加工は手作業によるものだ。センター部のボディ材はマホガニーで、バールと同じく比較的軽くて柔らかい材のため、ネックと指板には硬いパーフェローを合わせることで音の輪郭を出すという狙いがある。さらに、エスカッションやブリッジ、テイルピース、ナット、トラスロッド・カバーといったハードウェアは削り出しのブラス製で、重量とサステインを稼ぐ効果もあるようだ。

 これらのバランスを確認したのちに、ベスト・マッチなピックアップが選定される。本器に搭載されているのは、セイモア・ダンカン・カスタムショップ考案のエクリプス・ハムバッカーで、フロントはアルニコ5によるダークな音色、リアはアルニコ8によるブライトな音色が特徴のセットだ。皆既日食の日に合わせてデザインされたということで、陰と陽という対のイメージがサウンド・キャラクター/出力の違いとして表現されている。今年の楽器フェアでも、こうしたモデルが多数出展される予定があるほか、おもにESP系列の店頭に並ぶこともあるので、見かけたらぜひ手に取ってみてほしい。

3~6弦のワッシャが埋め込まれた状態になっているのは、柔らかいバックアイバール材に剛性を稼ぐため。トラスロッド・カバーは削り出しのブラス製で、手作業によるエッチングにて文字や図柄を掘り込み、さらにアンティーク・ゴールド加工が施されている。ペグやビスなど、すべての金属パーツもすべて統一された質感だ。

こちらもブラス製のナット。スキャロップト加工は、アコースティック・ギターで稀に見られる手法。音の分離が向上する効果があるが、ルックスを重視した結果でもある。ポジション・マークにもレジン・ブルーが採用されている。

エスカッションもブラス削り出し。ピックアップ・カバーは木製で、ボディと同じくバックアイバールにレジンを含浸させたもの。

豪華なデザインが目を引くテイルピースもブラス製。厚みがあるのはサステインと輪郭のある音を狙ってのこと。

ボディ・バックのセンター合わせのレジン部分。トップも同様だが、切り株の形を活かしていて、空きとなる部分をレジンで埋めている。

ブラス製のコントロール・ノブ。右から、マスター・ボリューム、ピックアップ・セレクター、マスター・トーン。

【Specifications】
●ボディ:バックアイバール/レジンブルー(トップ/バック)、ホンジュラス・マホガニー(センター) ●ネック:パーフェロー ●指板:パーフェロー ●フレット数:24 ●スケール:648mm ●ナット幅:42mm ●ピックアップ:S/D Custom Shop ECLIPSE-n(フロント)、S/D Custom Shop ECLIPSE-b(リア) ●コントロール:ボリューム、トーン、PUセレクター ●ブリッジ:Tone Pros T3BT ●ペグ:GOTOH SG360-07 MG-T ●価格:810,000円

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カスタム・オーダーの新しい選択肢になってもらえたらうれしいですね(ESP 小林信一郎)

ESP 小林信一郎

 本器のような、バックアイバールとレジンの組み合わせは、アメリカでは家具やペン、ナイフの柄、電子タバコなどに採用されている手法なんですよ。ギターに採用するのは国内ではまだあまり見かけられないと思いますが、見た目がおもしろいかなということでチャレンジしてみました。また、一昨年くらいから、ワンオフで金属パーツにも取り組んでいます。完全に手作りになってしまうのですが、これも単純にやってみたらおもしろいかなというところからで(笑)。また、ゆくゆくはオリジナルのハードウェアを作っていくための布石というか、その準備段階という意味もありますね。トライバル系のデザインも僕が手がけたのですが、ミーティングで決めたりすることはなく、みんながノれば採用になります。もちろんカッコ悪いものは落とされますが、個人の意見を尊重するところがあります。
 3~6弦のペグのワッシャーが落とし込んだ加工になっているのは、耐久性を高めるためです。バックアイバールは柔らかい材なので、なるべくヘッドを厚くしたいなと。音や見た目の良さも大事ですが、剛性にもこだわったデザインになっているんです。ネック材にパーフェローを選んだのも同じで、あとはモコモコした音にならないように硬いパーフェローを選ぶことでバランスを取りました。こうしたエキシビション・リミテッド・モデルは毎回、新たな挑戦があるんですが、やはりウチはオーダーメイドがメインとしてあるので、お客様がオーダーする際に、より選択肢が広がったり、いろんなアイディアがふくらむといいなという思いがあります。塗装のバリエーションもいろいろですが、常に新しいものは求められるので、今回のレジンも選択肢のひとつになってもらえたらうれしいですね。(ESP 小林信一郎)

Shop Data

ESP(イーエスピー)

〒354-0046
埼玉県入間郡三芳町竹間沢東3-9
049-274-3810
https://espguitars.co.jp/

参考記事:ROLLY meets ESP Exhibition Limited 2017

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