ヘッドウェイの桜10周年記念モデル、第一弾としてSAKURA'24&YOZAKURA'24の全8機種が登場
- 2024/03/19
Synergy / SYN2 Dual-module Tube Preamp
新製品に目がない楽器マニアの間で注目されているブランド、Synergy Amps(シナジー・アンプ)。米国ロサンゼルスにある「Boutique Amps Distribution」という、フリードマンや65AMPS、トーン・キング、イグネーターなどの製造販売、ディーゼルの米国代理店などを手がける会社により、そのコネクションを利用して各ブランドの相乗効果(synergy)を生み出すために企画され、近年誕生したブランドだ。プリアンプに限らず、パワー・アンプSYN5050はVHTアンプの創始者であるSteven Fryette(スティーヴン・フライエット)氏が設計するなど、まさに各アンプ・メーカーの英知が結集したブランドと言えるだろう。
SYN2 Dual-module Tube Preampに目を向けてみよう。ふたつのスロットに好みのモジュール・ユニットを挿し込んでサウンドを変えていくこのアンプ……というかシステムは、2000年代初頭にブルース・イグネーター(EGNATER AMP)によって発表された。Egnater M4 Modular Tube Preampと命名されたラック・プリアンプで、日本でも音にこだわるギタリストに採用されていた。各ユニットに真空管12AX7を2本搭載したカートリッジ式のモジュール・ユニットを4つのスロットに配置し、MIDI制御で切り替えるという画期的なシステムで、言うなれば「デジタル・モデリングへのブティック・アンプ・ビルダーからのカウンター的存在」である。当時はイグネーター氏が自身でデザインしたモジュールが数種類(AC、DELUXE、PLEXIといった定番モデルからRECTIFIREまで)発売されており、このユニットに好みのモジュールを差し込むことで、2Uのラック・プリアンプの中にさまざまなアンプのサウンドを盛り込み、セッションで使うことができた。その後、ランドール・ブランドからもモジュラー・チューブ・システム(MTS)アンプが発売されていた。
シナジー・ブランドでも基本的な機構はMTSと変わらない。しかし、もはや別物のアンプに仕上がっているのだ。その秘密を解き明かしていこう。
SYN2 Dual-module Tube Preampは、その名のとおりふたつのモジュール・ユニットを組み込むことができるが、もちろんSYN2だけでは音が出ないので、まずはモジュール・ユニットを用意する必要がある。イグネーター時代からこのユニットの機構は変わっていないが、本機には新しいコントロールがいくつか追加されており、そのひとつがSAGというコントロールだ。これはラック・プリアンプの欠点でもある「真空管アンプを大音量で使用した際に発生するサッグと呼ばれる音色の変化」を擬似的に再現するために用意されている。アンプ・ヘッドやコンボ・アンプの場合、基本的にパワー・アンプ・セクションとプリアンプ・セクションはひとつの電源(トランス)から供給されており、パワー・アンプで大量の電力を消費すると、基板内の電圧が一瞬そのパワー・アンプの電源に引っ張られてしまい、コンプレッションにも似た音色の変化が生じる。ところがセパレート式のプリアンプとパワー・アンプをアンプ・ヘッドのように使用しても電源部分が分かれているので、このSAGが発生しないのである。これがラック・システム時代のサウンドの特徴だったと言えるだろう。今回のSYN2ユニットでは、この弱点とも呼べる部分が改善されたと言える。また、これまでのMTSにはなかったBYPASSというモードが用意されており、こちらに関してはのちほどご紹介しよう。
今回は2セット×2、計4つのモジュール・ユニットをチェックした。まず最初はTDLX moduleとPLEXI moduleの組み合わせ。TDLXはフェンダー製Twin ReverbとDeluxe Reverbのそのままのサウンドを各チャンネルに再現したイメージで、PLEXIはプレキシ系アンプの「あのミッド・レンジ」を持ったサウンドだ。もうひとつのセットは、モダン・ブティック・アンプを代表するフリードマンのHBE module、そしてディーゼルのVH4 moduleの組み合わせで、このふたつはどちらもオフィシャル・モジュールである。オフィシャルというのは、例えばフリードマンならフリードマン・ブランド自身がモジュールのデザインを行なっているということになる。つまり、イグネーターが考えたフリードマン・アンプのサウンドではなく、フリードマンがMTSユニットに向けてデザインしたオリジナル製品ということになるだろう。そのサウンドのクオリティは動画で確認してみてほしい。
動画では、マーシャル製JVMアンプ・ヘッドのセンド/リターンにSYN2をセットしてサウンド・チェックを行なっている。つまりSYN2をプリアンプとし、パワー・アンプはJVMを使っているということだ。それを踏まえて動画をチェックしてほしい。例えばTDLXのサウンドだが、よほど程度の良いコンボ・アンプでなければ味わえない、ハリのあるクランチ・サウンドに驚いた。もちろんスピーカー・キャビネットもマーシャル1960なので、クローズド・バックにセレッションのスピーカーというフェンダー系とは異なるセットアップ。しかもパワー管はEL34……それでもこの音が出れば、誰も文句を言わないだろう。PLEXIやハイゲイン系は、言うまでもなく素晴らしいサウンド。特にフリードマンHBEの進化したハイゲインJTMサウンド、そしてディーゼルVH4のダーティで抜けの良いヘヴィ・ディストーションが1台のSYNユニットで再現できることは非常に有効だと思う。
さらに、動画後半ではSYN2をアンプのセンド/リターンと通常のインプットに接続(下の図参照)。この接続だとSYN2がBYPASSモードの時はアンプ・ヘッドのプリアンプ(JVMのプリアンプ・セクション)を信号が通過し、パワー・アンプに送られることになる。つまり、SYN2のふたつのモジュール+JVMのプリアンプという3つのプリアンプ・セクションを自在に操れることになる。さらにMIDIで制御すれば……JVMのチャンネル(2チャンネル×3モード=6サウンド)に加えて、SYN2の各モジュールのサウンド(2チャンネル×2ユニット=4サウンド)が選択可能となる。WOW!
SYN2は、次世代の真空管アンプの在り方を提示したとも言える。それは凄腕のアンプ・ビルダーたちがアイディアを持ち寄り、生み出されたモデルだからだ。例えば典型的な話だが、ギター・プレイヤーがブティック・アンプを購入する場合は、現在使用しているモデルに飽き足らず……もしくは特定の音色を必要として手に入れる。そうすると次第にアンプは増えるし、もしかしたら売って買い換えなければならないかもしれない。しかし、あとで売ってしまったことを後悔する場合も……が、このSYN2ならアンプを買い替える必要はない。モジュールを交換すればいいし、気分次第で入れ替えれば良いのだ。
ブティック・アンプ・ビルダーと一般的なマス・アンプ・ビルダーの両方がそのポテンシャルを引き出し合って生まれたSynergyアンプ……まさにシナジーの名(ふたつ以上の組織、物質などが相互作用または協力により、それら別々が持つ効果の合計よりもさらに大きな複合効果を生み出すこと)に偽りなし。
今回ご紹介したSYN2のほかにも、モジュール・ユニット1基用のSYN1 Single-module Tube Preampや、50Wのパワー・アンプSYN5050 2-ch Tube Poweramp、30Wの真空管アンプ・ヘッドSYN30 SYN30 30 WATTS AMP HEAD、30Wの真空管コンボ・アンプSYN30C 30 WATTS COMBO、2×12&4×12の各キャビネットなどもラインナップしている。詳細はオフィシャル・ページをチェック!
価格:¥133,500 (税別)
価格:¥58,000 (税別)
価格:¥58,000 (税別)
価格:¥58,000
価格:¥58,000
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:Crews Maniac Sound / Bottom's Up
使用アンプ:Marshall / JVM210H
使用キャビネット:Marshall / 1960A