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阪井一生(flumpool)× UNIVERSAL AUDIO OX|Amp Top Box

UNIVERSAL AUDIO / OX|Amp Top Box

真空管アンプの出力に応じてインピーダンスが変化するリアクティブ・ロード・ボックスと、100種類以上に及ぶカスタム・リグ・プリセットが選択できるキャビネット・シミュレーターを組み合わせた、OX|Amp Top Box。ハイクオリティなエミュレーテッド・サウンドが得られると評判の本機だが、今回は4人組ロック・バンドflumpoolのギタリスト/コンポーザーである阪井一生にそのサウンドをチェックしてもらった。普段のデモ作りではUNIVERSAL AUDIO ApolloやUADプラグインを愛用し、UNIVERSAL AUDIO製品を使ってギター録りをしてきた阪井の耳にOXのサウンドはどう響くのだろうか? そのサウンド・チェックの様子をレポートしていこう。

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UNIVERSAL AUDIO OX | Amp Top Box

UNIVERSAL AUDIO OX | Amp Top Box(フロント・パネル)

(リア・パネル)

 発売以来ギタリストの熱い注目を集めているのが、リアクティブ・ロード・ボックスとキャビネット・シミュレーターを組み合わせたOX|Amp Top Box(以下OX)だ。真空管ギター・アンプのスピーカー・アウトを直接ミキサーやオーディオ・インターフェースにつなぐと、インピーダンスが合わずに破損する恐れがあるが、ロード・ボックスをつなぐことで疑似的にキャビネットと接続した状態になり、真空管アンプのサウンドをラインで録音することが可能となる。しかもOXは真空管アンプの出力に応じてインピーダンスが変化するリアクティブ・ロード・ボックスで、よりリアルなキャビネットの特性を再現可能。また、アッテネート機能により、真空管アンプがフル・ドライブの状態でもトーンを保ったまま、出力レベルを調整できる。以上はアナログ面の機能だが、OXはDSPによるキャビネット・シミュレーターも内蔵。17種のキャビネット・モデルを収録し、ダイナミック・スピーカー・モデリングによってコーンの紙質や熱による反応、オーバー・トーンなどを再現している。まさにアナログとデジタルの融合と言える製品だ。

▲OXのキャビネット・シミュレーターの操作はAPPLE MacまたはiPadの専用ソフト/アプリから行う。キャビネット・モデルの切り替えのほか、SPEAKER DRIVEノブでキャビネットの特性を変化させ、オーバー・トーン量などを調整できる。キャビネットに対するマイク2本とルーム・マイクの計3本分のチャンネルがあり、それぞれの音量やパンを調整できる。マイクの種類も選択可能だ

▲3つのマイク・チャンネルに4バンドEQ、マスターに4バンドEQとコンプ、ディレイ、プレート・リバーブが備わっている

【Specifications】
■入出力:インプット(フォーン、ギター・アンプ用)、スピーカー・アウト(フォーン)、ライン・アウト(フォーンL/R)、ヘッドフォン・アウト、デジタル・アウト(オプティカル/コアキシャル)■外形寸法:381.25(W)×138.44(H)×229.58(D)mm(ゴム足、ノブ、ジャック含む)■重量:6.4kg

【Requirements(専用ソフト/アプリ)】
■Mac:Mac OS X 10.12以降 ■iPad:iOS11以降 ■共通項目:2.4GHz帯域でのWi-Fi接続

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阪井一生(flumpool)が語る、UNIVERSAL AUDIO OX | Amp Top Box

真空管ギター・アンプの特徴的なトーンを保ったまま、
音やせしない状態で演奏できるのが良い

アンプのひずみを生かしたい場面はよくある

 OXのサウンド・チェックは、阪井のプライベート・スタジオにて行なった。用意した真空管ギター・アンプは、普段阪井がライブで使用しているMATCHLESS HC-30。まずはOXのロード・ボックスとアッテネート機能のサウンドをチェックするため、HC-30の出力をOXへ、そしてOXのTO SPEAKER端子とキャビネットを接続して鳴らしてみる。HC-30のボリュームを上げてドライブさせ、OXのSPEAKER VOLUMEノブで出音の音量を調整した。コードを鳴らした瞬間、阪井の口から「これはめちゃくちゃ良いですね!」という声が漏れた。

▲試奏中の様子。使用した真空管ギター・アンプはMATCHLESS HC-30で、ギターはFENDER Stratocasterだ。OXの出力は阪井所有のキャビネットとApolloに接続している

 「ギター・アンプのひずみを生かしたいという場面はよくあるのですが、音がひずむくらいボリュームを上げるとやはりうるさ過ぎます。仕方ないのでそういった環境でレコーディングしたりしてきたんですが、その対策にぴったりだと思いますね」

 OXは実機のキャビネットと同様、ギター・アンプの出力に応じてインピーダンス特性が変化する“リアクティブ”なロード・ボックスだ。それによってギター・アンプのトーンやダイナミクスを失うことなく、音量のみ調整できるようになっている。

 「真空管ギター・アンプの特徴的なトーンを保ったまま、音やせしない状態で演奏できるのが良いですね。小さい音量でもしっかりとトーンを保てているのはすごい。家でも弾ける音量になるし、ライブ・ハウスで演奏する場合も有用でしょう」

 次はOXのキャビネット・シミュレーター機能を試してもらおう。OXのLINE/MON OUTを阪井が所有するApolloへ接続し、モニター・スピーカーから出力する。キャビネット・シミュレーターのパラメーターを操作するには、APPLE MacまたはiPadで使える専用ソフト/アプリを使うが、今回はiPadのアプリを使用。「Mac上だけでなく、iPadのタッチ画面で直感的に操作できるのも良いです」と阪井は語った。

 OXは17種類のキャビネット・モデルを収録している。スピーカーの挙動や一定のノートが演奏されたときに倍音成分が付加されるコーン・クライと呼ばれる現象まで再現する“ダイナミック・スピーカー・モデリング”を採用。瞬間的に音を切り出したIR(インパルス・レスポンス)と違い、よりリアルなキャビネットの音を得られる。

 「全体的にかなり完成度が高いと感じました。今の技術でこんな音が出せるのかとちょっとびっくりしましたね。実機のキャビネットを鳴らしている普段の環境に限りなく近い状態で演奏できるのは素晴らしいです」

 専用アプリのキャビネット・モデルを選択するセクションにはSPEAKER DRIVEというノブがある。これはキャビネットの特性を新品に近い状態から経年劣化した状態まで変化させることができるパラメーターだ。新品に近い状態はパンチ感のある低域まで伸びたサウンド、経年劣化した状態は柔らかいサウンドになり、コーン・クライの現象も大きくなる。

 「面白いパラメーターですね。同じキャビネット・モデルでもキャラクターが大きく変わってきますし、ノブ一つで操作できるのも便利です。個人的には経年劣化したサウンドの方が好み。弾いていて気持ちが良いビンテージ感があります」

即戦力となるプリセットが用意されている

 キャビネットに立てるマイク・セクションを見てみよう。マイクはダイナミック/コンデンサー/リボン/DIなど、計7種類から2種類選択でき、それぞれの音量を調整可能だ。また、ルーム・マイクも別に用意され、アンビエンスを加えることができる。このルーム・マイクのサウンドにはUADプラグインのOcean Way Studiosのテクノロジーが使われている。

 「マイクについて詳しくないギタリストでも、OXで音を作る中で“レコーディングでもこのマイクに近いものを使おう”と考えるきっかけになると思います」

▲OXの専用ソフト/アプリにはキャビネットとマイクの組み合わせ、各エフェクトのプリセットが豊富に用意されている

 キャビネット・シミュレーターには4種類のエフェクト(EQ/コンプ/ディレイ/リバーブ)が収録されている。それぞれのエフェクトの印象について、阪井はこう語る。

 「EQはグラフィックEQだけじゃなくてパラメトリックEQとしても操作できるので、DAW上で調整しなくてもOXだけで細かい音作りができます。コンプは1176SEなので、レシオ全押しができるのが面白い。ディレイはナチュラルなものからモジュレーション系のプリセットまであって、普段使っているディレイよりも奥行きがある。リバーブはいつもUADプラグインのEMT 140を使っているので、同じプレート系リバーブが使えるのは魅力的。エフェクト全体として、即戦力となるプリセットが用意されているのがありがたいです」

 OXの機能を一通り試してもらう中、何度も「良い音!」と感嘆の声を上げていた阪井。最後にOXをこう評した。

 「操作が簡単なので、全くDAWやプラグインなどを使ってこなかったというギタリストでもすぐ使えると思います。自分の真空管ギター・アンプを使ってデモ作り、リハ、ライブまでできる環境を構築できるのは本当にすごい。僕も購入します!」

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製品情報

UNIVERSAL AUDIO / OX|Amp Top Box

価格:オープン

【スペック】
■入出力:インプット(フォーン、ギター・アンプ用)、スピーカー・アウト(フォーン)、ライン・アウト(フォーンL/R)、ヘッドフォン・アウト、デジタル・アウト(オプティカル/コアキシャル)■外形寸法:381.25(W)×138.44(H)×229.58(D)mm(ゴム足、ノブ、ジャック含む)■重量:6.4kg
【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://hookup.co.jp/products/universal-audio/
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プロフィール

阪井一生(flumpool)
山村隆太(vo)、尼川元気(b)、小倉誠司(ds)とともに結成したバンド、flumpoolのギタリスト/コンポーザー。2008年のデビュー以降、楽曲のリリースや国内外のライブなど精力的に活動。他アーティストへの楽曲提供も行う。

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