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  • プリアンプ、コンプレッサー、3バンドEQを備えるスタジオ・クオリティのユニット

api / TranZformer GT

api / TranZformer GT

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レコーディング機器の名機を数多く生み出してきたapiから
ブランド初となるギター用のマルチ・ユニットが登場

 apiというブランドは、ギタリスト/ベーシストよりも、レコーディング・エンジニアやスタジオ関係者にお馴染みのブランドかもしれない。1968年に設立され、ミキシング・コンソールのコンピューター化やオートメーションといった、現在のレコーディングには欠かせない機能を初めてコンソールに搭載し、世に送り出したブランドとして有名だ。ほかにもプラスティック・フェーダーやディスクリート・オペアンプ、入出力トランスなどのオリジナル・パーツを開発していることでも知られており、そのコンポーネント自体の品質も非常に高い評価を得ている。

 apiコンソールの特徴は、各モジュール自体がアウトボード・プロセッサーとして重宝される点にある。通称「ランチ・ボックス」と呼ばれるモジュール・ボックスに好みのユニットを装着できるので、高品質なスタジオ・クオリティ・モジュールを組み合わせ、場面に応じて自分だけのチャンネル・ストリップをセットアップすることができ、スタジオ/レコーディングからそのモジュールをコンサート・ワークに持ち出せるのだ。時代を超えたそのサウンド・キャラクターは、数多くのアメリカン・ポップスやロック・バンドの音源でチェックすることができ、1970年代から現代に至るまで活躍している。

 そのapiから、アウトボード・タイプのユニットが登場した。これまでのapiユニットはモジュール以外に専用のモジュール・ラックと電源ユニットが必要で、最もシンプルなセットアップ(ラック/プリアンプ/コンプ/EQ)をそろえるだけでも40万円~という高価なハイエンド機材であったが、今回紹介するTranZformerシリーズはギター/ベース用に機能を集約することで、apiモジュールの機能やサウンドはそのままに、驚くほどの低価格を実現。apiのサウンド・クオリティを身近に感じることができるようになった。

api / TranZformer GT

 今回の製品レビューでは、ギター用の「TranZformer GT」をチェックしてみよう。TranZformer GTはapi独自のプリアンプ、コンプレッサー、そしてギター用にチューニングされたEQユニットを装備している。

エフェクター・ボードの最終段につなぐことで
サウンドメイクの要として活躍

 TranZformer GTをオンにし、ゲインとボリュームをアジャストするだけで、すぐにapi独自のサウンドが得られることに驚いた。ギターからのシグナルは、まずapi製の「2520」というオペアンプ・ユニットを通過するが、apiではほぼすべての製品の心臓部にこの2520を搭載している。2520は音の重心が少し下がる……つまり芯のあるサウンドを生み出し、バイパス状態よりも若干タイトな印象を与えてくれるため、クリーン/クランチ・サウンドにツヤ感が出るだろう。

 GAIN(入力ゲイン)を上げていくと音にハリが出てきて、倍音感というよりは実音が力強くなっていくイメージを持った。GAINはいわゆる「歪み」を作り出すものでなく、あくまで入力レベルを調整するイメージで操作してほしい。LEVEL(アウトプット・レベル)は音量を調整するコントロールだが、過度なブースト効果を狙うというよりも、機材間のレベルをしっかりと調整するような印象だ。GAINを下げめ/LEVELを上げめの位置にし、そこからペダルをオン/オフしてレベル調整を始めると良いだろう。本機は入力ヘッドルームが高いので、ほかのペダルを本機の前段に入れても音がつぶれることがない。したがって、本機をアンプの直前/ボードの最終段に入れることで、サウンドメイクの重要なポイントとして活躍するだろう。

スタジオ・クラスのサウンドを持つコンプレッサーと
ギターの周波数レンジに合わせた実用的な3バンドEQ

 コンプレッサーは一般的なストンプ・ボックス系というよりも、スタジオ機材用のコンプレッサー・サウンドを連想させる。オン/オフを頻繁に行なうというよりは、使用する場合は常時オンにしたほうがこのコンプの使い勝手が感覚的にわかるだろう。ちなみにコンプをオンにした際に音量が下がるが、その場合は入力ゲインがオーバーロード(コンプレッション)していることを意味する。この場合はGAINを下げて、LEVELを上げ目にセットしてみると良いだろう。忘れてしまいがちだが、過大レベルの調整は不要なノイズを抑えることや、ペダル本来のパフォーマンスを引き出すために非常に重要なポイントとなる。特にエレキ・ギターの場合、機材間でオーバーロードしてドライブした音が「良し」とされてしまうこともある楽器なので、ゲイン(歪み)と音量をごちゃ混ぜにしてしまう傾向があるが、ギターとアンプの間に接続した機材間でのレベル調整は最終的な出音の質感に大きく影響するものだ。TranZformer GTを使用する際にはぜひ、このコンプレッサーの動作とレベルの関係を頭に入れておきたいところ。また、CLIPのインジケーターは最終段の手前でクリップを感知しているので、本機以前に接続したエフェクターのオン/オフでゲインがブーストされてしまった場合のチェックや、本機のEQセクションをオン/オフした際にブーストが発生しているかどうかもチェックできるだろう。この辺りは、スタジオでのシビアな信号の取り扱いがフィードバックされている。

 EQセクションは、TranZformer GTの個性を最も体感できる部分だろう。本機をオンにすることで信号が2520オペアンプを通過するので、3バンドEQがすべてフラット位置でも音色がグッと締まってくる。これはapiの550や560でも特徴となるポイントで、この辺りもスタジオ機器と同様のレスポンスが確認できる。EQ自体は1970年代の名機である「api 553EQ」にインスパイアされており、ギターの周波数レンジに合わせた3バンド固定EQは狙った帯域に驚くほど鋭く効く。低域は200Hz、中域は1.5kHz、高域は5kHzで、高域のみシェルビング・タイプとなっている。TranZformer GTではギター・サウンドに重要なミッド・レンジ帯にEQがフォーカスされており、直感的にギターのオイシイ部分を調整することが可能だ。アンプの直前に本機を配置することで、アンプのEQではフォローできない細やかなサウンドメイクが行なえる。また、アンプのセンド/リターンに本機を接続し、このEQをオンにすることで、アグレッシブな音作りも可能だ。コントロールできる周波数帯が少ないので、迷うことなくギター・サウンドを磨き上げることができる本当に素晴らしいEQだろう。

アンプ・シミュレーター使用時に音に奥行きを与え
レコーディングでも威力を発揮

 動画では、一般的なオーディオ・インターフェイスのHi-Zインプットに直接ギターを入力した際と、TranZformer GTを通過した際の音の違いもチェックしてみた。Hi-Zインプットは楽器を直接インプットできるハイ・インピーダンス対応であるが、プリアンプを搭載しているモデルであっても、いわゆる「エレキ・ギター・サウンド」と呼ぶには「少し冷たい音色」になってしまう印象がある。特にアンプ・シミュレーターでサウンドメイクする必要がある現場では、ギタリストのストレスになっている。今回TranZformer GTを使用してみて、Hi-Zにギターを直結した時に比べて、圧倒的に音の奥行き感や「余裕」を感じた。EQで少し補正することで音色に派手さも加わっているが、とは言え、この変化をコンパクト・タイプのEQペダルで再現しようとしても同じような効果は期待できないだろう。弦をヒットした際のニュアンスや、サウンドのドライブ感はアンプで弾いている感覚に近く、音圧感も感じられた。プラグイン派のみなさんにも、ぜひお試しいただきたい。

筐体側部にはライン・アウト端子やグラウンド・リフト・スイッチを装備

 プレイヤー個人がサウンドをプロデュースし、録音まで自身で行なっているという昨今の音楽制作事情や、コンピューターで音色を取り扱う機会が増えれば増えるほど、今回のTranZformer GTのようなアイテムのありがたみがよくわかる。例えばエフェクターを数珠つなぎにしたり、スイッチャーのようなルーティング・システムを愛用する皆さんも多いと思うが、システムが複雑になると、ギターをアンプに直結した際のあの艶っぽいサウンドから、どうしてもハリと艶が欠けてしまうだろう。そういった場合に本機をペダル・ボードの最終段に配置してサウンドをチューニングすれば、ゲインとトーンをアジャストし、アンプをフル・ドライブさせ、本来の力を発揮させることも可能だ。

 また、プラグインやアンプ・シミュレーターを使用する場合、ギター・サウンドをワンランク上、そしてプロ・クオリティにまで仕上げたい皆さんには必須のアイテムだと言えるだろう。

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製品情報

api / TranZformer GT

価格:オープン

【スペック】
●入出力端子:1/4インチ Hi-Z アンバランス入力、1/4インチ Hi-Z アンバランス出力(レベル可変)、XLRバランス・ライン(出力レベル固定) ●コントロール:200Hz & 1500Hz(ピーキング)、5kHz(シェルビング)、レシオ、アタック、リリース(6段階) ●電源:+18VDC(650mA) ●外形寸法:20.3(D)x14.0(H)x10.2(H)cm ●重力:約1.81kg
【問い合わせ】
ミックスウェーブ TEL:03-6804-1681 http://www.mixwave.co.jp/
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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