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- 2024/03/22
電子楽器
こんにちは、Yebisu303です! うだるような猛暑に見舞われている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。夏のボーナスでどんな機材を買おうかワクワクしている人も多いのではないでしょうか? 今回もライブ・パフォーマンスの手法研究を通じて、ハードウェア機材の新たな魅力をお届けしていきます。それでは張り切っていってみましょう!
今回のテーマは「Analog Rytm、Analog Four、Avalon Bassline、RMX-500で演奏するドリルンベース」です!
Jungle(ジャングル)やDrum’n’Bass(ドラムンベース)を起源に持つ電子音楽のジャンルで、1990年代中盤~2000年代前半に最も大きな盛り上がりを見せました。有名なアーティストとしては、スクエアプッシャー、エイフェックス・ツイン、ルーク・ヴァイバート、μ-Ziq(ミュージック)などが挙げられます。近しいジャンルとしてはBreakcore(ブレイクコア)も有名です。
音楽的な特徴としては、過剰に解体・再構築され、1音ごとに逆再生・ピッチシフト・グレインシフター・ディレイといったエフェクトが施されたブレイクビーツや、叙情的なコードワーク、メロディなどが挙げられます。
そのほかのオススメをSpotifyプレイリストにまとめてみましたので、興味がある方は是非こちらもチェックしてみて下さいね。
Elektron初のアナログ・シンセです。同時発音数は4ボイスと少なめながら、4つのトラックへシンセ・ボイスを動的に割り当てることができる上、ステップごとに任意のプリセットへの切り替えが可能。従来のアナログ・シンセとは一線を画する音創り、パフォーマンスが可能なグルーブ・ボックスに仕上がってます。リズム音源として使っても非常にユニークな音を鳴らすことができますよ! さらに4トラックまで同時出力可能なCV/GATEシーケンサーを備えているため、他社のアナログ・シンセサイザーやモジュラー等との連携もお手のもの。
2017年にはサイズ・アップし、音源回路が一新され、クイック・パフォーマンス・ノブの追加やディスプレイの高解像度化など操作面共に大きくブラッシュアップされたAnalog Four MKIIが発売されました。
Elektron初のアナログ・リズムマシン。12トラック/8ボイスごとに、可変幅の広い高品質なアナログ音源とサンプルを同時に扱うことができ(どちらか片方だけ鳴らすことも可能)、打ち込み方法もパッドでのリアルタイム入力とトリガー・キーによるステップ入力の両方に対応するなど、さまざまなシーンでの用途に対応するリズム・マシンに仕上がっています。
こちらもAnalog Four MKIIと同じくクイック・パフォーマンス・ノブの追加やディスプレイの高解像度化、本体のみでもサンプリングが可能になった新しいバージョンのAnalog Rytm MKIIが販売されていますが、小型で持ち運びが容易、かつ価格がこなれてきた旧バージョンもまたマシン・ライブのお供に最適と言えます。
シンプルな操作で様々な効果を生み出すことが出来るマルチエフェクターです。左右に配置された大きなツマミを回してエフェクトのかかり具合、またツマミを押し込むことでエフェクトのモジュレーション量をコントロールできます。目まぐるしい操作に追われがちなたくさんの機材を組み合わせたライブ・セットの中でより真価を発揮するエフェクターと言えます。上位機種のRMX-1000では本体背面に入出力端子が配置されていますが、RMX-500ではそれらが側面にまとまっているため、縦に機材を並べた際に、ケーブルが邪魔にならないのも好印象です。
Rolandの名機TB-303のクローンとして作られた、モノフォニック・ベース・シンセ。音色の可変幅が広い上、ステップごとにゲート・タイムやスライド・タイムを変更可能なシーケンサーやモジュレーション用のエンベロープを搭載するなど、世に出回っているTB-303クローンの中で異彩を放つ存在となっています。また、専用のフィルター・カートリッジを本体に差し込むことで出音のキャラクターを大幅に変えることができ、その豹変ぶりはまるで別のシンセサイザーになったかと驚くほどです。CV/GATEの入出力やフィルター変調用のCV出力を搭載するなど、外部の音源やシーケンサーとの連携も楽しめます。アシッド・ハウス好きはもちろん、音作り好きなすべてのシンセ・ファンにオススメしたい1台です。国内販売されていないので入手が難しいですが、デジマートで中古が出品されているかもしれませんので、是非チェックしてみてください。
ドリルンベースは、ドラムのフレーズをサンプラーなどで分解して再構築したブレイクビーツをいかにカッコ良く鳴らすか(“転がす”という表現が度々使われます)が肝になります。今回は定番ネタが多く収録されているサンプリング素材集『ZERO-G Jungle Warfare Vol 1』の中から、”Think(シンク)”というブレイクビーツをメインで使用しました。これは、ソウル歌手Lyn Collinsの名曲”Think(About It)”の間奏に収録されているドラム部分のみを抜き出したブレイクビーツで、Amen(アーメン・ブレイク)に次いで、ドリルンベース・ブレイクコアはもちろん懐かしのビッグ・ビート等、数多くのジャンルで使われてきた知名度の高いブレイクビーツです。
ブレイクビーツをAnalog Rytmで使いやすいようDAWなどの波形編集ソフトを使って複数のファイルへ切り分けます。同機ではサンプルの再生位置調整パラメーターが“0~120”となっている為、ブレイクビーツを12の倍数で綺麗に頭出しできる長さに切り分けておくことをおすすめします。シンクは1小節分の長さなので、音のアタックを意識しつつ、4等分にしてみました。こうしておけば、サンプルのスタート・ポイントを“0、30、60、90”と設定することで、切り分けたサンプルの再生/終了位置をさらに細かく指定することができます。
これらのサンプルをAnalog Rytmへ転送したら、早速打ち込んでみましょう!まず、元ネタ通りに鳴らせるように、4ステップごとに先ほど切り分けたサンプルを配置して基本のパターンを打ち込みます。その後、これをコピー&ペーストして派生パターンを作り込む…という具合に、1つのネタを元にしてリズムのバリエーションを作っていくと効率良く準備を進められます。
よりトリッキーなシーケンスを打ち込みたい場合は、各ステップごとに音色のパラメーター値を保持できるパラメーター・ロックと、2つのステップに設定したパラメーター・ロックの間をなめらかに変化させるパラメーター・スライドを使うととても面白い効果を作り出すことができます。
今回は例として「高速でサンプルをロールしながら徐々に再生位置と音程を変化させる」効果を打ち込んでみましょう。
[手順1] 任意のパターンのSTEP1に下記のパラーメータをロックする。
SAMPLE TUNE : 0
SAMPLE START : 0
SAMPLE END : 29
SAMPLE LOOP : ON
[手順2] 手順1と同じパターンのSTEP16に下記のパラメータをロックする。
SAMPLE TUNE : +12
SAMPLE START : 90
SAMPLE END : 119
SAMPLE LOOP : ON
[手順3] Function + Bank H (Slide)を押してParameter Slide編集モードに入った後、TRIG1と16を押す。
このようなテクニックを応用して、自分がお手本とする曲のブレイクビーツを注意深く聴きながら同じ鳴らし方を再現できるよう試行錯誤してみましょう。きっと、触れば触るほどかっこよくブレイクビーツを鳴らせるようになりますよ!
Analog Four、Analog Rytmには、シーケンサーの走行位置を保ったまま別のパターンへ切り替える「ダイレクト・ジャンプ」という機能があります。これを上手く使えば、あたかも新しいパターンをリアルタイムで生成しているかのような効果を得ることが出来ます。
設定の仕方は、液晶ディスプレイに「PTN: DIRECT JUMP」と表示されるまでFunctionボタンを押しながらBank Group(Direct Change)ボタンを数回押すだけです。
動画の中の1:25付近で素早くドラムのサンプルやシーケンスを切り替えているのがお分かりになりますでしょうか?
今回は、TRIG1~16ボタンを押すだけで素早くパターン・チェンジが行なえるように、養生テープを使って“バンク選択ボタンを押したままの状態”になるように工夫してみました。パターン・チェンジの先行入力よりも操作と音変化の関連性がひと目で分かりやすくライブ映えするテクニックですので、ぜひ試してみて下さいね!
Analog Fourには、4系統出力可能なCVトラックが搭載されています。これを最大限活用し、CV/GATEを搭載しているAvalon Basslineのシーケンスとフィルタ開閉をコントロールしました。
CV/GATEとは、アナログ・シンセを外部のシーケンサーから鳴らす為に制定された規格です。CV(Control Voltageの略)は音高を、GATEは発音のタイミングと長さをコントロールする信号で、これらには大きく分けてV/OctとV/Hzという2通りの規格があります。
※今回はAvalon Basslineを使用しましたが、CV/GATE入力端子を搭載しているKORG MS-20 miniやDoepfer Dark Energyなどもオススメです。
このセットアップを実現するためにはいくつかの準備が必要となります。それでは早速取り掛かりましょう!
Analog Fourの出力(CV AB、CV CD)が標準ステレオ、Avalon Basslineの入力(CV、GATE、FILT IN)がモノラル・ミニ端子となる為、これらを接続するための分岐用ケーブルが必要になります。
しかしながら、このようなケーブルはポピュラーではないため、今回は「ステレオ・ミニ(オス)ー モノラル・ミニ(メス)×2」の分岐ケーブルと、「ステレオ標準(オス)ーステレオミニ(メス)」の変換プラグ、さらに「モノラル・ミニ(オス)ーモノラル・ミニ(オス)」のケーブル、KORG SQ-CABLE-6を組み合わせて接続しました。
Avalon BasslineのCVはV/Oct規格を採用していますので、それに沿った設定を行ないます。(アナログ・シンセのCV/GATEに関する細かい仕様は、通常マニュアルに記載されています)
[手順1] Function+Globalボタンを押下し、GROBALメニューに移動
[手順2] カーソルキーで「CV CONFIG」を選択し、Yes/Saveボタンを押す
[手順3] 「CV A(B)CONFIG」を、下記の通りに設定
[CV A CONFIG]
・TYPE : PITCH V/Oct
・NOTE 1 : C1
・VOLTAGE 1 : 0.000V
・NOTE 2 : F#6
・VOLTAGE 2 : 5.333V
[CV B CONFIG]
・TYPE : GATE
・POLALITY : V-TRIG
・LEVEL : 5.0V
[CV C CONFIG]
※CV A CONFIGと同じ内容で設定する
Analog Fourのキーボードでオクターブにまたがって同じ音程を鳴らしてみて、不自然なピッチのズレが発生していなければ設定成功です! 後はCVトラックでシーケンスを打ち込んでいきましょう。
すべてのCVトラックで、トラック1~4、FX、CVトラックのいずれかを発音のソースとして選択することができますので、思い通りの効果が得られるまで色々試行錯誤してみて下さい。ちなみに今回は、フィルタ開閉コントロールを行うためのソースとしてCVトラックのLFOを使用しています。
Analog Four、Analog Rytmを操作する合間にRMX-500をはさむことで、よりトリッキーな印象を加えることができます。遠慮せずガンガン使っていきましょう!動画の中では2:27付近で多用していますよ。
RMX-500のエフェクトで個人的にオススメしたいのは HPF、LPF、MOD、REVERB UP、ADD、REV DELAYです。これらのエフェクトにECHOを足し、曲の展開が変わる直前にECHO+BEATボタンでディレイ・タイムを急激に変化させるといった使い方も面白いですよ。
また、意外と知られていませんが、SCENE FX(本体右側に配置されているエフェクト)は異なるタイプに切り替える事が可能です。操作方法はCUSTOMIZE SHIFTボタンを押しながらタイプを変更したいエフェクトのボタンを押すだけ! エフェクトの質感がいまいち曲に合わない…と思った時は、ぜひお試し下さいね。
Analog Four、Analog Rytmにはそれぞれステレオ入力が用意されているため、使用する機材を直列に接続すればミキサー不要のライブセットが完成します!
さらに、Analog Fourは入力した信号に対してセンド・エフェクト(コーラス/リバーブ/ディレイ)を掛けることが出来るので、外部音源との組み合わせがより楽しくなりますよ。
今回は下記図のように接続を行い、Avalon Basslineにリバーブとディレイを薄くかけています。
マシン・ライブをしたことがある人の中には「自分の前後にプレイしているDJとの音圧差が気になる…!」という経験をした方も多いのではないでしょうか? 特にアナログ・シンセを使用している場合、音色変化によって音量が大幅に変わることも多いため、あまり大音量が出せない小さなバーでのライブでその傾向が顕著に現れます。そこで効果を発揮するのが、Analog Rytmに搭載されているコンプです!
スレッショルド、アタック、リリース、メイクアップ・ゲイン、コンプレッション・レシオと、基本的なパラメータは一通り押さえられており、穏やかなコンプレッションから過激な歪みを伴うエフェクティブなコンプレッションまでを行なえます。原音とコンプ済の信号を好みの割合で混ぜることができるのもうれしいですね。
また、サイドチェインEQの設定を行うことで、コンプが行われる周波数帯域を指定することが出来ます。LPF(ローパス・フィルター)を選択することで低音に合わせて大きくうねる効果を生み出したり、HPF(ハイパス・フィルター)を選択することで効果の対象をベース以外に限定し、低音の有無に左右されない安定したコンプレッションを得ることができます。
ぜひ自分の表現したいサウンドに合うセッティングを模索してみて下さいね。
いかがでしたでしょうか? パターンの切り替えやツマミでの音色変化・ボリューム調整に終始しがちなマシン・ライブですが、このように設定と工夫次第でよりアグレッシブなパフォーマンスを行なうことができます。
2018年8月10日(金)に開催されるコミックマーケット94の1日目に頒布されるテクノのコンピレーションCD「秋葉原重工コンピレーション09」に、私Yebisu303とREBUSTAPE NoiseElectronicDivision氏のユニットYEBISTAPEにて1曲提供させて頂きました。
今回ご紹介したAvalon Basslineを始めとしたハードウェア機材でセッションを行ないつつパラデータを録音、それを基にDAWで再構成&肉付け…という流れで制作したトラックです。キック・金物・一部のパッド以外はすべてAvalon Bassline×2台とDave Smith Instruments Evolverから鳴らされています。とても格好良いトラックに仕上がりましたので、こちらも是非チェックしてみて下さいね!
[クロスフェード視聴] https://soundcloud.com/ahi_jp/ahi-compilation-09-crossfade
[詳細] http://www.ahiweb.info/post/176475802352/ahi09
それではまた次回お会いしましょう!
Yebisu303
トラックメイカー。20代後半よりトラック制作を開始。無類のハードウェア機材愛好家でもあり、日々マシンライブを行う傍らで演奏動画をYouTubeへ投稿している。アナログ・シンセサイザー"KORG monologue"のプリセット製作を担当。