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  • レコーディング品質のサウンドを実現する、api初のベース・プリアンプ/コンプレッサー/EQペダル

api / TranZformer LX

api / TranZformer LX

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レコーディング業界御用達ブランドによる
初のベーシスト向けエフェクター

 apiは1968年にアメリカで創業されたプロ・オーディオ向けの音響機器メーカーで、放送業界やレコーディング業界では知らぬ者はいないほどの定番ブランドです。api製品のほぼすべてに、自社開発のディスクリート・オペアンプ(個別部品で組んだ回路をオペアンプとして使えるようモジュール化したもの)であるapi 2520を搭載しており、2520を軸に創出されるストレートでバランスの良い音色、“apiサウンド”は大変定評があります。また、電源が一体となったランチボックスと呼ばれるコンパクトなケースに、同一規格でモジュール化されたマイク・プリアンプ、EQ、コンプレッサーなどを自由に組み込むことができる500シリーズも人気があり、近年では他社からも500シリーズの規格に対応するモジュールが数多く発売されています。

api / TranZformer LX

 そんなapiによる、日本でも新たに発売が開始されたTranZformer LXは、EQやコンプレッサー、DI機能などを搭載するベース用エフェクターであり、apiとしてはエンジニア向けのみならず、ベース・プレイヤーに向けて作られた初めての製品とも言えるでしょう。本機の最大のポイントは、apiの真髄でもある2520オペアンプをはじめ、2510オペアンプや出力トランスの2503を搭載するなど、レコーディング機器と同等のパーツや回路を採用している点で、本機を通すだけでもapiならではの優れた音色を堪能できます。さらに、本機のコンプレッサー・セクションには500シリーズの定番機種525コンプレッサー(フィードバック方式のFETタイプ)と同じ回路を採用しているほか、EQセクションも名機553EQ(EQ回路にインダクターを採用しているのが特徴)直系の回路となっており、ベース用エフェクターとはいえapiならではの優れた機能と操作性を実現しているのです。

 本機は、同梱される18Vの専用アダプターで駆動され、ゲインは+30dBありヘッドルームにも余裕があります。3バンドEQはトレブルとベースがシェルビング・タイプではなく、すべてピーキング・タイプとなっているのも特徴で、それぞれの中心周波数は100Hz、400Hz、2kHzで±15dBとなっています。コンプレッサーは6つのプリセットが用意されており、プリセットの選択とゲインとの兼ね合いによってかかり具合を調整するイメージですね。フット・スイッチは3つあり、トーンとコンプレッサーのオン/オフとバイパス・スイッチです。先述の通りトーンとコンプレッサーがオフでも本機のプリアンプ・セクションを通るので、apiサウンドが堪能できます。バイパス・スイッチを入れると回路はすべてバイパスされ、XLRアウトはオフになります。クリップ・インジケーターは回路の最終段から検出しているのでEQの過剰なブースト設定も検知できます。その他、フェイズ・スイッチやグラウンド/リフト・スイッチも装備されていて、例えばステージ上でノイズが気になったり、ベース・アンプとライン・アウトの位相関係が気になったりした場合に対処ができますね。

api / TranZformer LX

出力端子は、Hi-Z アンバランス・アウトとXLRバランス・アウトが2系統。それぞれに位相反転スイッチと、XLRバランス・アウトにグラウンド/リフト・スイッチを備える

ベースに特化した的確なEQ(TONE)ポイントと
直感操作可能な高品位コンプレッサー機能

 肝心の使用感ですが、本機を通しただけでバイパス時との音色差は歴然です。ベース・アンプから聴こえてくる音色は上質なバッファーを通したような感触で、輪郭に艶が出る印象。ライン・アウトの音色はレンジが広く元気な音色で、高品位なレコーディング機器を通したときと同じような印象でした。EQはパッシブEQのように自然なかかり具合ながらも効きが良く、ベース用に設定された周波数ポイントも的を射ていて、狙いを絞った的確な音作りがしやすいです。EQをオンにしつつフラットに設定して、553と同等の微妙な音色の違いを生かした音作りをするのも良いでしょう。

 コンプレッサーはアタック・タイムが固定で5ms未満、リリース・タイムは100ms前後で自然な効果に聴こえるよう周波数ごとに自動調節されます。各プリセットによってレシオは2:1〜20:1と変化し、スレッショルド・レベルとメイクアップ・ゲインの設定も同時に変わるので、最初のうちはコンプレッサーの効果を理解し体感するのに時間がかかるかもしれませんが、慣れるととても音楽的で使いやすいコンプレッサーだということがわかります。基本的には数字が大きいほどコンプレッサーのかかり具合は深くなります。コンプレッサーをオンにすることで極端に音量が下がってしまう場合はゲインの設定にミスがあるということなので、ゲインとレベルの設定を見直しましょう。6つのプリセットしかないからと言って、コンプレッサーの機能に妥協があるわけではありません。むしろ6つに絞ったプリセットのおかげで、設定がしやすく音作りが素早く決まるでしょうし、一度このコンプレッサーの音色を体感してしまうとオフにすることもないでしょうから、細かい設定の必要性すら感じないでしょう。

ツマミは非常にシンプルで、ゲインとレベル、3バンドEQ、コンプ・セレクト・スイッチのみ。直感的な操作でスタジオ・クオリティの音作りができる

フット・スイッチは、BYPASS(プリアンプ部のON/OFF/LED点灯時はOFF)、TONE、COMPの3つ。演奏スタイルや楽曲のパートごとなどで切り替えることも可能だ

 なにより、本機を通すだけで音色が豊かになってベースを弾くのがより楽しくなりました。レコーディング・スタジオにしかなかったapiの機材が自宅で気軽に活用できるなんて、良い時代になりましたね。宅録派のベーシストにとってはDTM環境が大きく改善されるでしょうし、apiサウンドを手に入れることで音色バリエーションはさらに豊かなものになるでしょう。もちろんレコーディングに限らず、ライブでも活用できるでしょうし、本機を自分のエフェクト・ボードに入れてapiサウンドを持ち歩けるというのも大きなアドバンテージとなるでしょう。

参考記事:製品レビュー・api / TranZformer LX

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製品情報

api / TranZformer LX

価格:オープン

【スペック】
●入出力:1/4インチ Hi-Z アンバランス入力、1/4インチ Hi-Z アンバランス出力(レベル可変)、XLRオス バランス・ライン出力(レベル固定) ●コントロール:GAIN、LEVEL、100Hz、400Hz、2000Hz、COMP(6段階) ●電源:+18VDC(1000mA) ●外形寸法:14.0(W)x20.3(D)x10.2(H)cm ●重力:約1.81kg
【問い合わせ】
ミックスウェーブ http://www.mixwave.co.jp/
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