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- 2024/03/22
Peavey / invective.120 Head
噛み砕くようなクランチ、音圧が迫まり来るハイゲイン、そして純度100%のクリスタル・クリーン……カラッとしたアメリカン・サウンドが定評のPeaveyが満を持して発表したinvective.120 Head(以下invective)をご紹介しよう。
歴代のPeaveyサウンド、その特徴をすべて備えたとも言えるこの3チャンネルのアンプ・ヘッドは、人気バンドであるペリフェリーのギタリスト、ミーシャ・マンソーとの共同開発/設計された。Peaveyを代表する6505アンプをベースに改良を重ねた結果、クリーンから激歪みに至るまで、すべてのサウンドに磨きがかけられている。
invectiveは完全に独立したクリーン・チャンネル(以下クリーンCh)と、共通のEQを備えたクランチ/リード・チャンネル(以下リードCh)を持っている。また、クリーンCh/リードChともに独立したブースターを装備。クリーンChは「ゲイン・ブースト」、リードChは「レベル・ブースト」となっているあたりに、ミーシャとのリレーションが見て取れる。
さらに特筆すべきはGATEセクションだ。モダン・ミュージックはもちろん、80’sスタジアム・サウンドにも欠かせないゲート機能をご存知だろうか? この機能はゲート(門)の文字どおり、音が出た瞬間に門が開き、サステインの減衰(音量の減少)とともに門が閉じるイメージを持ってもらえばいいだろう。無音時は門が閉じているので、ハム・ノイズやハイゲインならではのホワイト・ノイズが一切気にならない。そして音を出した瞬間、ゲートから大音量が放出されるということだ。さらにゲートにはハイゲインのノイズ対策のほかに、ジェント系ハイゲイン・サウンドには欠かせない、独特のサウンド・エンハンス効果が得られるという利点もある。ブリッジ・ミュートでキレと迫力のあるディストーション・サウンドを生み出したい皆さんは要チェック。
クリーン・チャンネルは、圧倒的にクリアで全帯域をカバーするようなサウンドが特徴的。カントリー・リックから80年代風のクリスタル・クリーン、モダンで滑らかななクリーンなど、幅広いサウンドメイクが行なえる。大音量でもクリーンがキープできるのが何よりうれしい。
クランチ/リード・チャンネルは、お互いが相互的に作用するような印象で、例えばクランチ・チャンネルでもかなり深いディストーション・サウンドが得られる。まさにモダン・ブラウン・サウンドを作り出したPeaveyの真骨頂とも言える音だ。リード・チャンネルは、激歪みをさらに圧縮して押し出したような凄まじいサウンドで、アンプ・ヘッドだけでこの音が作れるとは驚くしかない。
圧倒的なサウンドだけが、このinvectiveの特徴ではない。豊富な機能に注目しよう。まずは完全独立となるふたつのシリーズ・エフェクト・ループ。このループはプリアンプ後段、マスター・ブーストのあと(マスター・ボリュームの直前)に配置される。これにより、プリアンプ・サウンドを損なわないサウンドメイクが行なえるように配慮されている。空間系エフェクトを配置することで、アンプ・サウンドを濁らせずに美しいエフェクト効果をプラスできるだろう。またアンプ背面にはエフェクターに電源を供給するためのDC9Vパワーサプライ(2x9VDC@500mA)が用意されていた。これはうれしい心遣いだ。
もうひとつのポイントがマスター・ブースト機能だ。効果としてはレベル・ブースターなのだが、アンプ後段に配置されたことでその威力はハンパではない。エフェクト・ループ直前の信号を最大5dBブーストし、ソロやバースなどで圧倒的な迫力を演出可能だ。
invectiveの凄さはそれだけではない。これらの素晴らしい機能を、すべて一括リモート・コントロール可能な専用ペダルが付属する。一般的にここまでの機能を集中コントロールするスイッチャーとなると、数十万円のシステム費が予想されるが、このアンプでは付属で提供される。電源も専用ケーブルで供給されるので、足下はスマートに完結できるだろう。そして、機能面での追い込みにも注目してほしい。
ダイレクト・モードでの各スイッチの動作は以下。
■各チャンネルの選択(リレー式)
■各エフェクト・ループのON/OFF
■選択中チャンネルへのドライブ・ブーストON/OFF
■マスター・ブーストのON/OFF
■GATEのON/OFF
■外部MIDIへのCC送信(#004/0-127)
上記マニュアル・モードでの各スイッチの動作に加え、これら各スイッチの組み合わせをプリセットすることも可能。プリセット・モードでは、最大9つのプリセットを切り替えて使用することができる。もちろんプリセット・モード中にダイレクト・モードに切り替えて、リアルタイムでサウンドをエディットすることもできる。invectiveを完全に制御することが可能だ。
さらにバック・パネルにあるPeavey独自のMSDIライン・アウトに注目したい。これはマイク・シミュレートされたダイレクト・シグナルを、オーディオ・インターフェースやミキサーに出力できる。マイク補正機能を持ち、invectiveと組み合わせて使用しているスピーカー・キャビネットの音を再現してくれる。LEVELコントロールはXLRジャックからの出力レベルを調整し、TONEコントロールはライン・サウンドの極端な高域をロールオフし、PAシステムのツィーター・ドライバーとのバランスを取ったり、耳障りな帯域をカットしてくれるのだ。そのサウンド・クオリティはデジタル・アンプのサウンドを軽く凌駕する。
現在進行形のサウンドを体現しながらも、伝統的なギター・サウンドもフォローする素晴らしさ。機能面でもシンプルに「今欲しい機能」をすべて備えたと言っていいだろう。何よりアンプのコントロールがシンプルなのが最高だ。たくさんのスイッチを持ってさまざまな音色をカバーするというよりは、「Peaveyが自信を持って最高だと思うサウンドと機能」がこの1台に集約されている印象。高い技術力、そして歴史を作ってきたサウンドの迫力、パワーを思い知らされた。
価格:¥299,800 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:Peavey / HP2
使用キャビネット:Peavey / 6505 Straight Cabinet
使用エフェクター:strymon / FLINT
使用エフェクター:Eventide / H9