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いよいよ完成! 室長が“夢のギター”をESPにカスタム・オーダーしてみた!【後編】

ESP / カスタム・ギター&ベース

「室長のカスタム・ギター、できたらしいぞ」
「へえ」
「それが、マジでいいらしいんだよ」
「誰が言ってんの?」
「えーと、室長のTwitter」
「……本人かよ。説得力ねぇな」
……いやいや、カスタム・ギターはオーダーした本人にとって最高であることが何より重要なので、それでいいんです! どこがそんなに最高なのか、なぜ最高なのか、説明しますね!

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いよいよ完成! 室長が“夢のギター”をESPにカスタム・オーダーしてみた!【後編】

【実験テーマ】過去の実験結果を踏まえた夢のギターとはどんな1本になるのか?

2018年、夏。
 観測史上、例がないほどの猛暑の日々は、私にとって人生で最もギターに恋い焦がれた夏になりました。前編で述べたように、5月中にカスタム・ギターの仕様を決めたのち、それから私にできることは基本的に“待つ”ことだけでした。もちろん途中で何度か木地の確認やグリップの確認などがあり、着実に進展している実感はあったものの、基本的には待ち。ですが、この待つ時間が、とても楽しいものでした。

 塗装前の材は確認していますが、塗装後の杢目はどんな見え方になるんだろう? ちゃんと狙った音はするだろうか? そう考えると、毎日毎日、ワクワクが止まりません。最初にオーダーについて相談した時は「製作期間、約半年? 長いなぁ」と思いましたが、今となっては半年間も毎日ワクワクできて、とても楽しい日々だったと感じています。唯一辛かったのは、地下実験室の前編でカスタム・ギターをオーダーしたことを公開する日まで、オーダー・ギターのことを人に話せなかったこと。もうね、喋りたくて喋りたくて仕方がなかったです(笑)。そして、この原稿を書いている現在も「SNS上で写真は見せないように」と頼まれています。うー、自慢したくて仕方がないんですけど(笑)。本当に、ここまであのギターを好きになろうとは思ってもみませんでした。もちろん、良いギターができるだろうとは思っていましたが。

 8月30日(木)、ついにデジマート地下実験室特別編「室長が“夢のギター”をESPにカスタム・オーダーしてみた!【前編】」公開。

 思っていた以上の反響をいただき、びっくりしました。……なるほど、皆さん、いろいろなところが気になるんですね。特に、やっぱり価格かぁ! その点は動画、そしてこの原稿の後半で明かしますので、もう少しお待ちを。未だに地下実験室が愛されていることにも、とても驚きました。本当にありがとうございます。それでは前回からの続きをお楽しみください。

製作記その6 9月某日 「完成の一報」

 9月に入ったある日、待ちに待った完成の連絡がありました! うおお〜っ、ついに出来たか! では、今すぐに取りに行きます……とはなりません。このデジマート地下実験室で、ガチの初対面シーンを撮影するため、収録日までお預けです。この期間だけは正直、辛かった(泣)。

製作記その7 9月20日(木) 「完成品の受け取り」

 この日のことは、一生忘れません。ESPダイレクト・ショップを訪れ、ケースを開けて見たギターは、5月にもらった図面に想像で杢目を書き入れ、毎日眺めて楽しんでいた絵とほぼ同じでした(写真下)。この瞬間を、ずーっとずーっと、思い描いていたんですよ!!

室長によるカスタム・ギターの完成想像画

 実際に手にした第一印象は、「軽い!」です。私がこの夏によく弾いていたテレキャスターは、オールローズの4.3kg。それに対してこのギターは3.2kgです。1kg以上違うんですから、それはもう軽くてびっくりしますよね。

 それから私は、どんな時でもギターを手にすると、必ず最初に生の状態でロー・ポジションのEのコードを弾きます。それはクセのような、儀式のようなもので、それでチューニングの状態はもちろん、ある程度そのギターの個性やコンディションがわかります。このギターは、私が今まで触れてきた数百本のギター(レビュー用も含め)のどれとも違う、聴いたことがないEのコードの音がしました。こんなに整理されているバランスの良いEコードは初めてです。これが、私のギターかぁ……!!

遂に完成した室長の“夢のギター”「Groove Maker」※命名 by 井戸沼室長

「Groove Maker」のバック

 仕様についても少し触れます。このギター、なぜボディ・トップに貴重なハワイアン・コア材を使ったのか。それは、サウンド云々よりも単純な憧れからというのが正直なところです。個人的にカスタム・ギターと言えば思い出すのは、フィッシュのトレイ・アナスタシオのコアを使った1本。とても美しいギターです。あんな美しいギターが、自分も欲しいなと思ったんです。

 一方で、私はビザール・ギターも大好き。すべてが完璧に整ったギターより、ちょっとバランスが崩れたものを好む傾向にあります。そこで、美しい杢を持つ反面、デザイン面ではほんのすこーし崩したところも欲しいと思いました。そこでこだわったのが、カッタウェイ・ホーンの形状です。このギターにはES-335のような丸くて太いホーンが、少し開き気味に付いています。これによって精悍過ぎず、少しボテッとして、私が持った時に似合うギターになりました。きっと多くの皆さんはもっとシャープなホーンの方がカッコいいと感じるんでしょうけど、いいんです。これは私のカスタム・ギターなので。

完成した“夢のギター”を初試奏する室長。マスク越しでも口元の緩みがはっきりとわかる

 サウンド面では、好きなピックアップ(以前、使って好みだったダンカンのアンティクイティ。一緒に年を重ねたかったので、PUカバーはあえてピカピカのものを載せています)、好きなボディ構造(fホールはありませんが、ホロウ構造です)、好きな極太グリップ好きなナット(ブラス)、好きなコンデンサー(ジュピター)など、好きなものてんこ盛り状態です。でも、好きなものだけを組み合わせれば必ず好きなサウンドが出るかというと、必ずしもそうはならない、結局はトータルのバランスで音が決まるということもわかっていました。そこで榊原店長と相談して、1点だけ“抜いた”点があります。それは、セットネック・ジョイントではなく、あえてボルトオン・ジョイントにした点。サステインが長めで音の粘りが出やすいセットネックの方が私の好きな音を出せそうですが、ES-335よりはクリアなサウンドを狙っていたので、他の部分とのバランスを考えてセットネックだとやり過ぎになる可能性がありました。結果的に、メイプル・ネックのボルトオン・ジョイントにしたことは大正解。このギターの特徴的サウンド、“フロントPUでも濁らないクリアな音”をもたらしてくれました。

 初日の感想は、ひと言、最高です! それから、榊原店長が「室長、これで終わりじゃないですよ。弾いていくうちに必要になる調整や、出てくる悩みの相談・対応といったアフターサービスも僕らの仕事です。これから本当のお付き合いが始まるので、よろしくお願いします!」と言ってくれたことが、とても印象に残っています。

ESP THROBBERとの比較

 ここで、カスタム・オーダーする際に参考にしたESPの隠れ名器、THROBBERとの比較をしてみましょう。

■Overview 〜全体像

ESP Custom Made / Groove Maker(Top)

ESP / THROBBER(Top)

 ボディ内部のSound Reservoir(サウンドリザーバー)構造こそ同じだが、こうして並べるともはや別のギターであることがわかる。杢目はもちろんだが、こだわったホーン形状、ボディ・トップのコンターの有無(カスタムではあえてコンターを付けていない)などにより、まったく違う表情を見せる。

■Head 〜ヘッド

ESP Custom Made / Groove Maker(Head)

ESP / THROBBER(Head)

 ヘッド部分も大きく違う。カスタムは、コア・ボディの端材からなる突き板を貼ったマッチング・ヘッドで、THROBBERのヘッドにある角状の突起もなく、丸みのあるフォルム。著者の好きなSilvertone/Danelectroの“ドルフィン・ヘッド”を思わせる。また、カスタムは極太ネックによる重量増を軽量なペグにてバランス調整。さらに、カスタムの決め手は特殊処理されたブラスのナットがスキャロップ加工されていること。

■Neck 〜ネック

ESP Custom Made / Groove Maker(Neck)

ESP / THROBBER(Neck)

 写真ではわかりにくいかもしれないが、その厚みはまったく異なる。また、ジョイント部のボディ側の厚みもカスタムの方がはるかに厚い。ハイ・ポジションの演奏性を若干犠牲にしてまでこだわった部分だ。

■Back Contour 〜バック・コンター

ESP Custom Made / Groove Maker(Back Contour)

ESP / THROBBER(Back Contour)

 まずは、コンター位置に注目。カスタムのコンターが大きくヘッド側にずれている。また、ハイ・ポジションの演奏性は多少落ちるが、ジョイント部は通常の4点止めになっていることもポイント。

【Specifications】
■ボディ:ハワイアン・コア・トップ、1Pアルダー・バック w.サウンドリザーバー ■ネック:ハード・メイプル ■指板:ホンジュラス・ローズウッド ■ペグ:ゴトーSGS510Z ■ナット:ブラス w.スキャロップ(42mm幅) ■ピックアップ:セイモア・ダンカンANTIQUITY×2 ■コントロール:1ボリューム w.フロントPUスプリット、1トーン w.リアPUスプリット、3ウェイ・トグル・スイッチ ■スケール:25インチ ■フレット:22f ■ブリッジ:ESP FIXED ■フィニッシュ:ナチュラル(ラッカー)

製作記その8 「実際にギターを使ってみて」

 家にギターを持ち帰り、じっくり弾いてみました。とにかく弾きやすく、ピッチも良く、音が良いので本当にギターを弾くことが楽しく、寝る時間ももったいないくらいです。ギター・ライフそのものが変わったことも嬉しい驚きでした。そして何より特別に注文したコンターの位置の良さ! これによって演奏フォームが改善され、今さらながらギターが少し上手くなりました。このあたりはセミ・オーダーではなく、フル・オーダーならではの魅力だと思います。すごく切れる包丁でトマトがスパスパ切れるようになり、今まで押しつぶすように切っていた日々はなんだったんだろうといった感覚です。伝わりますかね。

こだわったバック・コンター位置のおかげでギターが身体にぴったりフィット。演奏フォームが改善されたと言う

 自分のバンドのライブでもすでに何回か使用しています。最初にこのギターを使って演奏した日に、ギターのことは全然わからないという女性のお客さんが終演後、「そのギターはすごく高いですよね?」と話しかけてきました。ギターのことはわからないというのにどうしてそう思ったのか、やっぱり杢目が強烈だから高級家具みたいな感じに見えたんだろうかと思って聞いてみると、「音が、めちゃくちゃに良かったんで……。本当に、いい音でした」と言ってくれました。その夜は、嬉しくて眠れませんでした。

製作記その9 「気になるお値段は?」

 最後にこのギターの価格を発表します。定価で89万3,850円です。大金ですよね? ただしこれを高いと感じるか、安いと感じるかは、その人の経済状態、そして価値観によると思います。私はお金持ちではないですが、“妥当な値段”だと思いました。製作までの半年間、毎日本当にワクワクして過ごせたこと。そして出来上がったものが最高でギター・ライフまで変わり、演奏が上手くなったこと。世界に1本の私だけのギターであること。これを生涯、所有できること。これを使った初日に、ギターを知らない人までがこのギターの音を認めてくれたこと。こうしたこと全部をひっくるめての値段です。25万円のギターを4本買って100万円使っても、100万円のハイエンド・ギターを1本買っても、同じ体験はできないでしょう。これが安い買い物ではないことも承知していますが、「妥当な金額である」、それが私の結論です。

 低価格のギターは、それはそれで必要です。キッズにいきなり大金は出せませんから。一方で、ビンテージ・ギターが持つマジックとしか言いようのない音、ハイエンド・ギターの精緻な作りも高いお金を払う価値があるものだと思っています。他方、これまで私はカスタム・オーダーの世界を知りませんでした。今回初めて経験してみて、こういう喜びもあるんだなぁとしみじみ感動しました。

製作記その10 「ESPでカスタムするということ」

 人生初オーダーを、ESPさんにお願いできたのも良かったと思っています。日本のカスタム・オーダーの草分けであり、プロフェッショナルな人材が数多く在籍、彼らの知識、経験はもの凄く豊富です。こちらはオーダーのド素人でしたが、そんな人間が最初にオーダーするには実に頼りになると感じました。

 例えば、ナットは音質面でブラスにしたいのだけど実はあの色味は好きではないとポロッと言うと、榊原店長は「ブラス材でも色味を含めて異なる風合いに変えられますよ」と教えてくれました。また塗装に関しては扱いが楽なのでウレタンでいいやと思っていましたが、「この仕様ですと、極薄のラッカーの方が室長の好みになります」というアドバイスを小林工場長からいただき、結果的にその通りになっています。さらに、「ネック実験」の結果からかなり太いネックをオーダーしたんですが、その数値は間違いじゃないか?と工場からショップに2回も確認の連絡があったそうで(笑)、そのようなことからも大手ならではのいくつもの目でチェックが働いていることがわかりました。

ESP小林工場長に撮影いただいた製作風景をいくつかご紹介。本器の大きな特徴であるバック材へのサウンドリザーバー加工

仕上がったサウンドリザーバー。前後ピックアップがこの位置に配置される

ハワイアン・コアのトップ材とアルダーのバック材、図面から起こされたボディの型

トップ&バックを貼り合わせたボディとフレットの打ち込みを待つネック

 カスタム・オーダーは、誰にでも簡単にお薦めできるものではないかもしれませんが、興味があって迷っている人には強くお薦めします! 繰り返しになりますが、私のギター・ライフは大きく変わりました。皆さんのギター・ライフも、これをきっかけにしてより良いものになればいいなと心から思っています。

完成した“夢のギター”とお世話になったESP榊原店長とともに記念撮影

 最後になりますが、このギターは2018年10月19日(金)から21日(日)まで、東京ビッグサイトで行なわれる「2018楽器フェア」のESPブースで展示されます。加えて、19日(金)16時からはこちらの後日談や演奏を含めたイベントも行ないます(以下)のでぜひ遊びにきてください!

「2018楽器フェア」 ESPブースにてお披露目イベントを開催!(終了しました)

 室長の“夢のギター”完成に合わせて、2018年10月19日から3日間、東京ビッグサイトで開催される「2018楽器フェア」のESPブースにて、お披露目イベントを開催します。実際どんなギターになったのか? 気になるサウンドやプレイアビリティは?など井戸沼室長の超絶デモ演奏とESP 榊原伸英店長との対談を交えながら、製作の過程とカスタム・オーダーの魅力に迫ります。

■日時:10月19日(金)16時〜
■場所:2018楽器フェア ESPブース
※イベントは無事終了しました、たくさんのご来場どうもありがとうございました(2018年10月22日追記)

イベント後半、顔弾きで熱演する室長/Photo : Ryoji Mizushima

平日の夕方にも関わらずたくさんの方にお集まりいただきました/Photo : Ryoji Mizushima

あなたの“夢のギター”も夢じゃない! ESPカスタム・オーダー・システム

 心から満足できるギターがほしいけど、カスタム・オーダーはハードルが高い……と考えているプレイヤーは多いと思います。ですがいざ相談してみると、最初は漠然としていた考えをESPのスタッフが親身になって一緒に形にしていってくれるので、カスタム・オーダーの門戸の広さと、夢を実現するプロセスの楽しさと自由さを実感できるはずです。もちろん予算に合った提案もしてくれるので、興味がある方は、まずは気軽に無料の見積もり相談をしてみることをオススメします。
ESPカスタム・オーダー・システムの詳細はこちら

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室長が“夢のギター”をESPにカスタム・オーダーしてみた!【前編】

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製品情報

プロフィール

井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。

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