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キーボード購入ガイド2019【ハイクオリティ・シンセサイザー編】

Synthesizer

キーボード・バイヤーズ・ガイドの第3弾はライブや制作の即戦力となる「シンセサイザー」を特集。最新機種や定番モデル5機種をキーボード・マガジンの名レビュアー陣が紹介します。じっくりとご覧ください!

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MOOG Grandmother

セミモジュラー構成による自由度の高さと初心者にも優しい操作性を実現した新たなモーグ・シンセサイザー

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[SPECIFICATIONS]
●鍵盤:32鍵ベロシティ対応Fatar製キーボード●モジュール:Moog Minimoogに基づく発振器、Moog CP3に基づくミキサー、Moog 904に基づくフィルター、Moog 911に基づくエンベロープ・ジェネレーター、Moog 902に基づくVCA、Moog 905に基づくスプリング・リバーブ●クラシックな4極10Hz〜20kHzのラダー・フィルター●パッチング可能な1極ハイパス・フィルター●アナログADSRエンベロープ・ジェネレーター●オーディオ・レート機能を備えたアナログLFO●ハードウェア・スプリング・リバーブを使用して外部サウンド処理が可能●ギター、ドラム・マシンなどに使える1/4インチの外部オーディオ入力●最大3つのシーケンスをそれぞれ最大256まで保存可能●選択可能な波形とハード同期を備えた2つのアナログ・オシレーター●DIN MIDI IN/OUT/THRU、USB MIDIを装備●Mother-32、DFAM、その他ユーロラック・モジュラー・システムと連携可能●パッチング可能なバイポーラー・アッテネーター●21インプット、16アウトプット、及びパラレル有線4ジャック・マルチを備えた41パッチ・ポイント●外形寸法:約585(W)×362(D)×140(H)mm●重量:約8.17kg

価格:125,000円
問)コルグお客様相談窓口 0570-666-569

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音圧満点のオシレーターと伝統のフィルターを搭載

 Grandmotherの特徴は、なんと言ってもそのセミモジュラー構成にある。オシレーターやフィルター、エンベロープなどのモジュールには、それぞれインプットやアウトプット端子を装備し、モジュラー・シンセのようにパッチ・ケーブルで自由に接続(パッチング)できる。

 モジュラー・シンセというと、何だか敷居が高そうで、初心者には難しく感じられるかもしれない。実際、モジュラー・シンセはパッチングしないと音すら出ないのだが、Grandmotherでは、あらかじめ基本的な接続は済ませてあるので、電源を入れるだけで普通のアナログ・シンセとして演奏可能。それ以上の音作りがしたいときにだけ、パッチングすればいい仕組み、これがセミモジュラーの“セミ”の由来だ。

 そのパッチングだが、モジュールそれぞれにパッチ端子を装備しているので、とても分かりやすい。接続は、ユーロラック仕様のミニプラグで、すでにモジュラー・シンセを楽しんでいる人でも、そこにGrandmotherの強力なモーグ・サウンドを加えることができる。

 さらに、モジュラー・シンセを楽しむのに欠かせない、マルチプルジャックやアッテネーター、外部オーディオ入力も装備しているので、本機を中心にして、サード・パーティーを含むさまざまなモジュールを追加するにも最適である。まさに“Grandmother”の名にふさわしい。

 モーグ・シンセサイザーの魅力の1つが、倍音がぎっしりと詰まったアナログ・オシレーターだ。Grandmotherには、そんなモーグならではのオシレーターを2基装備、音圧、艶ともに申し分なく、まさに本物のモーグならではのVCOの魅力を堪能できる。

 波形はサイン波、ノコギリ波、矩形波、パルス波の4種類となっている。矩形波とパルス波はパルス・ワイズ(パルス幅)モジュレーションも可能、モーグの図太いオシレーターにパルス・ワイズ・モジュレーションをかけたサウンドは、実に魅力的だ。

 オシレーター2のピッチをオシレーター1に強制的に同期させるシンク・スイッチも装備している。シンクの効き具合は、機種によって違うものだが、Grandmotherの効きは抜群。エンベロープをオシレーター2にパッチングすれば、よじれるようにスウィープする強烈なシンセ・リードが出現する。また、片方のオシレーターでもう一方のオシレーターのピッチをモジュレートするようにパッチングすれば、クロス・モジュレーションも可能。メタリックな音色や、パーカッション、さらにノイジーなエレクトロ・サウンドなどに威力を発揮する。

 オシレーターと並んでモーグ・サウンドのコアになるのが、モーグ博士考案のアナログ・フィルター。もちろんこのGrandmotherにも装備されている。鋭く切れる効き味、ねばりのあるスウィープ感、輝かしいレゾナンスなどは、まさに“あのサウンド”。どのように設定しても音楽的で、シンセ・ベースなどの定番の音色が的確に作成できる。

 フィルターの前段には、2基のオシレーターとノイズ・オシレーターをミックスするミキサーが装備されていて、このボリュームを上げると、気持ちのいいオーバードライブが得られる。さらに、アウトプットをミキサーのインプットへパッチングすると、フィードバックによる派手で飽和感の強い歪みが発生、荒れたウォブル・サウンドが気持ちいい。

強力なLFOやアルペジエーターとスプリング・リバーブを装備

 エンベロープは全体で1基のみ装備。フィルターとアンプで共用する構成だが、とても賢い工夫がある。アンプではエンベロープを外して、キーボード(ゲート信号)で直接制御し、エンベロープをフィルター専用にできる。この場合、弾いた瞬間音量が最大になるのだが、面白いのはここからで、リリースのみエンベロープの設定が生きるようになっている。アンプをキーボード制御に設定しても、余韻がいきなり切れることはないため、エンベロープが1基でも、非常に幅広い音作りが行える。

 さらに、通常のローパス・フィルターとは別に、ハイパス・フィルターも装備する。ハイパス・フィルターは、パッチングして初めて使えるようになっていて、ローパス・フィルターの前後などさまざまな位置に接続可能。ヒューマン・ボイスなど、モジュラー・シンセならではの音作りが行える。

 LFOも1基を装備。専用ツマミにより、ピッチ、パルス・ワイズ、フィルターに対して、同時に好きな量をかけることができる。なお、モジュレーション全体の深さは、モジュレーション・ホイールを上げて決める仕組みだ。さらに、先の波形とは別に、サンプル&ホールド出力も装備。任意のモジュールにパッチングして、ランダムなモジュレーションがかけられる。

 このLFOだが、非常に幅広い周波数範囲を持ち、最高速に設定すると可聴範囲を超えてしまうほど。パッチングにより、レートを鍵盤でコントロールすると音階演奏も可能で、第3のオシレーターのように使える。もちろんメイン・オシレーターほどの精度はなく、音色も荒いのだが、それもまた楽しい。クロス・モジュレーションのソースとしても活用できる。

 さらに、アルペジエーターとステップ・シーケンサーも装備。いずれも非常にシンプルで、簡単に操作できる。アルペジエーターのパラメーターは、速度のほかは、鍵盤を押さえた順、往復、ランダム再生の3モードと、1〜3オクターブの切り替えのみと明快。鍵盤左側ホイールの上にレイアウトされた大型のオン/オフ・スイッチは、LEDライト付きでライブ中でも簡単に操作できる。3つ並んだスイッチの残りの2つは、ホールドとタップ・テンポで、こちらもライブで重宝しそうだ。

 アルペジエーターは、ステップ・シーケンサーに切り替えることもできる。こちらの操作もいたって簡単で、鍵盤を順に押すだけで、最大256音までメモリー可能。もちろん、休符やタイ、レガートも、スイッチ1つで入力できる。ライブ中の即興的なフレーズ入力にも十分対応できるだろう。

 さらにGrandmotherのアウトプットには、スプリング・リバーブを装備。これは、文字どおりスプリング=バネを共鳴させることで残響を得るアナログ・エフェクターで、デジタル・リバーブが開発される前は、楽器用リバーブとして盛んに用いられた。独特のバネっぽいサウンドが持ち味で、かけるだけで一気に“電子音楽”テイストが加わる。アルペジエーターとの相性も抜群で、スプリング・リバーブをかけ、大型のカットオフ・ツマミやサステイン・レベルのフェーダーをいじって音色を変化させるのは、とても楽しい。

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(文・高山 博)

KORG Prologue

オーソドックスから過激なサウンドまで簡潔な操作で幅広い音作りが可能な
シリーズ最上位のアナログ・ポリシンセ

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[SPECIFICATIONS]
●鍵盤:[Prologue-8] 49鍵、[Prologue-16] 61鍵(ナチュラル・タッチ鍵盤、ベロシティ対応)●音源:アナログ音源+マルチ・デジタル音源●音源構成:2VCO+MULTI ENGINE、1VCF、2EG、1VCA、1LFO●最大同時発音数: [Prologue-8] 8ボイス / [Prologue-16] 16ボイス●プログラム:500●ボイス・モード:4(POLY、MONO、UNISON、CHORD)●ティンバー:最大2レイヤー、クロスフェード、スプリットの設定可能●アルペジエーター:6(Manual、Rise、Fall、Rise Fall、Random、Poly Random)●プログラム・ソート:8(PROG NUM、CATEGORY、ALPHABETICAL、LIKE、FREQUENT、ENVELOPE、RANDOM、LIVE SET)●マルチ・エンジン:ノイズ・ジェネレーター(4タイプ)、VPMオシレーター(16タイプ)、ユーザー・オシレーター(16スロット)●エフェクト:MOD EFFECTS(CHORUS、ENSEMBLE、PHASER、FLANGER、USER)、DELAY(8タイプ)、REVERB(6タイプ)●入出力端子: OUTPUT(L/MONO、R、モノラル・フォーン)、SYNC IN、SYNC OUT、MIDI(IN、OUT)、USB B、EXPRESSION、DAMPER、ヘッドホン●外形寸法 / 重量:[Prologue-8] 709(W)×348(D)×118(H)mm / 7.5kg [Prologue-16] 874 (W) x 348 (D) x 118 (H) mm / 9.1kg

価格:Prologue-8 オープン・プライス(市場予想価格:170,000円)/ Prologue-16 オープン・プライス(市場予想価格:220,000円)
問)コルグお客様相談窓口 0570-666-569

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2基のアナログVCOに加え新開発のマルチ・エンジンを搭載

 Prologueには61鍵16ボイス仕様と49鍵8ボイス仕様という2モデルがラインナップされている。両モデルの音源部はどちらも同じものだが、鍵盤数とボイス数が違うほか、49鍵モデルではティンバー関連のパラメーターをEDITボタンで呼び出して変更するのに対し、61鍵モデルでは専用のツマミとスイッチが用意されており直接操作できるようになっている。また61鍵モデルにしかない機能としてアナログ・コンプレッサーが加えられている。今回は49鍵モデルをレビューしていこう。

 まず全体を見ての第一印象だが、緩やかな曲線を描くパネルに整然と配置された端正なデザインのツマミ類と美しい天然オーク材のサイド・パネルが気品と高級感を醸し出しており、目の前にあるだけで気分が上がる。ベロシティ付きのフルサイズ鍵盤は押したときに弾力があり、戻りが速いのでしっかり指に追従する高品位で弾きやすいタッチだ。ツマミ類を見渡すと、フラッグシップというわりにツマミやボタンの数が少なくすっきりしていてシンプルだ。フラッグシップを冠するシンセは多彩な機能を盛り込んだ製品が多い中、こんなにシンプルでいいのかと不安にもなるのだが、その不安は試奏する中で根底から覆されることになる。

 さて、筆者がシンセを触るとき、まずプリセットをざっと聴いた後に音色を初期化し、勘を頼りに手探りで音作りをしながら機能や特徴を把握するのだが、今回ももちろん同じように始めた。プリセット音色を聴いて感じたのが、出てくる音に音楽的な量感と色気があり、和音を弾くとしっかりと響く。そして嫌味のない豊かな低音域の出方が印象的で、ソフト・シンセのアナログ・シンセ音とは根本から違う感じだ。これら1つ1つは地味な点ではあるが、こうしたことの積み重ねの中に基本性能の高さが現れるので、この時点でもうこのシンセはただ者ではないと感じ取ることができる。

 ここから実際に音作りをしてみる。筆者が音作りでポイントとしているのがエンベロープのカーブだ。Prologueのエンベロープは最小値にしたときのキレが鋭く、パーカッシブな音も存在感がある。またツマミ位置8時から11時までの滑らかかつ丁寧な変化が美味しい。ソフト・シンセでは雑な変化をするものも多いのだが、音作りにおいてはアタックとディケイを緻密に作ることが重要なので、エンベロープの精密さは大きなアドバンテージだと思う。

 オシレーター部を見てみよう。2基のVCOは3つの波形(ノコギリ波、三角波、矩形波)を選べるのだが、SHAPEというツマミを回すことで元の波形にない複雑な倍音も簡単に生成できる仕様になっている。この値によってはオクターブ下の音が加わったような音にもなるので、かなり分厚い音も作り出すことができる。VCO内部の変調機能としてはSYNC/RINGとCROSS MODが用意されており、ここで金属的な倍音や激しい変調音を持つ音を作り出すことも可能だ。3つめのマルチ・エンジンには新開発のVPMという名のFM音源も内蔵されており、SHAPEでFM変調を変化させてデジタル特有のきらびやかな音から激しい変調音まで生み出せるようになっている。ノイズ波形ではSHAPEでバンドパス/ハイパス・フィルターを通した音のように変化させることもでき、ローパスが1基しかないフィルター部の音作りを補うこともできる。さらにユーザーが独自波形をプログラミング言語CかC++で作成できる拡張性も確保している。

4種の発音モードを選んで演奏できるVOICE MODE

 次にフィルター部を見てみる。PrologueにはDRIVEやLOW CUTを備えた2ポールのローパス・フィルター1基しかない。1基では頼りなく思うかもしれないが、音作りをしてみるとオシレーターが多彩であることもあって不自由は感じない。むしろカットオフが非常に滑らかに変化をするので微細なニュアンスまで音作りの追い込みができ、ローパス・フィルターによる音作りの奥深さを思い知らされる。レゾナンスは発振するまで上げても音痩せせずに音の太さを保っているので、シンセ・ベースや発振音を変化させるような音色でも音量変化を気にせずに使え、極めて実戦的である。また、マルチ・エンジンのみ出力先をフィルターの前段か後段かを選べるので、VCO1&2でフィルターを駆使したアナログ・シンセ・サウンドを作りつつ、マルチ・エンジンのデジタル・サウンドをフィルターの後段でミックスするというようなことも可能だ。これにより音作りの幅が格段に広がっている。

 LFOは3つの波形を選択できる。RATEを超高速にまでできるのでノイジーかつトリッキーな効果も可能だ。RATEはもちろんBPMシンクにも対応している。LFOのターゲットにはPITCH、SHAPE、CUTOFFを選べるほか、エディット・ページではターゲットとなるオシレーターを絞ることもできる。

 こうして作った音色を演奏する上ではVOICE MODEというボタンがある。POLY、MONOなど4種の発音モードを選べ、VOICE MODE DEPTHというツマミを回すことで選んだモードに応じた効果を付加することができるのだが、これがなかなか強力だ。POLYやUNISONにおいてはデチューンを強くかけた分厚い音にすることができ、MONOではサブオシレーターを付加した音になる。CHORDではコードのボイシングが変わる。さらに、2ティンバーという機能があり同時発音数は半分になるものの2種類の音色を重ねて1つの音色を作ったり、鍵盤上で2音色をスプリットさせることも可能だ。

 エフェクト部は32ビットの高品位なもので、モジュレーション系と空間系の2系統が備わっている。80年代の人気シンセPolysixを彷彿とさせる“Ensemble”もある。各エフェクトはエディット・ページでより多くのバリエーションを選べるほか、2ティンバー個々にエフェクトのオン/オフ設定もできる。そしてエフェクト部もまたユーザーがプログラミング言語CかC++で独自エフェクトを作成し付加することもできるという自由度も確保されている。

 ライブでの使用においてはライブ・セットという便利な機能が用意されている。これは1〜8までのボタンに音色プログラムから任意の音色を自由に割当てておくことができるのだ。そのセットをA〜Dの4つのバンクに記憶できる。これによって曲ごとに必要な音色セットを作っておけば即座に呼び出すことができる。そのほか、カテゴリーやお気に入りなどで音色をソートすることも可能だ。全パラメーターはMIDIでもコントロール可能なので、トラック制作においても威力を発揮するだろう。

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(文・西田彩ゾンビ)

BEHRINGER Model D

伝説の名機サウンドを再現し、現代の環境にマッチする完全アナログ回路のモノシンセ

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[SPECIFICATIONS]
●音源:アナログ●同時発音数:1●オシレーター:VCO×3、ノイズ・ジェネレーター●LFO:三角波、矩形波●フィルター:VCF×1、24dBローパス/ハイパス・フィルター●エフェクト:オーバードライブ●エンベロープ・ジェネレーター:ADSタイプ●入出力端子:外部入力(3.5mmミニ)、アウトプット(low/high、フォーン)、メイン・アウト(3.5mmミニ)、ミックス・アウト(3.5mmミニ)、ヘッドフォン・アウト(3.5mmミニ)、MIDI(In/Thru)、USB、Mod Source、OSC 1V/OCT, LFO CV、LFO Square、LFO Sawtooth、Cut CV、FC Gate、Filter、LC Gate、Loud contour、Loud CV●外形寸法:374(W)×137(D)×90(H)mm●重量:1.7kg

価格:オープン・プライス(市場予想価格:44,500円)
問)株式会社エレクトリ 03-3530-6199

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 モーグ博士が世界初のキーボート付き小型シンセサイザーとして世に出したのがMinimoog。キーボード・マガジン読者であれば一度は聞いたことがあるはずの伝説のシンセサイザーだ。誕生してから約50年弱、数知れないアーティストたちが数知れないほどの楽曲に使い、いまだ第一線で多くの楽曲に使われている。そして、もちろんソフト・シンセとしても多数のメーカーがモデリングしていることは、皆さんもご存知だろう。

 ただ、オリジナルはビンテージ・シンセとしてはとても高価な上、なかなか一般ユーザーが手にすることは難しい。1981年に生産も終わっているため、コンディションの良いメンテナンスされたMinimoogに出会うこともとても困難だ。また、オリジナルはピッチがとても不安定でMIDI機能もないため、音が良いと分かっていても敬遠されがちなこともよく知られている。筆者もビンテージのMinimoogをレコーディングに使用した時はピッチの不安定さに苦労した思い出がある。

3つのオシレーターによる分厚いアナログ・サウンド

 そんな伝説のシンセサイザーを完全なアナログ回路で、ハードウェアとして現代に製品化したのがベリンガー社のModel Dだ。MIDIはもちろんのこと、USB端子も装備し、現代の制作、演奏環境にマッチしたカタチであのサウンドが手に入るようになった。もちろんピッチも安定している。発売されるやいなや、その手ごろな価格と高いクオリティから、世界中で品薄が続き業界では話題となった。日本も遅れること数カ月、ようやく輸入されることになった。そんなModel Dを今回は徹底的にレビューしてみたいと思う。ちなみにModel Dとは当時のMinimoogの最終バージョンの型番を指す。

 Model Dの音源構成としては、3VCO+ノイズ・ジェネレーター、VCF、VCA、2EG、LFOとなっている。筆者はたまたまモーグ社よりリイシュー(再発売)されたMinimoog Model Dを所有していたのでサウンド比較をしてみた。驚いたことに、そのサウンドはブラインド・テストでは区別がつかないほどにリイシューのMinimoogと差異はなかった。特にオシレーターの完成度はとても高く、どの波形も聴感上では区別することはできなかった。3つのオシレーターを重ねてデチューンさせてもその音の変化はリイシュー版とほとんど聴き分けることはできない。Minimoogの特徴でもある、ラダー・フィルターの挙動がほぼ同じなことはもちろん、ツマミ位置におけるサウンド再現性もほぼ同じということにも驚かされた。 

 Minimoogのことを詳しく知らない現代のアーティストにとっても、3オシレーターから生み出される超弩級の分厚いアナログ・サウンドを自身の楽曲に取り入れられることのメリットはとても大きい。何よりサウンド面から見て、オリジナルやリイシューと比べてもほとんど遜色ないことは、実際にサウンドを聴いてもらえれば誰でも分かるだろう。

 もちろんモノシンセなので、和音や複数の音を出すことはできないが、ベース・サウンドはもちろんのこと、リードとしてもそのサウンドは秀逸で用途はとても広い。3つのオシレーターを微妙にデチューンさせ、軽くホワイト・ノイズを足し、オーバーロードさせれば、歪みが気持ち良い、あの太いベース・サウンドを簡単に作ることができる。楽曲の中に埋もれることないそのサウンドは、もはやほかのシンセを重ねて厚みを持たせる必要もない。

 また、オリジナルのMinimoogは、鍵盤をトリガーする際、シングル・トリガーかつ低音優先で設計されていた。しかし本機には、オリジナルのMinimoogでは装備されていなかったマルチトリガーが搭載されている。とても弾きやすくなった上、マルチトリガーを使った独特の奏法も可能になった。モノシンセならではの独特の楽曲作りもできる。

 本機はオリジナルのModel Dと比べて、音源に遜色がないということで、シンセ・ファンの間で話題ではあるが、シンセサイザーという楽器を再認識、勉強するためにもこのModel Dを導入することを勧めたい。ハードウェアとしてMinimoogとほぼ同じインターフェースで、シンセサイザーの基本である減算式シンセサイズの音作りをできるからだ。もともとモーグ博士がMinimoogに採用した減算式シンセサイズの設計思想はいまだ多くのシンセに取り入れられており、現代のシンセサイザーの基本にもなっている。Model Dのシンプルで分かりやすい配列のツマミやスイッチを操作することで、幅広い音作りが可能ということを理解できれば、ほかのシンセサイザーをもっと効果的に使うこともできるだろう。筆者の持論ではあるが、メモリーできないシンセを操作することが一番シンセサイザーの構造や仕組みを勉強できる方法だと思っている。

多くの入出力端子を装備しモジュラーとの組み合わせが容易に

 入出力端子を多く持つ本機は、モジュラー・シンセとの相性もとても良い。入力なのか出力なのかが分かりやすく“▲▼”記号で記載されているので直観的にいろいろな信号を出し入れできる。モジュレーション・ソースとしてLFOを出力したり、外部とCV信号を入出力させることができたりと、端子類はとても充実している。もしモジュラー・シンセを持っている人であれば、この価格でMinimoogの機能をシステムに組み込むことができるので、その恩恵は大きいだろう。使い方次第でサウンドの幅は大きく広がるはずだ。さらにユーロラック・ケースにマウントできるようにも設計されている。モジュラー・シンセ・ユーザーにとっては嬉しい仕様だ。

 また、シンセサイザーの音作りに欠かせない機能がLFOだ。オリジナルはオシレーター3がLFOを兼ねており、それを切り替えてモジュレーションする仕組みだった。一方で、本機はLFOを独立して持つことで、3つ目のオシレーターを犠牲にすることなく音作りできるようになっている。またLFOの波形にサイン波とパルス波の2種類を選択できる。ちなみにLFOの可変範囲がリイシューのMinimoog Model Dより若干広い。また違いの1つとして、ノイズ・オシレーターのボリュームがリイシューよりも大きく出せる仕様になっているので、こちらも音作りにより幅を持たせられる印象だ。

 サイズこそ、ユーロラック規格に合わせて設計されているので小型な印象ではあるが、そのサウンドはオリジナルやリイシューに全く引けを取らない。誰もがそのクオリティの高さに驚くだろう。そしてリイシューやビンテージの数分の1の価格で購入できることも、世界中で品薄が続く要因の1つと言える。

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(文・江夏正晃[ FILTER KYODAI/marimoRECORDS ])

SEQUENTIAL Prophet X

ハイブリッド音源と柔軟なモジュレーションで画期的なシンセサイズを可能にするProphetシリーズの最新機種

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●鍵盤数:61鍵●サンプル・プレイバック:150GBのサンプル・インストゥルメント(16ビット/48kHz)、50GBの内蔵追加ストレージを搭載●最大同時発音数:16(モノラル・モード時)●オシレーター:2基のデジタル・オシレーター、ウェーブ・シェイピング機能、グライド(ポルタメント)、ハード・シンク●フィルター:2基のアナログ4ポール・レゾナント・ローパス・フィルター(ステレオ)、エフェクト・セクションにデジタル・ハイパス・フィルター●エンベロープ:5ステージ(ADSR+ディレイ)エンベロープ・ジェネレーター×4●シーケンサー:最大64ステップ入力可能●アンプ・エンベロープ:ADSR●LFO:2基のLFO (キーシンク、フェイズ・オフセット、LFOごとのスルーに対応)、LFO 波形=三角波、ノコギリ波、逆相ノコギリ波、矩形波、ランダム(サンプル&ホールド)●モジュレーション:モジュレーション・マトリクス×16スロット、28のソース、88のデスティネーション、11の専用追加ソース●アルペジエーター●デジタル・エフェクト:2系統、ステレオ・ディレイ、BBD ディレイ、コーラス、フランジャー、フェイザー、ビンテージ・ロータリー・スピーカー、ディストーション、ハイパス・フィルター、スプリング・リバーブ、プレート・リバーブ●入出力:メイン・ステレオ・オーディオ出力、アウトプットBステレオ・オーディオ出力、MIDI(IN/OUT/THRU)、USB MIDI、USB メモリー、ペダル/CV、ボリューム、サスティン・ペダル入力、シーケンサー、ヘッドフォン出力●外形寸法:976(W)×343(D)×109(H)mm●重量:10.9kg

価格:オープン・プライス(市場予想価格:499,800円)
問)福産起業 03-3746-0864

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世界中の映画や劇伴に使用される、8DIOのサンプル音源を内蔵

 VCO、VCF、VCAといったアナログ回路にこだわって設計されてきた同社のシンセだが、2013年発売のデジタル・オシレーターを採用した“Prophet-12”からその流れがハイブリッド化してきている。Prophet Xでは、新開発の2機の高解像度デジタル・オシレーター(バーチャル・アナログ)、そして同社初となる2機のサンプル・プレイバック音源、合計4機の音源を搭載するハイブリッド・シンセとなっている。

 しかし、巷の“PCM&バーチャル・アナログ音源”とは全く意趣が違い、本機は150GBのSSDを搭載、16ビット&48kHzの膨大なサンプル音源を内蔵している。さらにUSB端子からインポート可能な50GB分の領域も持つ(2018年12月よりライブラリー配給予定)。

 特筆すべきは、そのサンプル音源のディベロッパーが、世界中の映画や劇伴作曲家ご用達の“8DIO”社であること。そのサウンドはすでに数々の受賞映像作品に使用されており、クオリティは折り紙付きである。

 その8DIO製のサンプル音源を表現すると“耽美的” “官能的”“オーガニック”という言葉が浮かぶ。ハッと耳を奪う質感で、ダークな中にもひと筋の光を感じる詩的なサウンド……と言えば分かっていただけるだろうか。例えばアコピ。「1928 Steinway Piano」のサンプルを呼び出すと、音が消えるまでに、風のようなノイズや、ダンパー・ノイズ、スタジオの鳴りなど、さまざまなサンプルが折り重なっており、エフェクトなしの単音だけで、立体的な訴求力のあるサウンドが産み出される。弱いタッチ&スローで適当に弾くだけで“OKテイク”になるような、レコード黎明期のレガシーな質感はお見事! もちろん現代風なピアノ・サウンドもプリセット化されており、どれもリアルかつ存在感のあるサウンドだが、どこか素朴で懐かしい。

 ストリングス系も同様に、弓の擦れる感じや、ピッチの揺れ、アンビエンスなど、エモーショナルにプログラムされており、鍵盤から指を離すのがもったいなく思えてくるほど。オープン・ボイシングをスローにコード・チェンジしていくと恍惚となり我を忘れる。ソロ・ボイス系は、ブルガリアンからホーミー、ソプラノ&テノール、男性女性混合などいろいろあるが、どれも“祝詞(のりと)”のようなワードを発しており、芸術的で大変ユニークだ。逆に、ドラム系はエッジの効いたEDM系が多く、コンプやEQで作り込まれたキック&スネアなど“分かってるな〜!”という出来映えにニンマリしてしまう。

 全体的にサンプリング・タイムが大変長く(その分容量は増える)、ノンループ&ロング・トーンでのグラデーションのある表現力が実にヒューマンライクで、シンプルなフレーズで個性的な世界観を創生できる。ハイエンドなDAコンバーターのおかげか輪郭がクッキリしており、オケ中でも埋もれない“負けない”サウンドは相当なアドバンテージだ。

 また、サンプル音源にもVCFの使用も可能(スルーもOK)な上、さらにサンプル音源をマトリクス・モジュレーションのソースとして選ぶこともできるので、ループ・ポイントやスタート&エンド、LFOなどを駆使しグラニュラー・シンセ的なマニアック・サウンドも作り出せる。

高解像度デジタル・オシレーターと新開発のフィルターを装備

 さて、もう1つの音源であるデジタル・オシレーターだが、VCO由来の“Prophet-6”などとはやや質感が違い、ハリのある艷やかなワイドレンジのサウンドだ。とは言え、ノコギリ波やパルス波は素朴かつ繊細な質感で、クラシカルなサウンドも簡単に作り込めるほか、PWM(パルス幅変調)やハード・シンクを利用したリード系もまさにProphetの音だ。また、EDMご用達の“Super Saw”も搭載し、今風の派手なシンセ・ブラスから、ベース、パッド、シーケンスなどジャンル問わず活躍する。

 肝心のフィルターは、24dB レゾナント・ローパス・フィルターのVCFとなっている。チップはProphet-5(Rev1&Rev2)に搭載されたSSM2044と同等の回路をリビルドさせたものを搭載している。ちなみにProphet-5(Rev3)のVCFはカーティスCEMのチップだが、SSMの方が馬力もあり人気があるとされる。同社のProphet-6のVCFが“SSM2044を参考にしたディスクリート回路”だったことを考えると、本機のVCFはよりオリジナルのProphet-5サウンドに近付いたと言えるだろう。完全ステレオでのフィルタリングも可能で、“DRIVE”ノブは倍音を付加するもので、グッと音像が前にくる感じだ。

 内蔵の512プリセットもよく練られており、サンプル音源とデジタル・オシレーターがシームレスに駆け巡り、どのサウンドも即戦力のあるものばかり。中央の“ミキサー”セクションの4ノブが各音源のレベルとなるので、これらをいじくり回すだけで、さまざまなサウンドスケープが堪能できるが、個人的にはサンプル選びからオシレーターのエディット、エフェクトまで、ゼロから音作りを完成させる楽しみ方こそ、本機の醍醐味かと思う。また、指に吸い付く感じで、フレーズが次々舞い降りるような感覚のウェイテッド鍵盤も素晴らしい。

 2系統のエフェクトは、モジュレーション&歪み系、リバーブ&ディレイ、フィルターなど、汎用性の高いものを搭載、特に“BBDディレイ”はアナログ遅延素子の減衰感をエミュレート(ロング・ディレイも可能)しており独特の揺らぎ感のエフェクトだ。

 “スタック・ボタン”は、2つのプログラムをレイヤーする機能(ボイス数は半減)も装備しており、それにより作り出すことのできる分厚く複雑なサウンドに重宝するだろう。スタック時でも2系統のエフェクトは有効で、合計4系統のエフェクトが使用可能だ。ただし、最大発音数はステレオ8ボイス、モノラル16ボイスなので、サステイン・ペダルを多用したピアノ系プレイには注意したいところだ。

 ややインダストリアルな質感の本機のサンプル音源は、無機と有機、叙情と退廃が交錯した世界観や、チルアウトやコラージュ系、マッドなテイストの音楽にも最適である。さらに波形エディットによる非日常的ビートの構築で既存曲に異質感を与えたり、内蔵シーケンスとミキサー&フィルターの併用で、例えば劇伴や舞台のBGMなどリアルタイムでの音風景をプロデュースする楽しさも存分に堪能できる。また、生楽器系はもちろん、ピアノ音源としてもシンプルな奏法であれば、デジタル・ピアノ以上に存在感のあるサウンドに病みつきになるだろう。

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(文・近藤昭雄)

YAMAHA MONTAGE6

最新鋭のハイブリッド音源と音色を多次元にコントロールする機能が融合したフラッグシップ・モデル

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●鍵盤:61鍵FSX鍵盤(イニシャルタッチ/アフタータッチ付)●音源方式:Motion Control Synthesis Engine(AWM2=8エレメント、FM-X=8オペレーター、88アルゴリズム)●最大同時発音数:AWM2=128音、FM-X=128音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート●パフォーマンス数:約1,800●フィルター:18タイプ●エフェクター:リバーブ×12、バリエーション×76、インサーション(A、B)×76(A/Dパート・インサーションは71)、マスター・エフェクト×15、マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3バンド)、2ndパートEQ(2バンド)●シーケンサー:容量=約130,000音、曲数=64曲、トラック=シーケンサー・トラック×16/テンポ・トラック/シーン・トラック●アルペジエーター:最大8パート同時オン可●モーション・シーケンサー:レーン=最大8+1系統●ライブセット数:プリセット=128以上、ユーザー=2,048●接続端子:アウトプット(L/MONO、R)、アサイナブル・アウトプット(L、R)、PHONES、A/D インプット(L/MONO、R)、USB TO DEVICE、USB TO HOST、MIDI(IN、OUT、THRU)、フット・コントローラー×2、フット・スウィッチ(アサイナブル、サステイン)●外形寸法:1,037(W)×131(H)×396(D)mm●重量:15kg

価格:オープン・プライス(市場予想価格:320,000円)
問)ヤマハお客様コミュニケーションセンターシンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口
0570-015-808(つながらない場合は053-460-1666)

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Motion Controlによる複雑かつ斬新な音色変化

 まず音源としては2つの方式が用意されていて、1つはサンプリングされた音を使用するヤマハ製品で長く使われているAWM2(Advanced Wave Memory2)音源。5.67GBもの高品位な波形を用意しており、さらにユーザー・フラッシュ・メモリーも1.75GB用意され、自分でWAVファイルなどを読み込んで使うこともできる。もう1つはFM-X音源。こちらは8オペレーター、88アルゴリズムのFM音源で基本波形が7種類もあり、さらに2つのパラメーターで変化をさせられる。どちらの音源も同時発音数は128音になっていて、この2種類の音源方式の音を最大8つまで組み合わせてパフォーマンスの音色を作ることになる。

 そして、音源のパラメーターを多彩なコントロール・ソースで動きを持たせるMotion Controlによって、音源の能力をさらに生き生きとしたものに変化させられる。その操作方法の1つとして、パネルのやや左側でまるで心臓の鼓動のように、美しく点滅する大きなツマミのSuper Knobがある。1つのツマミで、最大8つのノブに割り当てられたパラメーターを一度にコントロールすることができるので、簡単に複雑な音変化をリアルタイムに作り出せるのだ。例えば、心地よいダークなパッド・サウンドがSuper Knobを上げていくに従って構成音のいくつかのフィルターが開いていき、さらにピッチが上昇するSEが入って来て、その状態で演奏するとアタックのあるエレピの音が混ざっていきリバーブ感も深くなっていく……といった変化は、ツマミを同時にいくつも動かさないとできない。しかし、Super Knobなら1つのツマミでこれらを劇的に演出できるということだ。この概念はモーフィング機能など以前から他社製品になかったわけではないが、とにかくその機能の充実度は圧倒的だ。

 もう1つ、Motion Controlの威力を発揮する機能としてMotion Sequencerが用意されている。これはアサインされたパラメーターをリアルタイムにコントロールしてシーケンスさせるもので、パート用に8系統、Super Knob用に1系統の音変化を組むことができる。またその動きを鍵盤横にあるボタンでトリガー、ホールドしたりと、コントロールすることが可能なのだ。シーケンスの速度は内蔵テンポや外部MIDI情報はもちろん、外部オーディオ入力がリズミカルな音の場合はテンポ検出して同期させることもできてしまう。

 もう1つ面白いMotion Controlの機能がエンベロープ・フォロワーを使ったもの。外部オーディオ入力からの信号の波形をエンベロープの形で抽出する機能で、これを音色変化のコントローラーとして使えるのだが、外部入力だけでなく別のパート出力の音を使えるので可能性は無限と言える。

 これらの音源、豊富なコントロール系統が合体したシステムがMotion Control Synthesis Engineだ。単純に音を呼び出して演奏するのではなく、その音色のさまざまなパラメーターの状態を変幻自在に操り、いくつものシーンをさまざまな方法で切り替えたり、連続変化させる。メーカー・サイトでは、“リズミカルな変化”“多次元変化”と書かれているが、まさにそんなサウンドを作り出すことができる。

 例えば「DJ MONTAGE」というパフォーマンス・プリセットは、ドラム、ベース、コード・シーケンス数種類、パッドが組み込まれており、シーン・ボタンごとに各パートのミュート、アルペジオの情報が違った形でメモリーされ、かつSuper Knobでカットオフなどの操作ができる設定になっている。シーン・ボタンを切り替えて行くと曲が次々展開していき、そこにSuper Knobで抑揚を付ければ、あっという間に10分ぐらいのEDM作品が完成してしまう。「Seattle Sections」というストリングス・サウンドはSuper Knobで瞬時にセクションとソロのストリング・サウンドのバランスを調整する設定で、重厚なセクションから突然ソロ・バイオリンにフォーカスするといった演出が一瞬で行えるのは、派手ではないが実用性が高いセッティングだ。

4種の発音モードを選んで演奏できるVOICE MODE

 音色プログラムは楽器の種類によるカテゴリー・サーチで非常に分かりやすく分類されており、QWERTY配列のキーボードをタッチパネルで打ち込む検索機能もある。またライブ演奏時に非常に便利なのがLIVE SET機能で、自分でよく使用する音色を選んでおいて自由に登録しておけば、タッチ・ディスプレイで16個の音色リストをタッチ1つで切り替えられる。また、SSS (Seamless Sound Switching)機能が搭載されており、音切れが起こらないようになっている。これは残響系のエフェクト成分にも対応しているので、演奏しながら音色チェンジしても、音が一瞬切れることもプツッといったノイズが入ることもなく、極めてスムーズに切り替わるのだ。

 リアルタイム・レコーディングを基本にしたレコーダーも備えており、約130,000音、最大64曲。またアルペジエーターは最大8パート同時に、別々のものを使用できる上、そのバリエーションは約10,000タイプ以上という驚きの数だ。

 PCとの連携もよく考えられており、USB接続してPCにMONTAGE Connectというアプリ/プラグインをインストールするだけでDAWにステレオで16ch送信、3ch受信できる(24ビット/44.1kHz時)。最大192kHzまで対応したオーディオMIDIインターフェースとしても使用可能で、MONTAGEで制作したソングをドラッグ&ドロップして簡単にDAWに転送したり、本体で編集したパフォーマンス・データをコンピューターで保存したりといったことも可能だ。

 さまざまな点でユーザーの立場に立った配慮がなされていることも見逃せない。自照式のスイッチは選択可能時に暗めに点灯、使用できない状態時には消灯しているようになっていたり、スライダーやノブにLEDが配置され、パラメーターの実際の値がすぐ認識できる。また今回はMONTAGE6をチェックしたが、FSX鍵盤がとにかく高品位で、なおかつベロシティの反応が心地良く設定されている。演奏していて楽しくなってくるものだ。

 また、タッチパネルは便利な半面、押したか押してないかが分かりにくいことがあるが、MONTAGEではタッチパネルでできる多くの操作は装備されたボタンでも操作可能。丁寧に画面を見ながらエディットする時とライブで使い分けると良いだろう。

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(文・松前公高)

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製品情報

BEHRINGER / Model D

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株式会社エレクトリ TEL:03-3530-6199

YAMAHA / MONTAGE6

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