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YAMAHA CP88/CP73 〜YANCYが弾く新時代のステージ・ピアノ

YAMAHA CP88/CP73

ヤマハのステージ・ピアノCPシリーズのニュー・モデル、その名も“CP88”が満を持して登場。前モデルCP4 STAGEはステージ・ピアノとして非常に高い完成度を誇り、音色および表現力、可搬性も含めてプロ・ミュージシャンからアマチュアの音楽愛好家、ライブハウスなどに至るまで各所で評価が非常に高く人気があった。それだけにこの新モデルへの期待や関心をお持ちの方は非常に多いだろう。今回は、CP4 STAGEを信頼して愛用してきたピアニスト、YANCYによる多彩な演奏とレビューで、その進化を確かめてもらいたい。

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YAMAHA CP88/CP73 × YANCY

ヤマハ・ステージ・ピアノ CP88

YAMAHA CP88 / 価格:オープン・プライス(市場予想価格:243,000円)

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コンセプトを実現するためのパネル・デザイン

 CP88を初めて見る方は今までのCPシリーズとのルックスの違いに驚くだろう。ロゴやスイッチ類は同社のrefaceシリーズを想起させるが、今までのシンプルな箱型の外観を一新。精悍な黒を纏った丸みのある金属製ボディに、スイッチやノブ類が整然と並び、モダンでシャープなイメージである。

 前モデルと全く異なるこのデザインにこそ、ヤマハの開発陣がCP88で新たに打ち出したコンセプトが隠されている。それは直感的、機能的にあらゆる操作ができるように、演奏にかかわるパラメーター類やエフェクト操作系には一切の階層を作らないというものだ。すべてが常に可視化されており、いつでも瞬時に操作できる作り、その名も“One-to-Oneインターフェース”を実現するためのパネル・デザインなのだ。この試みはステージ・ピアノというキーボードの使い方、使い道を知り尽くした同社だからこそのミュージシャン目線の発想であり、ステージ・シンセサイザーとの使われ方の違いをよく熟知しているために生まれたコンセプトと言える。

 操作パネルは音色カテゴリーごとに分けられ、ピアノ・セクション(Piano)、エレクトリック・ピアノ・セクション(E.Piano)、その他のオルガンやシンセなどを集めたサブ・セクション(Sub)の3つが完全に独立して並び、オン/オフのトグル・スイッチがそれぞれに付いている。そして右サイドにはディレイ、リバーブなどのエフェクト・セクションが個別に並び、迷わず機能的にすべての操作ができる。EQもパネル上にあるマスターEQのみで実にシンプル。これはサンプリングされたピアノやエレピのサウンドの完成度に自信があるからこそできることだろう。パネル一番左には、音色およびエフェクト・セクションのパラメーター値やオン/オフなどをユーザー音色(ライブセットサウンドと呼ぶ)として簡単に保存できるライブセットセクションが配置され、ボタン操作で瞬時に呼び出すことが可能となっている。ライブセットセクションにはタッチ、チューニング、トランスポーズ、スプリット・ポイントなどを設定するボタンも配置され、設定メニューに入らなくても簡単にパラメーターの変更・設定ができる。

 実際に弾きながらいろいろ試してみたのだが、このパネル・レイアウトが非常に分かりやすく、自分が行おうとしているプロセスへのダイレクト感が常にあり、何をするのにもタイムラグや迷いやミスが全くない。抜群の操作性と言えよう。また、自分が弾いている音色やエフェクトの設定がどうなっているかも一目瞭然だ。それぞれの音色のセクションにはスプリットやオクターブ上下のスイッチがあり、鍵盤上の音色を瞬時に振り分けて使いたい音域に設定できる。これまでエディット画面でチマチマとやっていたこういった作業が瞬時にできるのは、非常に快感だ。すべてにおいて、非常に機能的で実用的である。

飛躍的進化を遂げたピアノ・サウンド

 さて、ステージ・ピアノで最も重要なのが、アコースティック・ピアノの音質であると言える。CP88にはコンサート・ピアノの音色が4つ搭載されている。まず、同社が世界に誇る最上位コンサート・グランド・ピアノであるCFX。2つ目はかのベーゼンドルファーの最高峰290インペリアル、3つ目はCFXよりも明るく個性のあるサウンドが人気のヤマハS700、さらにC7(v1.1で追加)という贅沢な構成となっている。

 CFXは、ピアノの演奏のあらゆるニュアンスを余裕を持って表現できる印象を受けた。レンジ感がこの上なくワイドで、繊細な音から低域のパワーあふれるサウンドまで、弦の鳴りや響板の響きが手に取るように分かるサウンドといったら雰囲気が伝わるだろうか? 今まで筆者は、本物のグランド・ピアノを弾いた時と同じような表現をステージ・ピアノに求めることには、やはり無理があるだろうと心のどこかで思っていた。だがCP88は、こちらの出したいニュアンスどおりに反応してくれる。驚くほどにグランド・ピアノの感覚に近いのだ。ピアノを完璧にコントロールして、その瞬間のニュアンスを細かく弾き分けるプレイヤーの演奏表現というのはものすごい情報量だと思うが、ついにそれに対応できる機種が登場したのだ。

 ベーゼンドルファーの音色はCFXよりも音に奥行きのある芳醇なサウンドであり、クラシックやジャズのソロ・ピアノなど、アンビエントの空気感を心地よく聴かせたい時には抜群である。このアコースティック感満載のサウンドも、今までのステージ・ピアノにはなかったもので非常に好感触。こういった心地よい音場のアコースティック・ピアノ・サウンドは、バンド演奏などでは周りのサウンドに埋もれないか心配されるが、そんな時にはTONEツマミを活用するといいだろう。このツマミはセンターがフラットで、右に回すと高音と低音が強調され、抜けのいいサウンドに変化する。バンドとソロ・ピアノでは必要とされる音色や音場が違う。そこを分かって開発されているところが憎い。さらに、グランド・ピアノのほかにも、アップライト・ピアノの音色が2種類用意されており、楽曲に応じてオールマイティに対応できそうだ。

 エレクトリック・ピアノについては、ローズ系音色が今までより格段に進化していて、非常に素晴らしいと感じた。いわゆるフェンダー・ローズ期のふくよかな73Rd、よりポップスに向いている抜けのいい78Rdに加え、今ではまず手に入らない67Rd(v1.1で追加)というコレクターズ・アイテムのサウンドもあるのがまた素晴らしい。そしてウーリッツァー系のサウンドには、さらに驚かされた。鍵盤のフィールは異なるものの、もはや本物を弾いているかのようにサウンドの表情が豊かで、タッチのニュアンスでフレーズを色付けることが面白いほどに可能となっている。ブライトなサウンドと味のあるウーリー・サウンドの3種類が用意されているので、どんな楽曲にもフィットするであろう。ウーリーらしい、柔らかく鳴らした時の独特の温もりのある滲んだようなサウンドはきっとクセになるに違いない。しかもCP88の高品位な鍵盤で弾くと、本物ではできないくらいのスピード感のあるフレーズも弾けてしまう。さらに、往年の打鍵式CPやDXサウンドも本家らしい文句のない仕上がりで、もう手間のかかるビンテージの出番はなくなりそうだ。もちろんクラビ・サウンドやパッド音、シンセ・リードなども良い音で、ライブや楽曲制作にも即戦力となるだろう。そして、アナログ回路を緻密にモデリングしたVCMエフェクトが、格段に進化したサウンドの表情をさらに豊かにする。

ピアニストの要求に見事に応える鍵盤アクション

 CP88に搭載されたトリプルセンサー付きの木製グレード・ハンマー鍵盤(NW-GH3鍵盤)には、世界的なピアノ・メーカーのプライドが垣間見える。低音域では鍵盤が重く、高音域では若干軽く感じるように、グランド・ピアノ本来のタッチ感が見事に再現されている。また今回から白鍵は木製象牙調仕上げ、黒鍵は黒檀調仕上げとなっており、その感触は本物のピアノ鍵盤のようだ。実際に弾いてみると、鍵盤が指に吸いつくようで非常に弾き心地がいい。適度なグリップ感は指先に汗をかいたとしても安心だ。新たにCP88、CP73用に調整、また新規に録音された音源の数々を、じっくり調整され、バランス良く仕上げられた木製鍵盤で弾く時間は、とにかく贅沢な気分にさせてくれる。目をつぶるとコンサート・ホールで弾いているような気持ちになり、演奏や表現の細部に向き合うことができる。

 本機をマスター・キーボードとして使うのもいいアイディアだろう。内蔵のサウンドを自在にレイヤーさせたり、スプリットして並べる以外にも、鍵盤上のゾーンを最大4分割して外部音源を鳴らすこともできる。ライブの中心に贅沢なピアノ・サウンドを配し、さまざまな外部音源をピアノライクな極上の鍵盤で弾き分ければ、ステージ上もスッキリする上、何より演奏者自身がご機嫌であろう。ステージ・ピアノでありながらライブのメイン・キーボードにもなれる1台と言える。また、同時発売の73鍵モデルのCP73は、新開発のバランスド・ハンマー・スタンダード鍵盤(BHS鍵盤)を搭載。普段バンドなどでエレクトリック・ピアノを中心に演奏をする人や幅広い音色を使用する人、車でなくもっぱら電車で楽器を移動するといった人には非常に有り難い存在になるに違いない。

YAMAHA CP73 / 価格:オープン・プライス(市場予想価格:202,500円)

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 CP88は前モデルから驚くほど格段に進化していた……というより、新たに生まれ変わったと言ってもいい。同社が掲げる新時代のステージ・ピアノというフレーズは、大げさではないと筆者は思う。皆が憧れる最上級のコンサート・ピアノは、実際には非常に弾きにくいものや調律が狂いやすいもの、残念なことに状態のよくないものも現場には多い。ピアノは温度や湿度にも非常にデリケートな楽器なので仕方がないのかもしれない。しかしCP88は、いつでもどこでも電源さえあれば最上級のピアノが良い状態で、完璧に調律された状態で弾くことができる。ピアノ好きならきっと夢中で弾いてしまうであろう。それは演奏を表現する魅力や可能性に溢れているから。筆者は長らくの間、ギタリストはどこでも自分の楽器で弾けて良いなあと羨ましく思っていたが、CP88を連れ出せばピアニストも同じように、ストレスなくピアニスティックな演奏をいつでも謳歌できるであろう。自宅のデスクトップの前であろうと野外のコンサート会場、あるいはピアノ・レッスンであっても。すべてのピアノ愛好家にオススメできるモデルと言える。

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KM201904.jpg 本記事は、リットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2019年4月号 SPRING』の記事を転載したものです。今号では2019年4月に予定されているクラフトワーク来日公演を記念して、1981年の初来日からの日本公演を振り返るとともに、優れたメロディ・メーカーでもある彼らの楽曲の構造を分析していく特集企画を敢行。そのほか、幅広いジャンルの中でオールマイティに活躍してくれる「オルガン」にフォーカスし、現代まで受け継がれる普遍のサウンドを、多角的な視点から掘り下げてるオルガン特集や、浅倉大介のライブ/セッティング・レポート、ABEDON(ユニコーン)、小川貴之(sumika)、ジョーダン・ルーデス(ドリーム・シアター)のインタビューなど盛り沢山の内容ですので、ぜひチェックしてみてください!

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製品情報

YAMAHA / CP88

価格:オープン

【スペック】
●鍵盤:88鍵NW-GH3鍵盤(木製象牙調・黒檀調仕上げ、グレード・ハンマー) ●音源:AWM音源、最大同時発音数128、ボイス数57(PIANO:10 / E.PIANO:14 / SUB:33)、ライブセットサウンド数160 ●エフェクト:PIANO2系統(1:ダンパーレゾナンス、2:コンプレッサー、ディストーション、ドライブ、コーラス)、E.PIANO3系統(1:ドライブ、2:オートパン、トレモロ、リング・モジュレーター、タッチワウ、ペダルワウ、コンプレッサー、3:コーラス×2、フランジャー、フェイザー×3)、SUB1系統(コーラス/フランジャー、ロータリースピーカー、トレモロ、ディストーション)、ディレイ2タイプ、リバーブ ●接続端子:OUTPUT(L/MONO、R、標準フォーン端子)、OUTPUT(L/R、XLR端子)、INPUT(L/MONO、R、標準フォーン端子)、PHONES、FOOT CONTROLLER(1、2)、FOOT SWITCH(SUSTAIN/ASSIGNABLE)、MIDI(IN/OUT)、USB(TO HOST/TO DEVICE)、AUX INPUT ●外形寸法:1,298(W)×364(D)×141(H)mm ●重量:18.6kg
【問い合わせ】
ヤマハお客様コミュニケーションセンター シンセサイザー・デジタル楽器ご相談窓口 TEL:0570-015-808 https://jp.yamaha.com/products/music_production/stagekeyboards/cp88_73/index.html
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プロフィール

YANCY
ドクター・ジョンやオル・ダラのフロント・アクトを務め、オーティス・ラッシュやバディ・ガイと共演するなど、ルーツ・ミュージックのフィールドでの活動とポップス・シーンを自在にまたぐ存在。さまざまなアーティストのレコーディングやライブ・サポートに幅広く参加。またアレンジャーやサウンド・プロデューサーとしても評価されておりレコーディング作品やCM作品も多数。近年は福原美穂や加藤登紀子の作品を手がけている。

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