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Keeley / Synth-1 Reverse Attack Fuzz Wave Generator

Keeley Synth-1 Reverse Attack Fuzz Wave Generator

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ファズ・ペダルの延長上で使える
ギタリスト・フレンドリーなモノ・シンセ・ペダル

 Keeleyと言えば、かつてはさまざまな定番ペダルのモディファイを手がけており、それをきっかけに認識した方も多いと思うが、今では多くのオリジナル・エフェクターを製作している。その中でコンプレッサーなどの人気機種も生まれており、誰もが知るエフェクター・ブランドのひとつであろう。今回紹介するのは、そんなKeeleyから発売されたギター用のモノ・シンセ・ペダル、Synth-1 Reverse Attack Fuzz Wave Generatorだ。

Keeley / Synth-1 Reverse Attack Fuzz Wave Generator(Front)

Keeley / Synth-1 Reverse Attack Fuzz Wave Generator(Back)

 シンセ・ペダルと聞くと、ギター・プレイヤーであれば“使いこなすのが難しそう”とか、“飛び道具的専用機”という印象を持つかもしれない。しかし、本機に関してはモデル名にFuzzが含まれており、その名のとおりファズの延長上でも使えるペダルである。今回は3つのセクションに分けてスペックを確認していく。

 最初に、左上のコントロール・セクションから見ていこう。LEVEL、ATTACK、BLENDの3つを搭載しており、BLENDで原音とエフェクト音のバランスを、LEVELでその音量を調整できる仕様だ。例えば、BLENDを抑えることによって原音を目立たせたフレーズの後ろでうっすらエフェクト音が鳴っている設定にもできるので、非常に使い勝手の良いものになっている。ATTACKはエフェクトの立ち上がりを調整する役割。つまり、左に絞るほどエフェクトの立ち上がりが遅くなるので、ボリューム奏法的な効果が得られる。モデル名にReverse Attackとあるが、このツマミの効果がその所以だろう。これをうまく使うことによって、例えばデヴィッド・ギルモアのギター・ソロを想起させるような音も出せる(動画:14:36〜)。ギタリストにとって、音の立ち上がり方や原音とエフェクト音のブレンド具合で、“どれくらい細かく音を追い込めるのか”が重要になってくるのだが、このシンプルで操作性に優れたコントロール・ツマミはありがたいし、とても好感が持てるところだ。

ワウ的なサウンドからブレイクビーツ的なサウンドまで
フィルターをエクスプレッション・ペダルで操作!

 次に、右にある大きなFILTERツマミを説明しよう。この設定によってサウンドの印象が大きく変わってくるので、本機の肝となる部分だと思っていただきたい。このツマミを回してフィルターを開け閉めすることによって、より“シンセっぽさ”が発揮される。エクスプレッション・ペダル(別売り)でも操作できるようになっているので、リアルタイムでさまざまな音色を出すことも可能だ。エクスプレッション・ペダルの操作によってワウ的な効果や、シンセ・ペダル特有の思いもよらない変化などが得られるので(動画:11:08〜)、このペダルの真髄を味わうには、ぜひともエクスプレッション・ペダルも一緒に使っていただきたい。

サイドにはエクスプレッション・ペダルを接続する端子とDCジャックを搭載

 最後に、右下にあるのがウェーブフォーム・ロッカー・スイッチと言って、3段階式の波形切り替えスイッチである。エフェクトの基本となる音はこの波形モードで決まり、下からサイン波、ノコギリ波、スクエア波になっている。まずサイン波に関しては“ミョンミョン系の音”で、ファズとはまた違うテイストになっている(動画:6:48〜)。おもしろいのは、スイッチ上に設置されたCHAOSスイッチをオンにすると、キャラクターが変わってくる点だ。CHAOSスイッチの役割は“エフェクトの効きが鋭くなるもの”と考えてもらうとわかりやすいと思うが、サイン波を選択している場合はまったく別物の印象になる。オンにするとオクターブ下が出て、若干フランジングのかかったゴリゴリのファズになるのだ(動画:6:22〜)。ノコギリ波は一番ファズっぽさが際立つモードになっており、バッテリーが切れかかったようなブチブチの音から(動画:7:30〜)、サステインが伸びて鋭く突き刺すような音まで(動画:7:56〜)、さまざまなファズ・サウンドが楽しめる。そしてスクエア波は一番“シンセっぽさ”を感じるモードかもしれない。ファズ・テイストもありつつオクターブ下も強調され、例えば90年代以降のテクノやブレイクビーツなどで使用されたシンセ・ベースのような音を想起させるだろう(動画:14:04〜)。ただし、これらのサウンドはFILTERツマミの位置によって変わってくるので、試奏動画を併せて観ていただき、あくまでも大まかなイメージとして捉えていただきたい。

 このように出せるサウンドの幅が広いので、セッティングが難しいと感じるかもしれない。しかし、まず波形モードとCHAOSスイッチを切り替えたら、左上の3つのコントロール・セクションを調整して、最後にFILTERツマミをいじる……という具合で、3つのセクションを時計回りに音作りしていけば、より簡単にサウンド・メイクができるだろう。

 シンセ・ペダルではあるが、普通のエフェクターと何の違和感もなく使えるものだと感じた。それはギター・プレイヤーからの視点で考えられた操作性や、CHAOSモードも含めたサウンド・バリエーションによるものだろう。本機を純粋にファズ・ペダルとして使うのも良い。その場合はFILTERツマミを駆使してオリジナリティ溢れるファズ・サウンドが出せるし、波形モードの切り替えによってさまざまな音楽スタイルにも対応できる。使うことでイマジネーションが刺激される、とても魅力的なペダルだ。

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製品情報

Keeley / Synth-1 Reverse Attack Fuzz Wave Generator

価格:オープン

【スペック】
●入出力端子:インプット、アウトプット、フィルター・エクスプレッション ●コントロール:レベル、ブレンド、アタック、フィルター、カオス・スイッチ、ウェーブフォーム・ロッカー・スイッチ ●電源:DC9アダプター ●外形寸法:約94(W) x 120(H) x 35(D)mm ●重量:約340g
【問い合わせ】
池部楽器店 https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/619654
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プロフィール

牛尾健太(おとぎ話)
◎うしお・けんた。1983年生まれ。広島県出身。2002年にロック・バンド、おとぎ話に加入。ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ブラーといったブリティッシュ・ロックから影響を受けたメロディアスなフレーズ・ワークに定評がある。バンドはドレスコーズ、カジヒデキ、忘れらんねえよ、前野健太などのライブ/レコーディングにも参加。ライブ・バンドとしての評価の高さに加えて、映画や演劇など、多ジャンルにわたるアーティストやクリエイターからの共演を熱望する声があとをたたない。最新作は2018年にfelicityからリリースされた『眺め』。

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