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  • 4月6日(土)と7日(日)に行なわれたMartin Club Japanの30周年イベントをレポート

MARTIN Rebirth Tour 2019 SOUNDHOLE UNIVERSE

Martin / New Models

好評連載Martin Times。第32回目となる今回は、2019年4月6日(土)と7日(日)に恵比寿ガーデンホールにて開催されたMartin Club Japanの2DAYSライブ・イベント、J-WAVE主催『MARTIN ACOUSTIC LIVE FES Rebirth Tour 2019 SOUNDHOLE UNIVERSE~It's a Beautiful Day~』の模様を、当日使用された出演者のマーティン・ギターの解説も含めてレポートします!

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MARTIN ACOUSTIC LIVE FES
Rebirth Tour 2019 SOUNDHOLE UNIVERSE

豪華アーティストがマーティン・ギターを使用し
極上のサウンドを響かせたライブ・イベント

 マーティン・ギター愛好者が集う“Martin Club Japan”は、マーティンの魅力を広く伝えるためのRebirth Tourを全国展開してきた。今年はそのMartin Club Japanが設立30周年を迎えるのを記念して、去る4月6日(土)と7日(日)、2日間にわたるスペシャル・イベントが開催された。もちろん出演者もスペシャルで、6日が竹内アンナ、中シゲヲ(ザ・サーフコースターズ)、馬場俊英、小倉博和、鈴木茂、高野寛。7日がRei、尾崎裕哉、おおはた雄一、曽我部恵一、吉川忠英、斎藤誠(以上、出演順)というラインナップ。円熟のベテランから新進気鋭の若手まで、世代も音楽スタイルも多種多様なアーティストが“弾き語り”という共通のフォーマットで演奏するというのは、アーティストの素の個性はもちろん、それぞれが愛用するマーティン・ギターの魅力も存分に味わえる格好の機会にもなった。斎藤氏は自身のステージばかりでなく、Rebirth Tourの司会としてお馴染みのレイチェル・チャン氏とともにイベントの総合司会も務め、さらには他のアーティストのステージへのゲスト参加もこなすという大活躍ぶりだった。

 ここでは、各アーティストが使用したマーティン・ギターの詳細と、イベントの模様についてお伝えしよう。

竹内アンナ / OMJM John Mayer

OMJM John Mayer(Front)

OMJM John Mayer(Back)

 竹内があこがれるシンガー・ソングライター、ジョン・メイヤーのシグネチャー・モデル。トップは繊細なサウンドが特徴のイングルマン・スプルースで、サイド&バックはインディアン・ローズウッド、指板とブリッジはエボニーという材の組み合わせとなっている。パーフリングはヘリンボーンで、基本的な仕様としてはOM-28だが、アバロンのリングを追加したロゼッタや、小さなドットを基本にしたポジションマーク、マーティン・ゴールド・プラス・ナチュラル1ピックアップなど、細かい部分にこだわりが感じられる。なお、花柄のストラップはこのギターに合わせて選んだという。

中シゲヲ(ザ・サーフコースターズ) / OMC-18E AmberTone

OMC-18E AmberTone(Front)

OMC-18E AmberTone(Back)

 つい最近手に入れたという、彼にとって初めてのマーティン・ギター。“触った瞬間に手が吸い付く感じがして、同型のローズウッド・ボディのモデルよりもマホガニー・ボディのこのギターのほうが音に張りがあり、強いピッキングにもついてきてくれるところ”が気に入った理由だという。カッタウェイ付きのエレアコということで、エレキ・ギターに近い感覚で弾けるのも彼にとっては好都合だ。現行のスタンダード・シリーズの1本で、ピックアップはフィッシュマン製のAura VT Enhanceを内蔵している。ネックはいわゆるパフォーマンス・タイプで、エレキに慣れた彼にとっても馴染みやすい機能的なグリップだと言えるだろう。

馬場俊英 / D-42

D-42(Front)

D-42(Back)

 馬場のメイン・ギターは、13〜14年ほど愛用しているというD-42。今回はチューニングを半音下げる曲で使用した。“D-45のように豪華な装飾で、かつ手頃なギター”というコンセプトで1969年に登場したスタイル41に対して、スタイル42は19世紀末頃に登場した由緒ある仕様で、指板の周辺まで施されたトップのアバロン・パーフリング、ネックのバインディングといった装飾が特徴である。ヘッドにカポの跡が見られる以外に目立つ傷もなく、丁寧に扱われているD-42は、バンドの音によく馴染み、弾き語りでもバランスが良くて気に入っているという。ちなみにD-41も所有しており、“数か月前から使い始めたばかりで、鳴らし込むためになるべく使うようにしている”という。

小倉博和 / 00-18CTM 000C-42GT-75

00-18(Front)

00-18(Back)

CTM 000C-42(Front)

CTM 000C-42(Back)

1965 GT-75(Front)

1965 GT-75(Back)

 00-18は1958年製のビンテージというだけでなく、当時のレコーディングなどで、とても活躍した貴重なギターである。現行の00-18では指板とブリッジがエボニーなのに対して、このギターはブラジリアン・ローズウッドになっているのが特徴である。

 000C-42CTMは、アディロンダック・スプルースのトップにマダガスカル・ローズウッドのボディという豪華な仕様。40番台でカッタウェイ付きというのは珍しく、数年前にようやく見つけて手に入れたという。

 もう1本はエレキのセミアコで、1966年製のGT-75。マーティンとしては珍品中の珍品である。

鈴木茂 / 000-45D-35

000-45(Front)

000-45(Back)

D-35(Front)

D-35(Back)

 D-35は1990年頃、ガツンという低音が気に入って新品で購入。何年か使用したあと、ライブやレコーディングでピックアップの音をミックスする必要が出てきたということで、アンダー・サドル式のピエゾ・ピックアップを追加した。ライブ用に別途アコースティックのシステムを組むのは大変なので、エレキ用のペダルボードにつないで使っているそうだ。とは言え、D-35はおもにレコーディング用で、今回のようにライブで弾く機会はほとんどないそうで、30年近く使用したとは思えないほどキレイな状態を保っている。

 000-45は高音の伸びが良く、“キラキラした高音が欲しい時”などに使用するのがおもな用途だという。

高野寛 / 000-18(2018)

000-18 (2018 / Front)

000-18(2018 / Back)

 今年に入ってからマホガニー・ボディのギターをいろいろと試奏した結果、フィンガー・ピッキング時のサウンドが気に入って購入。きちんとしたライブで使用するのも今回が初めてとのことで、シトカ・スプルース・トップにマホガニー・ボディの、ごく標準的な“吊るし”のマーティンの音をマイクで拾っただけだが、会場に響きわたったサウンドは素晴らしく、スタンダード・シリーズの実力が遺憾なく発揮される結果となった。ガット・ギターのような感覚で弾ける楽器で、高音部のメロディと動きのあるベース・ラインを組み合わせるような曲には、うってつけだという。

Rei / OMC-18E

OMC-18E(Front)

OMC-18E(Back)

 Rebirth Tourに登場するのは2回目のRei。もともと00-18 Authentic 1931を使っていたが、高音部でソロを弾くことも多いので、14フレット・ジョイントでカッタウェイ付きの本器を入手。アコースティックな音色の深みまで忠実に再現するAura VT Enhanceという優れたピックアップ・システムを搭載し、弾き心地も良いというのも選んだ理由だという。Enhanceトランスデューサーはブリッジ・プレートに貼り付けるコンタクト・タイプなので、彼女がよく使うボディ・ヒットのようなテクニックとの相性も抜群だ。

尾崎裕哉 / OM-28E Retro

OM-28E Retro(Front)

OM-28E Retro(Back)

 デビュー前から現在まで6年ほど愛用しているギターで、最初に手に入れたバックパッカーに続く2本目のマーティン・ギターだという。優しく弾けば繊細な音、ガツンと弾けば弦がビビることなく、ストレートで力強い、中音域の抜ける音が出るということで、どのようなシチュエーションにも対応できるところが気に入っているそうだ。“立ち上がりが速くて音の減衰がコントロールしやすい。それとサステインが豊かでなので歌っていない時でも空間を埋めてくれるので、弾き語りの伴奏用としても心強い存在”とのこと。ジョン・メイヤーがローズウッド・ボディのOMを使っているというのも、OM-28を選択した理由のひとつだそう。

おおはた雄一 / 000-42

000-42(Front)

000-42(Back)

 おおはた曰く“基本的にはチープなギターが好きなんです。なのでこのギターは意外な選択だけど、弾いていて気持ち良いので気に入っている”とのこと。ショート・スケールで取り回しやすいサイズの000は、ラグタイムを始めとするさまざまなフィンガー・ピッキングからストロークまで幅広いスタイルをこなし、爪をほとんど伸ばさず、おもに生指でピッキングするという彼にピッタリだろう。最近はマグネティック・ピックアップを付けて使用していたが、今回ピックアップをはずして生音で使ってみて、アコースティックとしての良さを再認識したという。ヘッドの角の部分に欠けた跡があるが、元の木片を使って丁寧に修理されている。

曽我部恵一 / D-28 150th Anniversary

D-28 150th Anniversary(Front)

D-28 150th Anniversary(Back)

 マーティン社創立150周年記念モデルとして1983年に製作されたスペシャル・モデル。アディロンダック・スプルースのトップにブラジリアン・ローズウッド・ボディを使用するなどして、戦前のマーティンを再現しているのが特徴である。10年ほど前に中古で購入した時には新品同様のコンディションだったそうだが、それまで使っていた通常モデルのD-28から持ち替えてメインとして使い込むうちに、写真のようなルックスになったという。彼の演奏スタイルにすっかり馴染んでおり、優しいピッキングから激しいストロークまで、広大なダイナミクスに追随するそのサウンドは圧巻だ。

吉川忠英 / 00-18DBCY00C-18DBCY

00-18DBCY(Front)

00-18DBCY(Back)

00C-18DBCY(Front)

00C-18DBCY(Back)

 2001年に40本限定で製作されたディープ・ボディのシグネチャー・モデル。ドレッドノートよりも気軽に手に取れるサイズでありながら、豊かな低音が得られるというのがコンセプトだという。スロッテッド・ヘッドや、愛用のメガネをかたどった12フレットのポジション・マーク、サンバースト仕上げといった仕様も、もちろん彼のアイディアだが、サンバーストは典型的なマーティン式ではなく、ブリッジ周辺だけを赤くするスタイルにしてもらうために、先頃引退したアーティスト担当のディック・ボーク氏に“某他社のような仕上げを”と注文したところ、快諾してくれたという。ボディはマホガニーで、ローズウッドの音よりも好みだとのことである。

斎藤誠 / 000C-16SGTNE、OM-28 Makoto Saito Custom

000C-16SGTNE(Front)

000C-16SGTNE(Back)

OM-28 Makoto Saito Custom(Front)

OM-28 Makoto Saito Custom(Back)

 OM-28は約15年間にわたって愛用し、斎藤誠のトレードマークのようになっている。“今回のイベントのようにセッションがある時には、大きな音が出て、ピックアップを付けなくてもマイク乗りがすごく良いのが気に入っている”という。アディロンダック・スプルースのトップとブラジリアン・ローズウッドのボディの組み合わせは、やはり強力だ。

 カッタウェイ付きのエレガット000C-16も10年以上愛用しており、トップのピッキングの跡など、使い込まれた様子が見て取れる。今回はmagnifico(マグニフィコ)という新しいマーティンのナイロン弦を使用している。

Live Report

 初日の6日は、総合司会のレイチェル・チャンと斎藤誠による軽妙なオープニング・トークと、マーティン本社を代表して来日したリック・フォレロ氏によるあいさつからスタート。最初に登場したのは竹内アンナで、「All Right」、「No Scrubs」、「Free! Free! Free!」、愛用のOMJMにインスパイアされて完成したという「ペチュニアの花」を披露。“この機会をいただけたのもマーティン・ギターのおかげ”ということで、普段はルーパーを使用する曲もギターのみのアレンジで演奏した。

 2番手はザ・サーフコースターズの中シゲヲ。“普段はエレキしか弾かない”という彼は、カッタウェイ付きのOMC-18Eでベンチャーズの「パイプライン」を始め、ゲスト参加した斎藤誠によるガット・ギターを加えてのザ・シャドウズ「ボッサ・ルー」、そしてディック・デイル&デルトーンズの「ミザルー」など、得意のサーフ・ミュージックをアコースティックなアレンジで演奏。異色の存在としてイベントのバリエーションを広げた。

 続く馬場俊英は“ストーリー仕立ての曲を選んだ”ということで、「ブルーバード~僕は夢の影のように」、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」、OMを手に取った斎藤誠を加えての「街路樹」、「ロードショーのあのメロディ」と、愛用のD-42を使って多彩なオリジナル曲を披露した。

 4番手の小倉博和は、キーボードやDJ、打ち込みなどの伴奏を交え、000C-42CTMや1958年製の00-18、珍品と言うべきエレクトリックのセミアコGT-75を持ち替えて変化に富んだステージを展開。「つばめ」や斎藤誠を迎えて行なった自身の最新アルバム『Sketch Song』に収録されているカバー・ソング『YaYa(あの時代を忘れない)』を披露。

 続く鈴木茂は、普段エレクトリック・ギターで使用しているペダルボードにピックアップ内蔵のD-35をそのままつなぎ、いかにも鈴木らしいサウンドで、曲によって小倉博和や高野寛の応援を得ながら「ソバカスのある少女」や「砂の女」などを演奏。

 初日のラストを飾る高野は、“ちゃんとしたライブでこのギターを使うのはこの日が初めて。ピックアップも内蔵していない”ということで、2018年製の000-18の音をマイクで拾うだけというシンプルなサウンドで「Dog Year, Good Year」や「ベステンダンク」などを演奏した。

 翌7日のステージはReiのステージで幕を開けた。まるですべてがアドリブかのように、歌とギターが一体となるフレーズの数々でいっきにオーディエンスを引きつけた圧巻のステージパフォーマンスだった。

 2番手の尾崎裕哉は、“この会場にはギターを弾ける人しか集まっていない(笑)。イベントに参加できて光栄ですが、どうしようか困っています”と謙遜しながらも、OM-28E Retroをマイクだけで鳴らして説得力のあるステージを展開。ラスト、父・尾崎豊の名曲「I Love You」を生で聴いたファンの胸には、去来するものが多々あっただろう。

 続くおおはた雄一は、前の2人とは対照的に、愛用の000-42で優しいストロークやフィンガー・スタイルで、40番台のきらびやかな音色を生かしたプレイを披露。斎藤誠を迎えてのムッシュかまやつのカバー曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」では、熱いギター・セッションが展開された。

 4番手の曽我部恵一は、マーティン創立150周年記念モデルのD-28の音をマイクのみで拾い、子守歌のように優しい「おとなになんかならないで」から、凄まじいパワーの「満員電車は走る」まで、弾き語りとは思えないほどダイナミックなステージを展開した。

 万を持して5番手で登場したのは吉川忠英で、ディープ・ボディの00-18と00C-18の深みのあるサウンドはもちろん、「草原の音」ではホーミーや歯笛を交えるなど、幅広い音楽性を披露。斎藤誠とのデュオによる「You’ve Got A Friend」(オリジナルはキャロル・キング)でしっとりと終わるという、粋な構成だった。

 イベントを締めくくるのは、両日にわたって総合司会を務めながら、6人のステージにゲスト参加するという、文字通り八面六臂の活躍を見せた斎藤誠。「Change The World」やデレク・アンド・ザ・ドミノスの「Roll It Over」を交えたエリック・クラプトン・メドレーや、リリース前の公開となる「やさしいルールで恋して」など、幅広いスタイルのレパートリーを披露した。

 両日ともアンコールでは出演者全員で、はっぴいえんどの名曲「風をあつめて」を演奏。1日目と2日目ではアレンジが大きく異なり、出演者の多彩なスタイルが興味深い形で反映されていた。また、両日とも会場には展示即売を行なうスペースも用意され、小倉博和を始めとするギタリストによるミニ・コンサートが行なわれたり、気になるマーティン・ギターを自由に試奏できたり、出演者のグッズが販売されたりして、大盛況のコンサートに負けず劣らず、終始にぎわいを見せていた。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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