ヘッドウェイの桜10周年記念モデル、第一弾としてSAKURA'24&YOZAKURA'24の全8機種が登場
- 2024/03/19
Gretsch / G6119T-62TB-YC
このたびグレッチからチバユウスケ(The Birthday)のシグネチャー・モデル、“Tennessee Black”が発表。完成にこぎつけるまで約3年を要したこのモデルは、チバが所有する複数のグレッチから最適なスペックとルックスを吟味したという。クールなマット・ブラックに身を包んだこの1本にかけるこだわりをチバ本人から聞くことができた。あまりお目にかかれないチバによるギター・トーク、そして本人演奏の動画を楽しんでほしい。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT時代からグレッチ・ギターを愛用してきたチバユウスケ。このたび彼のグレッチ愛が凝縮されたシグネチャー・ギター、 G6119T-62TB-YC Yusuke Chiba Tennessee Black with Bigsbyが登場した。
製作にあたり、メインで使用していたテネシーローズを一度解体。各パーツを測定し、ネックやボディのシェイプを近づけている。材構成は、ボディがラミネイテッド・メイプル、ネックがメイプル、指板がエボニー。ピックアップにはハイ・センシティブ・フィルタートロンをマウントし、テネシーローズに近いサウンドを再現した。ライブでの使用を考えストラップ・ピンはフェンダー・タイプを採用し、ブリッジも演奏時のズレを防止するピンド・エボニー・ベース&アジャストマティック・ブリッジを搭載している。Gアローのアルミ・コントロール・ノブやバインディングの色味は67年製テネシアンや72年製クリッパーを参考にしており、ビンテージ・ライクに仕上げているのもこだわりだ。一番のポイントは薄いラッカー塗装の“テネシー・ブラック”・カラーで、スモール・サイズのヘッドと相まって精悍な印象を与えている。
2017年にプロト・タイプが完成して以来、ライブやレコーディング、さらには自宅でも本モデルを弾き倒しているというチバ。彼のファンやグレッチ・コレクターのみならず、ギターが好きでたまらない人に手に取っていただきたい1本だ。
【Specifications】
●ボディ:ラミネイテッド・メイプル ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●スケール:24.6インチ(625mm) ●フレット数:22(+ゼロ・フレット) ●ピックアップ:ハイ・センシティブ・フィルタートロン×2 ●コントロール:ボリューム1(フロント)、ボリューム2(リア)、マスター・ボリューム、トーン・スイッチ、スタンバイ・スイッチ、3ポジション・トグル・スイッチ(リア/リア&フロント/フロント) ●ブリッジ:アジャスト・マティック with ピンド・エボニー・ベース ●テイルピース:ビグスビーB6Cビブラート・テイルピース with グレッチ・ロゴ ●ペグ:ゴトーSG301クローム ●カラー:セミグロス・ブラック・ニトロセルロース・ラッカー ●弦:SIT S1046(.010〜.046)●付属品:認定書(チバユウスケ、グレッチ・カンパニー社長、グレッチ・プロダクト・スペシャリストの直筆サイン入り)、ギター解説ミニ・ブックレット、スペシャル・ハードケース ●価格:460,000円(税抜き) ※数量限定商品
──なぜシグネチャー・モデルを作ることになったのですか?
今回、担当してくれた神田商会の松木(昭男)さんはもともと(中村)達也と知り合いで、THE GOLDEN WET FINGERSの時にお会いして。それが3年くらい前かな? それから“作りませんか?”って言われてたんだけど、俺はそういうのに全然興味がなかったので、ずっと断ってた。
──そうなんですか(笑)。
俺はギタリストじゃないからね。ちょっと変なんだよ。……自分でもわかってんだよ。“音の当て方がギタリストじゃない”ってイマイ(アキノブ)君から言われてたもん(笑)。
──チバさんがOKに踏み切ったキッカケは?
キッカケはガイチ(瀬戸垣内潔/The Birthdayマネージャー)だろうなぁ。ガイチはずっと松木さんに“やろう”って言われてて、“チバさん、どうしましょう?”って困ってたから(笑)。あと、(横山)健のシグネチャー・グレッチが出た時に“おっ!”と思ったんだよ。“健もやってんだ!”ってね。もしかしたら、それもあったかなぁ。まぁ、結局は松木さんの熱意に負けたというか。
──ではまず、どういう順序でギターの仕様を決めていったんですか?
それも俺からじゃなくて、ガイチからでさ。最初にガイチから“テネシーローズをブラックにしたギターを作りましょうよ”って言われたんだけど、その瞬間にこのマットな塗装の感じと、あんまりキンキンしないシルバーのイメージができて、“それだね!”と。そしたら、ランシドのティム(・アームストロング)が頭に浮かんでさ。
──ティムもずっとグレッチ・ギタリストですもんね。
うん。サウスポーだけどね。あいつは黒く塗り直したようなグレッチを弾いてるじゃん。あれが良いなと思って。だからガイチが“ブラック”って言った瞬間に全体のイメージが見えて、それで“欲しい!”と思っちゃったんだな(笑)。……そうだ、それがキッカケだ!
──なるほど。そういう仕様のグレッチはなかなか売ってませんもんね。
売ってない。売っててもブラック・ファルコンみたいなキランキランの色のやつが多いからね。
──それからグレッチ・サイドとどういうやり取りを?
基本的にはメインで使っていたテネシーローズの音に近いようにしたいとは伝えた。そうでないと困っちゃうからね。あとは、今は人にあげちゃって持ってないんだけど、72年製のクリッパーの見た目や色味を参考にしていったね。で、音に関してはフィルタートロンを載せたら俺はOKなんで。
──ハイロートロンは?
俺ね、そんなに違いを感じないんだよな〜。そういうピックアップの違いよりかは、ギターの個体差のほうがデカイと思うんだよ。同じギターでも、例えばテネシーローズも2本持ってるけど、メインとサブで全然違うし。あと、さっき弾かせてもらったやつ(動画で弾いている市販品のシグネチャー・モデル)も、俺がいつも使ってるやつと少し鳴りが違ってたもん。
──なるほど。コントロール・ノブがチバさんが所有している67年製テネシアンと同じものになっていますが、これはデザイン的に好みなんですか?
うん。光らない感じがね。テネシアンと、あとクリッパーのやつも好き。
──それと、ストラップ・ピンがフェンダー・タイプになっていますね。
グレッチのピンだといきなり抜けたりするし、使っていくうちに錆びちゃうんだよね。あとストラップを使う時に、毎回毎回ピンを回して穴を開けるのもさ、ギターがかわいそうで嫌だった。穴が広がっていくじゃん? ……こうやってしゃべると、俺も意外にギターにうるせぇんだなぁ(笑)。でも音のほうじゃないっていう(笑)。
──(笑)。ギターは見た目で手に取るか取らないかが決まりますからね。
うん。
──ヘッド・ロゴもテネシーローズと違いますよね?
うん。これも良く作っていただいて。テネシーローズのロゴと比べると、角張っているというか、細いのよ。それはね、クリッパーのロゴをもとにしてもらったからなんだよ。だからこれは、テネシーローズとテネシアンとクリッパーが合体したようなギターなんだよね。
──チバさんが思い描く理想のグレッチだと。
まさにそう!
──あと、このシグネチャー・モデルの重量が軽いところが気に入っているそうですね。
うん。でも、それは最初は考えてなかったの。出来上がってみたら軽かった。俺のメインだったテネシーローズは汗やら血やら何から何まで吸い込んじゃってるから、まぁ重くてさ。
──ミッシェル時代からずーっとメインで使ってきていましたからね。
そうだね〜。だから初めて67年のテネシアンを持った時は“軽っ!”と思った(笑)。
──2017年の5月、プロト・タイプの初号器が完成する日にグレッチの工場見学に行ったんですよね?
行った! ギターを作ってる人たちに会えて、おもしろかったよ。しかも、俺のメインのテネシーローズを作ったって人もいたんだよ。俺はずっとメイド・インUSAだと思ってたんだけど、シリアル・ナンバーを見たら日本製だったらしいんだよね(笑)。
──(笑)。工場の様子はどうでしたか?
すっげぇ楽しかった。でもさ、ちゃんとできないとパーツが捨てられちゃうのよ。あれはもったいない……。でも楽しかったよ。ギターがどう作られているのかなんて、あんまり考えたことなかったから。また行きたいね。
──それからそのプロト初号器をずっとメインで使っているんですか?
うん。もらってからはずっと弾いてるよ。
──完成品を見てどう思いました?
カッコ良いと思ったよ。イメージどおり。あとはこれをどうやって馴らしていこうかなって。
──音を出してみた感想は?
当たり前だけど、“グレッチっぽい音がするな”と思ったかな。テネシーローズよりは、どっちかって言うとテネシアンに近いような。
──ビンテージっぽいと。
そうそう。それはちょっと思ったね。そうすると作る曲も変わってくるというか。
──実際にシグネチャー・モデルで作った曲もあるんですか?
あるよ! というか、もう最近はこれしか使ってないんでね。あとは、ほかのグレッチよりも少しパワーが強い感じがあるかなぁ。何も(エフェクターを)踏まなくてもアンプのセッティングによっては“ゴン!”ってくるしね。まぁ、そういうのを好まない人は(アンプ側で)削ればいいだけだから。
──さっきチバさんがアンプを通して弾いていた時の音も、すごく前に張り付いてきましたし、バンドの中でも埋もれなさそうだなと感じました。
そうなのよ。パワーがあんの。埋もれないね。いやぁ、良いのができたなと思いますよ。
──ポジション・マークとバインディングはテネシアンに近いビンテージ風の色味になっていますね。
うん。テネシーローズも最初は白だったけど、だんだん黄色くなってきて。真っ白だと目立っちゃうから、そのほうが良いかなぁと。
──あまりにもカッコ良いので、僕も欲しくなってきちゃいました……。
まぁまぁするよ(笑)? でも、これでもずいぶん下げてもらったんだ。
──それは、より多くの人に弾いてもらいたいからですよね。
そうだね。最初に出された値段は“それはちょっと勘弁してくれ“って言ったのよ。それで下げてくれたんだけど、これでも十分高いからねぇ……。
──このシグネチャー・モデルをどんな人に弾いてもらいたいですか?
本当にギターを弾くのが好きな人だね。あとは何だろうなぁ……いつか“これがファースト・ギターでした”っていうバンドマンに会ってみたい。
──それは最高ですね。このギターを買ったことがキッカケでバンドを始める人もいそうです。
それも本当にうれしい。……でも言っとくけど、俺はギタリストじゃないからね。ただのギターを弾くのが好きなボーカルなんで。
本記事は、リットーミュージック刊『ギター・マガジン 2019年10月号』の一部を先行公開したものです。9月13日(金)に発売される本誌には、チバユウスケが所有するグレッチ・ギターをすべて紹介していますので、ぜひチェックしてみてください!
価格:¥460,000 (税別)
チバユウスケ(The Birthday)
ちば・ゆうすけ。日本を代表するロック・バンド、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのボーカル&ギターとしてデビュー。現在はクハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジを擁するThe Birthdayのメンバーとして活動中。そのほかイマイアキノブとのMidnight Bankrobbersや、イマイアキノブ&中村達也と結成したTHE GOLDEN WET FINGERSなどでも活動。8月28日には、フジイケンジ加入後から現在までにリリースした12枚のシングルに収録されたアルバム未収録のB面楽曲と、PUFFYへ提供した「誰かが」のセルフ・カバーや、新曲「ペーパームーン」を収録した『WATCH YOUR BLINDSIDE 2』がリリースされる。