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  • 【連載】プロが語るソニー Hi-Res Recording Tools・第4回

涼音堂茶舗 × Sony PCM-D10

Sony / PCM-D10

ソニーから音楽作品のハイレゾ録音を意識した製品が発売され、注目を集めている。それらを使用する第一線のプロにインプレッションを語ってもらうのが本連載だ。今回は電子音楽レーベル“涼音堂茶舗”主宰の星憲一朗(写真上、右)、レーベルに集う新鋭アーティストの一人、武田真彦(写真上、左)の2人が登場。ハンディなリニアPCMレコーダー、PCM-D10を語る。

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Featured Product :
PCM-D10

PCM-D10 / オープン・プライス(市場予想価格:49,880円前後)

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 最高24ビット/192kHz WAVのリニアPCM録音&再生に対応するレコーダー。外形寸法は約80.2(W)× 197.6(H)× 37.4(D)mm、重量は約480g(単3アルカリ電池×4を含む)で、本体に単一指向性コンデンサー・マイクをペアで搭載。ズーム/ワイド/XYの3種類のマイキングが行える。また、XLR/TRSフォーン・コンボのオーディオ・イン×2やファンタム電源を備えるため、ミキサーやシンセサイザー、エレキ・ギターなどのライン入力や外部コンデンサー・マイクの入力も可能だ。アナログ/デジタル回路にはいずれも高性能な部品を採用し、基板レイアウトを最適化することで低ノイズと高音質を実現。3,300Μfの大容量コンデンサー×2により、電源供給の安定化を図っているのも魅力だ。Bluetoothでの音源再生や、スマートフォン(Android/iOS)に専用アプリRec Remoteをインストールしてのリモート・コントロールも可能。付属品として、Mac/Windowsにファイルをコピーする際に用いるUSBケーブル、ウィンド・スクリーンやキャリング・ポーチ、Windows用の音声再生/編集ソフトMAGIX Sound Forge Audio Studio 12などを同梱している。

Hoshi's impression :
録り音そのものにドラマがあるんです
作品制作の概念が一変しましたね

音の粒立ちが鮮明でありのまま録れる

 涼音堂茶舗は、2003年より京都市の法然院方丈で『electronic evening 電子音楽の夕べ』というイベントを主催している。“茶の湯”の原点に基づくレーベル・コンセプトを音楽ライブ、映像、インスタレーション、お茶席などで体現するもので、今年は8月31日に開催された。これに先駆け、7月16日〜8月27日の毎週火曜日に、京都のFMラジオ局α-STATIONがイベントとのコラボレーション番組『KYOTO AIR LOUNGE feat. electronic evening 2019』を放送。PCM-D10は、ここでかかるアンビエント作品の制作に使われた。そのアンビエント作品とは、PCM-D10でフィールド・レコーディングした素材をDAW上で組み合わせ、プロセッシングしたもの。「貴船や鴨川など市中あちこちを回り、24ビット/48kHzで録音しました」と星は語る。

 「フィールド・レコーディングをやっていると、辺りの音が毎週変わっていることに気付くんです。例えば8月下旬にもなるとアブラゼミやクマゼミというよりも、ミンミンゼミやツクツクボウシになっている。そういうのって、逐一気にかけるのではなく、無意識に感じていることだと思うんです。季節感というのは、肌や耳から入ってくる季節の移ろいに由来するのかもしれないし、それを無意識のままにしておかず、いかに表現するか。茶の湯がやってきたのはそういうことだと思っていて、僕らの作品が根差すところもまた同じです」

 星と同様に、武田も「フィールド・レコーディングを通して時季による音の移ろいに気付かされました」と語る。

 「しかもPCM-D10を使ったことで、ありのままの音を聴けた感じです。これまで使っていたハンディ・レコーダーに比べると音の粒が鮮明で、とてもクリアに録れている。感度が高いのでハンドリング・ノイズなどには注意を要しますが、対象にしっかりと照準を合わせられるのはもちろん、かばんに入れたままにして録音できたりもします。レコーダー自体の品質が高いので、クオリティ重視の録音からカジュアルな記録まで、幅広く対応できるのが良いですね

単一の素材を長尺で使えるようになった

 武田はPCM-D10の内蔵マイクのほか、外部のバイノーラル・マイクを本体のXLR/TRSフォーン・コンボ端子につないで使用したという。

 「対象をピンポイントにとらえたいときは内蔵マイク、環境全体を切り取る場合はバイノーラル・マイクを使いました。例えばコオロギの鳴き声。内蔵マイクでオンにとらえるとアタッキーな電子音のように聴こえるんですが、少し離れてバイノーラルで録れば、響きが入って柔らかく有機的な音になります。そのコントラストが面白かったので、両者をミックスして作品にしました。内蔵マイクでお鈴(りん)の音を録ったのも良かったですね。周囲の空気までうまくキャッチでき、遠くで話している人の声や虫の鳴き声なども鮮明に録音できました。“この空間と時間をきちんと切り取れたな”と思えたのは、PCM-D10のクオリティによるところだと感じます

 解像度の高さは“作品制作の概念”を変えたと星は言う。

 「僕はフィールド・レコーディングにスマートフォンの録音機能を使っていたのですが、それで録った素材を用いる場合は“どのように組み立てればドラマティックに聴こえるか”という部分が制作の主な方向でした。例えば、ある素材にかけたリバーブの量をオートメーションで細かく制御しながら次の素材につないでいくような処理ですね。そうやって素材のうまみを引き出していたわけですが、PCM-D10の録り音には、音そのものにドラマがある。だから引き出すまでもないんです。素材の扱い方が全く違うわけで、制作に対する考え方や作り方が一変しましたね」

 武田も「録ったままで十分に聴きごたえがあり、音のテクスチャーを感じることができるんです」と話す。

 「これまで、フィールド・レコーディング素材は音を調整して楽曲に使うことが多かったのですが、PCM-D10を使い始めてからは、録った素材をそのまま長尺で使えるようになりました。その上に楽音を乗せるのも、別の素材につなぐのもスムーズに行えたので、ストレス無く制作できました」

 PCM-D10のクオリティを実感した星と武田。取材が終わるやいなや、2人は「今のこの音も録らねば!」と言いつつ、PCM-D10を携えて法然院の境内を駆けて行った。

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SRM201911.jpg 本記事はリットーミュージック刊『サウンド&レコーディング・マガジン 2019年11月号』の記事を転載したものです。今号のサンレコ巻頭特集は、伝説的エレクトロニック・ボディ・バンド、SOFT BALLET(ソフトバレエ)。本誌の発売日が、彼らがメジャー・デビューを果たした1989年9月25日のちょうど30年後という偶然を迎えるにあたり、一連のアルバムがアナログ・レコード化されるというトピックもありつつ、このタイミングを偶然ではなく必然の使命ととらえ、"早過ぎたバンド"として今も多くのファンを持つ彼らの功績を振り返りながら、その歴史をしっかりと後世に伝えていきます。

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