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【名曲完コピ倶楽部】a-ha「テイク・オン・ミー」を完コピしてみた

ソフトウェア音源

歴史的名曲を、電子楽器やソフトウェアなどで完コピする新連載「名曲完コピ倶楽部」がスタート! 今回はデジタル楽器情報サイト島村楽器「デジランド」のプロデューサー坂上暢さんによるa-haの「テイク・オン・ミー」です!

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80年代シンセ・ポップの金字塔
a-ha「テイク・オン・ミー」を完コピしてみた

 ※音楽SNSアプリ“nana”にアップロードしています。なお、1コーラス分が90秒に収まるようにイントロを一部カットしています。

 ノルウェー出身の3人組ユニットa-haの「テイク・オン・ミー」は、彼らのデビュー曲ですが、実は世界的に大ヒットしたのは、1985年にリリースされたアラン・ターニーによるリアレンジ・バージョン。80年代シンセ・ポップを代表するサウンドに仕上がっています。実写と鉛筆画アニメーションを組み合わせたプロモーション・ビデオも大きな反響を呼びました。

ポイント解説

MOTU DP10に仮音源で打ち込みした状態。この後音源を差し替えてオーディオ・データに書き出していく

 まず始めに、Roland INTEGRA-7を音源にして耳コピでMIDIデータを作成。「テイク・オン・ミー」に使われている音は“Yamaha DX7のベース”と、イントロの“あのリフ”ぐらいしか記憶になかったのですが、注意深く聴いてみると頭から60秒の間に約10種類のシンセ音色が使われていたのでちょっとびっくり。おそらく曲全体ではそれ以上の音色が使われていると思われます。このMIDIデータを元に音源の差し替え、オーディオ・トラックへの書き出し、ミックス・ダウン&マスタリングを行ないました。

DAWソフトMOTU DP10

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Rolandのサウンド資産を1台に凝縮したフラッグシップ音源モジュールRoland INTEGRA-7

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疾走感のあるドラム・パート

 原曲ではLinn Drumが使用されているようなので、NATIVE INSTRUMENTS Battery 4(KOMPLETE 12シリーズに収録)の「LinnDrum Kit」を使用しました。

ドラム・サンプラーNATIVE INSTRUMENTS Battery 4(KOMPLETE 12シリーズに収録)

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 キックはメインと3拍目に、聞こえるゲート・リバーブ処理された音色の2種類を使ってます。ゲートで残響音を無理やりぶった切るという懐かしいサウンドですね。派手目のコンプがかかっているスネアはWAVES C1とMOTU MASTERWORKS Gate(MOTU DP10に搭載)でパンチ感を出しドラム全体にはH-Reverbでアンビエント感を出しています。

WAVES C1(Mercury、Diamond、Platinum、Horizon、Gold、Power Pack、Silver などに収録)

MOTU MASTERWORKS GATE(MOTU DP10に標準搭載)

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80'sサウンドに欠かせないDX7のベース

 ベースはDX7のプリセットらしい音。この音色は当時いろいろな曲で使われてましたね。NATIVE INSTRUMENTS FM8(KOMPLETE 12シリーズに収録)で再現したDX7のベース音に、軽くコーラスをかけてみました。

FMシンセのシミュレーション・ソフト音源NATIVE INSTRUMENTS FM8(KOMPLETE 12シリーズに収録)

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クリーン・ギターのシミュレーション

 クリーン・ギター風のサウンドはSPECTRASONICS Omnisphere 2のプリセットから「Strat JC 120 Guitar 1」を選択。エフェクトは深めのコーラス・モジュレーションとWAVES H-Delayを使って仕上げています。

SPECTRASONICS OMNISPHERE

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この曲を印象づける重要なシンセ・パート

 メインのリフには、Roland JUNO-60のサウンドを再現できるRoland JU-06Aを使ってみました。プリセットにあったシンセ・ブラスを元にフィルターなどでエディットしてみましたが、さすが本家!と言わしめるサウンドだと思います(笑)。

ビンテージ・シンセJUNO-60とJUNO-106のサウンドを独自技術ACB(Analog Circuit Behavior)によって再現したシンセRoland JU-06A

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 しかし、録音したデータを後で聞き直してみると、リリースが少々長すぎて、原曲とは異なったニュアンスに……。録り直そうとは思いましたが、試しに波形を1音ずつぶった切って音価を修正してみたところ、なかなか良い感じになったので、このまま使うことにしました。

下段がJU-06Aを使ってメイン・リフを録音したトラック。上段は下段をコピーして音価を調整したトラック

 原曲で随所に聞こえるシンセ・ベルやパッド、アルペジオなどはおそらくPPG WAVE2.3だと思いますが、今回はRoland INTEGRA-7とNATIVE INSTRUMENTS FM8でシミュレーションしてみました。

 私が耳コピ・データを作るときに心がけているのは「実際のレコーディングのプロセスを理解する」ことです。原曲Aメロの“ホワンっ”としたシンセ・ブラスは、左右に異なったボイシングで2回重ねられていたので同じように2パート使って再現してみました。ここは人間っぽいルーズな感じが出せるのなら手弾でなくともOKかと思います。

 Aメロのアルペジオはデジタル波形らしいアタックを持つINTEGRA-7の「Digi Key 4」とFM8をミックスしています。ベルはINTEGRA-7の「Analog Bell」とRoland D-50っぽいサウンドをミックスしています。この曲のディレイは、基本的にWAVES H-Delayだけ使用していますが、かすかにモジュレーションを加えてアナログっぽい感じを出しています。

WAVES H-Delay(Mercury、Diiamond、Platinum、Horizon、Gold、Sound Design Suite 、H-seriesなどに収録)

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ミックス・ダウン&マスタリングについて

 今回は最終的にnanaに投稿可能なファイル形式(16ビット/44.1kHz、モノラル、WAV、10MB未満)にする必要があったので、各トラックで使用するプラグインは最小限にとどめ、AUXで使用したのもドラム用のゲートっぽいアンビエンスと、ホール・リバーブ2種類のみです。

すべてのトラックをオーディオ・ファイルに変換した状態

 最後に原曲のモノラル再生と聴き比べながらミックス・ダウンを行ないました。その際に重宝したのがWAVES S1 Stereo Imager(Mercury、Diiamond、Platinum、Horizon、Gold、Sound Design Suite 、Power Packなどに収録)。モノラルとステレオの音場をON/OFFで切り替えることができます。

 なお最終マスタリングにはiZotope OZONE 9を使用しました。機械学習で培ったデータを元に、ビンテージ風コンプ、EQ、リミッターを自動的に設定してくれて、数秒でカスタム・プリセットを作成する「マスター・アシスタント」機能は最強ですね!

マスタリングにはiZotope OZONE 9(中央)を使用。nanaで投稿可能なファイル形式(モノラル)にするためにWAVES S1 Stereo Imager(右下)を使用

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使用機材のまとめ


あなたの完コピ聴かせてください!

 デジマート・マガジン読者の中にも完コピが得意という方いらっしゃいませんか? 音楽SNSアプリnanaに投稿すれば、自分の演奏に“いいね!”してくれたり、コメントをしてくれたり、歌やほかの楽器を重ねてコラボしてくれたりします。スマホひとつで全国のミュージシャンとつながれますよ!

kancopi1-p.jpg◎nanaをダウンロード!
iOS】【Android

完コピをnanaに投稿するときのポイント

 nanaの基本的な使い方について公式ページをご覧ください。

 nanaユーザーで一番多いのは“ボーカル”なので、カラオケの完コピを投稿するとコラボされやすいです。nanaに投稿できる曲の長さは90秒なので、イントロが長い曲は1コーラス分が90秒に収まるように編集することをオススメします。

 なお、完コピをnanaに投稿する際は、ハッシュタグ #完コピ倶楽部 をつけてください。デジマート for クリエイターズのTwitterアカウントでツイートさせていただく予定です。優れた完コピを投稿していただいた方にはこの連載で紹介させていただくかも?

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プロフィール

坂上 暢(さかうえ みつる)
学生時代よりCM音楽制作に携わり、音楽専門学校講師、キーボード・マガジンやDTMマガジンなど、音楽雑誌の連載記事の執筆、著作を行なう。その後も企業Web音楽コンテンツ制作、音楽プロデュース、楽器メーカーのシンセ内蔵デモ曲(Roland JUNO-Di、JUNO-Gi、Sonic Cell、JUNO-STAGEなど)、音色作成、デモンストレーション、セミナーなど手がける。島村楽器のデジタル楽器情報サイト「デジランド」プロデューサー

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