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BIG MUFF “RAM'S HEAD” 〜もう一度、ラムズヘッドの音を知る

Electro-Harmonix BIG MUFF π

  • 制作:デジマート・マガジン 取材・動画撮影・文・録音:村田善行 機材提供:今井靖(47 MUFF、2N5087 MUFF)、戸田光一(VIOLET MUFF) 動画翻訳:久保田祐子

DEEPER'S VEIW第12回目は、Electro-HarmonixのBIG MUFF“RAM'S HEAD(ラムズヘッド)”です。今回も頼まれてもいないのに極初期モデル、初期モデル、レア・モデル、後期モデルの4台を弾き比べてみました。世に氾濫するRAM'S HEADクローン/インスパイア系を試した(または持っている)皆さん、もう一度「本物のラムズ」を知ってください。

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BIG MUFF “RAM'S HEAD”4個体のサウンドを徹底比較

序章

 私にとってBIG MUFFと言えば、多くの国内外ガレージ・ロックンロール・バンドがライブのココ一番で踏み込む「秘密兵器」であり、時代的にグランジ・ロックの象徴的なサウンドでありました。私の中でその存在が決定的になったのは、bloodthirsty butchers(以下ブッチャーズ)のアルバム『kocorono』における衝動的/衝撃的な世界観と相反するような静謐なジャケット・デザインに登場した、赤いラムズヘッドでした。そのジャケットをデザイン/仕掛けたのはロック・バンドCOPASS GRINDERZ(Co/SS/gZ)のZERO氏(Vo/G)であり、そのCOPASS GRINDERZのライブではZERO氏とブッチャーズ吉村秀樹氏(G)、そして名越由貴夫氏(G?)の3人がそれぞれ異なるBIG MUFF(私の記憶だとZERO氏は3rd/多分OP-AMP、吉村氏は3rd or 赤ラムズ、名越氏はトライアングルを2台?)を愛用。大地氏のキレのあるラウドなドラムと合わせて、最高の爆音を轟かせておりました。そしてCOWPERS竹林現動氏(現タケバヤシゲンドウ)のBIG MUFFサウンド(「BIG MUFF」という曲もあるほど)、fOUL谷口健氏のリッケンバッカー(John Kayモデル?)+ ビンテージ・アンプのPARK 50W + BIG MUFFの分厚いサウンド……ほかにもイナたいロック・バンドからハードコア・バンド、ミクスチャー・バンド、いわゆるマンチェスター系など……1990年代中~後半のライブハウスでは、まさに毎日のようにBIG MUFFのサウンドを聴くことができました。

ラムズヘッドとは

▲基盤には、“E(lectro-)H(armonix)”の文字が刻印されている

 DEEPER’S VIEWでも以前ご紹介した、最初期の「トライアングル」と呼ばれるBIG MUFF πが、1973年頃に基板とシャーシをリニューアルして登場しました。それが、この第2期バージョンのBIG MUFFで「ラムズヘッド」と呼ばれています。本体右下にプリントされた羊の頭部のようなイラストからこの名前が連想されたそうですが、一体誰が言い出したのか? 私の周りにいた先輩たちは「赤いマフ」とか「青いマフ」「手抜き(印刷)のマフ」など、さまざまな名称で呼んでいました。

 BIG MUFFの歴史に関しては、貴重な個体を研究し、詳細な記述と画像を持った素晴らしいサイトがあります。ぜひそちらを参照してみてください。

 ここでは実際のサウンドにまつわる経験と考察を綴っていきたいと思います。

ラムズヘッドのサウンド

 これまでにさまざまなBIG MUFFを入手しましたが、今回は個人的に気に入ったサウンド……おそらく最も設計意図に沿った音なのでは?と思ったラムズヘッドのサウンドをご紹介します。もちろん「良しとする音」は人それぞれですが、ここではBIG MUFFが登場した時代背景も踏まえ、当時の市場に向けて設計されたBIG MUFFが持っていたであろう「オリジナル・サウンドのサンプル」として皆さんにご紹介できる個体を選んだつもりです。

最初期モデル(FS36999搭載)

▲“初期型ラムズヘッド”

 動画の最初に紹介した個体は、非常に動作が安定し、サウンド・バランスの良い個体です。こちらは国内の有名なカルトなビッグマフ研究家によると「最初期では?」という見解もあります。その理由は搭載されているトランジスタFAIRCHILD FS36999のロット・ナンバーやポット・デイト(1377322=CTS 73年22週)から確認できます。そのあたりは今後、ビッグマフ専門家(本当にいるんですよ……)による考察が繰り返され、その全貌が解明されていくことでしょう。

 このFS36999というトランジスタは謎が多く、海外専門家筋ではFAIRCHILD 2N5133の名称違いでは?という見解が一般的なようです。以前、DEEPER'S VIEWで紹介した空中配線で製作された「ON/OFFスイッチなし」モデルに搭載されていたトランジスタ2N5133のあと、トライアングル・モデルでも採用されています。また、トライアングル・モデルで稀にFS37000というトランジスタを搭載したモデルも見かけますが、以前所有していた個体でチェックした限り、ほぼFS36999と同じサウンドだと言えます。

▲三角形のプリントの上にある黒いトランジスタが“FS36999”。基盤がクリーム色なのも本機の特徴だ

 ただ、個人的な印象では2N5133に比べFS36999は歪みの音が細かく、ややローゲインでリッチな倍音感があると感じます。また、ギター側のボリューム・コントロールで、ある程度ゲイン(歪みの深さ)をコントロール可能です。以降3rdモデルなどではここまでは追従しないように感じます。

 デヴィッド・ギルモア的サウンドを求める場合、このFS36999の個体を選べば、ある程度納得できるサウンドになると思います(動画のイントロ部分でもこの個体を使用しています)。基板の色は初期型のクリーム色です。

ヴァイオレットのサークルフェイス・ラムズ(FS36999搭載)

▲文字やロゴなどがすべて紫色でプリントされた、通称“ヴァイオレット”。このほかにも黒、赤、青のバージョンも存在する

 続いて紹介するのが、俗に「ヴァイオレット」と呼ばれる個体です。その筋でも「1970年代のBIG MUFFでベストなサウンドを持つ個体が多い」と言われているように、個体差の激しいBIG MUFFの中でも比較的安定して良い音の(正しく動作している)個体が多い印象です。

 今回のサウンドチェックでも、最もオーガニックな……真空管アンプのドライブ・サウンドの延長線上にあり、マーシャル・アンプのボリュームのマックスが10だとすれば、20あたりまでドライブさせたようなイメージに感じます……。音にトゲトゲしさがなく、非常に滑らかでシルキーなサウンドが体験できるモデルです。最初のFS36999に近いのですが、音の安定感から個人的にはこちらが「RAM'S HEADの完成系」だと思います。

▲本機のトランジスタも、初期型と同様に“FS36999”が採用されている。基盤の色は焦げ茶

 このサークルフェイス・ラムズですが、このヴァイオレット/紫のプリント以外に、すべて赤、すべて青、すべて黒、そしてノーマルカラーだけどロゴはサークルフェイス(?)などさまざまな個体が存在します。ヴァイオレットを含め、このサークルフェイス・ラムズは現在ではなかなか入手が難しく、ある程度の数を揃えてサウンドチェックをすることは困難だと言えます(とは言え、日本にはほぼすべてのカラーのサークルフェイス・ラムズを揃えている「カルトな」人物もおりますが……)。基板の色はブラウンです

レア・モデル“47”マフ(FS36999搭載)

▲.47µF / .047µF / 470pFのコンデンサ、そして470Kの抵抗が使われた、通称“47マフ”

 こちらはデジマート・マガジンの連載コラム「Dr.Dの機材ラビリンス」筆者である、今井靖氏にお借りした珍しい1台。俗に「47マフ」と呼ばれているモデル。この初期型ラムズヘッドでは使用されたパーツの定数が後のバージョンと異なる(.47µF / .047µF / 470pFのコンデンサ、そして470Kの抵抗が使われた)ことからこう呼ばれています。こちらの個体は今回初めて弾かせてもらいましたが、非常に特徴的なサウンドだと感じました。ゲインを上げても倍音が広がらず、音がギュっとまとまる感じがあります。個人的にはトライアングル・マフに近いサウンドだと感じました。私が20代前半の時に聴いていたBIG MUFFのサウンド・イメージに近く、使いやすくもあり、ややジャンクなサウンドも作り出せる印象です。私はFS36999のBIG MUFFが好きで現在も所有していますが、改めて同じトランジスタでもキャラクターにはけっこうな違いがあると感じました。こちらも基板カラーはクリームですが、最初に紹介したモデルとはやや色合いが異なります。

後期ラムズヘッド(2N5087搭載)

▲2N5087トランジスタを搭載した後期型。ローがすっきりした使いやすいサウンド

 こちらも今井氏にお借りした個体です。後期BIG MUFFは、BC239と2N5087のどちらかが搭載されることが多いですが、こちらは2N5087の個体です。FS36999/上記までのサウンドの傾向とは明らかに異なるディストーション的サウンドをご確認いただけると思います。外見的にも初期は電源スイッチ部分が「ON」のみ表記だったのに対し、「OFF」表記も追加されています。それ以前のモデルに比べるとやや「細く」感じられる歪みですが、この音はこの音でカッコいいと思います。特にダウン・チューニングやグランジ的アプローチに向いているのではないでしょうか? 3rdバージョンのBIG MUFFのローをスッキリさせたようなイメージで、多くのロック・バンドに好まれる音だと思います。ビッグマフ単体で使うほか、他のエフェクターと組み合わせてスタッキングで音を作る皆さんも多いと思います。こちらも基板カラーはクリーム色ですが、やや色味が異なります。

最後に

 トライアングルから始まったBIG MUFFの歴史の第2期、その名を広く世界に知らしめた重要な時期のペダルをご紹介しました。

 個人的にしばらくブリティッシュ・ファズに傾倒していたので、久しぶりに“アメリカ代表BIG MUFF”と向かい合ってみて「ああ……忘れてた。BIG MUFFはファズ界のスーパースターだった」ということを痛感いたしました。ガレージ・ロックンロール・バンドからピンク・フロイド、キング・クリムゾンといった大御所、ダイナソーJr.やレッド・ホット・チリ・ペッパーズなどのビッグネームまでが愛用してきたBIG MUFFの魅力は、皆さんが想像するより深く、広いと思います。

 レア・モデルだから音が良いのではなく、BIG MUFFの魅力は「一見、暴れん坊に見えても、本当は優しい心を持っている」その“スター性”あるいは“二面性”にあると思いました。どちらのサウンドを引き出すかは、弾き手次第ではないでしょうか。

 このコラムを見た皆さんが、今まで知らなかったBIG MUFFの魅力を発見していただければ嬉しく思います。

参考記事
DEEPER’S VIEW 第5回:BIG MUFF Triangle V1〜爆音ファズの始祖

DP05_BigMuff_main02_800.jpg

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製品情報

Electro-Harminix / BIG MUFF(ORIGINAL RAM'S HEAD)

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Electro-Harminix / Ram’s Head Big Muff Pi

価格:¥19,000 (税別)

【問い合わせ】
キョーリツコーポレーション TEL:052-847-5300 http://www.kcmusic.jp/ehx/
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