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【#_SUPERCOMBO_ の機材夜話】第7回 DJ機材の過去・現在・未来(中編)

DJ機材

  • 制作:デジマート・マガジン 文:#_SUPERCOMBO_ (MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO & DJ 1,2) 画像提供:Hideaki Aimi(※印のみ)

MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABOとDJ 1,2が、クラブ・ミュージック・カルチャーからの視点で音楽制作ツールを語る「#_SUPERCOMBO_の機材夜話」。前回に引き続きDJ機材についての話題です。彼らの機材話はまだまだ尽きることはありません!

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→ DJ機材の過去・現在・未来(前編)はこちらから


ABO ── DJがクラブへ持ち込む荷物の量って、DJ機材の進化で大きく変わったよね。

1,2 ── そう! 圧倒的に軽くなった。今だったらDJするために必要な荷物は、トートバックひとつにまとめることだってできるし、突き詰めるとヘッドフォンとUSBメモリ1本だけで十分だったりする(笑)。

ABO ── 現在、多くの女性DJが活躍しているのは、こういったDJ機材のコンパクト化や軽量化も関係しているよね。ちなみに現行DJコントローラーの中で、一番小さくてリーズナブルなのが「Numark DJ2GO2 Touch」なんだとか。

Numark DJ2GO2 Touch

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1,2 ── 横幅30cmで縦幅が9cm……。えっ、このサイズでオーディオ・インターフェース付いて、タッチセンサー搭載なの!? しかも価格は1万円以下! 

ABO ── 昔は、大きなレコード・ボックスを持ち歩くのが「DJらしさ」みたいなところがあったけど、今はレコードを使うにしてもDVSだったらコントロール・レコード2枚で済むし、CDJを使うにしても最新モデルだったらUSBメモリ1個で済むし、DJ2GO2 TouchみたいにコンピューターとDJコントローラーという選択肢もある。バラエティ豊富になったな。

1,2 ── そんなDJ機材の進化に欠かせないのが、やっぱりコンピューターの存在だよね。まあ音楽業界っていうか社会全体に言えることなんだけど(笑)。

ABO ── ちなみに日本のDJで、初めてコンピューターを使ったのは誰だと思う? 1980年から1990年初頭に活躍した「The JG’s」というリミックス・チームのメンバーの三好史さんという説が有力らしい。

1,2 ── JG’sはDJ HONDAさんやDJ KOOさんも所属していたんだよね。三好さんは現在は「いぬ」名義で活躍されている。

ABO ── 三好さんは、Mac IIcxSound ToolsPro Toolsの原型)でDJシステムを構築していて、照明の同期制御も可能だったそうだ。とは言っても現在のデジタルDJほどアグレッシブなパフォーマンスができるものではなかったらしいけどね。でもすごい話。しかもこれ、DJソフトが誕生する前の話だからね。

1,2 ── さすがバブル期、という攻め攻めな話だ!

DJコントローラー“VCI-100”の誕生

ABO ── 一般にDJソフトが普及したのは、2000年に誕生したNative Instruments Traktorシリーズからだろう。

Native Instruments Traktor Pro 3(Traktorの最新バージョン)

1,2 ── ただし当時は、DJ用のオーディオ・インターフェースやコントローラーがなかったから、まだ現場でガシガシ使われてはいなかった。

ABO ── しいて言えば、ヒップホップよりも、MIDIに強い傾向のテクノDJたちが使っていた気がする。DJソフトの一般化は、2006年に誕生したDJコントローラーのVestax VCI-100を待つことになる。

Vestax VCI-100(※)

1,2 ── VCI-100がDJ機材メーカー初のDJコントローラーだったんだよね。Vestaxらしいスチール製の重厚な作りで、DJミキサーで使用されていたノブやフェーダーがそのまま使われていた。それにデザインもオシャレでApple MacBook Proと並べたときの相性がすごく良くてね。

ABO ── VCI-100の大きな特徴は「タッチセンサーを搭載」したということ。「天板に触れる」と「回転する」という2種類の信号によって「スクラッチ」と「テンポの微調整」が可能になった。

1,2 ── 実は海外では、その前からHercules DJ ConsoleというDJコントローラーが発売されていたんだけど、タッチ・センサーが非搭載だったから、ちゃんとスクラッチができるとは言えなかった。タッチ・センサーがないとレコードを押さえ込んで曲を止めるという動作が再現できないからね。

ABO ── でもDJ Consoleはコンシューマー向きの製品ではあったけど、オーディオ・インターフェースも搭載していたことは当時としては珍しかったし、コンパクトだったから日本でも人気が高かった。その後M-AUDIO XponentVestax VCI-300などが発売され、オーディオ・インターフェース搭載DJコントローラーは、シーンに広まっていったんだけどね。

専用DJコントローラーの定番化

1,2 ── XponentやVCI-300は、オーディオ・インターフェースが搭載していたことも特徴だけど、専用のDJソフトが付属して、その上“MIDIマッピング”が不要だったことも大きな特徴だった。特に難しい設定をしなくてもコンピューターに接続するだけでOKだったから、初心者向けのエントリー・モデルとしても最適だった。

Vestax VCI-300(※)

ABO ── VCI-300には、Seratoが開発したITCH(Serato DJの起源となったDJソフト)が付属していて、クラブDJに人気だった同社のDVSソフトScratch Live前回を参照)のHOT CUEやプレイリストなどが兼用できた。そのため「クラブではScratch Live」「自宅やバーではVCI-300」といった具合に、VCI-300はクラブDJのサブ機としてもシェアを広げていったんだよね。

1,2 ── その後、Serato専用DJコントローラーは、Vestaxだけでなくほかのハードウェア・メーカーからも発売された。

Pioneer DJ DDJ-1000SRT(Serato DJ Pro対応)

Roland DJ-202(Serato DJ Pro対応)

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1,2 ── 一方、Native Instrumentsは各メーカーのDJコントローラーとフレンドリーな関係を保ちながら、自社開発によるTraktor専用コントローラーTRAKTOR KONTROL Sシリーズを展開していく。

Native Instruments Traktor Kontrol S3

Native Instruments Traktor Kontrol S2

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ABO ── さらに、CDJでDJ業界をリードしてきたPioneer DJも、2015年にDJソフトへ本格的に参入し、専用コントローラーを次々にリリースしていった。ちなみにrekordbox djは、CDJ用の音楽管理ソフトrekordboxがDJソフトとして進化したもので、着々とシェアを広げている。

Pioneer DJ DDJ-1000

Pioneer DJ DDJ-400

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クラブDJのコンピューターとの関わり方

1,2 ── DJコントローラーは、お家DJやモバイルDJといった新しいユーザーを増やしていったけど、クラブDJへのコンピューターの普及は、やはりDVSと共に広まっていったよね。

ABO ── DVSの歴史はまず、2000年にN2ITが開発した「Final Scratch」が元祖だとされている。「Final Scratch 1.0」がStantonから発売され、その後はNative Instrumentsとのパートナーシップにより「Traktor Final Scratch」が誕生。「Final Scratch 1.5」と「Final Scratch 2」としてパッケージ販売されたが、結局パートナーシップが解消。Final Scratchの系譜はNative Instrumentsの「Traktor Scratch」を経て、現在はDVSを統合した「Traktor Pro 3」に受け継がれている。

1,2 ── もうひとつのDVSが、2004年にSeratoがRANEと共に開発した「Scratch Live」だよね。

ABO ── ループ・シーケンサーについての回でも紹介したけど、Seratoはオーディオ処理を得意するソフトウェア・メーカーで、Pro Toolsのタイム・ストレッチ用プラグインの「Pitch 'n Time」や、スクラッチ用プラグインの「Scratch SE」などを開発していたんだよね。

1,2 ── Scratch Liveは、同時期に発売されていた「Final Scratch 2」に比べて安価だったのと、画面がシンプルで直感的に使えたことから、ヒップホップDJたちに普及していった。その後「Serato DJ」にDVSが統合され、現在は「Serato DJ Pro」に名称変更。RANE以外のメーカーからもDVS対応の機器が発売されている。さらに最近ではPioneer DJのDJソフト「rekordbox dj」にDVS機能が追加された。これら3つのDJソフトは機能的にも足並みそろってきたよね。

Pioneer DJ Interface 2(rekordbox DVS専用オーディオ・インターフェースとコントロール・レコードのセット)

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ABO ── もし今からDVSを始めるなら、DVS専用オーディオ・インターフェース搭載のDJミキサーがオススメだね。この方が接続も簡単だし、ラインナップが増えてきたからスタイルに応じて選びやすくなっているから。

Pioneer DJ DJM-450(rekordbox DVSライセンス付)

Native Instruments Traktor Kontrol Z2(Traktor DJ 3ライセンス付)

Reloop RMX-90 DVS(Serato DJ Pro & Serato DVSライセンス付)

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ヒップホップとDVSの相性

ABO ── DVSの普及は、ヒップホップが一番早かった。2005年ぐらいから増え始めて2008年くらいに爆発的に増えたって印象がある。そして同じくMacbookがDJ用のコンピューターとして普及した感じがするよね。

1,2 ── Macはソフトウェアの安定化もさることながら、この頃からCPUがIntel製になって価格が庶民的になってきたからね。また、Windows PCの種類は千差万別だけど、Macはラインナップが限られているので、何かトラブルにあっても解決しやすいというのも、DJに好まれた理由かもしれない。

ABO ── なるほどね。あと、ヒップホップではほかのジャンルに比べてDVSが好まれたというのは、ターンテーブルを使った従来通りのプレイができたからかな?

1,2 ── それも一理あると思うんだけど、ヒップホップの早つなぎ文化との相性が良かったと考えることもできると思う。音楽データを使えば、レコードを探したり、ターンテーブルにレコードを置き換える時間をカットして、お客さんをより飽きさせずに矢継ぎ早に曲を切り替えていくことができるからね。このようなスタイルは、HOT97などに代表されるアメリカのヒップホップ・ラジオ局にうまいDJがたくさんいた。誰もが知ってるトップ40をどうかけるかに命を掛けてるようなDJが、アカペラ素材やDJソフトの機能を駆使して、DJテクニックを確立&普及させていったのもこの時期。こういうスタイルを突き詰めたDJ大会が、Red Bull 3Styleといえるね。

Power 106 Jump Off Mix w/ DJ Coke-E

クラブDJの標準機として確立した“CDJ-2000”

ABO ── 当時のテクノやハウスでは、ターンテーブルと共にCDJがよく使われるようになった。Pioneer DJのフラグシップ・モデルであったCDJ-1000は、CDJ-1000MK2、CDJ-1000MK3へとバージョンアップして、常設するクラブも増えていった。 CDはレコードに比べて大量の枚数を持ち運ぶことができたけど、プレイのたびにCDを整理したり、CD-Rに焼いたりするのもなかなか骨が折れる作業。そこで2009年にUSBメモリやハードディスクなどに保存した音楽データをプレイできる「CDJ-2000(最新モデルはCDJ-2000NXS2)」が発売された。

Pioneer CDJ-2000NXS2

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1,2 ── CDJ-2000は、個人的にもこれまでのCDJの中で一番気持ち良くスクラッチできたんで、テクノやハウスに限らずヒップホップでも十分使えるなって思ってた。

ABO ── 安定と安心のCDJっという印象はあったかもね。ヒップホップ・プロデューサーのジャスト・ブレイズなど、海外のヒップホップ勢もCDJ-2000でも普通に使ってたし。クラブによっては整備されていない不安定なターンテーブルがあったりするから、そういう場合はCDJ-2000があると助かるね。

1,2 ── あとLANでプレーヤー同士を接続し、コンピューターを使わずにデータをプレイするというアイデアは画期的だった。コンピューターの安定性に対して不安を持つDJは、抵抗なくデータを使えるようになっただろうね。

ABO ── もっとも画期的だったのは、音楽管理ソフト「rekordbox」の存在だ。曲のテンポやキーの解析、プレイリストの管理などが行なえ、データをCDJ-2000ですぐに使えるように準備ができる。そしてさらにすごいのが「準備からプレイ後の振り返りまでのDJサイクルをトータル的に管理できる」ところ。つまり、レコードやCDのように、棚から整理しながらボックスに入れてクラブに持っていき、DJが終わったら整理し直して次のDJの準備をするということが、データでも行なえるようになったというわけ。

Pioneer DJ rekordbox(Pioneer DJ webサイトより)

1,2 ── そう、これには驚いた。rekordboxで解析した曲を使うと、CDJ-2000側でもキーやBPMなどで曲をソートできるから、プレイ中にいろんな選曲が試しやすくなった。あと履歴がUSBメモリに残るのもすごく助かるよね。

ABO ── さらにrekordboxは、DJソフトへと進化したことでDJコントローラーやDVSともつながった。もはやDJのプラットフォームになったと言っても過言ではないよ。この構想が、CDJ-2000を開発していた段階で練られていたのであれば相当すごいことだ思うよ。

1,2 ── そうだね。もしクラブでのプレイを前提とした機材を選ぶ場合、必ずしもCDJ-2000シリーズでなくても、例えばプレーヤーなら「XDJ-1000MK2」や「XDJ-700」だったり、DJコントローラーなら「DDJ-1000」「DDJ-400」だったり、あと「XDJ-RX2」や「XDJ-RR」といったスタンドアロン・タイプだったりと、rekordboxを経由する機材であれば、どれでも良い。レイアウトも操作方法もCDJとDJMを踏襲しているから、クラブで突然CDJ-2000を触ることがあっても、まったく初めて触る機材とは思わないはず。

ABO ── CDJ-2000以降もさまざまなタイプの機材が登場したんだけど、そのあたりについては次回話そうか。iPhoneのDJアプリだったり、いろんなメーカーの機材がまだまだ紹介しきれてないからね(笑)。

1,2 ── 了解! 次回はいよいよ最終回です!

#_SUPERCOMBO_ の機材夜話

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プロフィール

MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO( #_SUPERCOMBO_ )
1984年生まれ。1998年より地元でDJ/トラックメイカーとしての活動をスタートし、2002年に上京。さまざまなアートに触れる日々を送りつつ、活動を本格化させる。2008年から新木場ageHaで約2年間に渡って開催されていたパーティ「Cloudland」では毎月2,3時間のロング・セットを行なうレギュラーDJを務めたことで、シーンに独特な存在感を示す。サウンド・クリエイターとしてもダンス・トラックのみならず、美術作品のための音響製作や、パフォーマンス・ガールズ・ユニット「9nine」のライブ音源制作、ファッション・ショーや映像作品のための音楽/音響制作、ゲーム音楽やアニメ劇伴なども手がける。

DJ1,2( #_SUPERCOMBO_ )
日本を代表するターンテーブリスト。ヒップホップ・カルチャーの根付く街、青森県三沢市にて、14歳から独学でDJを始める。その後DMCを始めとする多数のDJバトルに出場し、華やかな戦歴を残す。2003年には19歳という若さで、世界3大DJ大会の1つのITF Japan finalにて優勝。日本代表としてドイツ・ミュンヘンにて行なわれた同大会の世界大会に出場する。その確かなスキルは、玉置浩二、Def Tech、MIYAVIなど、多数の著名アーティストから絶大な信頼を得て、ツアーDJとして選び抜かれる。近年ではNHKへの出演や楽曲提供、海外でのイベント出演等、ターンテーブリストとしての活躍の場をさらに広げている。まさにオールラウンド・プレイヤー。

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