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  • 【連載】HELIXの達人 〜HELIX Masters 第18回

斎藤誠 〜直感的なサウンドメイクとフレキシブルな操作を可能にしたLine 6 Helix Floor

Line 6 / Helix Floor、Powercab 112 Plus

Line 6 Helixシリーズを愛用するトップ・アーティストたちに、その活用法とインプレッションを披露してもらう本連載。その第18回目は、ソロ活動だけではなく、サザンオールスターズや桑田佳祐を始め、さまざまなアーティストのサポート・ワークも務める斎藤誠に登場いただく。2017年からHelix Floorを使用し始め、現在はPowercab 112 Plusと組み合わせて、Helix Floor内で作成したサウンドをライブではフルレンジ・フラット・レスポンスで再生。別系統で実機のパワー・アンプ+キャビに送るなど独自のモニタリング環境を作り出しているという。こだわりの使い方を探っていこう。

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about Helix Floor
フロア・タイプの最高位マルチ・プロセッサー

Line 6 / Helix Floor

Line 6 / Helix Floor

 最新テクノロジーとこれまでLine 6が培ってきたノウハウをすべて投入した“最高のギター・プロセッサー”を実現するべく、6年にも及ぶ開発期間を経て2015年にリリースされたHelixシリーズ。現在までにフロア・タイプ2種とラック型、プラグインをラインナップしているが、中でも宅録/ライブといったシチュエーションを問わず人気を呼んでいるのが、フロア・タイプのHelix Floorだ。最新のVer3.10では、1タイプのアンプ・モデリングと、5種のエフェクトなどを追加。3.0で追加されたエフェクト・モデルには新しいパラメーターが追加され、より音作りを追い込めるようになった。さらに、オーバー・サンプリングが全面的に強化され、より自然な減衰音が得られるようになったり、チューナー起動時にもディレイのリピートやリバーブのディケイが残り、ルーパーも回り続ける“チューナー・トレイル”が搭載されるなど、機能面での進化も止まらない。

 斎藤誠のHelix Floor活用法は非常にシンプルかつ、Helix Floorでないと実現が難しいものだ。曲ごとのプリセットを作り、音色の変化はスナップショットと個別オン/オフできるストンプ・ボックスをフット・スイッチに割り当てているが、グローバル・セッティングによって頻繁に操作するスナップショットを手前段、ストンプ・ボックスを後段に並べているのがポイント。使用しないスイッチへのカバーや、スイッチ位置を足の感覚で判別するための仕切りの設置なども含め、歌で前を向くことが多い中、極力踏み間違いを起こさないためのDIY方策も講じられている。また、同一プリセット内でシームレスに各種パラメーターの切り替えが行なえるスナップショット機能も、“ひとつのアンプの中で音色の変化をつけていきたい”という斎藤の希望に添うものだ。さらに、サザンオールスターズや桑田佳祐のサポートでは、1回のライブで30曲以上を演奏する斎藤にとって、ひとつにつき128プリセットを保存できるセットリスト機能も確実な音色管理のための重要な機能だろう。プリセット内の信号を分岐し、同一音色でスピーカー・モデリングの有無を作ることができる柔軟なルーティング機能も、ソロ・ライブではふたつのスピーカーを使用する斎藤にとっては欠かせない機能だ。

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about Powercab 112 Plus
Helixの実力を発揮するアクティブ・スピーカー・システム

Line 6 / Powercab 112 Plus

 Helixシリーズのアンプ&スピーカー・モデリングの実力を余すことなく発揮させるためのアクティブ・スピーカー・シリーズ。斎藤誠が愛用するPowercab 112 Plusはエミネンス製12インチ・スピーカーを1基搭載した2インプット・モデルで、キャビネット・モデルも含めたHelix Floorからの信号を忠実に再生するフラット・モードのほか、全12種のスピーカー・モデリングを内蔵している。IRデータにも対応し、各種アンプ・モデリングに最適なスピーカー選択を1台でこなしてくれるわけだ。12インチ・スピーカーを2基搭載したPowercab 212 Plusと、1基搭載で1インプット・タイプのPowercab 112をラインナップしており、プロセッサー/モデラー・ユーザーにとって悩みの種でもあったライブ時のモニター環境や、最終的な音の出口の調整を細かく設定できる点で、サウンド・システムのソリューションとして機能する。

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Makoto's View
斎藤誠が語るHelix Floor

ラインの音を聴いたスタッフがビックリしているのを見るのがうれしかったり(笑)

 Helix Floorは、2017年に桑田佳祐さんのサポートでROCK IN JAPAN FESTIVALに出演した時に導入したんです。それまでは機材のセッティングからプリセットの切り替えまで、ほとんどローディにお願いしていたんですが、やっぱり切り替えのタイミングとかも自分の感覚とは異なるし、全部を自分でやってみたい、こだわってみたいと思うようになったからですね。使い勝手やサウンドに関しては、そもそも10年くらい前からレコーディングではプラグインのエフェクトなどを使っていますし、音がアナログかデジタルかなんてことを気にしたことはないんです。それよりも、いろいろな作業がパッとできるっていうほうが大事で、Helix Floorへの移行は自然なものでしたね。

 今はライブもレコーディングもHelix Floorがメイン機材です。ライン出力の音を聴いたスタッフがビックリしているのを見るのがうれしかったりもしますね(笑)。もちろんHelix Floorをマルチ・エフェクターとしてアンプにつないでみたこともあって、それもすごく良い音だったんですけど、曲ごとのレベル調整なども考えると、アンプも含めてHelix Floorで音作りを完結させたほうが楽です。レベル調整が一番重要で、AメロからBメロに変わった時の、ちょっと大きい/ちょっと小さい、といった調整は毎日のようにやっていますね。サザンオールスターズの場合だとクリーン・サウンドが多いですし、そういった細かなレベル調整が重要な曲が30曲以上あって、それがちゃんと出ているかどうかはすごく気になる。それがあっという間に、しかも確実にできるっていうのはすごくありがたいんですよ。

 プリセットはシンプルで、曲ごとのセッティングを1曲ずつ作り、左端のプリセット・アップ・スイッチで曲順通りに変えていくだけ。中央の8つのスイッチは、手前側の4つがバッキングやリードなど、レベルやゲイン違いのスナップショット用。奥側は場面ごとにオン/オフするストンプ・ボックスなどを割り当てています。ライブ中はプリセット・ダウン・スイッチを使わないのでカバーをかぶせてしまっていますし、右端のふたつのスイッチもほかと区別できるように仕切りを付けていますね。歌やコーラスで前を向いていることが多いので、足下の感覚だけでわかるようにしたくて自分で付けました。そういう点では、スクリブル・ストリップというスイッチごとのディスプレイも、パッと見ただけで何が割り当てられているのかが確認できて、本当に助かっています。

 自分のライブの場合は、Helix Floorの信号をふたつに分岐させて、アンプ・モデル+キャビネット・モデルで音作りした信号をデジタル接続でPowercab 112 Plusへ、もうひとつのキャビネット・モデル抜きの信号を別に用意したアンプに送り、自分のうしろにシンメトリックに並べています。ステレオというわけではないんですけど、同じ音のわずかな時間差で生まれるモジュレーションの中で演奏するとすごく気持ち良いんですよ。自分の幸福感のためのセッティングですね。

▲サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」用プリセット。信号ラインはふたつに分岐されており、アンプ+キャビネット・ラインはPAに、プリアンプ・ラインは外部のパワー・アンプ&スピーカーへと送られ、ミックスされたサウンドをイヤー・モニターでモニターしている。アンプは一番のお気に入りだという【Brit Plexi Brt】で、レベルやゲイン違いの音色をフット・スイッチ前段のスナップショットにアサイン。プリセット名には、曲名のほか使用ギター(PRS)と使用ピックアップ・ポジションも登録されている

▲2021年3月27日に行なわれた“小林克也&ベストヒットUSA DOUBLE CELEBRATION ECSTASY NIGHT!!!! 生誕80年!番組誕生40年!記念イベント”において、鮎川誠と共演した「LEMON TEA」用のプリセット。見てのとおり非常にシンプルな設定で、【Revv Gen Red】のプリアンプ・モデリングと【Spring】(リバーブ)のみのセッティングだ。【Revv Gen Red】の[Drive][Bass][Master]などはスナップショットが適用され、バッキングとソロ用でパラメーター設定が変化するようになっている

▲ソロ・ライブにて『MAH MAH MAH』(1989年)収録の「黄色いダイアモンド」演奏用のプリセット。こちらも【Brit Plexi Brt】をメインとした音作りだが、信号をふたつに分岐させて、アンプ+キャビネットのラインはPowercab 112 Plusへ、キャビネット・モデルなしのラインは別途用意されたアンプへと送られている。フット・スイッチ上段には【Minotaur】(ドライブ・ペダル)、【10 Band Graphic】(EQ)、【Simple Delay】(ディレイ)、ペダルにはワウ、スナップショット3にトレモロがアサインされているようだ

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製品レビュー:Line 6 / Helix LT

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製品情報

Line 6 / Helix Floor

価格:オープン

【スペック】
●アンプ数:87 ●エフェクト数:231 ●キャビネット数:41 ●マイク数:16(※ファームウェアv3.10の場合) ●液晶:6.2インチ ●コントロール:プリセット、セーブ、メニュー、ホーム、アンプ、ジョイ・スティック、バイパス、アクション、ページ、ノブ×6、ボリューム、ヘッドフォン・ボリューム、フット・スイッチ×12、エクスプレッション・ペダル、パワー・スイッチ、グランド/リフト・スイッチ ●入出力端子:EXP2、同3、EXTアンプ、CV/エクスプレッション・アウト、ギター・イン、AUXイン、MICイン、センド/リターン×4、XLRアウト×2、1/4インチ・アウト×2、ヘッドフォン・アウト、VARIAXインプット、MIDIイン、MIDIアウト/スルー、S/PDIFイン/アウト、AES/EBU-L6 LINKアウト、USB、ACイン ●電源:電源ユニット内蔵 ●外形寸法:560(W)×301(D)×92(H)mm ●重量:6.6kg
【問い合わせ】
株式会社ヤマハミュージックジャパン Line 6インフォメーションセンター TEL:0570-062-808
Helix製品ホームページ Line 6 Helix Japan User Group(Facebook)
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プロフィール

斎藤誠
さいとう・まこと●1958年、東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西 慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したことをきっかけに音楽界デビューを果たす。 1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。最新ライブは2021年5月5日(水・祝)に横浜 THUMBS UPにて開催される「THUMBS UP 23rd ANNIVERSARY WEEK 斎藤誠LIVE "やっと逢えます皆さんと!!" 原始的ロック編成 ~トリオ・ザ・タンゴ 2021~」(出演:斎藤誠、角田俊介、河村”カースケ”智康)と、2021年5月22日(土)に神戸 CHICKEN GEORGEにて開催される「斎藤誠LIVE "やっと逢えます皆さんと!!" 完全弾き語り ~神戸ネブラスカ 2021~」(出演:斎藤誠)。

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