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Steve Howe meets Line 6 DT50 スティーヴ・ハウと次世代モデリング&フル・チューブアンプ「DT50」の出会い

スティーヴ・ハウとLine 6 DT50アンプ

▲イエスとしては9年ぶりの来日となるスティーヴ・ハウ。

 今年4月、イエスとして数えると9年ぶりの来日を果たしたスティーヴ・ハウ。往年の名曲に加え、最新ソロ作の楽曲なども披露したボリュームたっぷりの公演だった。スピード感やデンジャラスなオーラには多少陰りがあったものの、ベテランらしい堂々たるステージはさすがで、何よりギター以外の機材がLine 6のDT50アンプとPOD HD500マルチ・エフェクトのみだったことには驚かされた。全体にデジタル臭さはまったく感じられなかったが、特にラストに披露した名曲「ラウンドアバウト」のイントロで聴けた豊かなガット・ギターとナチュラルなフィードバックの音は鳥肌モノだったのを覚えている。それはおそらく、POD HD500とDT50をリンクすることによる細かな音作りの賜物だろう。また、同曲でのオーバードライブの音もグッドだった。イエスといえば、1曲の中にいくつも展開があり、多数の音色を操るバンドであるが、個々の音をその場しのぎで作るほどハウは甘くない。それを考えれば、アンプの全コントロールとマルチ・エフェクトの全設定をプリセットして足元で切り替えられるPOD HD500+DTの組み合わせはスティーヴ・ハウというギタリストにピッタリではないだろうか。

▲来日公演ではギター以外の機材がLine 6のDT50アンプとPOD HD500マルチ・エフェクトのみ。写真中央の足下にあるのがPOD HD500。

Line 6 DT50 212の概要

 Line 6の高度なモデリング技術と、モダン・チューブ・アンプの代表格である“Bogner”のスピリットが理想的な形で結びついたDT50は、次世代モデリングとフルチューブ・アンプを融合させた“新世代のスタンダード”と呼べる存在になりつつある。ここで改めてその実力を検証し、人気の秘密を探ってみることにしよう。

あらゆるジャンルに対応できる厳選された4種のアンプ・モデル

▲次世代モデリングとフルチューブ・アンプを融合させた“新世代のスタンダード”DT50

 “モデリング・アンプ”というと膨大な数のアンプ・モデルが搭載されている印象だが、DT50には4種類のモデリング・プリアンプと、その構成が自在に変化する真空管アンプ(プリ管、パワー管を搭載)が内蔵され、よりハイレベルなサウンド・クオリティが実現している。搭載されているモデルは1.アメリカン・クリーン(フェンダー系)、2.ブリティッシュ・クランチ(マーシャル系)、3.イングリッシュ・チャイム(VOX系)、4.モダン・ハイゲイン(メサ・ブギー系)の4種で、いずれもプロの現場でも使用されることの多いモデルが選ばれており、クリーンから重厚なハイゲイン・サウンドまで、あらゆるジャンルに対応させることができる。

直感的なサウンド・メイキングを可能にするシンプルなオペレーション

 DT50は完全独立の2チャンネル仕様で、それぞれに異なるアンプ・モデルを設定できるほか、真空管の動作クラス(クラスA or AB)と、パワー管モード(3 or 5極管)の選択が可能で、シングルコイル/ハムバッキングPUの使い分けや、ソロとバッキングなど、微妙なトーンの調節も可能になっている。下図のEX-1はアメリカン・クリーンを基本にクラスA /TRIODEを組み合わせてクラシックなフェンダー・アンプを再現したセッティング例、そしてEX-2はモダン・ハイゲインを基本にクラスAB/PENTODEを組み合わせ、強力な音圧のメタル・サウンドを生み出すセッティング例。両者を聴き比べてみれば、同一のアンプから出力されているとは思えないほど、本機が持つトーンの幅広さを実感することができる。

▲EX-1はクラシックなフェンダー・アンプを再現したセッティング例、EX-2は強力な音圧のメタル・サウンドを生み出すセッティング例。

Line 6ならではの“L6 LINK”による優れた拡張性

 DT50とフロア・タイプのPOD HD500(またはラックタイプのPOD HD Pro)をXLRケーブル1本で接続すれば、25種類のHDプリアンプ・モデルと100種類以上のエフェクトを統合した、プログラマブルな真空管アンプが実現。そのすべてを記憶させたプリセットを足下で切り替えられる。

総評

 DT50をしばらく使っていると、デジタル回路が搭載されていることをすっかり忘れてしまうほど、極めて“アナログ”的な印象を受ける。また、4種のアンプ・モデルはいずれも完成度が高く、4台のアンプを導入した場合のコストや運搬の手間を考えてみても、本機のコスト・パフォーマンスの高さはかなりのものと言えるだろう。そして、デジタルとアナログのメリットを“いいとこ取り”した本機はトラブルの心配がきわめて少ないという点も、選ばれ続けている大きな要因に違いない。

INTERVIEW with Joe Comeau(ジョー・コミュ)

日本公演にも同行したイエスのプロダクション・マネージャーで、ハウのギター・テックでもあるジョーに彼の音作りについてインタビュー。

▲日本公演にも同行したイエスのプロダクション・マネージャー、ジョー・コミュ。

●ハウがDT50を使い始めた時期は?
○スティーヴは2011年末のヨーロッパ・ツアーから、DT50とPOD HD500の組み合わせを使い始めています。

●サウンド・クオリティやキャラクターについては、どう評価されていますか?
○サウンドはとてもビューティフルですし、それでいて非常にパワフルですね。特に倍音の響きが素晴らしい!スティーヴは、この組み合わせをとても気に入っていますよ。

●イエスのツアーでは、おもにどのボイシングが使われているのでしょう?
○すべてのボイシングを試していますが、おもに使っているのはブリティッシュ・クランチとアメリカン・クリーンです。

●DT50とPOD HD500をL6 Linkで統合して使っていますが、この機能についてはどう評価していますか?
○素晴らしい機能だと言っています。XLRケーブル1本で接続できるのは非常に簡単だし、接続そのものが頑丈なのもいいですね。それに、POD HD500からアンプをフルにコントロールできるのも最高です。

●今回のツアーでは、どれくらいのプリセットを使っていますか?
○すべてのプリセットがカスタムメイドで、1曲につき3から5種類のプリセットを使っています。DT50とPOD HD500により驚異的な可能性が実現するので、読者の皆さんもぜひチェックしてみるといいですよ!



Line 6 DT50 212

[SPECIFICATIONS] [フロント/リアパネルの拡大画像]
●出力:25W (クラスA) / 50W (クラスAB) ●プリアンプ管:12AX7 × 2 ●パワー・アンプ管:EL34 × 2 ●スピーカー: 12インチCelestionカスタムG12H90 × 1、12インチCelestion Vintage 30 × 1 ●外形寸法:699 (W) × 572 (H) × 273 (D) mm ●重量:34.6kg ●価格:オープンプライス (市場参考価格:148,000円)
注:DT50シリーズにはシングル・スピーカー仕様のDT50 112やDT50 Headもラインナップされるほか、よりコンパクトなDT25シリーズも用意されています。