ジェームス・ヒルphoto ジェームス・ヒル

 ジェームス・ヒルは、ウクレレ・ジューク・ボックスと呼びたくなるような人である。ロック、ジャズからはじまりブルーグラス、クラシック、果ては映画音楽まで、なんでもござれの音楽性を、持ち前のテクニックで見事に昇華したそのスタイルは、ハワイアンとはまた別の流派。カナダ出身の彼がどのように超絶テクニックを習得していったのか。

ーウクレレをはじめたのは9歳。ハワイでならともかく、カナダでは早い方だと思ったのですが、ウクレレと出会ったきっかけは?

意外かもしれないけど、カナダはウクレレが盛んなんだ。テレビ放送では頻繁にウクレレ音楽がかかっていたし、家でもクラシックやジャズのレコードと一緒にハーブ・オータの音楽が流れたりしていたんだ。加えて僕が住んでた地域は特にウクレレの教育に力を入れててね。通っていた小学校にはウクレレの授業があった。僕がウクレレをはじめたきっかけと言えばそれだね。

ー現在のあなたは世界屈指のテクニシャンと言えると思うのですが、そんなあなたがプレイ中に最も気をつかうことは?

すべてのプレイをエレガントに弾くことだね。例えば、手品とか日本の習字のように、すごいことをやっているけど、見た目には簡単そうに見える。そんな風に、常にマジックのような音楽を奏でたいと思っているよ。

ー弦は何日ごとに張り替えますか?

1年に1回ほどしか替えないんだ(笑)。まあ、ナイロン弦は錆びないのが特徴だし、僕にとって新しい弦はブライト過ぎて、すぐには使いたくないサウンドなんだ。僕はデッドな感じが好きでね。交換しても1週間は使わなかったりするんだ。

ーそういえば爪を伸ばしてないですね。あなたのプレイは爪を伸ばした上での奏法だと思っていたのですが?

ごらんのとおり(笑)。まあ、適当な時に爪は切っていて伸ばしてはいないけど、爪の部分を使って、パーカッシブなプレイをすることはあるよ。指のハラと爪を組み合わせると、いろいろなサウンドが出せるんだ。親指のハラと爪、人差指のハラと爪、という4種類のパターンを基本に組み合わせている。それと左手のミュートを使って、曲のセクションごとでバリエーションを出したりしてね。

ー最後に読者へのメッセージと、今後の抱負をお願いします。

日本に来たのは今回で6回目なんだけど、僕は毎回いろいろなことにチャレンジしている。今はブルーグラスっぽいことにもトライしているんだ。嬉しいのは、その毎回の変化を、日本の皆さんがいつも温かく受け入れてくれることだよね。本当に感謝している。あと、これからウクレレにチャレンジしようと思っている人はぜひトライしてみてほしい。今回付録CDに入れた僕の曲のようなソロ・スタイルのものにチャレンジするのもいいけれど、最も大切なことは,友達と一緒にシンプルな曲を、楽しんで演奏することだと思う。これを忘れないで頑張ってほしいな。


1980年、カナダ生まれ。ピーター・ルオンゴ率いるウクレレ楽団、ラングレー・ウクレレ・アンサンブルの主要メンバーとして2003年まで活躍。オリジナル・アルバムを3作リリースしている。『ファンタジー・フォー・ウクレレ』は日本企画のアルバムでベスト的な内容でオススメだ。最新作は『A Flying Leap』となる。今年4月に全国各地でワークショップを行なった。
ジェームス・ヒル オフィシャルサイト >> http://www.ukulelejames.com/ amazonで「ファンタジー・フォー・ウクレレ」を購入

このインタビューは「ウクレレ・マガジン」掲載のインタビューより抜粋し、web向けに再構成したものです。 「ウクレレ・マガジン」本誌にはさらに詳しいインタビューを掲載しています!

『ウクレレ・マガジン』付録CD収録曲(本誌には「Down Rideau Canal」のみ、楽譜も掲載しています)

デレク・シミズphoto デレク・シミズ

 カマカ、コアロハ…“K”ではじまらないハワイ産ウクレレ・メーカー、Gストリング。そのブランド名は標準的なウクレレのチューニングであるGCEAのG線に由来するという。
 93年より代表デレク・シミズがひとりで立ち上げたメーカーだが、生産台数を徐々に上げ、今ではハワイの3大メーカーとして名を連ねる有名ブランドに成長した。自由な発想から生まれるモデルの数々は日本市場でも浸透。来日した代表デレクにGストリングの現状を語ってもらった。

ー最初にウクレレを作ろうと思った動機は

大学時代にウクレレを弾いている親友がいて私もその頃弾きはじめました。カマカが欲しかったんですが、当時の私にはとても高価でした。友達が自分で作っているのを見て私も作ってみようと思ったんです。カメハメハ・スクールにウクレレ製作の講義があったんですが、そこは純粋なハワイアンしか入学できなくて、私はシミズという名前だから入れなくて。だから自分で作ることにしました。

ーあなたのウクレレ製作における理念は?

大きな音がするウクレレが、必ずしも良いものとは限りません。製作家としては大きな音を出すことは難しいことではありません。まさにGストリングがそうですが、演奏性や、音質、強度とのバランスが大事だと思います。カスタム・モデルは別ですが、スタンダードなウクレレの場合、基本的にはブレイシングはいりません。だから、私は極力シンプルな作りにすることを心がけています。

ーあなたの理想のウクレレ・サウンドは?

ムズカシイね(笑)!他のハワイのメーカーやマーティンももちろん好きですよ。でも、弾く人によってサウンドは違いますよね。ジェームス(ヒル)が演奏すればなんでも良い音に聴こえるし。間違いないのは、弾く人がいなければ、サウンドは生まれません。それは確かなことです。

ー今後のGストリングの展望は?

まずGストリング・ウクレレが日本で認知されてきていることに感謝します。日本のミュージシャンにもどんどん使ってもらえるように努力していきたいです。


1993年にGストリング・ウクレレを立ち上げる。
警察官になるための学校に通いながら、ウクレレ製作を続けていたが、97年にGストリングを会社化。 メーカー専業で生計を立てるようになる。以降、フレキシブルな発想で良質のウクレレを生産し続け、高い評価を獲得している。
G String Ukulele(Gストリング ウクレレ) >> http://www.y-m-t.co.jp/gstring/index.html
このインタビューは「ウクレレ・マガジン」掲載のインタビューより抜粋し、web向けに再構成したものです。 「ウクレレ・マガジン」本誌にはさらに詳しいインタビューを掲載しています!