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Hyper Guitars

ビンテージ・ショップ・レポート Vol.1

Hyper Guitars [ハイパーギターズ]

買う人が納得すれば、そのギターが折れていようが半分だろうが成立する世界!
だからこそ、自分を信じてギターの歴史と向き合おう!

 業界屈指の品揃えを誇る、東京新大久保にあるビンテージ・ギター・ショップ“Hyper Guitars”さんを訪ねてみた。天井の高い地下施設に、壁を床を埋め尽くさんばかりの高価なギター類に囲まれたそこの場所は、ビンテージの楽園ともいうべき孤高の風格と、それでいてどこか懐かしく温かい雰囲気のある絶妙な素敵空間だった。フレンドリーでギター愛に溢れたトークで我々をもてなしてくれたスタッフさんに、ビンテージ楽器についてのお話を伺った。

  • 店内に入って右手、ギブソン・フラッグの下にはギブソンSG、レス・ポールJr、最近扱うようになったというアコースティック・ギターなどが並ぶ。

    店内に入って右手、ギブソン・フラッグの下にはギブソンSG、レス・ポールJr、最近扱うようになったというアコースティック・ギターなどが並ぶ。

  • 「たぶんとの店よりも扱った数は多いのでは」と語るフライングVのコーナー。VOXやマーシャルのビンテージ・アンプもストックされている。

    「たぶんどの店よりも扱った数は多いのでは」と語るフライングVのコーナー。VOXやマーシャルのビンテージ・アンプもストックされている。

ビンテージ・ショップとは?

──まず、Hyper Guitarsさんのお店の紹介を簡単にしていただけますか?
Hyper Gutarsマネージャーの長島英樹さん(以下敬称略):うちは、古いギターやベースを専門に販売している店です。扱っている商品の90%以上が、ビンテージと呼ばれているものなんですよ。地下一階にあって、温度の変化がほとんど無いですから、古いデリケートな商品を扱うにはちょうど良い環境なんです。

──ビンテージ・ショップと呼ばれる事についてはどう思われますか?
長島:そのように分類される事は、良い事だと思っています。ビンテージを扱う店には、ちゃんとそのための「条件」があると思っています。といっても、何か特別な設備があるわけじゃないんですけど。

──普通の楽器店とは違う、その「条件」とは何でしょうか?
長島:ひとことで言えば『リペア』です。ビンテージ楽器の調整や修正ができる、という事です。ビンテージ楽器は、基本的に中古です。だから店においてあるギターは必ずといってよいほどちゃんと点検されていて、その店の調整を受けています。もちろん大掛かりな修理なんかは特別な業者さんにお願いもしますが、うちの店の場合、スタッフ全員がビンテージ楽器の調整や簡単な修理のできる人ばかりです。

──つまり、ビンテージ・ショップは「人」が重要なんですね?
長島:それが第一ですね。ビンテージ楽器の調整には、新品を扱うのとはまた別の経験が必要になってきます。なんでも「換えちゃいますね」「はい」ってわけにもいかない世界ですから。古い楽器のリペアのことを色々と知っているって事も大切なんです。うちのモットーは『人で物をケアしていく』という考え方。ビンテージ楽器を調整できる人がいる、それがビンテージ・ショップの第一条件なんですよ。

  • [GIBSON ’59 Les Paul / ASK] 堂々たる貫禄のギブソン/サンバースト。 シリアルNo.0375で、スタッフさん達は「ミナコ・ギター」と呼んでいた。美女のうなじのような、この時代の素晴らしいネックシェイプは格別。

    [GIBSON ’59 Les Paul / ASK] 堂々たる貫禄のギブソン/サンバースト。 シリアルNo.0375で、スタッフさん達は「ミナコ・ギター」と呼んでいた。美女のうなじのような、この時代の素晴らしいネックシェイプは格別。

  • [FENDER ’59 Stratocaster / ASK] 特注カラーも鮮やかなビンテージ・ストラト。美しい塗膜の光沢がなまめかしい、圧巻のフィニッシュ。熱い時代を生きたレオ・フェンダーの魂をこの時代に蘇らすかのような逸品だ。

    [FENDER ’59 Stratocaster / ASK] 特注カラーも鮮やかなビンテージ・ストラト。美しい塗膜の光沢がなまめかしい、圧巻のフィニッシュ。熱い時代を生きたレオ・フェンダーの魂をこの時代に蘇らすかのような逸品だ。

  • [GIBSON ’67 Flying V / ASK] 再生産開始初年度モノという、おそろしく貴重なギブソン/フライングV。この独特のトラスロッド・カバーを見て反応する人たちにとっては、まさに垂涎の極上品。

    [GIBSON ’67 Flying V / ASK] 再生産開始初年度モノという、おそろしく貴重なギブソン/フライングV。この独特のトラスロッド・カバーを見て反応する人たちにとっては、まさに垂涎の極上品。

  • さわやかな笑顔と、はきはきした物腰で、長いインタビューにお付き合いくださったマネージャーの長島英樹さん。その熱い語りは、胸を打つようなビンテージ・ギター愛に溢れていました。

    さわやかな笑顔と、はきはきした物腰で、長いインタビューにお付き合いくださったマネージャーの長島英樹さん。その熱い語りは、胸を打つようなビンテージ・ギター愛に溢れていました。

ビンテージは出会いの世界

──Hyper Guitarsさんの得意とされている年代のものはどの辺りでしょうか?
長島:鉄板の’50年代、’60年代あたりの商品が強いと思います。僕自身も、自分の生まれる前のギターに対するリスペクトはとてもありますし、その年代のものはやっぱり人気が高いです。ロックの歴史がそのままビンテージ・ギターの歴史になったと言っていい。ビンテージ・ギターを見ていると、ロックが生まれてからの音楽シーンが、どれだけ濃かったかっていうのがよくわかりますよね。

──確かに、その時代になるとギターの種類も色々出てきますよね。例えば、こちらのお店が得意な機種とかはありますか?
長島:うちの場合、そんなにメーカーや機種に偏ってないと思います。ソリッド・ギターが中心ですけど、ちょっと前からアコギも扱い始めましたし。ただ、オーナーがギブソンのレス・ポール/サンバーストやフライングVが好きなので、多分うちはどの店よりも扱った数は多いんじゃないかと思います。

──仕入はどのようにされておられるのでしょうか?
長島:“一点もの”の世界ですからね。昔はアメリカとかでも掘り出し物はあったんですが、これだけ情報が出回っちゃうと、もうそういうものも無くなっちゃって。ただ、買おうと思っても買えないものも多くなる中で、それを個人で持ってらっしゃる方がたくさんいます。そんな方たちとのコネクションがうちの店にはたくさんある、という事でしょうか。そういう方の「売りたい」というニーズに応えていくことが、仕入れという事にも繋がっているんだと思います。

──価格は高騰していますよね?
長島:もちろん、僕たちは市場にも敏感です。ただし、その時に、物と値段のバランスがとれていないものは扱いません。この世界、時期によって不当に高くなってしまうものもありますからね。

──タイミングが重要ってことですね。
長島:全ては「出会い」です。いつ行けば仕入れられるとか、何年の何がいくらって決まっているわけじゃないですから。

──なるほど。でも、それはお客さんにとっても同じ事が言えそうですね。
長島:全くその通りだと思います。ビンテージ・ギターって個性の塊ですからね。何年の何とかじゃないんですよ。“その時あったそれ”の世界。楽器の中でも、特にそういうところが強いのがビンテージの醍醐味なんです。その点では店の仕入れも、個人のお客さんがギターを買うのも大してかわらない。その「出会い」を是非大切にしたいですよね。

  • ハードケースと共にディスプレイされる、59年製のストラトキャスターと50年製のブロードキャスター。貫禄十分。

    ハードケースと共にディスプレイされる、59年製のストラトキャスターと50年製のブロードキャスター。貫禄十分。

  • ゴールド・トップとカスタムのレス・ポールSGやファイアーバードが並ぶコーナー。

    ゴールド・トップとカスタムのレス・ポールSGやファイアーバードが並ぶコーナー。

  • ストラトキャスター、テレキャスター、ジャズ・マスターがディスプレイされるフェンダー・コーナー。カスタム・カラーのスタラトには目を奪われる。

    ストラトキャスター、テレキャスター、ジャズ・マスターがディスプレイされるフェンダー・コーナー。カスタム・カラーのストラトには目を奪われる。

  • ギブソンES-335を中心としたセミアコがずらり!

    ギブソンES-335を中心としたセミアコがずらり!

  • サンバーストのストラトキャスター達。メイプル・ネックの50年代製、ローズ指板の60年代製が並ぶ。どのストラトも強い個性を放つ。

    サンバーストのストラトキャスター達。メイプル・ネックの50年代製、ローズ指板の60年代製が並ぶ。どのストラトも強い個性を放つ。

  • モズライトのギター&ベースもしっかりとストックされている。左上には3PUのゼマイティス!

    モズライトのギター&ベースもしっかりとストックされている。左上には3PUのゼマイティス!

ビンテージ・ギターを買うという事

──ビンテージ・ギターの素晴らしい所を教えてください。
長島:それはやっぱり、圧倒的な質感というか……「モノに教えられる」っていうか……。まあ、簡単に言っちゃえば、ビビビって感じる部分があるって事なんですよ。こちらから行くんじゃなくて、ギターから「来る」ものがあるってこと。ベテランであろうが素人であろうが、使ってみる事で、プレイヤーであれば絶対にそれは感じると思います。

──ずいぶん哲学的な話ですねぇ。
長島:でも、実際、本当にそれだけなんですよ。価格が高いから良い音がするとか、全く思わなくていい。定価とか決められた価値とかじゃなくて、そういう「自分の感じ方」の世界で価値を見いだしていけるところが、何よりも素晴らしい所なんじゃないんでしょうか。

──でも、高価なものであれば気後れしちゃいますよね……。
長島:そこでぐっと行けるかどうかなんですよね。そこで買えなければ縁がなかったって事です。逆に買ったときはものすごく縁があるんだから、単純に良い物として活用したらいいんですよ。もちろん生活を崩してまで買う事はお勧めできませんが、無理して買った人の方が身になっている場合が多いのも事実。こんだけ払ったんだからもっと良い所を探そう、みたいな。それでバンドをやったり、昔の弾けなかった曲を練習してみたり……そういうもののきっかけになれば、それが一番なんじゃないかと思います。

──ということは、やはり、使っていった方が良いという事ですか?
長島:もちろんです! そのためにうちはアフターサービスが万全なんです。修理のためのビンテージ・パーツのストックもしっかりありますし、ガンガン使ってくれちゃって大丈夫です。実際、プロの方なんかもそうしている方が多いです。それが、一番ビンテージ・ギターの良さを味わえる方法なのは間違いのない事なんですから。

──では最後に、今後ビンテージ・ショップのお客さんになる人たちにむけて、一言アドバイスをしていただけますか?
長島:やっぱり、手に入れて経験値を積む事が、ビンテージ・ギターにとっても一番大切な事なんじゃないかと思います。重さとか形とかスペックとか……買う前にわかるようなそんな所じゃなく、自分で所有してみて、悩んでみたり色々な事が起こる中で、わかってくる事が必ずたくさんある。それは、ネットを眺めているだけじゃ絶対にわからない。そして、それを長くできる人ほど幸せなんじゃないかって思います。行ったり来たりで良いんです。それで20年経っちゃった、って人が結果的には一番得なんじゃないかな。だから、是非、自分のビンテージ・ギターに出会ったなら、人生をかけて長い時間をビンテージ・ギターと一緒に歩んでいって欲しい。そんなふうにして関わっていただければ最高だと、僕は思っています。

 

取材を終えて

「敷居が高い」などと風評されているビンテージ業界だが、実際は、ものすごくおおらかで懐が深く、喜びに溢れた世界だという事がわかった。店員さんも我々も、ギターが好きだということにかけては全く同じだった。「僕たちも知らない事だらけ。日々勉強だと思っています」という彼らの言葉通り、コミュニケーションを第一に考え、そこから生まれるものをとても大切にしているように見えた。ビンテージ・ギターの世界がぐっと身近に感じられる、そんな取材だった。

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●住所:〒169-0073 東京都新宿区百人町1-11-23 B1F
●営業時間:11:00~20:00
●定休日:毎週水曜日
●TEL:03-5386-4910
●アクセス:地図を見る
●WEB:http://www.hyperguitars.com/