デジマート・マガジン ビンテージ関連記事
デジマート・マガジンはこちら

Gibson Les Paul(ギブソン/レス・ポール)

Gibson Les Paul(ギブソン・レス・ポール)の歴史と変遷(記事一覧はこちら)

レス・ポール・レギュラー/スタンダードの変遷 Part2(1955年型〜1958年型)

【1955年型】チューン・オー・マティック&スタッド・テイルピースを採用し、ノブをバレル型からトップ・ハット型に変更

 1955年の中ごろに、レス・ポール・カスタムではいち早く採用されていたチューン・オー・マティックとスタッド・テイルピースの組み合わせが、レギュラー・モデルにも採用された。

 50年代のチューン・オー・マティックの特徴は、サドルを押さえるためのワイアーを持たず、ブリッジ底面には“ABR-1”のパーツ・ナンバーが入れられている。さらに手作業で加工されたサドルは、ブラスの上からニッケル・メッキが施されている。そして、それまでブリッジとして使用されてきたバーの位置をずらしてストップ・テイルピースとして転用することで、豊かなサステインとソリッド・トーンを維持した。また、ボリュームとトーンのノブが、バレル型からトップ・ハット型に変更されたのも、この年。

 ギターの弾き心地を大きく左右するネック/ボディのセット角度は、個々のギターによってバラつきが見られるものの、53、55年製と角度が修正されていく。しかし1968年以降と比較するとセット角度は浅く、弱めのテンションとロング・サステインという50年代製モデルの持つ特徴が形作られている。この時期のレス・ポールの使用者は、引き続きフレディ・キングや、ヒューバート・サムリン等のブルース・プレイヤーが目に付く。

 50年代初期~中期のレス・ポールはブルース・プレイヤーの使用が目立つが、これは“枯れたサウンドを求めて”ということではなく、むしろその逆であると考えられる。当時のエレクトリック・ブルースのプレイヤーは、その頃最も“ヒップな存在”であり、怪しくも魅力的な音楽を大音量(当時としては)で奏でる彼らが、“ゴールド・トップ”、“ソリッド・ギターという最新の楽器”が持つ派手さに惹かれてレス・ポールを手にしたことは、想像に難くない。

【1956年型】1955年型を踏襲

 この年は仕様の大きな変更はなく、1955年型を踏襲したモデルが生産されていた。

【1957年型】ついにPU-490ハムバッキング・ピックアップ(P.A.F.)を採用

 1957年、ついにPU-490ハムバッキング・ピックアップ(P.A.F.)が採用される。その仕様やサウンド特性の詳細は後述する“P.A.F”の項に譲るが、このピックアップはP-90ではできなかったピックアップ全体の高さ調整を可能にし、ハム・ノイズを大幅に減らすことに成功。出力もシングルコイルに比べて大幅に増加した。

多くのギタリストを魅了するピックアップ「P.A.F.」の歴史と構造
ギブソンを代表するシングルコイル・ピックアップ「P-90」の個性とは?

 外観上の特徴は、やや大きくなったピックアップ・サイズ、そして1/4インチ(フロント)、1/2インチ(リア)という高さのマウンティング・リング(エスカッション)が用いられた。ネックのセット角度の関係から、各マウンティング・リングからピックアップ・カバーはほとんど露出せず、カバーのエッジが尖っていることもあり、50年代独特の“顔”を見せることになる。マウンティング・リング、ピックガードに使用されているアイボリー・プラスティックの色合いが、60年代以降のものより白っぽいことも印象的である。

 年を重ねるごとにヘッドストック・フェイスの持つ印象も変化してくる。50年代のヘッドストックは各エッジ部分が後年のモデルよりも尖っているが、加えて表面のみがブラック・カラーに着色されているため、サイド側から見るとホリー・ウッドのベニア板部分の色が違うのをはっきりと確認できる。一方、表面に入れられたギブソン・ロゴの位置は、1952~1960年にかけてヘッド・トップ方向へと徐々に上がっていく。それに対してトラスロッド・カバーの位置はナット方向へと下がっていくため、ヘッドストックのみを見ても各年代を大まかに判断することができる。

 この時期のレス・ポールは、オールマン・ブラザーズ・バンドのディッキー・ベッツ、TOTOのスティーブ・ルカサー、エアロスミスのブラッド・ウィットフォード、シン・リジィのスコット・ゴーハム(リフィニッシュ)等、ロック系のプレイヤーに愛用者が多い。

【1958年型】名称を“レス・ポール・スタンダード”に変更し、ゴールド・カラーからチェリー・サンバースト・フィニッシュへ

 1958年の途中から、レギュラーのレス・ポールは“レス・ポール・スタンダード”と名称を変更し、ゴールド・カラーからチェリー・サンバースト・フィニッシュへ変更された。それにあわせてトップ材も、2~4ピースのメイプルから、センター・2ピースに変更。ここに至って、現在最も高価なビンテージ・レス・ポールである“バースト”の仕様が完成した。

 この年代のレス・ポールのフィニッシュは、経年変化で赤みが飛びやすく、退色の仕方も個体によってそれぞれ違うため、現在全く同じカラーの1958年型は存在しないと思われるが、元は“チェリー・サンバースト”というたったひとつのフィニッシュであった。同年には、ロゴの位置も多少変更されている。ネック・グリップに関しては、58年製は太く厚いものが多い。