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Gibson Les Paul(ギブソン/レス・ポール)

Gibson Les Paul(ギブソン・レス・ポール)の歴史と変遷(記事一覧はこちら)

レス・ポール・カスタムの変遷

【1954年型】レギュラー・モデルと異なる多くの特徴を持ち、上位機種として誕生したレス・ポール・カスタム

 1954年、レギュラーのレス・ポールの上位機種として誕生したレス・ポール・カスタム。レギュラー・モデルとは異なる多くの特徴を持っている。まず、ボディはマホガニーの1ピース。いわゆるホンジュラス・マホガニーで、マホガニーと聞いて想像するサウンドのイメージ(甘く、まろやか)とは異なる、バリンとした張りのあるサウンド特性を持っている。

 ネックもマホガニーで、指板はエボニー。フレットもレギュラー・モデルとは異なり、低く幅のある通称“フレットレス・ワンダー”タイプが採用されている。これは開発当時のコンセプトに後のギター奏法であるチョ―キングや揺れ幅の大きいビブラートが想定されておらず、“ジャジーなプレイをいかにスムーズにできるか”に主眼が置かれていたための選択だと思われる。

 ピックアップはフロントとリアで異なる。フロントはアルニコV、リアにはP-90が搭載された。アルニコVは、ギブソンの最高級機種であるスーパー400にも採用されていたもので、当時のギブソンがこの機種にかける意気込みが伝わってくる。

 ブラック・フィニッシュのボディにハードウェアはゴールドで統一。ヘッドにはスプリット・ダイアモンド・インレイが、ポジションマークにはブロック・インレイが施され、高級機種としての雰囲気は満点だ。その佇まいから“ブラック・ビューティー”と呼ばれることになる。当時、レギュラー・モデルがまだバーテイル・ブリッジだったのに対し、カスタムではいち早くセパレート・タイプのチューン・オー・マチックとスタッド・テイルピースを採用していた。この時期のカスタムを、左利きゆえに逆に抱えたジミ・ヘンドリクスの写真は非常に有名である。

【1957年型】レギュラー同様にハムバッカー・ピックアップに変更し、ピックアップを1基追加

 この年にレス・ポール・カスタムもレギュラー同様、ハムバッカー・ピックアップに変更される。カスタムでは高級機種らしくピックアップを1基追加し、ミドルを含めた3ピックアップ仕様となった。ピックアップ・セレクターは、フロント単体、リアとセンターのフェイズ・アウト、リア単体という組み合わせ。センター・ポジションのトーンは、意外とファンキーなプレイにはまるが、1957年当時にそれが想定されていたとは思えない。
 57年型のレス・ポール・カスタムの使用者は、キング・クリムゾンのロバート・フリップ、一時期のエリック・クラプトン等。

【1968年型】ハムバッカーを搭載し、レス・ポール・スタンダードに近い仕様の再生産モデル

 ビンテージの中でも、いわゆる再生産レス・ポールと呼ばれる1968年型。同年型のレス・ポール・カスタムは、50年代の仕様とは大きく異なり、2ピースのメイプル・トップに1ピースのマホガニー・ボディという、どちらかというと“レス・ポール・スタンダード”に近い仕様。68年型のスタンダードがP-90ピックアップを搭載していたのに対し、同年型のカスタムはハムバッカーを採用した。

 同じ再生産モデルとはいえ、人気の“バースト”の後継者として相応しいのは、むしろこのカスタムの方であった。バーストに近い仕様ながら指板がエボニーという点がかえって功を奏したのか、“タイトなロックサウンドに最適”という評価も高く、ビンテージ市場でも“音のいいカスタム”として特に人気が高いモデルである。

【1969年型】1968年型を踏襲し、ヘッドの大型化、ネックの3ピース化を施したモデル

 ヘッドが大型化し、ネックが1ピースから3ピースになるなど、相違点もあるものの、1968年型と基本的なスペックは近いため、これも音が良く使えるビンテージ・レス・ポールとして人気が高い。69年型のカスタムといえば、鮎川誠のトレードマークとして知られている。