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ヤマハBBシリーズ特集〜時代に合わせて進化を続けるソリッド・ベースの旗手

進化する定番〜BB2024の全貌とBBシリーズ・ラインナップ

YAMAHA BB
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伝統と革新を昇華させたBB2024の真価

 国内におけるエレキ・ベースの歴史を語るうえで欠かせない、ヤマハのBBシリーズ。1977年の誕生以来、さまざまなモデルが派生し、国内外のベーシストに広く愛されてきた。そして、その歴史を継承するモデルとして2010年に発表されたのが、BB2024である。ボディ・シェイプこそBBのオリジナルを受け継いでいるが、細部に迫ってみると、最新の技術が随所に投入されていることがわかる。例えば“スプライン・ジョイント”という工法。これは3つのピースに分かれたボディ材の内部に、メイプル材によるスプライン(接ぎ木)を挟む技術のことだ。これによって弦の振動をボディ内部まで効率よく伝達させる。また、ヤマハが独自に開発したA.R.E(アコースティック・レゾナンス・エンハンスメント)やI.R.A.(イニシャル・レスポンス・アクセラレーション)などの技術も駆使し、抜群の鳴りを手に入れた。そのほか、弦の裏通しの概念を変えたストリング・スルー・ボディや、あえてボルトオン・ジョイント構造を選択するなど、“ボディの鳴り”に対して徹底的にこだわった跡が見える。まさにソリッド・ベースの歴史に新たな1ページを加える新時代の名器と言えるだろう。伝統と革新──相反するこれらの要素を昇華させたモデルなのだ。

▲ヤマハ独自の最新技術がふんだんに投入された、BBシリーズ最新モデルBB2024。


▲5弦モデルのBB2025(¥367,500)

[SPECIFICATIONS] ■ボディ:アルダー(3ピース/ A.R.E.加工)■ネック:メイプル、マホガニー(5ピース)■指板:ローズウッド■ピックアップ:スプリット・シングルコイル(アルニコ)、バー・タイプ・シングルコイル(セラミック)■コントロール:ヴォリューム、トーン、3ウェイ・トグル・スイッチ■カラー:VSB(ビンテージサンバースト)、BL(ブラック)、NT(ナチュラル)■価格:¥336,000

ボディ裏通しの新しい概念ストリング・スルー・ボディ

▲45°の角度で削られたボディ・エンドから弦を通す。

 ボディの鳴りを最大限に生かすため、弦は“ボディ裏通し”となる。とはいえ、従来のようにブリッジの真下から通す方法だと、構造上、太いベース弦をサドルの位置で約90°に折り曲げないといけない。この部分で弦振動のロスを招いてしまうのだ。そこで、ボディ・エンド付近から弦を通すという画期的なアイディアが生まれた。また、ボディの端からヘッド先まで、ベースの構造における最大限の長さで弦を張ることが、楽器自体の鳴りに影響するという。

弦振動のロスを抑えるビンテージ・プラス・ブリッジ

▲円柱状のサドルが斜めにカットされている。

 以前のモデルでは重量のあるダイキャスト製のブリッジを採用していたが、本器は弦振動を生かす方向で設計しており、ブリッジの段階で振動を抑え込まないように、あえてシンプルなタイプを採用している。そして鉄製のブリッジ・プレートに、音の重みやふくよかさを出す真鍮製のサドルを組み合わせている。さらに円柱状のサドルを斜めにカットすることで弦との設置面を減らす。支点を鋭くすることで弦振動がより自然になり、サウンドの輪郭が明瞭になるのだ。

プレイのニュアンスを忠実に出力する新開発のピックアップ

▲上面を見ると、ボビンが表面に出ているのがわかる。

 ピックアップはバー・タイプのポールピースを採用した新開発のモデルを搭載し、弦の振動を的確に拾う。さらに音の輪郭がボヤけることを防ぐため、ボビンの上面とピックアップ・カバーを兼ねる“オープンフェイス”と呼ばれる構造を採用。ピックアップはコイルと弦の距離によって感度が変化するが、ボビン上面を表に出した設計によって、弦との距離を近づけることができる。そのため、ピッキングのニュアンスをセンシティブに拾えるのだ。

歴史と革新が融合した5ピース・ネック+ボルトオン

▲ボルトオンと5 ピースのネックがサウンドの鍵を握る。

 ネックはメイプルとマホガニーによる5ピースを採用。輪郭と音程感が出るメイプル材に、マホガニーを挟むことで倍音とふくよかさを引き出すという狙いもある。また、柾目による木取りによって安定性を考慮。さらに、これまでのBBシリーズでは、スルーネック構造を持つモデルも多く見られたが、本器を開発するにあたってボルトオン・ジョイントを採用した。ボルトオンならではの、バンドのなかでヌケてくるサウンドは、ロックなどで本領を発揮するだろう。

木材の“鳴り”を生かす新技術A.R.E.とI.R.A.

▲A.R.E.が施されたことを証明する刻印。

 A.R.E(. アコースティック・レゾナンス・エンハンスメント)とは、音響面に優れた木材を人工的に作り出すために開発された技術だ。木材を高圧で“蒸す”ことによって年数を経た木の状態を作り出す。I.R.A(. イニシャル・レスポンス・アクセラレーション)は、完成した楽器に振動を与え、新品の状態から“コリをほぐす”という効果を狙う。効率よく振動を与えることで、木材との間、もしくは木材と塗膜面に生まれるストレスをなくして“鳴り”を引き出すのだ。

弦振動を効率よく伝えるスプライン・ジョイント構造

▲ボディ全長に合わせてスプラインが仕込まれている。

 3ピースのアルダー材の間にスプラインという長い板(接ぎ手)を入れてしっかりと接着することで、音の伝達を良くするのが、スプライン・ジョイントだ。弦振動はボディの内部まで浸透しにくいという性質があるが、固いメイプル材を接ぎ手に採用することで、振動がボディ内部まで伝わりやすくなるという効果もある。ちなみに、3ピースという構成は、ブリッジやピックアップがマウントされる、ネックの延長線上を1本の木材で通す狙いもある。


■PICK UP! 『YAMAHA BBシリーズ 開発者インタビュー』
ヤマハBB2024の開発を手がけた、山中伊顯氏が「BB」への想いを語ったインタビュー。

ヤマハBBシリーズ・ラインナップ

 ロック・テイストに溢れたBB2024Xや、BB2024/2025で取り入れた技術を継承したバリエーションモデルも続々リリースされている。ここでは現行のヤマハBBシリーズ・ラインアップを紹介しよう。

BB2024X/BB2025X 〜 ロック度を上げる質実剛健なモデル

 BB2024/2025と同じ仕様ながら、ピックガードを装着し、メタル製のコントロール・パネルとツマミを採用したBB2024X/2025Xも発売。ロック・テイストに溢れたルックスはステージで映えるはずだ。

▲BB2024X(¥346,500)


▲BB2025X(¥378,000)

BB1024/1025 〜 上位機種のスペックを継承しながらコスト・パフォーマンスを実現

 BB2024/2025で採用されたスプライン・ジョイント構造や3ピースのボディ、さらにストリング・スルー・ボディなどを継承。国外で展開されているヤマハの工場で製作することで、低価格化を実現したモデルだ。ピックガード&メタル製コントロール・パネルを備えたXシリーズもラインナップされている。

▲BB1024


▲BB1025

【SPECIFICATIONS】■ボディ:アルダー■ネック:メイプル、ナトー(5ピース)■指板:ローズウッド■ピックアップ:スプリット・シングルコイル(アルニコ)、バー・タイプ・シングルコイル(セラミック)■コントロール:ヴォリューム、トーン、3ウェイ・トグル・スイッチ■カラー:TBS(タバコブラウンサンバースト)、VW(ビンテージホワイト)■価格:BB1024(¥115,500)、BB1025(¥126,000)

BB1024X/1025X

 BB1024のXバージョン。ロックテイスト溢れるルックスのハードロックベース。

▲BB1024X(¥126,000)


▲BB1025X(¥136,500)

BB424/425 〜 BBのデザインを手軽に楽しめるロック派のためのエントリー・モデル

 低価格を実現し、初心者にも手軽に手に入れることができるBBシリーズのエントリー・モデル。とはいえ、新モデルの特徴であるストリング・スルー・ボディなど、上位機種と共通した構造を持つ本格派だ。カラー・バリエーションも豊富なので、気に入った1本を見つけて、そのサウンドを体感してほしい。

▲BB424


▲BB425

【SPECIFICATIONS】■ボディ:アルダー■ネック:メイプル、ナトー(5ピース)■指板:ローズウッド■ピックアップ:スプリット・シングルコイル(セラミック)、バー・タイプ・シングルコイル(セラミック)■コントロール:ヴォリューム、トーン、3ウェイ・トグル・スイッチ■カラー:BL(ブラック)、TBS(タバコブラウンサンバースト)、RM(レッドメタリック)、VW(ビンテージホワイト)■価格:BB424(¥60,900)、BB425(¥68,250)

BB424X/425X

 ブラックピックガード&メタルノブがロックスピリットをアピール。BB424/BB425のXバージョン。

▲BB424X(¥68,250)


▲BB425X(¥75,600)

BBNE2

 スルーネック、独立ブリッジ、新サーキットと新たなスペックで構築したネイザン・イースト・モデル。

▲BBNE2

【SPECIFICATIONS】■ボディ:アルダー+メイプル■ネック:メイプル+マホガニー5ピース■指板:エボニー■ピックアップ:“オリジナルスタック・タイプ(アルニコV)”x 2■コントロール:マスターボリューム、バランサー、ベース、ミドル、トレブル、ミッドカットスイッチ、ミドル中心周波数コントロール■カラー:WH(ホワイト)、BL(ブラック)■価格:¥367,500

BB714BS

 「より多くのファンに僕の楽器を持って欲しい 」というビリー・シーンの要望に応え、BBをベースに開発されたシグネチャーモデル。カラーはLR(ラヴァレッド)。

▲BB714BS

【SPECIFICATIONS】■ボディ:アルダー■ネック:メイプル■指板:ローズウッド■ピックアップ:“ウーファーピックアップ”x 1、スプリット・シングルコイル(セラミック)x 1■コントロール:ウーファーピックアップボリューム、マスタートーン(ウーファーピックアップ・ハイカットスイッチ)、メインピックアップボリューム■カラー:LR(ラヴァレッド)■価格:¥105,000


最後のページでは、ソリッド・ベースの旗手となったBBの歴史を振り返ってみたい。