Bose S1 Pro+ wireless PA system × 松井祐貴&井草聖二
- 2024/04/25
GJ2 / Hellhound Desert Sky Finish Limited
70年代後半から90年代前半にかけて、シュレッド系ギタリストがこぞって愛用したグローバー・ジャクソン。彼が新たに設立したブランド「GJ2」よりリリースされた「Hellhound Desert Sky Finish Limited」をご紹介しよう。
ジャクソンと言えば、Charvel/Jackson時代のイメージが非常に強いので、テレキャスター・タイプというのは非常に意外であるが、このHellhoundはスタイルこそテレキャスターであれども、中身はカリカリのモンスターでありつつ、テレキャスター独特のトーンも残した、長くギター界の頂点に君臨し続けたグローバー・ジャクソンならではの技ありの一本に仕上がっている。
まず、ネック。当時からの拘りでもあるサテン・フィニッシュが施されており、サラサラとした感触が非常に心地よく、ポジション移動やチョーキング時の摩擦抵抗が一切なく、とてもスムーズにフィンガリングを行う事ができる。ボディとのジョイントはボルトオンで、ヒールカット等の処理は行われていないが、実はここにグローバー・ジャクソンのマジックが施されている。
「コンパウンド・ラディアス指板」と言うのをご存知だろうか? 通常、フェンダー系のギターでは指板アールがきつめについており、チョーキング時に音詰まりを起こす事が多く、特にハイ・ポジションでは顕著に現れてくる。それを回避する為にはある程度余裕を見た弦高セッティングが必要となる。しかし、シュレッド・フレーズを多用するギタリストにとって、0.1mmの弦高がプレイアビリティを大きく左右することになる。そこで、ロー・ポジションからハイ・ポジションにいくにつれ、指板のアールを徐々に緩やかにすることで、弦高を下げても音詰まりを起こさず、かつロー・ポジションでのコードワークも安定して行う事が可能になった。このシステムを「コンパウンド・ラディアス指板」と呼び、グローバー・ジャクソンは早くからこのシステムを取り入れることで、世界中のギタリストから信頼を獲得したのだ。Hellhoundにもその「コンパウンド・ラディアス指板」が採用されており、テレキャス・タイプの見た目のイメージとは裏腹に、シュレッドを意識した低めの弦高セッティングも安定して行う事ができる。
そして、それらプレイアビリティの全てを緻密に引き出すのが、搭載された二基のピックアップ「Habanero」だ。スタンダードなHS配列で、フロントには「Habanero Classic Humbucker」、リアには「Habanero Low Heat Bridge」が搭載されている。しかし、スタンダードなのは配列だけで、リアに搭載されたシングルコイルは驚くほどノイズレスなピックアップになっている。ノイズレスな上に、テレキャス系のしゃきっとした立ち上がりと切れ味を残しつつ、かなりの量の歪みを乗せても、音の分離性が高く分厚いサウンドを生み出してくれる。また、フロント・ピックアップはこれでもかと言うほど太くマイルドで、レス・ポール顔負けのトーンを引き出す事ができる。ピックアップ自体のバランスが非常に良く、アンプのEQやドライブ量を正確に反映してくれるために、強い歪みだけではなく、クリーンからクランチと言ったテレキャスおなじみのサウンドもしっかり再現することができる非常に優秀なピックアップとなっている。さらに、昨今では5wayが主流であるが、あえて3wayのスイッチング・システムを搭載することで、トーンの明確な使い分けをシンプルに行う事ができるのも、グローバー・ジャクソンならではのこだわりだろう。
テレキャスやストラトといったオールド・スタンダードなシェイプの場合は、よりビンテージ・ライクな音を追求するために、パーツ類も昔ながらのシステムを採用している製品が多い。しかし、このHellhoundはロック式ペグが採用されているため、弦交換の際に時間を掛ける事なくスムーズに行う事ができる。また、ロック式ペグにすることにより、ポストに対して弦を巻く量がほぼ0になるために、チューニングの狂いはほとんど起こらない。
テレキャスターというスタイルとサウンドにスタンダードな部分をしっかりと残した上で、グローバー・ジャクソンならではの拘りが隠されたこの1本は、GJ2 guitarsの間違いなくプレミアムな1本であり、限定10本のみの生産でグローバー・ジャクソンによる直筆サインが入った認定書が付いているのも十分に納得できる1本だ。
価格:オープン
ぎんじねこ
YouTube動画再生回数520万回、チャンネル登録者数8000名以上のモンスター・チャンネルを運営し、オリジナル曲のセルフ・プロモーションや、メーカーの製品レビュー、モニター動画などの配信活動を数多く手がける。2009年、Gibson社のオフィシャル・バンド・コンテストにて、ギターソロで2位入賞。日本を代表するトップミュージシャンである、西川進氏や松田"FIRE"卓己氏とも共演。また、音楽誌の特集ページやCDレビュー等への寄稿など幅広く活動中。さらに、15年の講師活動を経て、現在は“ヤマノミュージックスクール”のギター科インストラクターとして、後進の指導育成も努めている。