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Ampeg SGT-DI × 河辺真

Ampeg / SGT-DI

老舗ベース・アンプ・ブランドのAmpegが満を持してリリースするベース・プリアンプ/DI、SGT-DI。Ampeg初搭載のIRローダー/キャビネット・シミュレーションなどのデジタル技術と、同社らしいアナログ・サウンドが融合し、あらゆるシチュエーションでの活躍が期待される“オールインワン・ベース・ボックス”の実力を確かめてほしい。

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ベース演奏に必要な機能が網羅された“オールインワン・ベース・ボックス”

 ベース・アンプでお馴染みの老舗ブランド、Ampegから充実の機能を備えたプリアンプDI、SGT-DIがリリースされました。“オールインワン・ベース・ボックス”と形容されているだけあって、ライヴ/レコーディング/自宅練習といったシチュエーションを問わず、ベース演奏に必要な機能が網羅されており、アナログ技術とデジタル技術の融合によってAmpeg伝統の骨太サウンドはもちろん、モダンなクリーン・サウンドなど幅広いジャンルやスタイルに対応し、柔軟性にも優れたプリアンプDIとなっています。

 SGT-DIの基本構成はプリアンプ、SGT(ドライブ)、IRローダー/キャビネット・シミュレーターの3つのセクションからなり、これらはそれぞれ独立してオン/オフすることができます。大枠では3つのエフェクターが一体化されたエフェクト・ペダルとも言えますが、実際の機能は3つどころではありません。それぞれの機能を細かく見ていきましょう。

Specifications
●コントロール:ヴォリューム、コンプ、ベース、ミッド、ミッド・フリケンシー、トレブル、グリット、レベル、CAB切り替えスイッチ、ウルトラ・ロー、ウルトラ・ハイ、ヴォイス切り替えスイッチ、プリアンプ・オン/オフ・フットスイッチ、SGTオン/オフ・フットスイッチ、AUXレベル、CABレベル、CAB/OFF/USERスイッチ、グランド/リフト・スイッチ●入出力端子:インプット、スルー・アウト、プリアンプ・アウト、ライン・アウト/ヘッドフォン・アウト、AUXイン(モノラル)、AUXイン(ステレオ)、ダイレクト・アウト、USB●電源:9V DCアダプター(付属)●外形寸法:189(W)×65(H)×126(D)mm(側面ノブ収納時、ゴム脚含まず)●重量850g●価格:75,900円

Ampegならではのスイッチとコンプを備えた基本コントロール部

 プリアンプ・セクションはミドル周波数を無段階にスウィープできる3バンド・セミパラメトリックEQに、ブランドを象徴するEQ機能であるウルトラ・ロー/ハイ・スイッチを備えています。

 従来のAmpegの3バンドEQはSVT(代表的なベース・アンプ・モデル)などに搭載される“ミドル周波数を5バンドから選択するタイプ”が定番でしたが、本機ではミドル周波数をシームレスに可変でき、音色の自由度が高まりました。とはいえ3バンドEQ全体の使用感は依然として“Ampegのベース・アンプ”感があり、各帯域とも食いつきが良く、縦横(可変できる周波数帯の幅とブースト/カットの量)が広くてセッティングしやすい印象です。ミドルはあらかじめMIDノブを最大または最小にして音を出しながらFREQノブを回し、効かせたい周波数ポイントを見つけてから改めてブースト/カットの量を調整するとセッティングしやすいでしょう。TREBLE、BASSについても音を出しながら調整するのがオススメです。

 ウルトラ・ローはカット/オフ/ブーストの3択、ウルトラ・ハイはオフ/ブーストの2択で、Ampegらしいマッチョな低音や鋭い高音の抜け感を演出できます。ウルトラ・ロー/ハイは機能させると音色傾向が激変するので3バンドEQの再設定は必須ですね。

▲EQセクションは、3バンドEQとウルトラ・ロー/ハイ・スイッチを搭載。ミドルはスタック・ノブで、ミドル周波数帯を200Hzから3kHzの間でシームレスに設定可能だ

 さらにプリアンプ・セクションにはコンプレッサー機能も搭載されています。コントロールはシンプルにCOMPノブひとつのみで、絞り切りで1:1(コンプ・オフ)、最大で10:1のコンプレッションがかかる仕様となっており、実際にコンプレッションがかかるとLEDが光るため視認性も良く、もちろん聴感上でも“エフェクターとしてのコンプ”特有のアタック感を確認できます。

 とはいえCOMPノブを上げているとLEDが光らずとも自然で音色的なコンプ感は感じられるので、LEDを目安にしつつ演奏しながら好みや演奏手段などに合わせて調整するといいでしょう。

▲左端のスタック・ノブの上部はプリアンプのヴォリュームで、下部がコンプレッサーの効きを調整する。どちらもPREAMPフットスイッチがオンのときに機能する

独自の歪み回路、SGT(スーパー・グリット・テクノロジー)

 SGT(スーパー・グリット・テクノロジー)は “歪み”だけでなく真空管アンプ特有の音圧感やザラつき具合などの音色変化を、真空管を用いないアナログ回路で再現するAmpeg独自の回路技術です。

 SGTによるドライブ機能は現行のベース・コンボ・アンプRocket Bassシリーズでも採用されていますが、SGT-DIではSGTセクションに“SVT”と“B-15”のふたつのヴォイシング・モードが用意されており、それぞれ質感の異なるドライブ・サウンドが得られるのが特徴です。どちらも往年のベース・アンプのニュアンスを再現する、いわゆる“アンプ・ライク” なドライブ・サウンドでGRITノブを上げるほど歪みが増しますが、絞り切りでも単純な歪みだけではない音色ニュアンスが得られるのが好印象です。

 “SVT”はギラツキの目立つソリッドな歪み、“B-15”はそれよりも柔らかくウォームな歪みという質感なので、ジャンルやスタイルによって使い分けたいところですね。

▲SGT回路はフットスイッチでオン/オフ可能だ。ミニ・スイッチで、“SVT”と“B-15”のふたつのヴォイシングを選択することができる

▲右端のスタック・ノブの上部は歪みの量を調節するGRIT、下部はSGT回路の出力レベルを決めるLEVEL

ブランド初搭載となるIRローダー/キャビネット・シミュレーション

 Ampeg初搭載となるIRローダー/キャビネット・シミュレーションは、IR(インパルス・レスポンス)データを読み込むことでスピーカー(キャビネット)を鳴らした際の音色変化や質感を再現するデジタル技術による機能です。キャビネット・シミュレーションは筐体左側面のスライド・スイッチをCAB側にするとオンになりLEDが青く光ります。

 IRローダー/キャビネット・シミュレーションをオンにした際のレベルは左側面のCAB LEVELノブで調整し、レベル・オーバーするとLEDが赤く点灯します。側面のノブは押し込むことで出し入れできるので誤操作を防げますね。

▲筐体左側面にIRローダー/キャビネット・シミュレーションの切り替えスイッチと出力レベルのノブを備える。なお、IRローダー/キャビネット・シミュレーションは、ダイレクト・アウト端子とライン/ヘッドフォン出力端子に適用される

 キャビネット・シミュレーションで標準搭載されているのは115(Heritage B-15、15インチ・ユニット×1)、410(Heritage SVT-410HLF、10インチ・ユニット×4+1インチ・ホーン・ドライバー)、810(ヴィンテージの“ スクエアバック”SVT-810、10インチ・ユニット×8)の3種類のIRデータで、どれもAmpegを代表するキャビネットであり、実機を鳴らしているような音色変化や空気感がとてもリアルです。

 115は低音に芯がありつつも明るい音色、410はタイトな音色、810はダークながらも上下の帯域を感じさせる音色という印象で、どのモードもヘッドフォンで聴いている限りは“レコーディング・スタジオのブースで鳴らしたキャビネットの音をコントロール・ルームで聴いている感覚”にかなり近いです。もちろんデジタルくささや遅延もなく自然な音色変化と感じられました。

▲ミニ・スイッチにより3種類のIRローダー/キャビネット・シミュレーションを切り替えて使用できる

 筐体左側面のスライド・スイッチをUSER側にするとユーザーが編集したIRデータ3種類を読み込むことができます。IRデータは手持ちのMac/PCと本機をUSB接続したうえで、Ampegのサイトから無償でダウンロードできる専用アプリ“Ampeg IR Loader”によって編集、読み込みが可能になります。専用アプリに用意された機種だけでなく、自分で作成したIRデータも読み込めるので活用の幅が広がりますね。

▲無償の“Ampeg IR Loader”の画面。「USER」タブで自身が用意したIRデータの活用も可能だ

豊富な入出力端子

 SGT-DIは入出力端子も充実しています。筐体右側面には外部入力端子であるAUXインがまとめられており、モノ入力(6.3mm)とステレオ入力(3.5mm)が用意されています。前者にはリズム・マシンやシンセ、後者には音源再生用のオーディオ・プレーヤーなどが接続しやすいですし、AUXレベルのツマミで音量も調整できるので、自宅練習時に有用でしょう。

▲筐体右側面

 筐体上部に設置されたスルー端子は単純な分岐のほか、チューナーを接続するのにも最適です。プリアンプ・アウト端子はIRローダー/キャビネット・シミュレーターを通さずに出力されるので、ライヴやリハーサルなどでSGT-DIをエフェクト・ペダルとして活用する際にはここからベース・アンプ&キャビネットに接続するといいでしょう。ヘッドフォンを直接接続できるライン・アウト端子は自宅練習やちょっとした音色確認にも最適です。

▲筐体上側面

 IRローダー/キャビネット・シミュレーションの解説でも触れた筐体右側面のXLR端子によるダイレクト・アウトからはバランス出力されるので、DIとしてレコーディングやライヴで活用できます。ノイズが混入した際などに威力を発揮するグランド/リフト・スイッチもありがたい機能ですね。

▲筐体左側面

総評

 プリアンプ/DIはベーシストの最初の1台に最適なエフェクターと言えるほど普及しており、多くのメーカーからリリースされていますが、そのほとんどは往年の真空管ベース・アンプの音色やドライブ感を再現するモデルでした。Ampegはまさにその往年の真空管ベース・アンプを提供していたブランドですし、SGT-DIは本家がリリースしたプリアンプ/DIとも言えるでしょう。

 実際、音の質感やコントロール性はベース・アンプそのものという印象でしたが、レイドバックしたサウンドだけでなく可変幅の広い3バンドEQやコンプで現代的なサウンドにも対応しており、Ampegは伝統を継承しつつも日夜アップグレードしているのだと感じました。

 デジタル技術を取り入れたキャビネット・シミュレーションもクオリティが高く、レコーディングでベースのサウンドに空気感を取り入れたいときはもちろん、SGT-DIをエフェクト・ペダルとして活用する際にも、自宅のヘッドフォンで聴くラインの音色と現場で実際にキャビネットを鳴らしたときの音色差を自宅で体感(シミュレーション)できるのは便利です。単純に自宅練習でもオンにすると気分が高まりますよ。

 老舗ベース・アンプ・ブランドが満を持してリリースする正真正銘のベース・プリアンプ/DI、SGT-DIを皆さんもぜひチェックしてみてください。

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製品情報

Ampeg / SGT-DI

価格:¥75,900

【スペック】
●コントロール:ヴォリューム、コンプ、ベース、ミッド、ミッド・フリケンシー、トレブル、グリット、レベル、CAB切り替えスイッチ、ウルトラ・ロー、ウルトラ・ハイ、ヴォイス切り替えスイッチ、プリアンプ・オン/オフ・フットスイッチ、SGTオン/オフ・フットスイッチ、AUXレベル、CABレベル、CAB/OFF/USERスイッチ、グランド/リフト・スイッチ●入出力端子:インプット、スルー・アウト、プリアンプ・アウト、ライン・アウト/ヘッドフォン・アウト、AUXイン(モノラル)、AUXイン(ステレオ)、ダイレクト・アウト、USB●電源:9V DCアダプター(付属)●外形寸法:189(W)×65(H)×126(D)mm(側面ノブ収納時、ゴム脚含まず)●重量850g
【問い合わせ】
ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンター ギター・ドラムご相談窓口 TEL:0570-056-808 https://ampeg.jp/
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プロフィール

河辺真
かわべまこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。

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