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  • あのTHRサウンドをステージ上でも実現できるヘッド・タイプ

Yamaha / THR100H Dual

Yamaha / THR100H Dual

  • 解説・文:村田善行 写真・動画撮影:伊藤大輔
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 爆発的な人気を誇るYamahaのモデリング・アンプTHRシリーズ。既に発売されている自宅での使用やステージでのウォーミングアップ・アンプとしても最適な、小型サイズのTHR5から始まったこのシリーズに、最新モデルとしてTHR HEADが登場した。これまでのスピーカー内蔵コンボ・アンプではなくヘッド・タイプ、試奏したTHR100H Dualは完全に独立したふたつのアンプがひとつに収まっている。そして100Wの出力(パワー)を持っているにも関わらず5kgを切るとても軽量な作りに驚く。今回は動画でかなり詳しく解説しているのでじっくりとチェックして欲しい。実際に使用して、特に面白いと感じた部分を抜粋してご紹介してみよう。

 まず、サウンドの素晴らしさ! 誰もが「真空管アンプでしょ?」と思ってしまうだろうナチュラルで繊細なサウンドに驚く。動画もデジタル・アンプだという先入観無しでチェックしてみて欲しい。コントロールのシンプルさも含めて、デジタル臭さを感じさせない点にも拘りを感じる。そして完全に独立したアンプ2台がこのサイズに納められている有効性にも着目したい。チャンネルがふたつあるのではなく、パワー・アンプまで全てが独立しているのは本当に素晴らしい。クリーン・アンプとドライブ・アンプの2台をまとめて運んでセッティングして使用できるというわけだ。もちろん、クランチ・セットとハイゲイン・セットとして、ドライブ・サウンドに特化した使用法でも良いだろう。SAG感(チューブ・アンプ特有の音のたわみ/コンプレッション感)がクリーンでもドライブ・サウンドでも得られるので、さまざまなセッティングをお試し頂きたいところだ。そして、各アンプ・チャンネルで、それぞれ5つのアンプ・タイプが選択できる。

【アンプ・タイプ】
・ソリッド:スーパー・クリーン。
・クリーン:少しコンプ感とドライブ感もあり。
・クランチ:歪み出しの幅が広く、ピッキングでキャラクターが変化する。
・リード:ブリティッシュ系のキレの良い歪み。リズム・ギターにも最適。
・モダン:倍音が多く、低域にも迫力のある歪み。

 ここまではモデリング・アンプでもよくある選択だが、THR100Hはさらに各アンプ・チャンネルのパワー・アンプ部分のモデリングをもセレクトできるのでより積極的なサウンドメイクが可能になる。パワー・セクションの真空管タイプは以下の5種類。

【真空管タイプ】
・6V6:ミディアム・サイズのアメリカン・コンボ・アンプのイメージ。ブリッとしたコンプ感もある。
・EL84:30Wのブリティッシュ・アンプのイメージ。ハーモニックス豊かで締まりのある歪みが得られる。
・EL34:100Wクラスのブリティッシュ・アンプのイメージ。ガッツがありアンサンブルで抜けてくるロックの定番サウンド。
・6L6:EL34に比べて低音に迫力があり、パワフル。傾向はクリーンだが、ハイゲイン・プリアンプと合わせるとモダンな歪みも得られる。
・KT88:最もパワフルでレンジも広い。レスポンスというよりはダイナミクスを重視した音色。ダウン・チューニングにも最適。

 これらを上記のアンプ・タイプと組み合わせる事で、スタンダードなセッティングからモディファイ・アンプの様な個性的なサウンドメイクまでが思いのままとなるのだ。例えばアンプ・タイプをリード、パワー・セクションをEL34にセットすれば王道の英国ハード・ロックのサウンドが得られるが、パワー・セクションを6L6にすれば改造ホット・ロッド・アンプを使った90年代アメリカン・ロックのサウンドになるだろう。そのままKT88にすればオルタナティブ・ディストーション・サウンドに、6V6やEL84をセレクトしロー・ゲインにセットすれば、昨今流行りのコンボ型のカスタム・アンプ風サウンドも得られる。さらに動作クラス(クラスA/B)の切り替えまで可能ときた。ああ、なんと楽しいのだろうか!

 また、スピーカー・アウト(パワー・アンプからのアウト)ももちろん2系統が用意されている。1台のスピーカーにふたつのアウトをミックスして出力する事も可能だが、それぞれを別のスピーカー・キャビネットに接続し、さらにサウンドをチューニングする事もできる。ちなみに、今回使用した純正のTHRC212キャビネットの場合は、2種類のこだわりのスピーカー・ユニットを搭載している。今回は各アンプのアウトをそれぞれのスピーカーに接続し、いずれかのアンプだけが鳴っている時はスピーカーは1台だけ鳴る様にしてある。つまり、ふたつのチャンネルを同時で鳴らした時だけ、ふたつのスピーカーから音が出ているという事だ。これによりライブ等では抑揚のある迫力溢れるパフォーマンスが楽しめるだろう。THRキャビを使用されない場合でも、ぜひ2台のスピーカーを使用してサウンドをお楽しみ頂きたい。

 またデジタルの利点として小音量でも大音量でもサウンドに大きな変化が生まれない性質を利用して、自宅にて小音量でじっくり作り込んだサウンドでリハーサルやライブを行なう場合にも大変便利だろう。しかもアンプ・ヘッドは軽く、持ち運びも容易。……ここまで書いても書き足りないほど紹介すべき点が満載の良品。ぜひ手に入れて楽しんで頂きたいアンプだ。

※使用ギター:Crews Maniac Sound / Bottom’s Up Quarter sawn

THR100H Dual:Front Panel

THR100H Dual:Rear Panel

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製品情報

Yamaha / THR100H Dual

価格:¥110,000 (税別)

【スペック】
■アンプ・タイプ:SOLID、CLEAN、CRUNCH、LEAD、MODERN ■真空管タイプ:EL34、6L6GC、KT88、EL84、6V6 ■エフェクト:BOOSTER(※White / Amber / Green)、REVERB(※Hall / Room / Plate / Spring)、NOISE GATE(※OFF / 1 / 2 / 3)、FX LOOP(※PARALLEL / SERIAL)、SPEAKER SIMULATION(※Impulse Responce)「※」機能は専用エディター「THR HD_H Utility」でのみ設定可能 ■コントロール・スイッチ(フロント):POWER、AMP SELECT、BOOSTER×2 ■コントロール・スイッチ(フロント)AMP I:AMP TYPE、BOOSTER、GAIN、MASTER、BASS、MIDDLE、TREBLE、PRESENCE、REVERB、LEVEL ■コントロール・スイッチ(フロント)AMP II:AMP TYPE、BOOSTER、GAIN、MASTER、BASS、MIDDLE、TREBLE、PRESENCE、REVERB、LEVEL ■コントロール・スイッチ(リア):CLASS A / AB×2、GND LIFT、IMPEDANCE 4 / 8 / 16Ω、POWER OUTPUT 25 / 50 / 100W ■コントロール(リア):TUBE TYPE SELECT×2 ■入力/出力(フロント):INPUT I(1 / 4" Phone)、INPUT II(1 / 4" Phone) ■入力/出力(リア):PHONES(1 / 8" Mini Stereo)、FOOTSWITCH(5pin DIN)、EFFECT LOOP SEND / RETURN(Stereo 1 / 4" Phone)、SPEAKER OUT 1(1 / 4" Phone)、SPEAKER OUT 2(1 / 4" Phone)、LINE OUT 1(XLR)、LINE OUT 2(XLR)、AC IN Jack、USB ■パワー・アンプ・タイプ:Class D ■定格出力(Single Amp):100W(8 / 16Ω)、50W(4Ω) ■定格出力(Dual Amp):100W(50W+50W)■A/Dコンバーター:24 bit+3 bit floating、44.1kHz ■D/Aコンバーター:24bit、44.1kHz ■インプット・レベル:-10dBu / 1MΩ(INPUT)、0 dBu / 10kΩ(RETURN)■アウトプット・レベル:10 mW / 30Ω(PHONES)、0 dBu / 10kΩ(SEND)、+4 dBu / 600Ω(LINE OUT)■消費電力:60W ■電源:100-240V、50/60Hz ■PCインターフェイス:USB 2.0 ■サイズ:幅445×奥行き248×高さ125mm 重量:4.2kg ■付属品:電源ケーブル、フットスイッチ、フットスイッチ・ケーブル、取扱説明書
【問い合わせ】
株式会社ヤマハミュージックジャパン お客様コミュニケーションセンター 管弦打楽器ご相談窓口 TEL:0570-013-808 http://jp.yamaha.com
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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