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“ニーヴ”の音をあなたのラックに! RUPERT NEVE DESIGNS 500シリーズ

RUPERT NEVE DESIGNS / 500シリーズ

録音機材界のレジェンドであるルパート・ニーヴ氏の現行ブランドがRUPERT NEVE DESIGNS。フラッグシップ5088コンソールやProticoシリーズなど豊富な製品構成の中、API 500互換モジュールは5種類+ランチボックスがラインナップされている。ここではアナログ・アウトボードに造詣の深いエンジニアの甲斐俊郎氏に、同社のモジュールの実力を検証していただいた。

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エンジニア甲斐俊郎が語るRUPERT NEVE DESIGNS 500シリーズ

倍音を付加する“SILK”回路は“TEXTURE”との連携でより使いやすく

エンジニア・甲斐俊郎

 もともとAPI 550Aが好きで、今でもランチボックスをレコーディング/ミックスの現場に持ち込んでおり、面白そうなモジュールがあれば適宜入れ替えて使っています。API 500互換モジュールはコンパクトなので、多チャンネルを扱う際もスペース的に有利なんです。

 僕が卓とアウトボードで音作りを行うのは、その方が“音楽的で簡単”だからです。アナログ機材は音色のキャラがはっきりしていて音作りに迷わない。DAWもワイド・レンジにはなってきているのですが、例えばこってりした音のニュアンスなどは出しにくいので、基本的な音作りはアナログ機材で行っています。

511 - Mic Pre with Texture

 RUPERT NEVE DESIGNSの製品はこれまでの仕事を通して音に良い印象を持っていたので、今回のテストは楽しみにしていました。まずマイクプリの511をダビングに使ってみましたが、すごく良かったです。音は優等生的というわけでもないのですが、クセが無く、どんなジャンル/パートにも合うと思います。しっかりと太さを感じさせつつ、高域はシルキー。楽器の音を楽器らしく録れる印象です。倍音を足す“SILK”もニュアンスが良くて、例えばボーカルやスネアに入れると自然な感じでエッジが立ってきます。倍音の量を“TEXTURE”でコントロールできるのも、とても使いやすいですね。

511
オープン・プライス(市場予想価格:68,000円前後)
Porticoシリーズで培った音色をAPI 500規格に凝縮したマイクプリ。倍音を付加する“SILK”回路(REDモード)を搭載し、“TEXTURE”ノブでその量を調整できる

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517 - Mic Pre / DI / Comp

 517はプリアンプ+1ノブ・コンプという仕様。DIとマイクの音を単体でブレンドできるので、ギタリスト/ベーシストは使いでがあるでしょう。この機種にもSILK回路が付いており、これを入れると、音像がグッと大きくなります。あと511も同様ですが、最近のマイクは出力が大きいので、マイク・ゲインが0dBからの設定になっているのもすごく使いやすいです。

517
オープン・プライス(市場予想価格:98,000円前後)
Portico 5017をベースにし、マイクプリ、コンプ、DIを備えたミュージシャン向けのモデル。これ1台でDIとマイクプリの音をブレンドして収録することができる

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542 - Tape Emulator

 テープ・シミュレーターの542はSILKのモードをBLUE/REDで切り替えられます。実際のテープではゲインを突っ込む際、ある線を越えると音が詰まっていくのですが、542は結構粘ってくれます。また、昨今のDAWはワイド・レンジに録れますが、音が重なってくると細く聴こえることも少なくありません。そうした場合に542を通すとモチッとした質感を表現できます。15ipsモードでの低音の出方はかなり好みですし、ギターをもっと粗い感じにしたい場合にも有効。ステレオ・モデルがあれば、ミックス・バスを含めさまざまなソースで使ってみたいですね。

542
オープン・プライス(市場予想価格:92,000円前後)
テープ・シミュレーター。カスタム設計のトランスを録音ヘッドのように扱う“トゥルーテープ”回路により、不要なひずみの無いテープ・サウンドが得られるという

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543 - Compressor

 543はNEVE 33609の系譜を感じさせつつ、モダンなレンジ感と操作性を持ったコンプです。F/FとF/Bで動作モードを切り替えられるのですが、ボーカルなどはここでも結構音のニュアンスが変わります。効き味としてはさり気ないですが、ベースを2〜3dBリダクションさせるだけでフレーズが“聴こえて”きます。

543
オープン・プライス(市場予想価格:112,000円前後)
カスタムのトランスを搭載したVCAコンプ。検知モードをPEAK/RMSで切り替えられるほか、F/F(モダン)とF/B(クラシック)で動作モードも変えられる

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551 - Inductor EQ

 551は基本的な回路設計がオールドNEVEで、白パネルの機種とは音のニュアンスが若干違い、ミドル・レンジは1073のような押し出し感があります。一方低域はスムーズでもたつくようなニュアンスも無く、ハイのEQはブーストするとオケ中でくっきりと立ち上がってくる印象。際立たせたいパート全般に使えると思います。

551
オープン・プライス(市場予想価格:98,000円前後)
クラスAディスクリート回路を採用しビンテージ・デザインを追求した3バンドEQ。LFはシェルビング/ピークの切り替えが可能で、MFはインダクターEQとなる

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R6 - Six Space 500 Series Rack

ランチボックス型のフレームR6も電流供給の面でとても優秀

 フレームのR6も素晴らしかったです。電流の使用量を前面のLEDで確認できるのですが、5本のモジュールを挿した状態でも400mA程度でした。API 500互換モジュールを買い始めたときに、ビンテージのフレームを試してみたのですが、電流の容量が全く足りなかったんですよ。その点、R6は素晴らしい。これは特に欲しいですね。録音にもライブにも良いと思います。ミュージシャンの方も、チャンネル・ストリップ的に511、543、551を2chずつR6に収めておけば、かなりぜいたくに、良い音で制作を進められると思いますよ。

R6
オープン・プライス(市場予想価格:78,000円前後)
6スロット仕様のランチボックスで、全モジュールに必要な電流の1.5倍以上を安定供給可能。前面には電流の使用量を表示するLEDメーターも用意されている

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製品情報

RUPERT NEVE DESIGNS / 500シリーズ

価格:オープン

【問い合わせ】
株式会社フックアップ TEL:03-6240-1213 http://hookup.co.jp/
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プロフィール

甲斐俊郎
ソニー・ミュージックスタジオ出身。現在はフリーランス・エンジニアとして活躍。近年はいきものがかり、赤い公園、Blue Encount、スキマスイッチ、新山詩織などの諸作で確かな手腕を発揮している。

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