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  • デジタル全盛の時代に登場した最強のアナログ・ビブラート/コーラス・エフェクター

KORG / Nuvibe

KORG / Nuvibe

  • 文:村田善行
  • 写真・動画撮影:伊藤大輔
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 ビンテージのビブラート/コーラスとして名高いUni-Vibeというペダルは、日本のブランド「Shin-ei /新栄電気」が発売したユニットで、輸出用としてはUnivox名義で海外で流通していた。Uni-Vibeは一般的に、レズリー・スピーカーの揺れを再現する為にデザインされたと言われていたが、回路をデザインした三枝氏(現コルグ監査役)に言わせると「あの揺れは当時、ロシアからのラジオ電波を受信して聴いていた際に生じていた、独特の“フェイジング/揺れ感”を再現する為のデザインだった」という。

 もちろん、Uni-Vibeはその揺れ感をリアルに再現すると言うよりは、当時のオルガン奏者が愛用した「大きく重たいレズリー・スピーカー」の代わりに、レズリーにも似た揺らぎをコンパクトなサイズで再現する為に最終的にサウンドのチューニングが施されたのでは? と思われる。実際に多くのオルガン奏者が当時Uni-Vibeを愛用したと言われるが、そのペダルの存在をここまで一般的なレベルにまで認知させたのは、間違いなくジミ・ヘンドリックスの衝撃的なギター・サウンドであり、同時に彼が主にライブで使用して聴かせてくれた素晴らしい“ヴァイヴ効果”を何とか再現したい、と思った多くのフォロワー・ペダルの存在だろう。

 三枝氏曰く、多くのレプリカ・ペダルに足りないのは「Uni-Vibe独特のフワフワ感。独自の揺れ感が再現できていない」点だと言う。オリジナルUni-Vibeは単調なフェイザー効果ではなく、2つの異なる揺れのフェイザー効果+トレモロ効果が一つになった様な、独特の揺れだった。そして、その揺れを生み出していたのはオリジナルUni-vibeの心臓部に納められたアルミの四角い箱にある。

 その箱の中には、今回のNuvibeの発売時にも重要なキーワードとなった4つのCdS光導電セルと、一つのムギ球型ランプが配されていた。簡単に言えば、この箱の中でムギ球が点滅。その点滅をCdSが感知/出力をコントロールし、Uni-Vibeならではの音色を生み出していた、と言う事になる。しかし、このアナログなシステムは、アナログ故に非常に複雑な効果を生み出す。アルミの箱の中での光の乱反射が生み出す揺れの「切っ掛け出し」=「揺れトリガー」は、たとえ基盤回路を完璧に再現しても、再現できない摩訶不思議な揺れを生んでいた。

 ところが、今回の「オフィシャル・リリース」とも言えるNuvibeには、天才的な三枝氏のアイディアにより、他のビルダーやメーカーが必死になって再現しようと試みた「四角いマジック・ボックスの存在」を再現する事なく、まったく異なる新しい手法で、Uni-Vibeと同じ「ふわふわ感」を造り出してしまった。それが実に79個ものトランジスタを使用したディスクリート回路と、Nuvibeのパネルに配されたWAVEスライダーである。このスライダーは、全てのスライダーをライン印の位置にセットすれば、ヴィンテージUni-Vibeのあの揺らぎを再現できる様にデザインされ、印を無視したセッティングにする事でUni-Vibeとはまるで違ったエフェクト効果も生み出せてしまう。

 「ドックン、ドックン」という低音の響きと「音が裏返る」高域のフェイジングは、正にUni-Vibeの音色。ヴィンテージ・モデルと比べれば「全体的にクリア」で「揺らぎの解像度が高い」印象で、ただのリイシューに留まらない“2014年バージョンのUni-Vibe”だと改めて確信できる。

 エフェクト効果が鮮明で、クランチ状態のマーシャルにプラグインしてもハッキリとVibeが感じられる。強烈な低音の迫力は他のクローン・ヴァイブでは感じられない。クリーン・サウンドで弾いてみれば、その音の深みとリッチさがよくわかり、ファズと合わせて使うならINTENSITYはあまり深く設定しない方が良いと思う。VIBRATO MODEはオリジナルよりもエグさが抑えられて、可変ペダルをコントロールすると、他には無い独自の揺れ方が味わえる。このモードはINTENSITYを低めにセットし、メロウなコードやアルペジオ、またはドライブさせてシューゲイザー・サウンドに組み合わせても良いエフェクト効果だと思う。

 バッファーのサウンドに関しては、ヴィンテージUni-Vibeとは印象が違う。ヴィンテージが「ゆったりして、甘い印象」だったのに対して、Nuvibeは「くっきりとしてタイト」な印象。このあたりは操作ペダルをヒール側にセットした「アクティブ・バイパス」と、Nuvibe本体のエフェクト・スイッチをオフにした「トゥルー・バイパス」で、音の違いをチェックしてもらいたい。

 とにかく、数多のUni-Vibeクローンが再現できなかった「あのフェイジング」を蘇らせただけでなく、新しいサウンド・メイクのアイディアさえも盛り込まんでしまった2014年最注目のペダル。デジタル全盛の時代に、最強のアナログ機材が登場してしまった。

※使用アンプ:Fender 68 Custom Deluxe Reverb

KORG / Nuvibe

左からエクスプレッション・ペダル端子、インプット、アウトプット、AC電源端子が並ぶ。

開発者・三枝文夫氏のイラストと、電池ボックスが配された裏パネル。単3アルカリ乾電池6本で、約4時間の連続使用が可能となっている。

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製品情報

KORG / Nuvibe

価格:¥55,000 (税別)

【スペック】
●コントロール:ボリューム、インテンシティ、スピード、WAVEスライダー●入出力端子:インプット、アウトプット、エクスプレッション・ペダル●電源:単3アルカリ乾電池×6本、ACアダプター(DC9V)●外形寸法:本体=260(W)×170(D)×67(H)mm、エクスプレッション・ペダル=94(W)×246(D)×81(H)mm●重量:本体=1.5kg、エクスプレッション・ペダル=1.1kg●付属品:ステレオ・ケーブル、ACアダプター
【問い合わせ】
コルグ http://www.korg.com/jp/
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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