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  • “高音質”で音楽を聴く楽しみを!ハイレゾ入門〜第7回

よりアナログに近い質感の音「DSD」の魅力とは?

DSD対応USB DAC/レコーダー

  • 文:菊池真平

一昔前に比べると、ハイレゾ音源(PCM)の再生環境は、ぐっと身近になってきています。それに伴いタイトル数もかなり増えています。そんなハイレゾに比べると、まだまだ認知度は低いですが、プロを中心に注目されつつある、アナログ音声をデジタル信号に置き換える方式があります。それが、DSD(ディー・エス・ディー)と呼ばれる方式です。DSDは“Direct Streame Digital(ダイレクト・ストリーム・デジタル)”の略称で、現在の主流であるPCM(Pulse Code Mudulation/パルス・コード・モジュレーション)とは異なった考え方で、アナログ音声をデジタル信号に置き換えます。それによって、よりアナログに近い質感の音を生み出すことができ、改めてその“音質”に注目が集まっており、DSDフォーマットの音源も発売されています。今回はそんなDSDについて、簡単にその魅力をお伝えしたいと思います。

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DSDとは?

 DSDという名前は、日本のソニーとオランダのフィリップス社によって名付けられましたが、DSDの基本となる考え方は早稲田大学の名誉教授である安田靖彦氏によって生み出され、後に同大学の山崎芳男教授により“高速標本化1bit 信号処理”が考案されたことで、現在に繋がっています。このDSD方式が採用された音楽メディアが、1999年から発売が始まった、SACD(Super Audio Compact Disc)になります。SACDは、その音質の高さからオーディオ・ファンの間では認知度が高いですが、従来のCDプレーヤーでは再生できないため、広く一般に広まっているとは言えない現状です。

 では、DSDとはどういった方式なのでしょうか? CDなどに使われる一般的なPCMとの違いを挙げながら、簡単に説明したいと思います。まずPCMについてですが、これはアナログ音声をサンプリング(標本化)し、その大きさを定められた範囲でデジタルに置き換える(量子化)という方式になります。先に述べた“標本化”が、サンプリング周波数と呼ばれる値で、例えばCDに使われている値で言えば、44.1kHzと表記されます。この44.1kHzというのは、1秒間に44,100回、音をサンプリングする事を表しています。

 さらに後者のデジタルへの置き換えですが、これを“量子化”とも呼んでいます。同じCDですと、16bitという値が用いられますが、これは65536段階(32767〜-32767)の範囲で置き換えられることを示します。この辺りが、よくわからないところとも言えるのですが、PCの画面設定を想像してみて下さい。256色で表示するよりも、65536色(16ビット・カラー)で表示する方が、滑らかな画質を得られるはずです。それと同じように捉えて頂ければ、わかりやすいのではないでしょうか? 理論上ではサンプリング周波数/bitの値(ビットレート)が大きい程、よりアナログ音声に近い、音の再現が可能になります。故にハイレゾ音源では、CDの16bit/44.1kHz以上のデータ(24bit/96kHzなど)を用いることで、ナチュラルなサウンドを生み出すことができます。

 対してDSDですが、現在主流になっているのは、1bit/2.8MHzもしくは1bit/5.6MHzといったデータの表記になります。まず2.8MHzですが、PCMと同様に1秒間にサンプリングできる量を示します。よって2.8MHzですと、1秒間になんと2,822,400回もサンプリングしている事になります。それを1と0で表される1ビットの信号を用い、アナログ音声を連続する信号の密度で表していきます。PCMでは、瞬間の音の大きさを表し決められた範囲の中で表していきましたが、DSDでは連続したデータの粗密で音の情報を表すことで、アナログ音声により近い臨場感のある音が得られるのです。なかなかわかり辛いと思いますので、次項では簡単にその魅力をお伝えしてみたいと思います。

立体感のある音像が得られるDSD音源の魅力

 現在、聴く事のできるDSD音源には、大きく分けると2種類のタイプがあります。ひとつはPCM方式で録音されたデータをDSD方式に変換したものです。もうひとつはDSD方式で録音されたものです。(*アナログ録音した音源をDSDにした音源もあります)ここでは特に、DSDで録音された音源の魅力をお伝えしたいと思います。KORGから発売されているDSDレコーダー、MR-2000Sなどを使いレコーディングされたDSD音源は、奥行きのある立体的なサウンドが大きな魅力です。これは実際に聴いて頂くとわかるのですが、アナログ・レコーディングされたレコードとも質感の異なった立体感のあるサウンドです。その音は、その場の空気も伝わってくるような臨場感があります。ヴォーカリストのブレス(息継ぎ)の音などを聴くと、まるでレコーディングの現場にいるような錯覚さえ覚え、おそらく初めてこの音を体験された方は、かなり驚かれるように思えます。

 それほど、インパクトの強いサウンドが得られますが、PCM音源に比べるとマルチ・トラックでの録音や、ミックス・ダウンが手軽にできないため、まだ広くは普及してはいません。しかし、近年ではレコーダーも手軽になってきたことから、フィールドやライヴ・レコーディング、さらにはマスター・レコーダーとして、DSDレコーダーを利用するエンジニアも増えています。

 このDSD音源の可能性に注目し、日本のトップ・アーティストのスタジオ・ライヴをDSDで録音、配信する試みを行っているのがリットーミュージックから発行されている『サウンド&レコーディング・マガジン』です。『Premium Studio Live』と名付けられたこの企画は、これまで大友良英氏をはじめとする、名立たるミュージシャンが数多く参加しています。来月9日にはその第7回目が行われ、バッファロー・ドーターの大野由美子をリーダーとした、AZUMA HITOMI、Neat’s、Maika Leboutetの4人が参加し、一発録りによるDSDレコーディングを行う予定になっています。この音源は、今年の11月14日から『e-onkyo』と『OTOTOY』にて販売が予定されているようです。ぜひこの音源を聴いて、DSDの魅力を体験してみて頂けると幸いです。以前に行われた、数々のセッションも、素晴らしい演奏と録音ばかりです。

DSDファイルの再生が行えるUSB DAC

 DSDフォーマットの音源は、KORGが無償で提供しているソフトウェア“Audio Gate 3”等を使えば、PCで簡単に聴く事ができます。しかしDSDをダイレクトにD/A変換できるUSB DACがないと、一度PCMに変換されてから再生されてしまいます。DSD本来のサウンドを楽しみたい場合は、以下で紹介するようなDSDの“ネイティブ再生”ができるUSB DACを使うことをお薦めします。以前よりも求めやすい価格になり、DSDだけではなく、PCMのハイレゾ音原のD/Aにも対応しているので、ハイレゾとDSD音源の両方を楽しみたい方は、紹介するタイプのUSB DACを始めから購入する方が良いでしょう。

KORG DS-DAC-100

KORG DS-DAC-100 / 価格:オープン[メーカー製品情報ページ

 DSDレコーダーも販売するKORGは、DSDに対する知識の蓄積も深く、そのノウハウを生かして生み出されたのが、DS-DAC-100です。流線型が美しい筐体は、音質に配慮して3点のスパイクで支えられ、インシュレーターも付属しています。電源は持ち運びに配慮してかUSBを採用していますが、出力端子はプロ用機器を製作するKORGらしく、バランス出力も備えています。このDACでは、DSDが1bit/2.8224MHzと5.6448MHz、PCMが24bit/192kHzまでD/A変換できます。また大きな魅力と言えるのが、DSDの再生も簡単にできるソフトウェア“AudioGate 3”が、無料で使えることです。このソフトは単体で購入すると2万円ほどするため、かなりコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。

TEAC UD-301

TEAC UD-301 / 価格:オープン[メーカー製品情報ページ

 ティアック社もタスカムのブランドで、DSDレコーダーを発売しているメーカーです。そんな同社もDSD音源を再生できるUSB DACをラインナップしています。写真のUD-301は、その中でもエントリー・モデルとして生み出されましたが、DSDは2.8224MHzと5.6448MHz、PCMは32bit/192kHzまで変換でき、十分なクオリティーを備えています。さらに同社オリジナルの無料の再生ソフト“TEAC HR Audio Player”を使えば、より手軽にDSD/PCM音源の再生ができます。またプリアンプ・モードを備え、パワーアンプがあれば、USB DAC付きプリアンプとしても機能します。ティアックからは、ステレオ・プリメインアンプとしても使えるAI-301DA、上位機種のUD-501も発売されています。

DENON DA-300USB

DENON DA-300USB / 価格:57,500円(税抜)[メーカー製品情報ページ

 日本のオーディオ・ブランドとして認知度の高いデノンが開発した、DSD対応のUSB DAC。DSDは、2.8224MHzと5.6448MHz、PCMは24bit/192kHzまで対応し、現在発売されているほとんどのハイレゾ/DSD音源を再生できます。筐体も非常にコンパクトで、縦置きもできるためPCの横にハードディスクのように設置する事もできます。また高品位なヘッドフォン/イヤフォンも手掛けているブランドであるため、内蔵のヘッドフォン・アンプもこだわって製作されています。主にヘッドフォン/イヤフォンで音楽を聴くユーザーには、お薦めのUSB DACと言えるかもしれません。

DSD録音ができる据え置き型レコーダー

 現在は、下記で紹介するKORGのMR-2000SやTASCAMのDA-3000を使えば、誰でも手軽にDSDレコーディングができます。1台で2チャンネルの録音となりますが、ライヴ・レコーディングやマスター音源の製作等にも役立ちます。もちろんDSD音源の再生にも使えますが、再生専用機よりはやや使い勝手は劣ります。しかし、録音も再生もしたいユーザーにはお薦めと言えます。

KORG MR-2000S

KORG MR-2000S / 価格:オープン[メーカー製品情報ページ

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 コルグのDSDレコーダー、MRシリーズの最新モデルです。同シリーズは、MR-1000の登場以来、多くのエンジニアにも使われてきました。DSDの可能性が広がった事も、同社の貢献が大きかったと言えるでしょう。このモデルは、録音/再生共に、DSDが1bit/2.8224MHzと5.6448MHz、PCMは24bit/192kHzまで対応しています。DSDのファイル形式は、DSDIFF、WSD、DSFのすべてが使用できます。内蔵されたハードディスクの容量は160GBで、最長6時間までの連続録音もできます。入出力端子は、RCAピン(アンバランス)、XLR(バランス)両方が付き、幅広いユーザーに使いやすい仕様を備えています。

TASCAM DA-3000

TASCAM DA-3000 / 価格:オープン[メーカー製品情報ページ

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 タスカムから発売されたDA-3000も、DSDを録音/再生できるAD/DAコンバーターになります。コルグ同様にマスター・レコーダーとしても注目されている機器です。こちらもDSDが1bit/2.8224MHzと5.6448MHz、PCMは24bit/192kHzまで対応しています。また電源部やクロックなどにもこだわり、音質を強化しています。この機器は、SDやCFカードに記録する方法が採用されており、前者はSDHCカードの4GB〜32GBまで、CFカードの1GB〜64GBまで公式に対応しています。対応ファイル形式は、DSDIFF、DSFとなるようです。バランス/アンバランスの入出力端子も充実し、コストパフォーマンスも高いモデルと言えるでしょう。

DSD録音ができるポータブル・レコーダー

SONY PCM-D100

SONY PCM-D100 / 価格:オープン[メーカー製品情報ページ

 ポータブル・レコーダーを古くから設計し、さらにDSD技術においてもリードするソニーから発売されたのが、ハンディ・タイプのレコーダーでありながら、DSDレコーディングもできるPCM-D100です。DSDでのレコーディングは、1bit/2.8224MHz。PCMは24bit/192kHzまで対応しています。上部には高感度、低ノイズ、ワイドレンジのマイクが2つ付けられ、状況に合わせて集音範囲を変えることで、自然なステレオ感が得られます。また独自のデジタル・リミッターも内蔵され、より歪みの少ない音で録音できます。フィールド・レコーディングに持ち出せば、家でも臨場感と奥行きのある波の音などが再生できるかもしれません。

KORG MR-2

KORG MR-2 / 価格:オープン[メーカー製品情報ページ

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 KORGからも、ハンディ・タイプのDSDレコーダーが発売されています。このレコーダーも、1bit/2.8224MHz。PCMは24bit/192kHzの録音が可能です。上部に取り付けられたX-Y型のコンデンサ・マイクは、210度回転させることができ、シチュエーションに合わせた録音が可能です。記録には、汎用性の高いSDHC/SDカードを採用しています。SDHC/SDカードは、ここ最近コンビニでも売っているため、持ち出した先でカードを忘れても、簡単に購入することができるので便利ですね。電源は、USBバスパワーもしくは、ニッケル単三水素充電池2本で行います。カメラの3脚にも簡単に立てて使えるように工夫されているので、ライヴ・ハウスなどでも重宝しそうです。自分のバンドをDSDの高音質で録音して、残しておく事も手軽にできます。


 今回は、ハイレゾ音源と共に注目度が高まっているDSDを、ごく簡単に説明しましたが、技術的な話もあってなかなか難しいですね。ただそういった事がわからなくても、DSD録音された音源を一度聴いて頂ければ、きっとその魅力に気付くはずです。まだ発展途上の技術ですが、今後マルチ・トラックでのレコーディングやPCで手軽にミックスができるようになると、より普及していくのかもしれません。では、また次回!


※次回「ハイレゾ入門・第8回」は10/15(水)更新予定です。

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プロフィール

菊池真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ヴィンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。

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