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ストラトのネック・プレートを換えると音は変わるのか?

〜ストラト・ネック・プレート実験〜

  • 文:井戸沼 尚也(室長)

今回の実験では、ストラトキャスターの“ネック・プレートの種類によって、ギターの音は変わるのか”を調べてみました。

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【実験テーマ】ネック・プレートの種類によって、ギターの音は変わるのか?

■ネック・プレートにまつわる噂
ネック・プレートの素材違いによって音は変わる

 ネック・ジョイントのネジを締めたり、緩めたりすることで音が変わる──デジマート地下実験室第2回でそのことを検証していた私は、ちょっと油断していたのかもしれません。なんとなく、ジョイントのあの辺の場所に関しては、「もうわかってるもんね」という気になっていました。
 そんなある日、デジマート・マガジン編集部のW氏が「ネック・プレートを換えると音が変わるらしいですよ」という情報を持ってきてくれました。なんでも某楽器店関係者と話をしている際に、アーティストの中にはそこにこだわる方もいるという話になったのだとか。
 「というわけで、ネック・プレート交換実験、やってみましょう」いや、やってみたいですけど。そんなにたくさんプレート持っていないしなぁ。実際に装着している1枚以外、予備を持っている人ってどのくらいいるのでしょうか……。私は持っていません。「大丈夫です、いろいろ買ってきました」。なんと太っ腹な! 渡りに船、おんぶにだっこ、ではそれらでサウンドに違いが出るかを検証していきましょう。

【実験環境】

■使用機材
フェンダー・カスタムショップ・ストラトキャスター(ギター)
フェンダー 68 Custom Deluxe Reverb(アンプ)
ヴェムラム・ジャンレイ(オーバードライブ)
プロビデンスS101(ケーブル)
ダダリオEXL110(弦)
フェンダー・ティアドロップ・ミディアム(ピック)
◎フェンダー・ゴールド・メッキ・スティール(プレート)
◎ESP 無地スティール(プレート)
◎ESP ブラック・メッキ・スティール(プレート)。
ESP Custom Lab チタン・ネックセット・プレート(プレート)
フリーダム カスタム ギター リサーチ 真鍮製Tone Shift Plate(プレート)
◎自家製“原子心母”モデル(プレート)

※セッティングについて
本番の実験前に検証したところ、どクリーンよりも少しだけ歪んでいる方が違いがわかりやすかったため、ストラトのリアとセンターのハーフトーンの音を、オーバードライブで軽く歪ませています。アンプ自体の設定はボリューム3、その他はほぼフラットで、クリーンのセッティングにしています。

※演奏について
今回は実験内容からルーパーは使用できず、その都度実際に弾いています。できるだけ同じような演奏を心掛けましたが、“全く同じ”というわけにはいきませんので、ご了承ください。

実験1 フェンダー・ゴールド・メッキ・スティール

 まずはフェンダーのゴールド・メッキ・スティールです。金ピカですが、基本的にはフェンダーの普通のプレートで、これが今回の基準となります。厚みは1.9mm、重さは50gです。

 早速、取り付けて弾いてみました。安定のフェンダー・サウンド、これぞ普通のストラトの音です。コードを含む簡単なリフ、巻弦の質感を確かめるための6弦の音、ストラトの美味しいポジションである3弦の12フレットあたりの音、1〜3弦のチョーキングと4弦14フレットの音を、ビブラートをかけずに伸ばしています(サステインの長さを聴くため)。一応、オシロスコープで波形を記録したので、まずはなんとなく眺めておいてください。今回の実験は、いつものルーパーを使用した実験に比べるとその都度演奏する際のピッキングの影響を受ける可能性は否めないので、あくまでも参考例として見ていただければと思います。では、次のプレートで同じように弾いてみましょう。

実験2 ESP 無地スティール

 次は、ESP 無地スティールです。厚さが1.5mm、重さが39gなので、フェンダーより少し薄くて軽いということになります。

※現在、動画をiOSで再生した際に不具合が出ることが報告されています。動画はPC環境でご覧いただけましたら幸いです。

 あ、音も違いますね。こちらの方が明るくてブライトです。“えー、ホント? わかんねぇよ、弾き方もちょっと違うし!”という方、すみません。ただ、フェンダーの1:08〜と、ESPの2:24〜を比べてみてください。この部分で聴いていただければ、はっきりわかると思いますが、どうでしょうか? 結構違いますよね? こちらの方が、やはりブライトです。念のため、波形でもチェックしてみましょう。今回の波形は参考例ですが、それにしても3kHz〜4kHz、4kHz〜5kHzのところは明らかに実験2の波形の山が高くなっていることが見てとれますね。耳で聴いてもたしかに変わっていますし、ここは「2の方が、高域が出る」と考えて良いのではないでしょうか。それでは次にいってみましょう!

実験3 ESP ブラック・メッキ・スティール

 次はESP ブラック・メッキ・スティールです。えー、厚みは1.5mm、重さは38g……ですね。あれ? メッキされた分、少し厚くなったり重くなったりするのかと思いましたが、勘違いなのか、誤差の範囲なんでしょうか。とにかく、フェンダーよりはかなり薄くて、軽いプレートです。

 音の方は……実験2のESP 無地スティールのブライトさはありませんね。実験2の2:29〜と、このブラック・メッキ・スティールの3:46〜を比べてみてください。やはり2の方がトレブルが出ていて、明るい印象を受けます。なんでもESPユーザーのギタリストの方で「ブラック・メッキは音がもったり重くなる」と言っている方がいるそうですが、こうして比べてみると確かに明るさは減っていますね。波形で見ても、実験2の4kHz〜5kHzの間の山が消えていますし、実験1と2に共通してあった2kHzより少し下の山も消えています。同じ部分をフェンダーと比べると(ブラック・メッキ・スティールの3:46とフェンダーの1:13あたり)、……うーん、これはちょっとわかりにくいですね。こうしてみると、やはり実験2のブライトさが際立っています。実験1のフェンダーもゴールドですが、このブラックと同様にメッキしているので、“無地とメッキものでは、無地の方が明るい”ということなのかもしれません。次にいってみましょう。

実験4 ESP Custom Lab チタン・ネックセット・プレート

 次はESP Custom Labによる、なんとチタン製のプレートです。厚さは1.7mm、重さは26g、だいたいフェンダーの半分の重さです。実際に手にした感じも“おおっ、軽っ!”という感じ。

 ではそのサウンドは? これは“重心が低い”感じですね。アタックがはっきりしていてローもしっかりあるので、音圧が高くなった気がします。検体の数が増えてきてわかりにくくなってきているので、基準のフェンダーと比べてみましょう。ローの部分は、1:06の6弦開放の音(その直前の6弦をチョーキングした音はフレーズが違っていますね……)と、5:02の6弦開放の音を聴けばわかると思います。明らかにチタンの方がローが出て、太いですね。波形もフェンダーと比べると、90Hzの谷がなく200Hz下の谷がありません。でも、なんで重量の軽いプレートでローが出るんだろう……正直、ちょっと理由はわかりません。謎は謎のまま残っているのですが、唸っていても解明できないので次にいってみます。

実験5 フリーダム カスタム ギター リサーチTone Shift Plate

 次は、フリーダム カスタム ギター リサーチTone Shift Plateで、素材は真鍮です。これは凄いですよ、厚さが2.8mm、重さが79gもあって、手にした感じもずっしり感があります。

 サウンドについては、音が太くなったというか、“密度”が上がっているというか、音量も上がっているように感じます。フェンダーの1:08〜と、このフリーダムの6:26〜の音を聴き比べて下さい。音がはっきり違うことがわかるかと思います。フェンダーの方は、いなたい音というか、ビンテージ系というか、ちょっと弱々しい音というか、そんな感じです。一方、こちらはミドルもローもくっきりとし、力強く、ストラトの美味しいニュアンスもしっかり出ています。ただ、波形で見ると、聴いた感じほどの違いはわからないんですよ……不思議です。ここでいう“違い”は、個人の好みの範囲かと思います。使用するアンプやエフェクター、演奏する曲や弾き方、録音環境などによる変化に、“合う・合わない”はあると思うので、ご自分の状況を考えて、サウンドを変えたい場合の検討材料にしてもらえればと思います。

実験6 自家製“原子心母”モデル

 次は、自家製“原子心母”モデルです。
 これを付けるだけで誰でもデイヴ・ギルモアの音が出せるという噂の……すみません、嘘です。私が牛乳パックを利用してちゃっちゃっ!と作りました。素材が変わると、どうなるのかなーと思ったので。厚さは1.3mm、重さは4gです。“4”ですよ! 激軽チタンの1/6、激重ブラスの1/20です。どんな音がするのでしょうか。

 あれ? あれれ? 割と、普通にいい音してませんか? もっとダメな音の方が原稿をまとめやすいというこちらの事情は無視して、普通です。波形で見ても、フェンダーの90Hzのところの谷、400Hz〜500Hzの間の谷がなくてのっぺりしている以外は、よく似た波形です。音はこちらの方が、元気がいい気がします。なんだか、第6回のファズの筐体替え実験で、お弁当箱が良かった時のような、嬉しいような残念なような、変な気持です。ただし、“ジョイント部の強度を確保する”という点では全く期待できませんので、愛器を末長く使いたい人は真似しないでくださいね。ビジュアル的にも非常に難があるので、真似する人はいないと思いますが……。

ふー、結構、サウンドが変わることはわかりましたね。それでは、実験結果に、と思ったら……。

特別実験 FINEWOOD特製木材プレート

 ここで、デジマート・マガジン『木材〜トーンウッドの知られざる世界』を連載しているFINEWOODの森芳樹さんが遊びに来てくれました。手土産に、木製のネック・プレート3種を携えて(!)です。おおっ、これは見た目も斬新だし、サウンドについてもチェックするしかないということで、早速実験してみましょう。

ブラジリアン・ローズウッド編

 まずはブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)から。皆さんご存知の通り、超貴重材です。えーと厚さは、19mm……じゃない。1.9mmです。すみません。重さは5g。ほほう、“原子心母”モデルと同じくらいか。では、早速取り付けましょう。木なので慎重に、慎重に……ピキッ……。ぶっ殺されるかと思いましたが、森さんは「ふーむ……ここは柾目ではなく板目でとればヒビはいかなかったはずですね」と至って冷静です。よ、よかった……。

 気を取り直して、サウンド・チェック開始です。その音は、おおっ、いい感じですよ! この材のプレートの最大の特徴は、サステインの長さです。動画の音声では聴き取り難いかもしれませんが、2:48〜3:10までの間、4弦14フレットのビブラートなしの音が伸びているんです。途中から、私がアンプの方を見ているのは“あれ?……長い”と思ったからです。この他、木材はもう2枚ありますが、サステインに関しては全9枚中、ブラジリアン・ローズウッド材プレート最長でした。音色そのものについては、フェンダーと比較しても仕方がない気もするので、木製の3枚で比べていきましょう。で、これが基準です。波形も、さっと見ておいてください。

ハワイアン・コア編

 続いて、ハワイアン・コアです。これは、割らずに取り付け出来ました。音の方は……ああ、これはブラジリアン・ローズウッドと比べると、太いというか、しっかりした音ですね。波形で見ても、90Hzの谷がなく、150Hzの谷、200Hzちょっと上の谷が非常に浅いです。このあたりが太さに関係しているんでしょうか。ただ、ハーフトーンの軽やかさはブラジリアンの方が出ているようです。どちらも良い音なので、あとはお好みでどうぞ──と言われても、手に入りませんよね。すみません、木になる方、ではなく気になる方はFINEWOODさんまでお問い合わせしてみてください。

フィギュアード・メイプル編

 最後はフィギュアード・メイプルです。見てください、この杢目。これだけでおかずは要らんという人も少なくないでしょう。サウンドは、ブライトです。高域が良く出ていますね。ブラジリアンの2:39〜と、このメイプルの4:53〜を比べてみてください。波形で見ても、ブラジリアンに比較して4kHzと5kHzの間に針のように尖った山が飛び出ていますし、3kHz付近もメイプルの方が出ています。ギター弾きなら“メイプル=硬めのブライトな音”というイメージがあるかと思いますが、そのまんまですね。いやー、木製プレートはわかりやすいです。

【実験結果】

結論:ネック・プレートを換えると、音が変わる

 音、変わりましたね。どれも個性がありました。無地スティール、チタン、真鍮などは違いがわかりやすかったのではないでしょうか。あとはお好みで選んでいただければ良いと思います。それから、牛乳パックが意外と悪くなかったこと、木製の中でもそれぞれ個性があったこと等も楽しめました。どれも音は面白いんですが、やはり強度の問題があるので市販化されていないんでしょうね。木製、そこがクリアできればカッコいいですし、人気が出そうなんですけど。“アルダー・ボディのストラトに、アッシュのプレートを付けて、キモチ引き締める”とかイメージしやすいですよね。

 余談ですが、今回ボツになった素材は“人工大理石”と“肉”です。人工大理石はFINEWOOD森さんが関係各所と調整していただいたのですが、やはり強度に問題があり、加工段階で割れてしまったそうです。残念、音を聴いてみたかった。もう一つの、肉は……肉は、今となってはなぜ提案したのか、自分でも意味がわかりません。デジマート編集部W氏の微笑を得たのみで検討もされず却下となりましたが、おかげでこれ以上の醜態をさらさずに済み、優しさの意味を知りました。なんだか年を重ねるごとに大人の階段を駆け下りているような気がしますが、来年の地下実験室も何卒よろしくお願いいたします!

 それでは次回、地下12階でお会いしましょう。


ESPギタークラフト・アカデミーで「ネックセットプレート」実験を体験しよう!!  

 コンデンサー実験ナット交換実験などでご協力いただいたESPギタークラフト・アカデミーにて、2017年1月29日(日)、本企画と完全連動したセミナー・イベント“東京校グレードアップシリーズ「ネックセットプレート」” が催されます! しかも参加費は無料! 参加ご希望の方は以下の専用サイト・フォームからお申し込みください。

■日時:2017年1月29日(日) 10:00〜12:30
■定員:無し(参加者多数の場合は締め切る場合があります)
■参加費:無料
■参加資格:特になし(ご希望の方は、ボルトオンタイプのご自分のギターをお持込いただき、当日製作した木製プレートを取付する事ができます)
■場所:ESPギタークラフト・アカデミー東京校
■参加お申し込み:http://www.esp-gca.com/bfunc/event.php?e=160528
※実習の円滑な進行のため、開始時間10分前にはお越し頂きますようお願いいたします。

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プロフィール

井戸沼 尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジンチャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。
井戸沼尚也HP 『ありがとう ギター』

森 芳樹(FINEWOOD)
1965年、京都府生まれ。趣味で木材を購入したのが運の尽き、すっかりその魅力に取り憑かれ、2009年にレア材のウェブ・ショップ、FINEWOODを始める。ウクレレ/アコースティック・ギター材を中心に、王道から逸れたレア・ウッドをセレクトすることから、“珍樹ハンター”との異名をとる。2012年からアマチュア・ウクレレ・ビルダーに向けた製作コンテスト“ウクレレ総選挙”を主催するなど、木材にまつわる仕掛け人としても知られる。
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