ヘッドウェイ/桜モデル10th Anniversary〜四季折々のストーリー|春
- 2024/05/02
Zemaitis / C24MF
Zemaitis(ゼマイティス)といえば、メタル・プレートに“これでもか”というぐらい緻密な彫金が施されたあのギターがすぐに連想される。トニー・ゼマイティスの手によるオリジナルのZemaitisはおよそ600本ほどしか製作されず、今なおその希少価値は薄れることなく超高級ギターとして君臨する。
今回紹介するのは、そんなZemaitisブランドから発売されたエントリー版であるC24MFというモデル。入手しやすい価格帯のエントリー・モデルとはいえ、オリジナルの芸術性やサウンドを損なうことなく見事に一般向けにリファインされている。
まず仕様について。ボディは少し小ぶりでウエストが絞られたオリジナル・シェイプで、2ハムバッキングのピックアップとオーソドックスなボリューム/トーンの配置が伝統を感じさせる。トップにはジュラルミン・ケース等にも使用されているアルミ・プレートに、緻密に彫金加工が施されたプレートが貼られている。ボディにはナトー材を使用。ナトーといえば、一般にはギターの価格を抑えるためにマホガニーの代替材として使われていることが多い。確かに材の価格だけみればマホガニーよりも安価ではあるが、イコール粗悪というわけではない。近年、マホガニー材は伐採量が制限され、良材が少なくなったため、あえて中途半端な質のマホガニーを使用するより、上質のナトー材を使用した方がサウンド面でアドバンテージを得られる場合も。C24MFは上質のナトー材を使用しているため、剛性やサウンドは申し分無い仕上がりとなっている。
サウンドはとにかく太い。単に低音だけが前に来る太さではなく、中低音にぎっしりと身が詰まった濃密な音。例えるならば、高級チョコレートのように濃厚で口どけがまろやかで、溶ける度に口内に芳醇な香りが広がる感じだ。特に歪みを乗せていくとその濃密さは顕著に確認することができ、目が細く隙間なく凝縮された太く甘いサウンドが際立つ。
気にする方が多い、トップに貼り付けられたアルミ・プレートによる高域の具合であるが、アルミ製ボディやピックを使用した際によくある、金属質の「キンキン」した耳につく高音の類は一切なく、ナトー材による肉厚のサウンドだけではこもりがちになりそうな高音に少しメリハリが足されるようなサウンドで、非常に高級感のある音がする。サウンド・キャラクターが中低音に寄っているために、どんなシチュエーションでもしっかり前に出てくる音で、バンドでもソロでも場に埋もれることなく演奏することができる。
また、動画内でも言及しているが、細かい部分も非常にしっかりと作り込まれており、ペグの操作感等は、高級ペグを使ったようなスムーズさと安定感があり、しっかりチューニングをサポートしてくれる。サウンド、ルックス共にコストパフォーマンスが極めて高い、上質な1本と言えるだろう。
価格:¥180,000 (税別)
ぎんじねこ
YouTube動画再生回数520万回、チャンネル登録者数8000名以上のモンスター・チャンネルを運営し、オリジナル曲のセルフ・プロモーションや、メーカーの製品レビュー、モニター動画などの配信活動を数多く手がける。2009年、Gibson社のオフィシャル・バンド・コンテストにて、ギターソロで2位入賞。日本を代表するトップミュージシャンである、西川進氏や松田"FIRE"卓己氏とも共演。また、音楽誌の特集ページやCDレビュー等への寄稿など幅広く活動中。さらに、15年の講師活動を経て、現在は“ヤマノミュージックスクール”のギター科インストラクターとして、後進の指導育成も努めている。