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  • 魅惑のジャパン・ビンテージ Vol.5

YAMAHA SG-175〜feat.稲葉政裕

YAMAHA / SG-175(1975年製)

時の流れとともに、失われてしまった音がある。早すぎたが故に、追憶の彼方に追いやられた理想がある──。かつてこの島国に生まれたオリジナルの趨勢がまだ手探りだった時代を、現代に蘇ったギター・サウンドとともに巡る哀愁の企画「魅惑のジャパン・ビンテージ」。第5回に紹介するのは、今や世界に誇るジャパン・ギターとして不動の名声を手にするに至ったYAMAHA“SG”シリーズ、その原点となったモデル“SG-175”。最高の材。最高の技術。そこに示したのは、ただひたすらに純度を求めた王道の威風。半世紀を経てなおも色褪せることのない正統派への希求は、このギターをして初めて国産であることの必然を認めた。伝説の名器SG-175を流麗に歌わせるのは、盤石のテクニックが冴え渡るフレージングの魔術師・稲葉政裕氏。記事では、いつも高い見識で分析を試みる稲葉氏のインタビューに加えて、モデル情報及び試奏機の詳細なディテール・データも網羅。宿命の渦に呑まれながらも、その輝かしき第一歩を歴史に刻み付けることを躊躇わなかったYAMAHAブランドの絶対的確信とは何か? 時代を繋いだサウンドに、ただ力強く応える“礎”の定理がここに蘇る!

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普遍的な価値基準を取り込んだ、新世代“SG”の幕開け

 ヤマハ(YAMAHA)におけるエレクトリック・ギター史は、その黎明期から現代に至るまでほぼ途切れる事無く製造され続けた“SG”の歴史そのものであると言っても良い。だが、この老舗純国産楽器メーカーにとってさえ、1976年の7月に発売されたシリーズ最初の完成型であるSG-2000のスタイルに辿り着くまでの道のりは決して平坦と言えるものではなかった。60年代のSGは、華やかな銀幕デビューを飾った“ブルージーンズ・カスタム・モデル”やその市販化バージョンであるSG-7等により、一躍国産エレキ・ギターの花形としてもてはやされたにもかかわらず、決して商業的には成功したとは言えなかった。それは、同ブランドのギターが、他のビザール世代の国産モデルにくらべ非常に高価だった事が理由の一つとしてあげられる。

 1965年にエレキ部門が正式に発足してわずか1年足らずで一般販売にこぎ着けるというハイペースな開発スケジュール、高級木材の調達、そして、当初からオリジナルに拘ったパーツ類の準備……いくらヤマハ固有のアコースティック・ギターやダイナミック・ギターからの技術転用が可能であったとは言え、それらが製造コストを圧迫したのは間違いない。加えて、国内のエレキ・ギター産業はコピー・モデルを中心にシングルコイルの製品が市場の主流を席巻し始めており、ヤマハ製品もそれに習って初期のラインナップをシングルコイルのモデルで統一してしまった事で、ユーザーの選択の幅を狭めてしまった事は否めなかった。その結果、ヤマハは60年代の末にSGラインの開発をいったんストップし(海外向けの生産販売は続けていた)、真にユーザーに求められる「オリジナル・エレキ・ギター」を模索すべく、新たな準備期間を設ける事を余儀なくされた。それが、70年〜72年の3月までのいわゆる「空白の3年」と呼ばれるSGシリーズ最大のインターバルであった。

 そして、ついにヤマハにとって最初の大転換の時が訪れる。72年4月、彼らは新たなSGのラインナップとして、SG-80、SG-60、SG-40……通称「ダルマ・シリーズ」をリリースする。これらは、60年代の奇抜なボディ・シェイプを持つモデルとは一線を画した、トラディショナルなスタイルを効果的に取り入れたモデルとして人々の関心を呼んだ。これらのモデルの発売を皮切りに、明らかにヤマハのエレキ・ギターは、ただ奇を衒うだけの頑な独自路線を捨て、海外の二大スタンダードであるギブソンとフェンダーの仕様、そして、ヤマハ・オリジナルのセクションを効果的に融合させる方針へと舵を切っていく事になる。同年12月にはシリーズ初のセット・ネック&ハムバッカー仕様を搭載したモデルを、さらに翌73年11月には、ほぼ正対称となるヤマハ独自のダブル・カッタウェイ・ボディを持つ新たなモデルをそれぞれリリースしたSGラインは、来たる74年11月、それらの構造を併せ持つ最初の帰結点に到達する。

 “SG-175”──それが、当該モデルを常に意識しながら、真のオリジナルに接近すべく試行錯誤を繰り返す過程で生まれた日本独自の、そしてヤマハにしか成し得ない「黄金比」によって生まれたモデルの名である。それは、足掛け10年という歳月をかけ、完全にプライベート且つ対蹠的なコンポーネントから世界水準の価値を育て上げた、地道な努力の結晶であった。その誕生よりわずか1年8ヶ月後に、このSG-175の進化系(ブッダSG)を元にして、ヤマハの大正義機種SG-2000が作られたことからも、その完成度がいかに高かったかを伺い知る事ができる。SG-175こそ、その先数十年続く現代的国産シンメトリックSGの思想を体現してみせた、最初の雛形となった個体なのである。

YAMAHA / SG-175(Back)

SG-175とその系譜

  SG-175は、オリジナルの製造本数が600本程度、発売期間が1974年11月から76年の6月までという短命ではあったが、その短い期間内で2度ほどマイナー・チェンジを行なっている。第1期は74年6月頃に初期ロットで作られたもの、第2期は初期ロットから約1ヶ月後以降のもの、そして第3期は75年の中頃以降製造のもの、となる。それぞれ、ヘッド・バインディング形状、ブリッジ形状、リア・ピックアップのエスカッション高などで大まかな年代と製造時期を見分ける事が可能(ディテール参照)。

 SG-175と同時にリリースされた同系統セット・ネックSGには、アバロンのインレイ等を省いた直系廉価版のSG-90と、フラット・トップでアッセンブリーがピックガード・マウントのSG-70、SG-50がある。SG-175のカスタム仕様として有名なカルロス・サンタナの“ブッダSG”は、その初期仕様である75年4月のバージョンとして、「チューン“オー”マティック(その元になったSG-175は正確にはT・O・Mではない)搭載」「24フレット」「ブッダ&ロータス・インレイ」「バック・コンター&ボディ厚変更」を、そこからさらにもう一度仕様変更を重ね、約2ヶ月後には「各種パーツ変更」「サステイン・プレート搭載」「Tクロス・ワンピースネック採用」「トップ材変更」等を短期間で達成し、最終形態(この仕様の多くがSG-2000の土台になった)になった。

 また、SG-175は、長いヤマハのエレクトリック・ギター史において唯一コンシューマー向けのカスタム・オーダー・メイド(COM)が可能だった機種でもあり、専用のオーダー・シートも存在していた。リイシューでは、85年のヤマハ渋谷店20周年記念限定モデルSG-1966(ピックガード無し、フラット・トップ)、2002年のイケベ楽器店オーダーの12本限定モデルSG-1750(サステイン・プレート入り)、そして、SG-175の30周年記念限定としてSC-2004(SG-3000のセット・ネック版に近い仕様で、かなりアレンジされている)が有名。一方、ブッダSGも96年に“SG-175B”として蘇っている。ちなみに、SG-175のプロトタイプとして知られるSG-125は、2系統あるうちのSG-125-1がSG-175の元になった個体(SG-125-2は、73年型フラット・カッタウェイ・プロトの直系で、SXシリーズの原型となった)である。

SG-175の主な使用アーティスト

 短命なオリジナルSG-175だが、その使用者として最も有名なアーティストと言えば、カルロス・サンタナを除いて他にいるはずもない。サンタナのSGと言えばブッダSG(SG-175のカスタム・オーダー)だと思っておられる方も多いかと思うが、彼は、74年の来日公演の際、福岡九州電力記念体育館での公演で、赤いオリジナルSG-175を使用した記録が残っている。また、その後も黒いSG-175を何度かステージで披露する姿が目撃された。彼は、初めて手にしたSG-175に対して「軽すぎる」と酷評し、自分の求めるサステインがレス・ポールのものである事を示した後、SG-175をアレンジする(これがブッダSGのきっかけとなる)よう求めたというエピソードが残っている。

SG-175のディテールを見る


ヘッドストック

 印象的なSGの“ラージ・ヘッド”。これは2代目の“ラージ・ヘッド2”と呼ばれる形状で、74年7月以降製造の個体(第2期以降)には全てこのヘッドが用いられた。白黒2層のバインディングが施されたマッチング仕様が特徴。ちなみに、74年の6月に生産されたいわゆる第1期SG-175の“ラージ・ヘッド1”は、ヘッド形状自体が異なっている(3層バインディング、中角の間のRが広い等)。ペグはカスタム・オーダー・メイド(COM)を除いたSG-175全てで共通のグローバー“102G”を採用。60年代から、SGのペグについては、ヤマハは基本的にオリジナル・モデルに拘ってきたが、このSG-175と2002年のSG-1750のみがグローバー社製を採用している。トラスロッド・カバーは、全期共通の“3点止め白黒2プライの釣り鐘型”で、本来は下部にヤマハの音叉エムブレムがあるはずだが、削れてしまったようでほとんど見分ける事ができない(筆記体彫りは仕様ではない)。


フィンガーボード

 ヤマハの高級器の目安でもある漆黒のエボニー指板。本器のものはかなり摩耗しており(サンディングされている可能性もある)、本来、22フレットに刻まれているはずのシリアル・ナンバーは判別が不可能なほど(ピックアップのディテール写真参照)。SG-175のような最上位機種のみ、ナットには骨(ボーン)が用いられた(他は樹脂製)。ただ、ここに装着されたものはリプレイスされたもの。SG-175のオリジナルのナットは、その多くがネックの幅よりも短いものが多かったようだ。インレイはメキシコ・アバロンを用いた「アロー・ポジション」。現代SGシリーズの象徴とされるこのデザインは、SG-175で初めて採用された。その後、このポジション・マークにアバロン貝が用いられたのはSG-175とSG-1750、そしてSG-2000QMのみ(他はほとんどが白蝶貝)である。当初、このマークはカタログ上では「マウンテン・ポジション」と表記されていた経緯がある。


ピックアップ

 ピックアップは、マグネットにアルニコVを用いたヤマハ“3165A”ハムバッカーを2基搭載。ピックアップ・カバー、ポールピースがゴールド仕様なのはSG-175だけ。中のボビンはダブル・ホワイト仕様で、カバーの表はポールピースのネジ側のみがくり貫かれており、真鍮製のベース・プレートの耳に直接4点のネジ止めで固定するタイプ。ベース・プレート自体は2点支持方式。エスカッションは樹脂製で、第1期、第2期特有のリアが低いロー・タイプ(本器はリア・ピックアップそのものを底上げしてフロントとの音量差を揃えているが、この仕様はデフォルトではない。この写真では見にくいので、「ブリッジ&テイルピース」の写真を参照)。このリアのエスカッションそのものが弦に近いハイ・タイプだと、75年7月以降(第3期)のモデルということになる。ピックアップ・セレクターはゴム・ダンパー付きの3点式ゴールド・トグル。ピックガードは白黒2プライだ。


ブリッジ&テイルピース

 まずブリッジだが、シリーズ中、SG-175から初めてダイキャスト製のブリッジが用いられるようになった。このブリッジは第2期の真ん中……ちょうど75年にさしかかったあたりで、一度、形状の変更が行なわれている。74年製のものは下部のアーチが深く抉られたタイプで、スタッド・ボルトの回り込みも深い。この形状のものは中央部の強度がぜい弱で、弦の張力やミュート時の右手の圧力に耐えきれず、湾曲したり、ひび割れたりする事故が相次いだ。これへの対処として75年から登場した後期タイプのものは、下部を厚くし、アーチ部分のRをゆるやかにすることで耐久力をアップした。他にも、スタッドの回り込みが浅くなり、底面には「YAMAHA」の文字が浮き彫りで刻印された。つまり、第2期には75年を境に両方のタイプが混在していた事になる。今回の実器はリプレイスされたリイシューものが装着されており、金属の厚みが全く違う。オリジナルはもっと薄い(オリジナル・ブリッジは外されて温存されていた。形状から後期タイプだったが、それでも中央が落ち込み、亀裂が入ってしまっていた)。それらSG-175のブリッジはボディ・トップに直接マウントされるスタイルで、まだサステイン・プレートは採用されていなかった。オリジナルのサドルの駒はなんと象牙である(こちらも実器は樹脂製になっていたようだが、判別不能)。テイルピースはゴールド・メッキのプレーンタイプで、スタッド・ネジにはプラス形状が用いられたタイプ(SG-175は全て共通の仕様)。


コントロール

 2ボリューム、2トーン。本来のSG-175には“ハット・タイプ3”と呼ばれるゴールドのメタル・プレートを載せたハット・ノブのコントローラーが採用されていたはずだが、これはSXシリーズ等にみられる“OKH-II”(76年7月以降のSGに採用された“OKH-I”のブラック・タイプ)にゴールド・プレートを載せたものに換装されている。ちなみに、その下にあるシールド・ジャックもゴールド(メッキ)仕様である。こういう細かなパーツ類のほとんどがゴールドで統一されていたのは、当時ではこのSG-175だけである。ヤマハがいかにこのモデルを特別に思っていたかが伺えるディテールである。


ネック・ヒール

 セット・ネック・ジョイント。接合部は17フレットと18フレットの間、やや18フレット寄りの位置となっている(ボディ・サイドの写真を参照)。見ての通り、ネックはホンジュラス・マホガニーの2ピース構造。バック材も同じくホンジュラス・マホガニー2ピース。筐体のバランス上、ストラップ・ピンがこの位置なので、カッタウェイは深いがハイ・フレットの演奏性は必ずしも高いとは言えなかったようだ。ストラップ・ピンはオリジナルだが、これも本来はゴールド仕様だった模様。


ヘッド・サイド

 ヘッド角は14度程度。時代相応のボリュートはあるものの、ヘッドもほどほどの厚みで取り回しはしやすそう。天神板も薄い。余談ではあるが、SG-175のプロトタイプであるSG-125-1にはボリュートが無かったとされている。ナットはネックまで達するインサート・ナットであることが横から見るとはっきりわかる。ナット自体はあまりRの無いタイプを使用している。指板のバインディングも丁寧に仕上げられている。


ボディ・サイド

 ボディ・トップはホンジュラス・マホガニーの2ピースで、アーチド・トップ(同時期のシリーズでは上位のSG-175とSG-90のみがアーチド・トップだった)。ボディ構造はセンター材のあるパンケーキのような「練り」構造を採用。センター材は本器のようなホンジュラス・マホガニーが基本だが、コア等で代用される事もあった。また、非常にレアなケースだが、トップとバックだけの2プライ構造だったものも存在すると言われている。これらは仕様の固まっていない黎明期ならではのサプライズだ。サイドの積層バインディングはトップだけでなくバックにも施され、ギブソン“L5-S”を彷彿とさせる仕上がりだ。さらに、トップのメキシコ・アバロンによる象嵌は、指板と合わせ、このモデルの豪華さを際立たせている。


アッセンブリー

 分厚く導電塗装されたコントロール・ボックス内。グラウンドは専用のスクリューへ逃がす仕様のようだ。線材もなかなか良さ気なものを使用している。トーン側にはお決まりの223Kキャパシタ。特筆すべきは、ボリューム・ポッド側に村田製作所の181Kコンデンサが付けられているのが見て取れる点だ。これがSG-175のみに付けられていたという『クリアネス回路(「ボリュームを絞ってもハイ落ちしない」と言われる回路)』の正体か。


稲葉政裕’s インプレッション
「30年、40年経ってもスタンダードでいられるギターだと思います」

●SG-175の思い出

 “SG”って、「ソリッド・ギター」って言うんですよね。私なんか、昔、SGってずっとギブソンのギターだけだと思っていたくらいで(笑)。“175”っていうのもギブソンにはES-175があるし、とにかく当時は情報が無かったから。これもフルアコみたいな空洞なのかな?っていう話もちょっとあったりしましてね。それで、いろいろ調べているうちに、ちょうどサンタナが『哀愁のヨーロッパ』でヒットした頃に使っていたギターがコレ(ブッダSG)だとわかって、一目見て「くぅ〜、サンタナやりたいー!」って感じにさせられたのを憶えています。ただ、ブッダって肝心な所でハウっちゃってたんですよね。サステインを伸ばさなきゃならないところで、ブギー(Mesa/Boogie)に向かって、ピーッ!って(笑)。それでも、当時は、ギター雑誌の裏なんかにはこのギターの宣伝がけっこうあったので、ブッダの貝の印(インレイ)とか、蓮の葉とか、ファンだったら憧れるのも凄くわかりますよ。あと、これはもう古い話なんですけど、私がまだ福岡に住んでいた頃、原田末秋さんなんかも結構これを愛用していましたよ。……私ですか? 私は結局手が出ませんでした。その後SGが凄く流行っちゃって、みんなが持つようになりましたからね。

●ルックス、演奏性

 とにかく、軽くて良いですねぇ。70年代の中頃ってストラトでも何でも「重い方が、サステインがあって音がイイ」みたいに言われていた時期だから、大体、掃除するのもひと苦労って重さで。でもこれは今の時代でも全然扱いやすい。一見すると、冒険していないようにも見えますが、実際に持ってみると、かなり手がかかった作りになっているのがよくわかります。ネックのグリップはレス・ポール・カスタムに近いかな。わりとSGって太めなイメージだけど、これは凄くタイトにシェイプしてある。でも後ろはちゃんとあって、こう……しっくり来ますね。あと、塗装も凄く綺麗です。ポリウレタンで厚みはあるんですけど、古くなっても安っぽくならない、まるで家具みたいに嫌味が無い仕事ですよ。当然、このアバロンも高級でムードがあるし、指板もさすがヤマハっていうくらい真っ黒なエボニーだし。全体的にアコギに通じる匂いがしますよね。個人的には、このジャンボ・フレットなところとか、ブリッジに指板に無理矢理合わせたようなRがついていないところなんか好感が持てます。(音が)太すぎず、(弦高も)低すぎず……って感じで、弾きやすさのバランスがちょうど良いです。ただね、背面にコンターが無いから、抱えているとちょっと痛いけど(笑)。

●サウンド

 思ったよりもレンジが広くて、トレブリーな印象かな。わりとハイ上がりな感じって言うか、マホガニーらしさは出ていますね。ピックアップのせいもあると思いますが、この見た目の感じと、音色のイメージがちょっと違うんですよね。立ち上がりはふんわりしていて、いわゆるレス・ポールの、ガン!って前に押し出す感じではなくて、こう……柔らかいんです。そして、高音の倍音が多い。これで、なんでトップをメイプルにしなかったのか知りたいところですけどね。フロントはわりとトーンを絞って甘めなセッティングでも音抜けが良いので、ディストーションでも大丈夫ですね。逆に、リアはちょっとためらうくらいの硬さがあるから、ブルースみたいのでガツンと行きたい時には良いかも。でも結局、一番オススメなのは真ん中です。凄くバランスよくコードが弾けるので、シングルにしなくてもカッティングなんかも全然イケちゃいます。これは気持ちがイイ。デッド・ポイントとそれ以外だと結構音の伸びに差があるのは気になるけど、そういう所も含めて、それが「このギター」なりのバランスの良さなんだなって思っちゃいます。そういう説得力みたいのが、この音にはある。きっと、30年、40年経ってもスタンダードでいられる……そういう意味で、本当に長く使える素晴らしいギターだと思いますよ。

試奏環境について

●システム:試奏機/YAMAHA“SG-175”(ギター)→MOOER“SOLO”(ディストーション)→SHIN'S MUSIC“Baby Perfect Volume”(ボリューム・ペダル)→TC ELECTRONIC“Mini Flashback”(ディレイ)→FENDER“’68 Custom Deluxe Reverb”(アンプ)
*上記システムを基本とし、サブとしてDAN ARMSTRONG“Orange Squeezer”(コンプ(プリ)、70年代オリジナル)とARION“SPH-1”(フェイザー)、そしてMAD PROFESSOR“Sweet Honey Overdrive”(オーバードライブ)を適宜追加しながら使用。また、ボリューム・ペダルからの分岐でモリダイラ“Bit Tune”(チューナー)を常設。
*今回は特別に、Ovaltone製“DARK HORSE”シールド・ケーブルの提供を受け、ギター直結用として使用している。
●マイク&レコーダー:マイクはSHURE“SM57”をオンマイク、コンデンサー・マイクをアンビ用として使用し、ZOOM“H6”レコーダーで収録した。

 試奏手順は、まず、試奏機“SG-175”の状態チェックを稲葉氏本人に行なってもらうことから始まる。アンプを平時クリーンな状態にセット(基本的にコントロールはフラット)する。歪みは基本的にエフェクターで作ることとし、さらに収録するフレーズに合わせて空間系エフェクトをテストする。今回新たに導入したアリオンのフェイザーの置き順に多少苦心している様子だった。また、同時に、バッファで音が濁りやすい“Orange Squeezer”のサウンドを入念にチェック。最後に、再度ギターの運指テストとピッキングの確認作業を行なった後、録音作業の運びとなった。
 歪みが作りやすいタイプのハムバッカーの様だったが、最初は“Orange Squeezer”のコンプレッションが予想以上に効くため、それを調整しながらのプレイとなった。しかし、音像が落ち着いてくると「哀愁のヨーロッパ」的なフレーズを何パターンも演奏する余裕をみせ、ボディの音色を活かしたクリーンやカッティングを一回り録った後で、満を持してムードのあるロングトーンを披露し、演奏を締めくくった。稲葉氏もすっかりこの企画にも慣れた様子で、今回もほぼ無駄なテイクを録る事無く、録音作業はサクッと終了した。

TC楽器 1Fエレキギター売場

 中古からビンテージまでエレキ・ギター700本以上、エフェクター500点以上、さらに数多くのピックアップ、パーツ、小物等、圧倒的な在庫量を誇る、都内でも有数の中古/ビンテージ・ショップ、TC楽器。今回の試奏器、YAMAHA SG-175はTC楽器の在庫からお借りしたものだ。国内外のブランドを問わず、ビンテージから中古楽器まで幅広いラインナップを扱うが、中でもジャパン・ビンテージの在庫を豊富に揃えているのは、ファンにはたまらないところだろう。2Fはアンプも大量に扱っており、気になったギターがあれば2Fの好みのアンプで試奏出来るのも同店ならではの嬉しい環境と言えるだろう。販売される楽器は専門スタッフの手により、完全に調整・クリーニングされ、詳細なスペックを調べた上で、その楽器に正当な評価をして販売されている安心のショップだ。
・TC楽器 1Fエレキギター売場

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製品情報

YAMAHA / SG-175

【スペック】
※試奏モデルのスペックとなります。●年式:1975年 ●色:ナチュラル(NA)●マシンヘッド:グローバー102G ●指板:黒檀(エボニー)●フレット:22 ●ネック・スケール:ミディアム ●ネック材:マホガニー(2ピース)●ネック・ジョイント:セット・ネック ●ボディ材:マホガニー・トップ(2ピース)+マホガニー(練り)+マホガニー・バック(2ピース)●ピックアップ:パッシブHH/ヤマハ3165A x 2 ●ブリッジ&テイルピース:リイシュー・ブリッジ(型番不明:オリジナルのSG-175タイプ2(後期)は破損のため温存)&初代テイルピース(ゴールド)●コントロール:2ボリューム、2トーン、3wayピックアップ用トグルSW ●発売時価格:135,000円 ●重量:約3.7kg
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YAMAHA / SGシリーズ

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プロフィール

稲葉政裕(いなば・まさひろ)
1960年、大分県生まれ。ベテランにして、時勢にとらわれない磊落なサウンドで人々を魅了し続ける、国内屈指の職人ギタリスト。正確無比な技巧に裏打ちされた創造性豊かなフレーズ・ワークを活かし、小田和正をはじめ、吉田拓郎、渡辺美里、平原綾香など多くのアーティストのステージ・サポートやレコーディングで多大な実績を残す。また一方で、熱心なストラト研究家としても知られ、特にビンテージ・フェンダーに関する知識ではマニアも裸足で逃げ出すほどの博識で通っている。自身が所属する『Far East Club Band』をはじめ、都内を中心としたあちこちのクラブ・イベントやライブを精力的にこなし、セッション漬けの多忙な日々を送る。
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