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“自分の音”を届けるために知っておくべき、 マスタリングの重要性

“ライブは最高だった!”のにCDを聴いたら微妙……そんな経験ないだろうか? そこにはさまざまな理由が隠れているのだが、そのひとつとして“マスタリング”という工程の有無、もしくはその質があげられる。“そもそもマスタリングって重要なの?”という疑問を抱いているギタリストも少なからずいるだろうが、その答えは“超重要!”である。せっかく最高のギター・サウンドで録音できたのに、その音がリスナーに届かないなんてもったいない。そこで、メジャー/インディーズを問わず、数え切れないほどのバンドやアーティストの“音源”を“作品”へと変えてきた、オーブライト・マスタリング・スタジオの代表/エンジニア、橋本陽英氏にその重要性を教えてもらった。

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そもそもマスタリングって何?

 マスタリングという言葉を聞いたことはあるが、その工程、役割については詳しく知らないギタリストも多くいると思う。そこで、まず初めにマスタリングという作業についてオーブライト・マスタリング・スタジオ(以下AMS)の代表/マスタリング・エンジニアである橋本陽英氏に教えてもらおう。

 “マスタリングをひとことで言うと、仕上げの作業です”と橋本氏は語る。つまり、レコーディング後にミックスされた音源をマスター(原盤)に落とし込むための最終調整である。“音圧を調整するだけでしょ?”などと考えている人もいるかもしれないが、それはひとつの手法でしかない。“サウンドを客観的に見極め、その曲に合った調整をすることで、楽曲の良さが引き立つ最高のサウンドに仕上げることがマスタリングの目的です。また、音質はもちろんですが、曲間を決めるのもアーティストはこだわったりしますね(橋本)”と、マスタリング・スタジオで行なう作業は多岐にわたる。

 さらに、配信やCDやレコード、スマートフォンやコンポ、イヤフォンやヘッドフォンなど、リスナーが音楽を聴く環境もさまざまである現代では、何で再生しても納得のいく音を届けるためにきちんとしたマスターを作っておく必要がある。こだわりのあるアーティストはマスタリング・スタジオの個性を見極め、どのエンジニア/スタジオに依頼するかまでこだわるそうだ。せっかく良いギター・サウンドが録音できたのにもかかわらず、マスタリングを施さずに音源を発信することで、狙いどおりの音が届かない。そんなことがないよう、マスタリングについて見直してみよう。

実際に依頼してみよう!

 最高の音をリスナーに届けるため、実際にAMSにマスタリングを頼んでみよう。
 まずはスタジオにコンタクトをとって、 “一任マスタリング”や“立ち会いマスタリング”などからコースを選ぶ。オススメは実際の作業による音の変化をリアルタイムで確かめながら、一緒に調整をしていくことで、詳細なやりとりができる“立ち会いマスタリング”だ。さて、マスタリングのスタイルを決めたら、下記の必要なものを用意しよう。

•音源
最高の音を録音しよう。ミックスダウンを終えた音源の受け渡しがデータの場合はハードディスクで渡すのがもっとも安全だ。
•曲順表(レーベル・コピー)
曲順、タイトル、アーティスト名、品番などを決めておこう。AMSではマスタリング中に曲順を決めたい場合も対応してくれるが、先にその旨を伝えておくのがマナー。
•納品仕様書
どのような状態で納品するかを書いたもの。CDDAやDDPなどの納品形態があるが、マスタリング・スタジオにその違いを尋ねて、自分の用途に何が合うか相談してみよう。
•コピー用空CD-R
スタジオでも用意してくれる場合があるが、高くつくことがほとんど。あらかじめ用意しておくことをオススメする。

 あとはエンジニアに仕上がりのイメージをしっかりと伝え、それに近づくよう、チェックをくり返していく。言葉でどう説明していいかわからない人は抽象的なイメージでもいいので伝えてみよう。橋本氏の豊富な経験から導かれる解決方法の中から、納得のいく答えが見えてくるはずだ。

AUBRITE MASTERING STUDIOでマスターができるまで

 AMSが所有するこだわりの機材を見ながら、マスタリングの工程を追っていく。ここでは簡潔に説明しているが、実際は“あと0.5dBツマミを上げよう”や“真空管を通してみよう”など、さまざまなトライ&エラーをくり返し、その度にいろんな再生機器でチェックしていくのである。興味が出てきたら一度音源を持って相談に行ってみよう。

1. 音源信号の変換

 未マスタリングのデジタル・ファイルを送り出し、dCS955(DAコンバーター/写真下段①)でアナログ信号へと変換する。

2. アナログ機材で調整

 その音源の状態や音の質により、さまざまな機械で音質を調整していく。一概にジャンルやサウンドの種類によって選ぶものや調整方法が決まるということはなく、アーティストの要望や長年の経験により機材選択、各ツマミを調整していく。橋本氏曰く、ギター・サウンドと比較的相性が良いのはAPI 5502(イコライザー/写真下段②)なのだそうだが、これも音源によってケース・バイ・ケースとのことだ。

3. 音源信号の変換

 2.の工程で戻ってきた信号をdCS905(ADコンバーター/写真上段③)で再びデジタル信号へ戻し、3.の工程へ進む。デジタル信号とアナログ信号を変換する機材の質により、その後の音質が大きく左右されるそうだ。

4. プロ用機材で書き出し

 SADiE DSD8 Ver.5(写真④)は音の劣化なくマスターを作るプロ用DAWマシンだ。ここでマスターに落とし込む前の最終チェックを行なう。エンジニアによって作業方法は異なるが、橋本氏の場合はここにいたるまでの段階でほとんど調整は済んでいるため、ここで音質を調整することは少ない。

5. あらゆる環境でチェック

 何種類ものスピーカー、イヤフォン、ヘッドフォン、ラジカセなど、さまざまな再生環境を想定して音源チェックを行なう。どんな状況でリスナーが聴いても、アーティストの音がしっかりと伝わるように気を配っているのである。

6. マスター完成!

 納品仕様書のとおりにマスターが完成! DDP形式、CDDA形式、DATiTunes用など、さまざまな原盤の形式に合わせた最適な調整が施してある。


Special Interview
橋本陽英(マスタリング・エンジニア)

仕上げで聴いた時の印象は決まる
磨きあげた音を世に送り出そう!

──マスタリングの重要性とは?
 一般的に“マスタリング=音圧を上げる=コンプをかける”と思われていることが多いんです。もちろん楽曲によってはそれが正解の場合もあるんですが、それだけではないんですよ。音圧を上げることだけを考え過ぎて間違った方法を取ってしまうと、こだわりのギター、機材、テクニックで苦労してレコーディングしたせっかくの音が埋もれてしまう可能性もあるんです。こだわりのサウンドをリスナーに届けるためにマスタリングは不可欠なんですよね。
──現在はDTMも普及したために、未マスタリング音源を世に出しているバンドも多くありますが、どう感じますか?
 このスタジオに来る音源は当然マスタリング前の音源なんですが、宝石で言うと“原石”と同じなんです。ちゃんと磨けばもっと輝くのに、そのまま世に出てしまうのはもったいないなと思うことが時々ありますね。
──そういう人にこそマスタリングを経験してほしいですね。
 そうですね。リスナーが曲を初めて聴く時に、その楽曲に“ふさわしいサウンド”を出せているか。一度しかないかもしれないチャンスを生かすためにもサウンドを磨き上げておくことはとても重要だと思います。
──レコーディング中に実際に聴いている音と、録音した音が違っていると感じる人は多いですよね。
 実際、ミュージシャンが聴いて感じることは正しい場合が多いんです。なのでリクエストがあればまずやってみることにしています。抽象的でもいいので、感じたことを伝えてくれれば、エンジニアの経験からそれを解消するための方法がいくつか提示ができます。そうやってトライ&エラーを何度かくり返していくと、着地点が見えてくるケースも多いんです。
──インディーズのバンドも多く手がけておりますが、支持される理由は?
 おそらく、過去に彼らが好きなバンドを手がけているからじゃないですかね。
──その音が好きでギターを始めて、自分もレコーディングをしたらそのスタジオでマスタリングしたいというのはいい動機ですよね。
 うれしいですね。良い仕事ができたことと同様に、それぞれのミュージシャンと重ねてきたセッションも僕の誇りなんです。それを聴いて頼んでくれるミュージシャンも本当にありがたいと思いますね。
──では、最後に読者にメッセージをお願いします!
 まず自分の音を楽しんで欲しいです。で、その音を世の中に送り出すのであれば、1回相談して(笑)! どうせやるなら自身のギターの音やプレイの魅力を最大限に引き出したサウンドで、世の中の人に聴いてもらおうよ。

マスタリングするならAUBRITE MASTERING STUDIOへ!

 マスタリングにお困りのバンドマンは、ぜひ一度、橋本陽英氏の所属するAUBRITE MASTERING STUDIOにご一報ください! 興味が出てきたら、音源を持って相談に行ってみよう。

Studio Information
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷2-3-11 ラ・ネージュ青山1F
☎03-3498-6952
◎公式HP http://www.aubrite.net

本記事は、ギター・マガジン 2017年4月号にも掲載されています

gm201704_thumb.jpg 本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2017年4月号』の記事「マスタリングの重要性」を転載しています。ぜひチェックしてみてください!

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