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ストラトキャスターのメイプル指板とローズ指板はどれだけ音が違うのか?

〜ストラト・ネック交換実験〜

ストラトキャスター好きの皆さん、指板はメイプル派ですか? ローズ派ですか? ところで音がどう違うのか、きちんと試したことはありますか? ないですよね? というわけで、地下実験室で試してみました。

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【実験テーマ】メイプル指板とローズ指板でギターの音はどう変わるのか?

 今回のお題は、ストラトキャスターの指板です。

 皆さんは、ストラトの指板はメイプルとローズ、どちらがお好きですか? メイプル派、ローズ派、それぞれ好みがはっきりしているようですね。私は、心情的にはせっかくストラトを弾くなら“カラッとした音”のメイプル指板を弾きたいんですが、弾き心地やフレット交換の時のことを考えると(たいてい、メイプルの方がリペア代が高いんですよ! 指板表面の塗装をどうするか、とか言って)、まぁローズでもいいかな⋯⋯という無気力派です。

 で、ここでひとつの疑問が生じます。メイプル指板が“カラッとした音”だって、誰が言ったんだ?って話です。……いや、みーんな言っていますが、本当ですかね? メイプルがどうだ、ローズがこうだと言っている人は、メイプル指板のギターとローズ指板のギターを弾き比べて語っているわけです。それは別の個体、つまり別のギターですよね? それでは違う音がするのは当たり前で、音の違いは本当に指板の違いに由来するものなのでしょうか?

 これは、同一個体をベースにネックだけを差し替え、それらの音の違いを確かめないとダメでしょう! というわけで、今回の実験、始めるよー!

【実験環境】

■使用機材
フェンダージャパン・ストラトキャスター ST54-500 メイプル指板(ギター)
フェンダージャパン・ストラトキャスター ST62-500 ローズ指板(ギター/ネックのみ)
フェンダー 68 Custom Deluxe Reverb(アンプ)
L' MAT 2016 Model(オーバードライブ)
ベルデン9778(ケーブル)
フェンダー・ティアドロップ・ミディアム(ピック)
アーニーボール レギュラースリンキー(弦)

※セッティングについて
■ギターは、同じ工場で作られ、シリアル・ナンバーが近い、同価格帯の指板違いのモデルを2本用意しました。実験ではメイプル指板のモデルST54-500をベースとし、ローズ指板のST62-500はネックだけを使用しています。
■サウンドは、リア・ピックアップのクリーン、クランチ、オーバードライブを2種類のネックで弾き比べ、バリエーションとしてハーフトーンのクリーン、フロントのオーバードライブの弾き比べも収録しました。
■弾き比べではネックを交換している以外、アンプ、エフェクターのセッティングは全く同じです。
■今回の実験は交換箇所がギターそのものに関わるネックのため、ルーパーは使用せず手弾きとなります。極力、同じ強さ、同じテンポでの演奏を心がけましたが、どうしても多少の差異がでてしまうことをご了承ください。
■本企画では動画再生の際、ヘッドフォンでの視聴を推奨しております。

実験 イントロダクション

 実は今回の実験の難関は、「ネック交換できる個体を揃える」ことでした。ストラト同士ならなんでも交換できるんじゃないの? と思う方もいるでしょうが、いやいや、そうでもないんですよ! ほんのわずかなネック・ジョイント部の厚み、ポケットの深さやネジ穴の位置などによって、交換しにくい、または交換できないということが起こります。

 そこで今回は、「フェンダージャパン時代のフジゲン工場の1990年前後に生産されたシリアルが近い同価格帯のストラト」で揃えました。ふー、長え。「なんで現行カスタムショップの2本で揃えないんだ?」という富裕層の方は、察してください。

 それから「ネック交換できる安いストラト、2本ください」という無茶な要求に応えて、実際に交換可能か店頭でチェックまでしてくださった御茶ノ水のギタープラネット中古館様、ありがとうございました! おかげで実験が始められます!

実験1 リアPU/クリーン/コード弾き

 それでは、まずメイプル・ネックのST54-500のリアPUで、コードを弾いてみます。……はい、ストラトの音ですね。

 次に、ST54-500に、ST62-500から外したローズ指板のネックを付けてみます。ちなみに、ネックの重量はメイプル指板690g、ローズ指板680gでほぼ変わりません。意外と軽いんですね。それから、メイプルの方が重いのか。でもこれは個体差なのかもしれませんね。

 では、ローズ指板の音をチェックしてみましょう。うん? ちょっとわかりにくいですね。若干ローズの方がダークですが……少し歪ませてチェックしてみましょう。

実験2 リアPU/クランチ/コード弾き

 まずはメイプルから。おおっ、ブライトで張りがあって、いい音してるなぁ! とても5万円以下の中古ギターの音とは思えません。これには正直、オーバードライブのL' MAT 2016 Modelも関係しています。このペダル、高級オーバードライブが続々登場している昨今では比較的リーズナブルな価格なんですが、凄く良いです。オススメですよ! ちなみに宣伝料はもらっていません。自腹で買って、勝手に宣伝しています。

 すいません、脱線しましたが、ローズ指板の音をチェックしてみましょう。むむ、完全に重心が低くなっていることがわかりますね。メイプルの時に出ていたグラッシーなハイは消えて、その分ミドルが出ています。ふーん、なるほどなぁ。

実験3 リアPU/オーバードライブ/単音弾き

 まずはメイプルから。うん、一歩間違うと耳に痛くなりますけど、その手前のブライトな良い音ですね。では、ローズ。うーん、これも単体で聴けば良い音なんでしょうけど、メイプルから続けて聴くとちょっと物足りなく聴こえますね。ただ、そう思うのは私だけで、ローズの方が丁度良い音だ、メイプルはブライト過ぎるという人がいても全くおかしくないと思います。両者が違う音だというのは明らかですので、ぜひ自分の好みを見つけてください。

実験4 フロント&センターのハーフトーン/クリーン/カッティング

 これも、まずはメイプルから。むむむ。これは……そもそもの音がイマイチですね。いかにも安いストラトの抜けないハーフトーンという感じです。が、それは置いておいて……。

 次にローズ指板。これもあまり良い音ではないですが、メイプルに比べてハイは控えめ、ロー〜ミッドが出ているのはわかりますね。次、いってみましょう!

実験5 フロント/オーバードライブ/単音弾き

 お待たせしました。ストラトと言えば、フロントのオーバードライブが好きだという人も多いかと思います。まずはメイプル。ここでもL'が良い仕事をしていますね。ハイがきれいで抜けが良く、倍音も心地良いです。

 次にローズ。おおっ! ここまでメイプルに比べると若干アレ? という感じもあったローズですが、このフロント、オーバードライブとのマッチングは良いですね! 特にフレーズ中盤、3弦12フレットを下方向にチョーキングした時の音の粘り具合などは、一般に「中域が太く、粘り気があるローズ」と言われているのが、その通りなんだとよくわかります。ローズはメイプルに比べてハイが出ない材だということではなく、ちゃんと別の個性を持っていることがわかって良かったです。

復習 ダイジェストで確認しましょう

実験結果

結論:指板によって、ストラトキャスターの音は変わる! メイプル指板はきらびやかなハイが、ローズ指板は太いミッド〜ローと粘り気が特徴!

 今回のネック交換実験、結局は世間一般で伝えられている傾向そのまんまだということがわかりました。しかし、冒頭に述べたように別の個体で比べるのではなく、ひとつの個体をベースに同じセッティング、同じフレーズで、ネックだけを交換して比べ、記録として残して公開できたのは意味があると思います。

 で、皆さんはどちらが好みでしたか? 私はメイプル派ですね。特に、クランチさせた時のコード弾きの音が気に入りました! ただ、必ずしもローズが良くないとは思いませんし、特に今回は低価格帯モデルのローズですからね。一口にローズといってもピンからキリまでありますし……。

 次回は指板ではなくネック自体の材質について、メイプル、マホガニー、ローズ、ハカランダ、コリーナ、ウォルナット、ブビンガあたりで試してみたいので、協力してくださるメーカーさんを大募集します! ……む、無理ですかね、へへへ……。

 ところで最近、地下実験室の作りが以前とは少し違うことに気がついた人はいますか(いない)。実は、2014年の6月から現場を取り仕切ってくれていたデジマート・マガジンの名物編集長・赤鬼ことW氏が、別のシマに異動となりました。鬼の世界もいろいろとあるんですね……。R.I.P.!(……ご健在です)。

 温かくも厳しかった赤鬼がいなくなり、これから迷走していきそうな地下実験室ですが、考えてみれば初回から迷走していなかったことなど一度もないので、とりあえず平常運転で頑張ります。では、ありがとう赤鬼、さらば赤鬼、また会う日まで(いろんな現場でちょくちょく会ってますけど……)。

 それでは次回、地下39階、赤鬼リターンズPart1でお会いしましょう(適当)!

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製品情報

Fender / Stratocaster(メイプル指板)

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Fender / Stratocaster(ローズ指板)

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プロフィール

井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。

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