Bose S1 Pro+ wireless PA system × 松井祐貴&井草聖二
- 2024/04/25
PEAVEY / Classic20 MH
PEAVEYと言えば、本社を構えるアメリカのミュージシャンであれば“知らない人はいない”と言えるほど有名な総合楽器ブランドだ。アンプだけでなくギターやベースもラインナップし、低価格でありながら正当な“アメリカン・ロック・サウンド”が得られる機材を多数生み出している。日本では同社からリリースされていた某アーティストのシグネチャー・アンプが有名だったこともあり、“PEAVEY=ハイゲイン・アンプ”というイメージが強いかもしれないが、実際はカントリーやジャズ向けのアンプが主たるラインのひとつであり、Top 40(※音楽チャートを紹介するアメリカのラジオ番組)にランクインするようなポップスの現場から、激歪みのメタリックなサウンドまで、幅広いミュージシャン層から愛用されている。また、リーズナブルな価格でありながら丈夫な作りということもあり、どうしても使い方が荒っぽくなるロード/ツアー・バンド、オルタナティブ・ミュージシャンが愛用していることも多い。
今回ご紹介するPEAVEY Classic20 MHは、まさに同社のスタンダードとも言えるアメリカン・ロック・サウンドを小型サイズで、現代の音楽シーンに求められるスペックで作り上げている。それだけにとどまらず、脅威的なコストパフォーマンスを実現しており、思わず値札を二度見してしまうこと間違いなし、だろう。
本機の基本的な音色は、PEAVEY創始者のハートリー・ピーヴィー氏が“自身の最高傑作”と絶対の自信を持っているDelta Blues 115 Tweedというモデルをベースに設計。このアンプはアメリカのスタジオに導入されていることも多く、超メジャーな某ハードロック・バンドの1stアルバムのギター・サウンドの多くがこのアンプで録音されたという事実が、その音色の良さを証明する裏付けにもなっている。ツイードの外観からミッド・レンジ中心のクランチ・サウンドを連想させるが、実際はアメリカンなクリーン・サウンドからブリティッシュ・テイストのクランチ・サウンドまでをカバー。動画でも触れているが、特徴的なリバーブもこのアンプにマッチした個性を与えてくれている。
EL84パワー管を2本搭載することで最大20W、アッテネートで5W、そして1Wに出力を切り替えることも可能。もちろんチューブ・アンプのドライブ感は音量が下がってもキープできる。エフェクターでは得られない、独特のコンプレッション感を楽しんでほしい。チャンネル切り替えのほか、両方のチャンネルで心地良くゲインをプッシュしてくれるブースターの存在も見逃せない(付属のフット・スイッチでこれらをコントロールできる)。オーバードライブ・チャンネルは程良いコンプ感を持ったクランチで、ついハムバッカーのリア・ピックアップで乾いた渋めのフレーズを弾きたくなる……往年のアメリカン・ロックのサウンドだ。前述したブーストを組み合わせることで、オーバードライブ+アルファの歪み量が得られる。メタルほどの歪みはないが、ロック・バンドとしては十分なドライブ感。さらに外部のブースト系ペダルでプッシュしても良いだろう。
こういった“ザ・スタンダード”なサウンドでありながら、機能が豊富だということも驚きだ。まずはライン出力/バランス・アウトのサウンド。動画でも確認していただきたいが、ミキサー・ダイレクトでこの音は反則に近く、スピーカー・シミュレーターの音作りも手を抜いていない。また、USBアウトを利用すればDAWでのレコーディングにも最適なアンプに早変わりする。真空管アンプでありながら出力ミュート(ダミー・ロード)を備えているので、スピーカーを接続せずともそのサウンドをラインで楽しむことができる。このあたりは大手の真空管アンプ・ブランドでは対応できない特筆すべき点だと言えるだろう。もちろん、センド/リターンも搭載している!
Classic20 MHの機能をざっと説明したが、なにより小型で音が良いのが最大のポイントだ。フラットで太いクリーン・サウンドは歪みペダルとの相性も良く、ハイゲイン・ペダルやファズ・ペダルのキャラクターをそのまま増幅したい皆さんにも本当にオススメしたい。また、専用のキャビネットはセレッションV30スピーカーを搭載している。クローズド・バックなので太いサウンドが楽しめるが、バック・パネルをはずすことでセミ・オープン・バックのキャビネットにも変化。さらに“アメリカン”なサウンドを求める皆さんはお試しを。宅録からライブにまで使え、機能とサウンドはともにフル・スペック……良質なコンパクト・チューブ・アンプを求める皆さんなら無視できないアンプだ。
また、ClassicシリーズのClassic30 112というコンボ・アンプもラインナップ。動画内でも紹介しているので、そちらもチェックしてほしい。
価格:¥64,584 (税込)
価格:¥91,800 (税込)
価格:¥81,000 (税込)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:Crews Maniac Sound / Bottom's UP 2017 Alder
使用ペダル:T-Rex / SOULMATE