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  • 0-18、00-18、000-18のボディ・サイズによる違いを検証

斎藤誠が弾く! マーティン0-18、00-18、000-18を徹底比較

Martin / 0-18、00-18、000-18

  • 制作:デジマート・マガジン 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:大屋努

好評連載MARTIN TIMES。13回目となる今回は、視聴者から寄せられた“ボディ・サイズの違う0、00、000の違いを紹介してほしい!”というご要望にお応えします! Standard Seriesの新作に0-18が仲間入りを果たし、この機会に同じくStandard Seriesの00-18と000-18の3モデルを斎藤氏に弾き比べてもらいました。同じ材を使用した3モデルで、同じ楽曲を弾いているので、ボディのサイズ違いによる音の違いはもちろん、抱えた際のルックスや、プレイアビリティなどなど、アコースティック・ギターを選ぶ際の参考にしてみて下さい!

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斎藤誠が弾く! マーティン0-18、00-18、000-18を徹底比較

Special Talk Session
斎藤誠が語る! 0-18、00-18、000-18の魅力

0、00、000のモデル名について

 マーティン・ファンの間では周知のことだが、このブランドのギターの型番は伝統的に、きわめて明快な体系に基づいている。000-18やD-45といった型番のハイフンよりも前の部分(000、Dなど)は主にボディのタイプを表しているが、マーティンの歴史においては比較的新しいモデルであるD(ドレッドノート)やOM(オーケストラ・モデル)のようなアルファベットによる表記はむしろ例外的で、本来はボディのサイズを表す数字で表記されていた。

 1833年の設立当初のマーティン社では、最大サイズのサイズ1を筆頭に、少しずつサイズの小さな2、2 1/2、3というモデルを取り揃えていた。さらに小型のサイズ4や5といったモデルもあったが、これらは本来テルツ・ギターという、通常のギターの3カポに相当する高いチューニングで使う楽器だった。19世紀のヨーロッパで、ソルやジュリアーニ、コストといった名ギタリスト兼作曲家が相次いで登場したギター・ブームを追い風に、一世を風靡したラコートやパノルモ、シュタウファーといったブランドのギターは、現在のクラシック・ギターよりもはるかに小型に設計されていた。マーティン社設立当初のラインナップもその常識に従っていたので、最大のサイズを1としておけば十分だったのだが、時代が進むにつれてより大きな音量のギターが求められるようになると、それらよりも大型のサイズ0(シングル・オー)が“コンサート・モデル”として1850年代初頭に登場する。1870年代前半にはさらに大型のサイズ00(ダブル・オー)、1902年には当時としては最大のサイズ000(トリプル・オー)がそれぞれ登場することになったのである。

3本の違いを裏側から比較。左から0、00、000

同じく表側から比較

同じく横側から比較。0のボディが少し厚いのがおわかりいただけるだろうか

 前述したモデルはすべて12フレット・ジョイントの楽器だが、サイズに関する法則は14フレットの楽器に関しても同じである。現行の標準モデルとしては、時折限定的に作られるサイズ5を除けばサイズ0が最もコンパクトで、最大サイズのモデルは0000(クワドリュプル・オー)である(実際の型番としてはMと表記される)。視聴者のみなさんからは、“0、00、000の違いをわかりやすく説明してほしい”というご要望をかねてからお寄せいただいていたが、今回Standard Seriesに新たに0-18がラインナップに加わったことで、“Standard Seriesのスタイル18”という同条件のもと、サイズによる音の違いを限りなく純粋に近い形で比較できた。みなさんの機種選びのご参考になれば幸いである。

Standard Series
0-18

Martin / 0-18


Martin / 0-18(Back)

漆黒のエボニー・ブリッジとブリッジ・ピン。サドルは現代的なドロップ・イン方式を採用

バインディングとサウンド・ホール周囲のロゼッタはもちろんスタイル18仕様。ピックガードはべっ甲柄

指板もブリッジと同様、漆黒のエボニー。控えめなドット・インレイはアバロン

 今回取り上げた中では、ボディの最大幅が13 1/2インチ(34.3cm)と最もコンパクトなモデルだが、低音や音量が不足するのを補うためか、00や000に比べてボディの最も厚い(ロウワー・バウトの)部分が1/8インチ(約3.2mm)ほど厚くなっている。歴史的には最も古くからあるサイズで、ピックガードやバインディングがべっ甲柄、指板とブリッジがエボニー、ヘッドプレートがインディアン・ローズウッドと、外観的にはビンテージ風の仕様になっている。その一方で、ネックがモディファイド・ロー・オーバルのハイ・パフォーマンス・テーパー、ナット幅が1 3/4インチ(44.5mm)と、現代の奏法に適したシェイプになっている。これらについては、00-18や000-18も同仕様である。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.4mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト(※トーン・バーのみノン・スキャロップト) ●価格:390,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 僕も1966年製の0-18を持っているので、非常に馴染みがあります。しょっちゅう使うギターではないけれど、使う時というのはすごく重要で、曲の中でギターのキャラを立たせて、そこにリスナーの耳を向けさせたい、でも000やドレッドノートではうまくいかないといったような場面なんです。このギターはまだ生まれたばかりで、その点では50歳を過ぎた僕のギターとの違いはあるけれど、音にガッツのある感じは共通していて、最後のデモ曲でメロディを単音弾きするところなんかでは、“待ってました!”と言わんばかりに反応してくれます。弾いている時のルックスもキャッチーだし、日本人にもっと弾いてもらいたいモデルですね。

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Standard Series
00-18

Martin / 00-18


Martin / 00-18(Back)

ヒール・キャップもバインディングと同様、ビンテージ仕様のべっ甲柄のものを使用している

ボディ材には、スタイル18の特徴であるシンプルだが味わい深い杢目のマホガニーを使用

ヘッド裏はボリュートを省略したシンプルなデザイン

 ボディの最大幅14 5/16インチ(36.4cm)で、標準サイズのクラシック・ギターに最も近い大きさのモデル。ボディ厚は4 1/8インチ(10.5cm)で、000も同様である。スタイル18は言うまでもなくボディがマホガニーで、本来はローズウッドのボディを持つ28などの下位モデルとして発売されたが、ローズウッドとはまた違う個性的な音色は根強い人気を保っている。また、現行のモデルはモダンな仕様の28とは対照的に、味わい深いビンテージ仕様になっていることもあり、28に負けない存在感を放っている。トップ材のシトカ・スプルースも、この仕様に合わせて“エイジング・トナー”という、経年変化で淡い飴色に変化した塗装を再現した色合いの仕上げとなっている。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.4mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:390,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 キャラの立つ0とオールマイティな000に挟まれて話題にならなさそうな00ですが(笑)、そんなことはありません。僕も新品で買った00-18Vをつい最近まで持っていて、もともと買った理由も、自分にとって一番弾きやすくて、試奏してすぐに気に入ったのと、鳴りが0よりふくよかで弾きやすくて、0よりもいろんなことに使えると思ったからでした。楽器を構えて鏡を観た時に、ちょうど良いサイズ感でしたしね(笑)。そういうこだわりって、あるじゃないですか。ジーンズのサイズみたいな。あと、000だとローズウッドのボディも気になってきますが、00はマホガニーと一番仲良しなサイズなんじゃないかなという気もしましたね。

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Standard Series
000-18

Martin / 000-18

Martin / 000-18(Back)

ペグはグローバー製で、ビンテージ感のあるオープン・タイプ

ロゴはオールド・スタイルで、ペグ・ポストの軸受け部分も昔ながらの六角形タイプを採用

 今回登場したギターでは最大となるモデル。最大幅は15インチ(38cm)のボディはOMと同じだが、ドレッドノートと同じ25.4インチ(645mm)のロング・スケールであるOMに対して、000は00や0と同じ24.9インチ(632mm)のショート・スケールとなっている。そのため、同じ太さの弦を張るとOMよりも張力がやや弱くなり、短めのスケールと相まって、手が小さくても弾きやすいのが特徴である。その一方でトップを振動させるパワーは弱くなるのだが、000-18では(00と0も同様)000-28とは違ってブレイシングがスキャロップトになっており、新品の状態でも楽器が鳴りやすくなっている。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.4mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:390,000円(税抜)

Makoto’s Impression

 マホガニーのボディでも3種類の中では一番オールマイティで、こうして順番に比べてみると、弾くのはやっぱり000が楽なんですよ。ちょっと複雑なパッセージでも、安心して指を動かせます。前に出した音の響きが残って、全体を包んでくれるからなのかな。例えば2曲目のBメロで、分数コードでベース音だけが半音で降りてくる部分をキレイに聴かせたいと思ったら、000が一番向いているんですよ。でも、そのほかの部分だと、0が少ないほうがいいかなと思っちゃうんですが、そういう迷いがまた楽しいんですよね。どれが良いか迷ったら、弾き方が途中で変わらない1曲目のデモを聴き直してもらうと、わかりやすいかもしれません。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 今回は、ボディが大型になるにつれて音がリッチに、きらびやかになっていく感じがよくわかりましたね。とは言え、あくまでも同じマホガニー・ボディということで、比較の範囲が散らばらないのがまたおもしろかったと思います。2曲目のブルージィなデモは、マホガニーのギターに合わせて作ったんですよ。3本の違いは、よく聴かないとわからない部分もあるかもしれないけれど、確実な違いがあるということもわかりましたね。材やブレイシングといった構造上の条件も同じなので、ボディの容量によってこんなに違うというのがピンポイントでわかりました。0からいきなり000に持ち替えれば、そりゃ違うだろうということになるかもしれないけれど、0、00、000と順番に持ち替えると、徐々に変わっていくのがわかります。特にデモの最後の曲では、ピックの単音弾きと指のつま弾きの両方をやっているので、三者のキャラの違いがはっきりと出ますよね。最初の単音弾きに関しては、僕としては0が“コイツはワイルドだぞ”という感じに聴こえてくれてうれしいというのはあるけれど、Bセクションでボサノヴァっぽくコードを弾く部分はどれも良くて、選ぶのが難しい感じでした。この3種類が楽器屋さんに揃っていることはあまりないかもしれないけれど、機会があったらぜひ先入観なしで試してもらいたいですね。自分に一番合っているのがどれかというのが、よりハッキリとわかると思います。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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